平成19年11月13日神奈川県議会決算特別委員会での質疑のまとめ

○ 県の財政健全化について

松崎:    それでは、続きまして11月1日、今月1日、我が会派の作山委員の質問に対しまして、プライマリーバランスの黒字化を平成22年度にという答弁がありましたので、この点について何点かお聞きしていきます。

7月に策定されました行政システム改革基本方針や、10月に改定された財政健全化への基本方策におきましても、平成22年度末までのプライマリーバランスの黒字化が新たな目標として掲げられております。決算資料を見るまでもなく、県債の額は、最終予算の1,068億円から、さらに減の1,045億円となっているようでありますが、平成18年度決算における状況とあわせて、この新たな目標に関連して特化して何点かお伺いします。

 まず、県債に関して従来から10%目標、それから1,400億円目標、そして県債現在高の減少目標に加えまして、プライマリーバランスの黒字化、さまざまな目標を設定しています。なぜ、このように多くの目標を設定しているのか、まず初めに伺います。

中島財政課長:    本県の財政の特徴というところに、そもそもその理由がございます。本県財政、人件費、公債費、そして介護・措置・医療費など歳出の中で義務的な経費が非常に高いということで、柔軟性を欠く歳出構造であるという、まず特徴がございます。

 もう一点で、歳入面でございますけれども、法人2税の割合が比較的高いということで、景気がよいときには税収も非常に高いのでよいわけですけれども、一たん景気が低迷してくるとなるとこの税収がかなり落ち込んでくると、そういう不安定な税収構造というようなところがございます。この義務的な経費につきましては、法人の関係の税が大きく落ちても、それに合わせて一遍に削減するということがなかなか難しい、そういう性格のものでございますから、この柔軟性がなかなか乏しい歳出構造を改善していかなければいけない、これが本県の財政運営をする場合に、まず安定的に財政運営をしていくための一つの大きな課題になっているという状況がございます。

 そのため、本県の起債の運営の面では、これは全国的に見てかなり公債費の指標がよいわけですが、比較的率の高い人件費と両方あわせた指標で常に物を考えていかなければいけないという点が一つございます。そのために、義務的な経費の中でも介護・措置・医療費というのは、これはなかなか削減がしにくい部分でございますので、では人件費とあわせて公債費については県債発行の抑制ということを通じて、将来の公債費の負担を軽減していくということが非常に大きなポイントになると。そのために、先ほど委員おっしゃっていただいたいろいろな目標を立てて県債発行の抑制をしながら公債費の抑制を図っていくと、このようなことで取り組んでいるということでございます。

松崎:    今のお答えは、各種資料を読めばある程度想像がつきます。

そこで、さらに踏み込んでお聞きしたいんですけれども、本県の義務的経費の読み込みというのが、一般的な原則よりもさらに踏み込んでいるなと思えるのは、いつも人件費足す公債費といった形で読み込んでいっているように思われます。それを考えますと、団塊世代がこれから大量退職するんだと、大量という言い方はまるで人を頭数でしか考えていないから余り使いたくないんですけれども、団塊という言い方もそうですが、仕方ありません。とりあえず、この委員会のみんな言っていますから。退職手当がふえていって、人件費がふえていくのではないかという懸念、予測といったものが、それこそあちこちで県庁の中で語られるわけですけれども、果たして本当にふえてしまうのか、あるいはそれに対してどう考えているのかといった点についてどうですか。

二見人事課長:    人件費の将来推計につきましては、今言った退職手当だけでなくて、職員数ですとか平均職員の給与の単価、ここをそろえて推計いたします。まず、第一の要素である職員数の見込みでありますが、これはあくまで想定になるわけですけれども、一般職員は平成22年度に向けて400人の削減という目標をとって進めております。警察職員は当面増減なしという見込みでありまして、教育職員は児童・生徒数の増に伴って若干の職員の増員が必要と考えております。そうすると、緩やかに増員が必要といった状況であります。

 一方で、第二の要素であります平均給与の方でありますが、これは職員の大量退職が数年続くということと、給与構造改革の効果が数年持続するといったことがありますので、毎年単価が少しずつ減少していくというふうに見込んでおります。ここまでで、職員の増と給与単価の減が相殺し合うような形になりまして、給与費総額はほぼ横ばいとここまでは言えます。

 さらに、もう一点、退職手当の要素をここに加えてみますと、退職手当につきましては、今年を含めて3年間がピークと見込んでいます。これは、900億円を超える額が必要ですが、それを過ぎますと徐々にわずかではありますが減少に転じていくというふうな見込みであります。

 そして、以上の3要素を総合しますと、人件費の見込みとしては、大抵はピークのここ数年間はほぼ横ばい、それを過ぎると、わずかに退職手当の減少に伴って人件費総額も減っていくと、こういう見込みでございます。

松崎:    つまり、整理しますと、ここ数年間は人件費について高くなっていくけれども、その後については緩やかに少しずつですけれども、減少の見込みがあるということでありました。

そうすると、もう一つ先ほど申しましたけれども、人件費プラス公債費でこれは考えていくスタンスであるということからすれば、公債費の今度は抑制について、いよいよポイントになってくるのかなと思うわけであります。

 そこで、財政健全化への基本方策を見ましても、平成18年度には830億円というふうになっていますが、平成20年度には1,250億円、そして平成21年度には1,350億円と急激に増加ということを見込んでいるわけであります。つまり、人件費を抑制しても、かえって義務的経費は増加するというのがどうも現状であります。県債発行抑制の取り組みということは、本会議場でも何度も繰り返し聞くわけですけれども、この公債費のふえ方を見れば、これまでの取り組みが実は甘かったのではないかと思わざるを得ません。もっと県債発行の抑制の取り組みを強力に進めるべきだったのではないでしょうか。 この点、率直なお考えがあればお聞かせください。

中島財政課長:    県債の発行を大幅に抑制すれば、これは当然公債費も大幅に抑制することができるという関係にあるのは事実でございます。しかしながら、県債の発行を急激に抑制するということは、その財源として使っている投資的な経費、この投資的な事業も急激に落とさなければいけないという関係にございます。そうした場合に、毎年度、毎年度で対応すべきいろいろな財政需要に十分こたえ切れないというような面が一つございます。そのために、後年度負担には当然配慮しながらも、県民生活への影響をなるべく抑えていく、最小限に抑えていくということで掲げた目標が10%目標であり、1,400億円の目標であるということでございます。

 ここに来て、確かに公債費が急激に増加してまいりました。これは、バブル崩壊後の大量の景気対策のために発行した県債の償還が非常に重くのしかかってくること、それからもう一点は、平成13年度から始まった臨時財政対策債、これの償還も本格的になってくること、このようなものがございます。一度借り入れているのは事実でございますから、その分償還をここでは義務的にしていかなければいけないというのは確かでございますけれども、ただ一方でこの急増をこれから先何とか抑制していくというために、県債発行の抑制をこれまで取り組み、そして今後将来にわたって公債費を抑制していこうということで、プライマリーバランスの黒字化や、県債の残高を減少させていくという、こういうような目標を掲げて取り組んでいくというように今努めているところでございます。

松崎:    今、お答えの中にもありましたけれども、ここでまさにそのプライマリーバランスの黒字化という目標が登場するわけですよね。もう一回確認しますけれども、このプライマリーバランスの黒字化という目標というのは、これ自体どういう意義があるんでしょうか。

小野資金・公営事業組合担当課長:                プライマリーバランスと申しますと、世代間の受益と負担のバランスを示す指標でございまして、プライマリーバランスが赤字ということは、過去の県債の返済額以上に県債を発行している、つまり一言で申し上げますと、借金してその年の財政需要を賄っているということになるわけでございます。今の世代が、税などをみずから負担している以上の受益を受けている状態にあることを示しているというものでございます。ただし、例えば大きな箱物をつくったですとか、その年々の財政需要などによりまして、一時的に県債の発行額が大きくなることもございますので、プライマリーバランスが赤字になることは、必ずしも悪いとは考えてございません。

しかしながら、本県の場合、全国に先駆けまして県債の発行抑制に取り組んでまいりました結果、公債費は相対的に低く抑えられておりまして、これが本県のプライマリーバランスが黒字に転じていないという要因ではありますものの、本県におきましては平成4年度以来、プライマリーバランスの赤字がずっと長く続いている状況がございますことから、したがいまして、公債費負担が増大しているということがございますので、義務的な経費でございます公債費の抑制を目的といたしまして、プライマリーバランスの黒字化を今度は目標に掲げさせていただいたというところでございます。

松崎:    今の答弁を伺っていて、非常に気になる点があります。それは、平成4年度以降という点なんですけれども、現世代に配慮するために、聞きようによっては将来世代に負担のつけ回しをしてきたけれども、必ずしも悪いことではないというふうにも聞き取れるわけです。それは、つまりモラルハザードじゃないんですか。

中島財政課長:    ただいま御答弁申し上げましたように、確かに平成4年度からプライマリーバランスは赤字が続いております。この平成4年度がどういう時期だったかということですが、バブル経済が崩壊いたしまして、国、地方を通じて景気対策として、これは公共事業等追加を次々に行い始めた時期でございます。本県も、この平成4年度以来、県債をかなり大量に発行して景気対策に取り組んでまいりました。当時、急激な景気減速局面にありまして、税収自体は非常に大きく落ち込んでくる時期ではありましたけれども、公の役割として、県民生活を支えている事業、こういうものもやはりしっかりとやっていかなければいけない、しかもこういう事業はそれ自体が将来にも受益がある事業でございます。そのために県債を発行して取り組んできたということは、これは必要があったものではないかと考えております。

 もう一点、平成13年度からの臨時財政対策債、こちらは本来一般財源として措置されるものが、これは借金でかわりにやれというような形の制度でございました。この臨時財政対策債については、今本県は公債費に充てておりますけれども、もしこれを発行抑制した場合には、その分公債費のために一般財源を充てなければいけない。そうしますと、例えば介護・措置・医療費など、そういう一般財源でやっている事業をその分抑制をするような影響が出てくる、そういう大きな懸念がございます。そういう意味で、この臨時財政対策債をいろいろな削減をした上で、さらにこれを削減すると、抑制をするというのは、なかなか難しかったという面が一つございます。しかしながら、だからよかった、しようがないというようなつもりは一向にございません。

 やはり、県債発行の抑制をしていかなければいけない、そのために平成9年度から計画的に発行抑制というのに取り組んでまいりました。こういう努力をしてきた結果、ようやくここに来てプライマリーバランスの黒字化というものが実現可能な目標としてなってきた、これまでの取り組みの結果として具体的なこういう目標を挙げるところまで来たというふうに考えておりますので、次はこの目標を着実に達成するように頑張っていかなければいけない、そのような認識でおります。

松崎:    今、答弁の中で着実にというお言葉があったんですけれども、私はやはり平成22年度なんて悠長なことは言わずに、一刻も早くプライマリーバランスの黒字化を明確に目指すべきではないかと考えている一人であります。

平成18年度なんですけれども、プライマリーバランスは、当初予算時点では640億の赤字だった、それが最終予算では82億の赤字まで圧縮したと、これは既に聞いていますけれども、平成18年度決算のそれでは最終的なプライマリーバランスの状況はどういうものでしょうか。

小野資金・公営事業組合担当課長:                平成18年度決算におきましては、税収の増等がありまして、最終予算からさらに県債は20億円抑制できました。できたために県債は1,045億円、これに対しまして公債費が985億円でございましたので、プライマリーバランスは60億円程度の赤字まで縮小することができたという状況でございます。

松崎:    幾ら圧縮したといっても、赤字であることにかわりはないと思うわけです。平成4年度以降、積もり積もった、いわば将来世代に対する負債というものを少しでも減らすべきだと私は考えていますが、まずそれでは目標としている平成22年度末には、本当にプライマリーバランスの黒字化を達成できるんでしょうか。

小野資金・公営事業組合担当課長:                9月の定例会、総務企画常任委員会でお示しさせていただきました平成22年度の財政収支見通しでございますけれども、その中では平成22年度末までにはプライマリーバランスは黒字化する見込みとなってございます。ただ、その前提といたしましては、施策事業の見直しですとか、人件費の抑制などに徹底的に取り組むということ、それからそれとともに、県税収入が予定どおり順調に伸びるということなど、さまざまな高いハードルがあることも事実でございます。ただ、将来にわたって持続可能な財政運営を行うためには、プライマリーバランスの黒字化が喫緊の課題であるというふうに私どもは認識しておりますので、平成22年度末のプライマリーバランスの黒字化の達成という目標に向けまして、全力で取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

松崎:  さまざまな高いハードルがあるんだけれども、全力で取り組んでいきたいというお答えであります。そういう答弁をお聞きすると、もう一歩踏み込んでお聞きしますけれども、やはりここは平成22年度末ということを言わずに、もうそこはもし余地が少しでもあるんだったら、可能な限り前倒しを図るべきだというふうに思うわけです。かなり取り組みは見込める状況に変わってきているというニュアンスの答弁がずっと続いていますから、ではお聞きしますけれども、発行抑制の取り組みなんかを一層強めて、目標を前倒しで達成することはできないのでしょうか、お伺いします。

中島財政課長:    大変難しい課題だなというのが、今の率直な気持ちでございますけれども、先ほど答弁も差し上げました、平成22年度末のプライマリーバランスの黒字化自体も、実はこれまでの取り組みに加えてさらにやるということからしますと、これはかなり大変な取り組みをしていく必要があるというふうには認識しております。

お尋ねのプライマリーバランスの黒字化の前倒しということを考えましたときに、今回の健全化の基本方策、ここで掲げた財政推計を上回って税収が伸びていくとか、またはいろいろな発行抑制とか施策事業の見直し、人件費の抑制とか、こういうものをさらに上回ってそれをやっていくというようなことが必要になってこようかというふうに思っております。このようなものが実際にできて、初めてその高いハードルを越えた上で、具体的に前倒しというのが視野に入ってくるんだろうなというような状況が率直なところでございます。

 しかしながら、財政健全化というのは、これは本県財政を今後考えるときに、非常に重要な基盤となるものだという認識でこれから取り組んでまいりたいと思っておりますから、財政当局としては、このプライマリーバランスの黒字化を1年前倒しにするぐらいの強い決意を持って、今後の取り組みを進めていきたいと、そのように考えております。

松崎:    最後のところで、1年前倒しまでも、とにかく頭の中に入れて取り組んでいきたいという答弁があったことを、非常に私は注目いたしております。  それで、これは要望ですけれども、これまでの財政当局の県債発行抑制の、この取り組み自体は評価いたしますが、将来世代に対して負債を負っているということについて、これはもう職員の皆さん、そして我々も含めて意識を持って、今までのようにその年度がよければよいと、極端に言えばですが、そういう意識を捨てて徹底的な行政、行財政の改革を進めて、さらに取り組みを強化することによって、プライマリーバランスの黒字化をぜひ前倒しで達成していただきたいというふうに思います。