神奈川県議会2004年12月定例会 次世代育成特別委員会のまとめ

青少年保護育成条例改正による深夜営業店規制の罰則内容を引き出す

松崎:   最近の青少年の深夜外出による補導の実態は。

県側:   平成16年度10月末現在4万6093人で、前の年の同じ時期より9586人26.3%増加した。また補導した全体の人数が8万3091人なので、その55.5%が深夜外出にあたる。深夜外出で補導された子どもの6割が高校生、13%が中学生で、年齢では16歳と17歳が3割ずつ、補導された場所は路上が6割、ほかに公園、コンビニがほとんどである。時間帯は午後11時から午前2時までの3時間で3万5757人と一日に補導される少年の45%を占めている。

松崎:   県警少年育成課としては、深夜外出による補導を通じてどのようなことを感じているか。

県側:   深夜の補導活動を行っていると、以前に比べ多くの人を見かけるなど社会全体が夜型の生活になっていると感じる。コンビニやカラオケボックスなど24時間営業や明け方まで営業している店舗が増えており、子どもが深夜にいることができる場所も多くなっている。最近は携帯電話が普及して、親も子どもと連絡が取れることから、遅くなっても安心感を持っているようだ。夜遅く歩いている少女も多い。先日の深夜補導の際も、厚木駅前で午前2時ころに16歳くらいに見える少女が2人おり、見ているとナンパ族と称する男たちがひっきりなしに声をかけていた。自分が被害に遭うという、あって当然の危機感がまるで見受けられなかった。また、保護者については、18歳未満の少年が午後11時から明け方4時までの間外出が規制されていることを認識しておらず、携帯電話を持たせている安心感のために危険性も感じていない。深夜の実態を理解してもらい、積極的な声かけを推進して非行防止に努めたい。

松崎:   深夜に出入りする場所の存在が誘発する面もある。今回の青少年保護育成条例改正で、新たに深夜の立ち入りを規制の対象として考えている特定事業所とは、何を具体的に想定しているのか。

県側:   いわゆる風適法による規制の対象外で深夜営業の事業所を考えている。その中でも、カラオケボックス、漫画喫茶、インターネットカフェについては、個室化の傾向もあり、密室としての性格から無断外泊の誘因となり、飲酒喫煙も可能であるなど問題があり、対象とすべきではないかと考えている。

松崎:   これらの特定事業所にどのような規制をかけるか。

県側:   23時から翌朝4時までの深夜に立ち入りさせてはならない。立ち入りさせれば罰則を課すことを検討している。

松崎:   どのような罰則か。

県側:   現在、横浜地方検察庁と協議中である。

松崎:   検察はともかく県の意向を明らかにせよ。

県側:   現行条例では30万円の罰金が高いレベルとなっているから、そのくらいと考えている。

松崎:   検察との協議をすすめ、実効ある規制として欲しい。では深夜営業の店舗に対する実態調査を今後どのように進めるつもりか。

県側:   これまで調査は明確な位置づけがなく、県職員の身分を隠して行っていた。今回の条例改正により関係団体の協力も得て行えるようになる。任意の調査ではなく条例を背景とする調査を行う。少年補導員や青少年補導員のなかで気持ちのある方々にはご協力をお願いしたい。

松崎:   深夜外出の防止に向けては、学校も生徒指導の立場で担っていかなくてはならないが、条例の趣旨は各学校にどのように周知し取り組んでいくつもりなのか。

県側:   児童指導、生徒指導にあたる教職員に対し、生徒指導担当者会議や各種研修会で理解を図る。児童生徒に対しては、学年集会、全校集会、学級活動などの場で注意を喚起する。家庭や地域向けには、学級懇談会やPTA、地域の自治会に働きかけていく。

松崎:   教員は子どもたちの深夜外出にどう取り組んでいるのか。

県側:   学校では様々な形で教員によるパトロールを行っている。全日制高校の例では、校外巡回を毎日行っている高校が15校、定期的に行っているところが62校で合わせて5割を占め、不定期実施のところも合わせると95%に達する。

松崎:   私自身この6年余り、教員や保護者、子どもたちからそれぞれ実情を聞く機会を多く設けてきたし、志の高い先生がたくさんいることを知っている。取り組みの強化に努めてもらいたい。ところで、この条例の趣旨を県民の皆様に広く知ってもらうことが重要だが、広報はどうするつもりか。

県側:   まずは条例そのものを知ってもらうことが重要だ。また、今回の改正にあたっては、保護者の責任についてどう考えるか、また、有害な出版物等についても意見を募集しており、県民の皆様に共通の問題意識を持っていただくよう務めている。さらに、改正後は、青少年保護育成条例施行強調月間を設定し、県下一斉街頭キャンペーンを行う、深夜外出一斉補導週間や有害図書特別監視週間などアナウンス効果の見込める取り組みを集中的に行って、県民の皆様の意識高揚を図る。

松崎:   横浜駅前でタレントがワーとやってハイおしまい、ではなく、実際に地域で見えるということが大切だ。安全安心のまちづくりと同じで、腰高でない取り組みを求めたい。次に、青少年の育成全般について、県では新たに育成指針の策定を準備しているが、どのような内容か。

県側:   かながわ青少年育成指針を作りたい。とくに思春期の子どもを対象にする。例えば、青少年の無力感とか孤独感は、子どもが自分の存在感を自覚できない社会の問題ではないか、引きこもりや不登校は心の安らぎの薄い地域社会の問題ではないか、非行の背景には子どもが社会の一員と自覚しにくい世の中そのものの問題ではないか、という観点から、社会全体を大きくどう変えてゆくかという大きな目標を立て、それに向かって行政も地域も学校も保護者も、県民一人ひとりがどのような場面でどのような役割を果たせるか、足並みをそろえて取り組む羅針盤として、イメージしている。

松崎:   もう少し具体的説明を。

県側:   基本目標は3つで、1:青少年の成長の基盤づくり、2:青少年が自立できる環境づくり、3:青少年を支える地域社会づくりだ。1点目については、心と体の育成があり、生活習慣や児童虐待、飲酒喫煙や薬物問題が中心となるし、社会に適応する力として、命を大切にする取り組みの実践やコミュニケーション能力の向上に力を入れる。さらに、ボランティアを含め人間性や社会性を育む体験活動を積極的に推進していくことも大きなポイントになる。2点目については、不登校や引きこもりへの対策があり、青少年の居場所確保や相談体制の充実強化、またいじめや暴力、非行についても相談体制の充実と自立への支援に取り組むことを盛り込み、就職したい若者の支援策にも重点を置く。3点目については、社会環境の浄化が大きな柱だが、子どもと大人が対話できるようなコミュニケーションの場を作っていく、そのための施策をどのような形で展開していくかを課題として考えている。

松崎:   様々な検討がなされていくと思うが、現場での実効性はどうか、或いは子ども自身にとってどうなのか、という観点から、これまでのやり方を総点検し、よりよいものにしていただくよう、強く要望する。