平成18年9月県議会定例会・厚生常任委員会質疑のまとめ

<病児・病後児保育について>

松崎       ● 子育てと仕事の両立をする際に困るのが、子どもが病気の時の対応。病児・病後児保育が大切である。熱を出すと保育所は、子どもを預かってくれない。東京都では、「フローレンス」というところが先駆的な取組みを実施している。

この取組みは、厚生労働省が「フローレンス」に何回も話を聞きにきた後に、同じような「緊急サポートネットワーク」を真似て立ち上げたというようなものだ。民間でこのような動きがある中で、県として病児・病後児保育にどのように取り組んでいくのか。何点かお聞きしたい。

まず、厚生労働省が病児・病後児の保育に対応する仕組みとして「緊急サポートネットワーク」を半数以上の都道府県で実施していると聞いている。この事業は、商工労働部で広報等を行っているそうだが、県内での実施状況についてお聞きしたい。

県側       ○ 同事業は、商工労働部労政福祉課で所管しており、そこから聞いているところでは、女性の社会参加が進み、仕事と育児を両立させている母親が増えている一方で、子どもの病気時や、急な残業、出張等が生じたときの対応で悩む家庭も少なくない。

「緊急サポートネットワーク事業」は、そのような臨時的・突発的なニーズに対応して、子どもの宿泊も含め、あらかじめ登録している地域の住民の方が、子どもを預かる厚生労働省の事業である。

具体的には、子ども預かって欲しい「依頼会員」と、子どもを預かる「援助会員」を「緊急サポートネットワーク」事務局が橋渡しする事業である。

この事業は、昨年度から開始され、現在では、本県を含む31都道府県で事業展開されており、神奈川県では、財団法人「神奈川県児童医療福祉財団」が、厚生労働省の委託を受けて、藤沢市に「湘南緊急サポートセンター」を設置して、昨年12月から事業展開をしている。

現在のところ、藤沢市や横浜市南部地域では、「援助会員」が十分確保されているが、川崎市や相模原市には一人もいないなど、県内全域での事業展開ができていない状況にあり、そのため、取扱件数も7月末現在で約100件にとどまっていると聞いている。

松崎       ● 大変さびしい状況であり、「緊急サポートネットワーク」を全県的に展開することが必要であると考えていることは理解したが、まず、「フローレンス」はどのような仕組みであると把握されているのか。

県側       ○ 私どもが調べた範囲で、「フローレンス」の仕組みについてご説明する。

NPO法人「フローレンス」は、2004年4月に設立され、東京都内で病児保育を展開している。

同法人では、病児保育(こどもレスキューネット)運営事業という名称で実施されており、その概要は、まず、会員登録した利用会員が、子どもの病気等で病児保育が必要になった時に「フローレンス」に電話。

次に「フローレンス」がこどもレスキュー隊員に電話連絡。

電話を受けたこどもレスキュー隊員が会員さんの自宅にかけつける。

こどもレスキュー隊員が、かかりつけの小児科医につれていき受診。

その後、こどもレスキュー隊員の自宅でお預かりする。そして、何かあれば提携小児科医と連携をとることになっていると承知している。

同法人のパンフレット等によると、登録者数は、2006年5月末現在で、こどもレスキュー隊員21人、利用会員53人となっている。

また、2005年度の活動実績は、病児保育で137回等とのことである。

松崎       ● 「フローレンス」では、医師と連携していることは理解したが、「緊急サポートネットワーク」では、この点はどうなっているのか。

県側       ○ 「緊急サポートネットワーク」における病児・病後児を預かる仕組みは、まず、依頼会員がかかりつけ医に受診し、医師から預けても良いという許可をもらう。

次に、所定の様式を記入し、子どもの病状を把握した上で、すでに事前打合せを行った援助会員に詳細を伝えて活動の承諾をとる。

活動がきまったら、依頼会員がセンター事務局に活動費、時間、援助会員の会員番号・氏名を連絡。

会員間で詳細に打合せをした後、子どもを依頼し、原則として援助会員の家庭で保育を実施。

さらに、保育中については、地域開業医と連携し、依頼児童の状況により適宜アドバイスをもらい、必要があれば診察の協力をもらうとのことである。

このように、依頼者がかかりつけ医につれていくものであるが、預かる前に診察を受けることや保育中にも、小児科医と連携していることなど、医療機関との連携はなされているようである。

松崎       ● 「緊急サポートネットワーク」では、医師の協力が不可欠であると思われ、医療機関が協力してくれれば、県民が安心して預けられる施設はすぐにでも出来る。先日、汐見台病院の院長から病児保育・病後児保育の必要性や病院との役割について積極的な話を具体的に伺ったところであり、先進的な事例になればと思うが、汐見台病院の現在の状況について伺いたい。

県側       ○ 汐見台病院は、内科、外科、小児科など13の診療科を持つ地域の中核病院である。

汐見台病院の豊田病院長は小児科医であり、子育て支援について高い見識を持っており、支援が大切であるということは、いろいろな場面で私も聞いている。

当病院では病児、病後児保育を行うことは考えていないということであるが、24時間医師が当直しているといったこともあるので、病児、病後児保育を行う保育園などと連携すれば、病児、病後児保育の強力な後方支援となることから、病院長としてはそういった面で積極的に協力したいと考えていると聞いている。

松崎       ● 病院として積極的な考えを持っており、医師がいて、病床数も多い、また24時間体制でもある。

是非ともある一定の機能を果たすべきであり、県として後押ししていただきたいと考えているが、現状では県内ではまだ受け手がない。一定の後押しをしていくことは考えられないか伺いたい。

県側       ○ 汐見台病院は今年から指定管理者制度を導入し、実施主体としての判断もある。

今後、具体的なお話があればお聞きしたいと考えている。

松崎       ● 今の答弁は、前向きのスタンスであると受け止めて良いか。

県側       ○ 病院が地域の子育て支援に役立つという意味では、病院事業庁として良いことであると考えている。

松崎       ● 医療機関の協力を得るということは、いろいろな課題があることはわかった。

そこで、県内で医療機関と連携して、病児・病後児保育を実施している施設はあるのか。その数とどのような連携をしているのか把握している範囲でお聞きしたい。

県側       ○ 市町村に照会したところ、県内の病児・病後児保育を実施している箇所数は、病後児保育は、横浜市・川崎市・横須賀市・相模原市・伊勢原市・厚木市・小田原市の7市で13施設、定員の合計は70名となっている。

病児保育は、横浜市1市で3施設、定員合計は12名である。

病後児保育が実施されている施設は、保育所併設型が7施設、単独型が3施設、医療機関併設型3施設となっている。

また、病児保育が実施されている施設は、すべて医療機関併設型となっている。

医療機関に併設されていない施設についても、国通知により、医療機関との連携の確保が求められており、「病気の回復期であるため、発熱の再燃等病状が変化したりする場合が予想されるので、病状によっては直ちに対応できる距離にある医療機関との協力体制が確保されていること。」とされている。

また、保育を実施するにあたっては、まず、かかりつけ医の診断を求めているところが多いようである。

松崎       ● 今、把握している範囲で、病児・病後児保育の実施状況をお聞きした。あまりにも少ないという感想である。様々な課題があるとは思うが、県として、今後、この病児・病後児保育にどのように取り組んでいくのか。

県側       ○ 病児・病後児保育は、委員ご指摘のとおり、子育てと仕事を両立する際に大変重要な事業であると考えている。

県としても、平成17年度に国の制度改正により、病後児保育事業が次世代育成支援対策交付金(ソフト交付金)化されるまでは、政令市を除く、市町村の病後児保育の実施について補助をしていたところである。

ソフト交付金化により、市町村が直接に国に申請し、国の補助も国から直接に市町村に交付される仕組みに変更されている。

しかしながら、本事業は、子育て支援と仕事を両立する重要な事業であり、保育の実施主体である市町村と連携しながら、政令市・中核市を含む児童福祉主管課長会議において、この課題を取り上げ、市町村の意向を踏まえながら、その取組みを支援していきたいと考えている。

松崎       ● (要望)

 子育て中の県民の方が病気の子どもを抱いて困っているという状況がある。東京都では、再開発事業のプロジェクトの公募で、具体的には、賃貸住宅の整備だが、その中に子育て支援施設として病児保育室を設置する提案が採択されるなどの様々な手法が考えられる。県として、病児・病後児保育に直接かかわる市町村に支援していくというが、どういう支援をするのかにかかわってくると思う。積極的に展開することを要望する。