神奈川県議会平成18年6月定例会

厚生常任委員会質疑のまとめ

2 障害者自立支援法の施行に伴う課題と「かながわの障害福祉グランドデザイン」案について

松崎       ● 4月から障害者自立支援法が施行され、不安、疑問の声が聞かれている。障害福祉サービスを一元化していこうという理念は認められるが、不安や疑問にはきっちりと対応しないといけない。

 施設利用ということからすると、区分認定が導入され、サービスを受けられなくなったり、あるいは、施設が、あなたは利用できる、あなたは利用できない、ということを選別するようなことになるのか。

障害福祉課長       ● 障害程度区分は障害の重さを示すと言うよりも、サービスの量や支給の必要性を示す尺度であり、6段階で構成されるものである。障害者自立支援法により、施設は5年内で新体系に移行していくことがメインテーマになっていくし、そうした新しいサービスを選択していくことになるが、その際に、障害程度区分が重要になってくる。

松崎       ● 5年内で新体系へ移行するとのことだが、そうしたサービスの再編の中で、区分判定がどのように行われるかは、しっかりと見届けていきたい。必要なサービスが提供されるようしっかりとやっていただきたい。

● 次に、報道によれば、滋賀県などでは利用者負担を理由に施設を退所したり、在宅サービスをやめた人が47人おり、大分県では150人いるそうである。定率負担が導入され、利用者も不安を感じている。県内での定率負担の影響はどうか。

障害福祉課長       ○ 障害者自立支援法は、福祉サービスを再編し、定率負担を導入しているので、障害者の皆様にも様々な影響が及ぶことかと想定している。

 委員が指摘された、サービス利用を手控えるのではないかとのご懸念があることは、私どもも承知しており、アンケート調査はしていないが、障害者団体などから意見を伺う中で、実際にそうしたケースもあるというお話は聞いている。

 一方、サービス再編前の3月と新制度がスタートした4月とで、支払システムでサービスの支給決定状況と支払請求状況を見てみると、支給決定は、3月に比べて4月が100.5%、支払請求は98.7%となっており、一部集計中の部分もあるが、サービスの利用を手控える様子は見えてきていない。

 私どもとしては、制度を円滑、確実にスタートさせることが急務と考え取り組んでいるが、必要なサービスが必要な人に届かないということがあってはならないと考えている。

 今後とも、関係する団体の方々からお話をお伺いしたり、支払システムを使って分析するなどして、影響や現状の把握に努めて参りたいと考えている。

松崎       ● 障害者自立支援法についてはいろいろと言われているが、授産施設や地域作業所で働いているのに、利用料を払わないといけないということがある。これは深刻な問題であると思う。私もNPOや精神障害者のための施設に関わっているが、就労されている方のお立場、別に年収で100万円、200万円取っているわけではないのに、利用料を支払うというのはどういうことか。滋賀県や大分県の例は団体の調査のようだが、県も市町村とともに、きっちりと実態を把握しないと、法が目指す、就労支援や地域生活移行に逆行してしまうのではないかと思う。今後どのように、実態を把握し、施策を展開していく考えなのか。

障害福祉課長       ○ 利用されるサービスが変わると言うことは、心配なことと思う。お話のあった地域作業所についても、今後、法内の施設に移行するかどうか、アンケートによると、5割程度が新体系へ移行するとしている。そうなると、法内の施設ということで、利用者負担の問題がやはり出てくる。県としては、実態を踏まえ、必要な人に必要なサービスを提供するよう努めていく。

松崎       ● そうした観点でグランドデザインをまとめられているなと承知しており、盛り込まれている宣言も前向きである。だが、具体的にしていくには、必要な措置を講じ、財源も確保していくことが必要と思うが、例えば、規模はどうなるのか。

障害福祉課長       ○ グランドデザインは理念を共有しようとするものであり、具体的な規模までは入れていない。県では、基本計画として、かながわ障害者計画があり、その計画とグランドデザインに基づきながら、サービス計画として数値目標をいれた障害福祉計画を策定するが、そこで、具体的な数値を入れることになる。グランドデザインはプロセスとして考え方を共有しようとするものであるので、数値は入っていない。

松崎       ● グランドデザインは考え方を示すもので、サービス計画で具体的にするということは理解した。

 グランドデザインも地域生活移行を挙げているが、そのためには、人材が今まで以上に必要になると思うが、給料を支払って有給の人、それともボランティア、どういった人材を考えているのか、あるいは、割合はどのくらいか。

障害福祉課長       ○ 割合については、お答えするのが難しくなるが、サービスについては、公的なものだけではなく、地域の方と共同して一緒にやっていく部分と、それと、ご自身の選択としての公的な部分とがあろうかと思う。グランドデザインでは、そのことを自助公助共助と表現しているが、そうしたことで、地域生活を支えていくものと考えている。

松崎       ● 行政は、施策展開を考える時、最近では、ボランティアを前提としているように思える。しかし、地域で接すると、ボランティアは高齢化し、リスクも抱えながら活動しているのに、光が当たっているとは言えない。NPOや民生委員も含めて、ボランティアの皆さんが、のびたゴムとは言えないが、疲れている。後をどういう人が続いてくれるのか。なんとか、モチベーションを高めていくことを考えないといけないのではないか。

障害福祉課長       ○ ボランティアの重要性は今更申し上げるまでもない。行政としても支えていかないといけないと思う。今後は、障害福祉の分野でも市町村の役割が重要となるので、県もともに支えていきたいと思う。ボランティアについては地域の社会福祉協議会が育成を行い、また、施設内でも研修を行っている。そうしたところで、中学生や高校生も参加するという動きがでているようだ。また、障害福祉の分野だと、スポーツの分野でのボランティアの養成などにも取り組んでいる。

松崎       ● 障害福祉の分野でも人材の問題は深刻だ、今後の取組みの方向をどう考えるか。

障害福祉課長       ○ グランドデザインでも地域での支え合いを取り上げたが、障害福祉についての認識をボランティア養成の際に深めていただければと考えている。障害者が地域で暮らすには、地域の人が障害を理解し、手助けしてくれることが必要だ。そうしたことを含め、障害福祉について啓発を進めていきたいと考えている。

松崎       (要望)

● 啓発が必要とのことであるが、必要に応じて声を聞くことも必要だろう。財政的な面ということよりも、意見をきくことで、光があたるということもある。 そうしたことも考えながら、今後とも、障害福祉について取り組むよう要望する。