平成18年3月1日と3日の環境農政常任委員会での質疑のまとめ

1 木質バイオマスの普及について

(4) 木質バイオマスエネルギーの大量利用について

松崎       最後の項目だが、木質バイオマスエネルギーについて、岩手のような林業県、それから大分県に行ってきた。日本有数の林業県でどれだけ稼動しているかということを交えながら質問しているが、企業的利用というか、木質バイオマスによる発電所が今年の11月には大分県日田市でオープンするという情報も知ることができた。この発電所は年間10万トンの木質チップを使い、出力1万2千キロワットの発電を行うということだ。こうした木質バイオマス発電所は山口県、福島県でもスタートしているとのことだが、大分県日田市は日本最大である。

年間10万トンもの木質バイオマスの原料たる木材をどこから手に入れるのかを調べてみると、間伐材、また建設廃材ということで、建設廃材の方はリサイクル法という別の法律があるので、そこのところで少し厄介なのは燃焼時に出てくる有害な物質をどのように除去するかという別な問題があるが、いずれにしても、木質バイオマス、我が県の新エネルギーの3つの柱のうちの1つが他県では、このようにかなり具体的にスタートしている。

また、セメント工場の太平洋セメントという工場に行ってきたが、そちらでは、セメントを作る際の熱源として木質バイオマスを活用している。それは、林野庁の木質バイオマス資源多角的利用促進緊急対策事業を活用しているため、間伐材を利用しなくてはいけないということである。

そこでお聞きするが、建設廃材ということについても、全国的な木質バイオマスの大量利用の現状からすると、具体的にどのように実態をつかみ、そして供給体制の中に組み込んでいくかということになるが、神奈川県内では建設廃材がどのくらい発生し、その処理や処分はどのようになっているのか。

答弁

(廃棄物対策課長)           建設廃材、木くずの発生量と処理についてですが、木くずにつきましては産業廃棄物として扱っておりまして、その状況につきまして、平成16年度に実施しました産業廃棄物総合実態調査結果、平成15年度実績で申し上げますと、県内の排出量は16万6千トンで、県内で排出される産業廃棄物が1,785万トンですので、全体の約1%程度でございます。

この排出量のうち、再生利用、リサイクルされている量は約11万7千トンでございます。主に、パルプや紙、再生木材、それから燃料、肥料や土壌改良材などに利用されております。

再生利用のなかで、燃料、木質バイオマスエネルギーとして利用されているものは3万2千トンで、先ほどのリサイクルの量11万7千トンと比較して27%を占め、セメントとか製紙工場などで利用されております。

さらに、こういうリサイクルができなかったものについては、中間処理として主に焼却されておりますけど、3万8千トンが焼却され、最終的には最終処分として残りの約1万トンが埋立されております。

松崎       そうすると、当然この木質バイオマスが、大分県であるけれど、発電所等で大量に利用されていくということが進んでいけば、神奈川県の建設廃材を、未利用の部分があるわけだから、当然そちらの方へ回されていくと考えてよいのか。

答弁

(廃棄物対策課長)           先ほど委員の言われた建設リサイクル法の中では発生抑制、再使用ということで利用したり、その次に再生利用、リサイクルということでそのリサイクルも先ほど申しましたように材料をそのまま使うようなリサイクル、そして燃料として使用するようなリサイクルがございます。

先ほどのセメント工場については、川崎にあるセメント工場に聞いたところ、廃材を燃料として使うことについては、一つには輸送や保管スペースの問題がございます。

それから石炭とか石油に変わるエネルギーとしてはカロリーが低いというような問題がございます。

それから木材については、その中に防腐剤・防蟻剤が入っている場合もございますので、それなりの排気の処理をしなければならないというような問題がございます。そのような問題の中でどのように活用されていくかということになります。

松崎       そういう課題があるのになぜ、今これだけ木質バイオマスの具体的な供給源として、材料として建設廃材が取り上げられ、大規模な10万トンという発電所等が建設されるのか。

答弁

(廃棄物対策課長)           建設廃材、建築廃棄物がこれからかなりの量が増えてくる、高度経済成長期に建てられた建物がこれから建替えの時期を迎えることで量が増えてきます。

もう一つはそれぞれの土地の立地条件において、例えば廃材がコスト的に見合うとか、廃材の場合は買うのではなく逆に処理料をいただきますので、そういう部分でコストとして見合うのかどうか考えた上で廃材を燃料として活用していくのだと思います。さらに、セメントの場合は焼却灰が原料としても使われますので、そういう観点でも利用されると考えます。

松崎       今後も拡大発展するか。

答弁

(廃棄物対策課長)           廃棄物行政の観点で申しますと、まず、具体的な発生を抑制し、次に再利用し、次いで熱源として利用するという順がございますが、ニーズとしては発生量が増えてまいりますので そういう点で言えば一つの有力な方策ではあると考えています。

今後拡大するかどうかについては、立地条件やコストの面で、石油の値段、石炭の値段、木材の値段そういうものを勘案しないと、なんとも言えない状況でございます。

松崎       建設廃材の利用はコスト的に有利だと思われるが、森の循環利用ということから考えると、一歩立ち止まって考えることも必要だと認識している。一方で、化石燃料を用いず、より環境負荷の少ない、CO2の削減に寄与することを考えると、建設廃材の再利用を神奈川県としてもよく見ていく必要があると思う。

さて、こうした年間10万トン規模の発電所を神奈川県内に作っていくということについてどのように考えているのか。

答弁

(環境計画課長)               電気事業者に一定程度の新エネルギーの購入を義務づけているRPS法、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」があるので、バイオマス発電を行えば、買い手がいるという状況は続いていくと思います。ただし、神奈川県内ということになると、木質バイオマスは熱量が低いため、ストックヤードが相当程度ないと難しいと思われますので、地価の高い神奈川県内での事業性は低いと考えます。

なお、まだ各企業に具体的にCO2排出量の削減割当があるわけではありませんが、減らさなければならないことを考えると、既存のボイラーを更新するときに、建設廃材を燃やすことが可能なものの導入も検討されるのではないかと思います。

さらに、先導的にやることによって企業のイメージアップにもなりますので、木質バイオマスを燃やしていこうという動きが出てくる可能性はあると思います。

松崎       最後に部長に伺いたい。小規模分散型のエネルギーで、また地産地消型でもあり、化石燃料に代わるエネルギーでもあり、林業の再建にもつながるもので、非常に多面的・多角的に見て有効・有用な資源である。ぜひとも政策的な後押しということをお考えいただき、今後の木質バイオマス利用促進、普及の取組みについての決意を伺いたい。

答弁

(環境農政部長)               木質バイオマスの活用ということは、地球温暖化対策を考える上で大変重要なことだと考えております。そこで、「かながわ新エネルギービジョン」でも、県の西北部地域において、木質バイオマスの導入を進めることをうたっております。

ただ、今回、こういう状況の中で、チップとか、ペレットとか、安定的な供給体制の構築、価格の安定など、そういった課題の解決に向けてどういった手だてが考えられるのか、そういった検討がまず必要ではないかと思います。

したがって、課題解決の手だてがあり得るのかといったことを踏まえた上で、事業化の可能性というのがあるのか見極めをすることがまず大切ではないかと考えておりまして、当面、地道かもわかりませんが、そういった取組みを進めていきたいと考えております。