平成17年1月決算特別委員会での質疑のまとめ

「夏までに」学校の地震防災マニュアル全面見直しを確約させる

松崎: 学校の防災対策やテロ対策について考えている。まず、最近の県立学校の耐震診断を実施した数とその割合、まだ実施していない学校の棟数は。

県側:   県立学校校舎の耐震診断は昭和56年以前の古い耐震設計基準で建設されたものについて58年度から実施している。最近では平成14年度に13棟の診断を行って診断率は64%となり、15年度は72棟で75%、16年度は20棟で80%になる。16年度末の未実施数は93棟となる。

松崎:   防災上重要建築物に位置づけられている校舎は18年度までに耐震診断を終了するが、位置づけていないものはどうするのか。

県側:   同様に18年度に終了させたい。

松崎:   では診断の結果必要となった耐震補強工事にはどのように取り組んでいるか。校舎の耐震化はいつまでに終了させるのか。

県側:   診断の結果補強が必要なときは、事前調査、実施設計、工事と数年かけて工事にたどりつく。14年度の耐震補強工事は4棟で耐震化率は55%、15年度は6棟で56%、16年度は4棟で56.4%になる。耐震化の終了時期についてだが、教育委員会として耐震対策は最優先の重要課題と認識している。前倒しで耐震診断を行ってまず未実施校舎を解消する。補強工事は養護学校を優先し、次に県立高校改革の対象校の整備と合わせての補強を行い、さらに他の高校は緊急度を反映させて計画的に進める。

松崎:   いつまでにと聞いているので、いつまでにと答えてもらいたい。

県側:   今後の予算編成にもよるが、教育委員会としては計画的になるべく早くこの状況を解消したい。

松崎:   重要度が最も高いのだから、速やかに終了させてほしい。つぎに、学校の避難所としての機能について、県教育委員会が定めている地震防災活動マニュアルのなかに問題と思う記述がある。このマニュアルは、阪神大震災を受けて平成9年3月に県内のすべての公立小中高校を対象に策定されたものだ。23ページを開くと、避難所が長期化した場合の対応という項目があり、「避難所となった学校は、教育活動の停止期間がおおむね1週間を超えないよう最大限の努力を行う必要がある」と記載されている。どういう趣旨か。

県側:   地震の規模にもよるが、一定期間が経過すれば全体に落ち着いてきて、一部は自宅に帰り、避難所の統合も行われる。また学校の休業が長くなると教育目標の達成が難しくなって教育活動に支障が出るし、再開されると児童生徒の心のケアにつながるだろうと考えている。子どもたちが学校で学ぶということになると復興に向けて明るい兆しにもなるだろう。一つの目安というか、教育活動の再開に向けた目安として一週間と記載している。

松崎:   教育サイドの視点から書かれたものである。では実際に中越地震をはじめとする今までの大規模災害で、この一週間と明記することは、実情に照らして、経験に照らして、全くもっていかがなものか、と私は受け止める。しかもこのマニュアルは県内の全公立小中高校が防災対策の指針として活用している。教育サイドの視点のみで一週間以内という目標を掲げてしまっていることは、被災地の現状に照らしても、いかがなものかと思うが、どう考えるのか。

県側:   指摘の通り、この記載が学校現場に誤解を与える可能性があるので、見直す。

松崎:   一週間という記述を見直すとのことだが、それだけでいいのか。中越地震でも避難所を巡って様々な教訓が伝えられた。総合的な防災体制の中に学校も位置付けられなければならない。このマニュアルは、策定からもう8年も経っていてこの間の災害が残した教訓が全く反映されていない。県内すべての公立小中高校で活用されるという、極度に影響力の多きいこの地震防災活動マニュアルは、一度現段階で、全体を通じてていねいに見直していくべきではないのか。

県側:   確かに中越地震のような大規模災害に学ぶ点は多い。車中の生活で亡くなった方があるし、障害児の避難所生活が大変な様子も伝わっている。また教育委員会職員3名を派遣したところ、避難所の運営にあたり県と市町村が事前に連携を充分取って役割分担を明確にしておくべきだったとか、発生時に帰宅できなくなる子どもたちの食糧や物資の準備が必要だとか、教職員の訓練や意識啓発、発生したときの対応の徹底を事前によくやっておく必要があるなどと、現地の方々と意見交換をしてきた。そういう観点でこのマニュアルを見れば、新たな課題がたくさん出てきている。まして避難所の運営には当然、防災局に限らず市町村との連携も必要であり、関係機関と十分調整しつつ、このマニュアルを見直していく。

松崎:   確認だが、全体の見直しなのか、一部の手直しなのか。いつまでに見直すのか。どういう手順で改定するのか。教員や保護者、子どもたちに対しどのように周知徹底するのか。

県側:   県教育委員会の地震防災活動マニュアルは、指摘の通り一週間という表現の問題がある。さらに策定からすでに8年経っており、中越地震での教訓はもちろんのこと、スマトラ沖地震の関係で津波対策を海岸近くの学校は考えなければならないなど、新たな課題が出てきてもいる。16年には東海地震関係で情報体系も変わった。こうしたことを踏まえると、現在のマニュアルは全体的に総点検を行い、全体の見直しが必要である。関係機関との調整に時間が必要だが、人命に関わるのでできるだけ即時に、この夏までには何とかまとめていきたい。改定の手順は、学校現場抜きにはできないから、教育委員会の関係する部門と学校現場の代表者でワーキングチームを発足させ、県防災局等の関係機関と意見調整しながら進める。このマニュアルは作ったら終わりというものではなく、担当者の方々を集めてきちっと説明し、全公立小中高校では職員会議を開催して全職員共通の課題として、さらによく議論して学校に沿ったマニュアル作りをする、日頃の訓練等の総点検をするよう、しっかりと指導する。そういう取り組みを含めて児童生徒、保護者の皆さんに周知をする。

松崎:   よく分かった。ただし、学校を避難所にするのは一週間、という記述がなぜなされたか、その背景を掘り下げてみる必要がある。それは、阪神大震災のときに学校が避難所になって長期化した中で大勢の関係者や市民が苦労、苦慮されたことにある。どのように解決していけばいいのかは、長期間いつまでも使えばいいんだということでもなかろう。しかし、人命の尊重こそ第一の、最優先の立脚点だ。「凍えるような氷点下の避難生活を学校の敷地のテントで送る、高齢者の中には亡くなる方も出てくる、そんな中、授業再開にはつながらないのに、暖かい教室はがら空きのまま温存され続ける、入っていた人も出される」そんな事態が起きてからでは取り返しがつかない。全体を見直すということなので、よろしくお願いする。