厚生常任委員会県外調査報告書 調査日 平成18年9月4日(月)~6日(水)

独立行政法人国立病院機構長崎医療センター

1 目的

当センターは、国立病院の再編により高度総合医療施設として、良質な高度医療を提供するほか、離島の親元病院としての医師の教育や救急患者の受入れ、及び国際医療協力や広域災害拠点病院としての機能を担っている。平成16年4月からは、電子カルテを導入すると同時に地域の病院との間で電子カルテ等のネットワークを構築し、地域医療連携に貢献している。

2 病院概要

所在地 長崎県大村市久原2-1001-1

標榜診療科目 25科

入院病床数 650床(一般610床、精神40床)

外来 約800名/日

病床利用率 95% 平均在院日数21日

救急患者数 約10,000名/年間(ヘリコプター搬送180名)

手術数 約3,500例/年間

職員数 740名(医師160名、看護師400名、その他180名)

敷地面積 132,481㎡

建物延床面積 64,505㎡

3 あじさいネットワーク概要

あじさいネットワークとは、総合病院の保有する患者情報を患者の同意のもと、インターネット暗号化技術を利用して、かかりつけ医から閲覧可能にするものである。

運営は、大村市医師会、長崎医療センター、大村市立病院、長崎県離島医療圏組合、諫早医師会の代表者で構成されるNPO法人長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会が行っている。

現在、診療情報を公開している総合病院は、長崎医療センターと大村市立病院であり、情報が閲覧できる医療機関は、大村市内で34機関、諫早市内で6機関、長崎市内で3機関、島原市内で2機関、その他で5機関となっている。

インターネットによる診療情報の共有化については、これまで国が56億円をかけて26地域でモデル事業を実施してきたが、10地域で休止している。

このあじさいネットワークが成功している理由としては、運営をNPO法人の協議会が行い、入会金や維持管理費をできるだけ安価に抑えていることがあげられ、今後は長崎県全域に広める予定である。

4 救急救命の概要

長崎医療センターは、県内唯一の救急救命センターを設置しており、平成17年3月にヘリポートを開設し、これまでの海上自衛隊のヘリコプターの搬送に加え、長崎県の消防ヘリコプターも活用され、離島からの救急患者の搬送に寄与している。昨年の搬送された件数は205件である。

また、長崎医療センターは、離島医療機関の親元病院として位置付けられており、離島への医療支援として、画像伝送システムを構築している。これは、離島での検査結果画像を長崎医療センターに送り、専門医による診断を受け、ヘリコプターによる搬送の判断に利用されている。このシステムは国のマルチメディアモデル医療展開事業を活用して、より高度化させ、昨年の伝送件数484件である。この際、離島での医師は、当センターで2年間研修を行っているため、お互いのヒューマンネットワークができており、画像だけのコミュニケーションだけでなく、効率的な運用がなされている。

その他の県内の救急車による搬送受入時間の短縮のため、当センターが高速道路に面していることから、県で約3,000万円の費用をかけて救急車専用の出口を設置した。このことで、通常の高速道路出口を利用するより10分程度の時間短縮がはかられている。昨年度の利用件数は400件程度である。

5 質疑応答

質疑       ●  あじさいネットワークにおいて、レントゲンフィルムなどかかりつけ医にある診療結果の蓄積情報の取扱いはどのようになっているのか。

回答

                ○ 現在、そこまでのデータは取り扱っていない。将来的には双方向通信も考えているが、当面は、長崎医療センターの電子カルテをかかりつけ医が閲覧できるという一方向のみで行っている。

質疑       ● 医師会により、同ネットワークへの加入率の差があるが、何か原因があるのか。

回答       ○ 医師会でまとめて加入してもらえれば、費用的にも安くなるが、医師会によってITに対する認識の差がある。一番加入率の高い大村市医師会は、ITに強い医師が多く、医師会として取り組んでいるが、IT化に関してなかなか理解が得らない医師会もあるのは事実である

質疑       ● 家庭医制度について、特に離島では、出産から内科、外科など最初に診察しなければならず、いわゆる必然的に家庭医となっている。そこで、このネットワークをうまく活用すると家庭医と中核病院の連携が取れると考えられるが、そのあたりのご所見を伺いたい。

回答       ○ 離島には、2年間当センターで研修を受けた医師が派遣されて、各地域の診療所でプライマリーケアの役割と担い、中核となる基幹病院で二次救急を行う。そして、最終的にヘリコプター搬送で当センターなどが三次救急の体制をとっている。これらの連携の判断において、確かにこのようなシステムは有効と考える。

質疑       ● システムの加入者が増えていき、例えば県内全域をひとつのシステムで運用していけば、維持費の問題もなくなると思うが

回答       ○ 当初、ネットワークを大きくしていくと、患者の囲い込みになるとの批判があった。確かに自分のところの病院だけを考えれば、そのような批判となり、このシステムの課題でもある。しかし、患者さんのためになるという広い観点から見ていくといいシステムになっていくと考える。

質疑       ● 電子カルテについて、病院によってシステムが異なってしまう場合があるが、問題はないのか。

回答       ○ 現在は閲覧だけであるので、システムが異なっていても問題はない。

質疑       ● 画像転送システムにおいて、ADSLを使用しているとのことであるが、問題ないのか

回答       ○ 以前は、高速通信を利用していたが、維持経費が高いためブロードバンド化に伴いADSLに移行した。パフォーマンスについては、問題ない。

質疑       ● 遠隔の画像診断によりヘリコプターの搬送を要しないと判断する事例はどれくらいか。

回答       ○ 正確な数字は把握していないが、20件に1件くらいはある。重症過ぎて搬送して治療しても変わらないことと、軽症であるからそのまま治療を続けてくれという判断がある。1割くらいはあるかと思う。

6 調査結果

長崎医療センターにおいて、地域医療連携としての「あじさいネットワーク」及び救急救命における離島との画像転送システムを中心に調査を行った。当センターは、離島の親元病院として、医師の派遣及び医療支援に寄与するとともに、地元かかりつけ医との連携による効率的な診療を行っている。

医療連携及び救急救命の取組及びその課題を調査することにより、本県における医療整備の検討に資することができた。