平成19年11月13日神奈川県議会決算特別委員会での質疑のまとめ

○ 薬害C型肝炎問題への県と県立病院の対応について

松崎:    民主党・かながわクラブの松崎淳でございます。きょうの我が会派の総括質疑を行わせていただきたいと思います。

 何点か伺っていきたいことがあるんですけれども、まず最初に、薬害C型肝炎に対する県の対応についてお聞きしたいと思っています。

 血液製剤フィブリノゲンの投与によりましてC型肝炎に感染した患者による薬害C型肝炎訴訟に関する報道が、いまや連日のようになされているところでありまして、申すまでもありませんけれども、C型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる肝臓の病気、このC型肝炎は、ウイルスに感染すると7割の方がC型肝炎ウイルスの持続感染者、いわゆるキャリアとなり、放置していると当人が気づかないうちに慢性肝炎、肝硬変、肝がんと命にかかわる疾患に進展するおそれがあります。

 もっとも、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれておりまして、慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いために、感染に気づかずに症状を悪化させてしまう場合が少なくないと言われており、この点は大変大きな問題となっています。特に、血液製剤の副作用が明らかになった後も、規制を怠った国の法的責任ももちろんですけれども、平成14年に厚生労働省が製薬会社から報告させた副作用報告書のうち418人分について、C型肝炎に感染した疑いが強い個人の特定につながる可能性があるにもかかわらず放置されていたことが、大変問題視されております。

 そして、厚生労働省は平成16年12月に、フィブリノゲン製剤が納入されていた医療機関名を公表し、これらの医療機関でフィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性があると思われる方に対して、C型肝炎ウイルス検査受診の呼びかけを行っております。

 ただ、ここで社会問題となっている薬害C型肝炎については、本県がどのように対応したのか、ここについてやはり県民も大いに関心があることと思います。そこで、この平成16年12月の医療機関名公表以降、もちろん平成18年度も含めてでありますけれども、何点か関連して伺ってまいります。

まず、その前に今までの私の方で調べさせていただいた点を何点か申し上げます。

 平成16年の厚労省によるフィブリノゲン製剤の納入先、医療機関名公表、これによって、神奈川県内において該当する医療機関というのは324の医療機関があったということでございます。そして、当時存続していた医療機関が、このうち252軒であるのに対して、廃院となっていたものが既に50軒あり、そしてさらには名称、所在地等の記載が一部しかなくて特定できない医療機関が22軒もあったということであります。そして、この公表自体はフィブリノゲンの投与を受けた可能性のある方に対して、検査の受診を勧めることが主たる目的であったということであります。その公表されたリストの中に県立病院が含まれておりまして、病院事業庁所管の県立病院といたしましては、足柄上病院、それから衛生看護科専門学校附属病院、今の汐見台病院、それからこども医療センター、がんセンター、そして循環器呼吸器病センターの五つの病院だということでございます。

 そこで、まずお伺いしますが、こうした平成16年12月のリストの公表後、各県立病院の患者から相談や問い合わせがあったと思うわけですけれども、相談等に対して具体的にどのように対応したのかお聞きします。

髙橋県立病院課長:            元患者からの御相談がありました場合には、医師がカルテ等の記録を確認するとともに、最近の健康状況もお聞きしながら相談に対応したところでございますが、まず1点目として、フィブリノゲンの投与の有無にかかわらず、病院の検査記録等によりC型肝炎ウイルスの陰性が確認された方々には、受診の必要がない旨をお答えいたしております。また、カルテあるいは病院にある記録から、血液製剤のフィブリノゲンを使用したと確認できる方、あるいはカルテの記録は残っていないけれども、フィブリノゲンの使用記録や検査記録が確認できない、そういうような方で本人のお話などからフィブリノゲンの使用や輸血をしたと推測される、そういう方々についてはC型肝炎ウイルスに感染した可能性がございますので、保健所等による検査受診を勧めたところでございます。

松崎:    実は、今まさに県立病院の方では緊急にといいますか、このC型肝炎に関して調査を実施していらっしゃるようであります。個別の病院について、どういう状況であるのかということはなかなかわかりにくいわけですけれども、こうした調査が行われるというのは、私の知る限りでは全国でも余り例がないのかと思っております。

 そこで、ちょっとお聞きしたいんですが、各県立病院に平成18年度も含めまして寄せられた相談等の件数と、そのうち実際にフィブリノゲンを投与していた件数がどうなっていたのかお聞きします。

髙橋県立病院課長:            まず、平成16年12月に公表されたわけですが、その当時各県立病院に寄せられた相談の件数は、合計で220件でございます。内訳でございますけれども、こども医療センターが172件、がんセンターが27件、循環器呼吸器病センターが11件、足柄上病院が10件でございます。

 なお、附属病院、現在の汐見台病院につきましては、当時は照会がございませんでしたが、本年度1件の照会がございました。合計で221件ということになってございます。

 相談があった中で、実際にフィブリノゲンが投与されていた方は、こども医療センターの耳鼻科で1件、これは組織を接着させるためにフィブリノゲンを使用しておりまして、ただこの方は1998年に使用された方なので、C型肝炎ウイルスの不活性化がされた後の方ということで、特に大きな問題はなかったという認識をしております。それから、その他は血液製剤のフィブリノゲンの投与はございませんでしたが、こども医療センターではかなり輸血が多くあったということで、委員御案内のとおり輸血による肝炎感染ということもございますので、これらの課題についてはC型肝炎の抗体検査を行うよう勧めたところでございます。

松崎:    今、お答えの中に、輸血の方、輸血がなされていた患者さんの数、件数に触れるようなお話があったんですけれども、件数を把握しておられれば、それについてもお伺いします。

髙橋県立病院課長:            こども医療センターで御相談があった172件のうちで、輸血をされた件数42件ということで、その診療科別ということでございますが、心臓血管外科が23件、外科が13件、それから脳外科、整形外科が各2件、新生児科、血液科が各1件となっております。

松崎:    相談があった方々の中の件数といいますか人数だと思うんです。そういう点でいうと、非常に今の報告といいますか調査の結果というのは、重大な内容を含んでいると思わざるを得ないわけですが、そこでお聞きしますけれども、検診の受診を勧めたということは、厚生労働省が言ってきたことに沿った対応であったと思うんですけれども、その後、どのようにフォロー、追跡調査なりなされていますか。

髙橋県立病院課長:            当時の厚生労働省の方の依頼は、元患者から照会があった場合に、それに適切に対応するようにということでございます。私どもも、フィブリノゲンだけではなく、輸血をした方々も含めて肝炎の可能性のある方については、保健所で受診をするようにという形でお勧めしております。といいますのは、当時の状況では保健所が一番診察料が安かったということもありまして、受診を勧めたわけでございまして、その後についてのフォローは当時しておりません。

松崎:    当時とおっしゃっても、平成16年12月以降ですから、当委員会のこの平成18年度決算の時期も含めてということに当然なってくるわけでありますけれども、今報告のあった中では、件数が明確であります。そういたしますと、今からでも追跡調査といいますかフォローといいますか、それは可能なのではないでしょうか。

髙橋県立病院課長:            現在ですが、この11月7日に厚生労働省の血液対策課というところから、各医療機関の長あてにフィブリノゲン製剤を投与された方々にするお知らせ等についてという協力依頼が出されたというふうに伺っております。まだ、県立病院の方からは、そういった通知が届いたという連絡がございませんので、そういった情報が入っているわけです。その中で、医療機関の方には、カルテのほか手術記録や分娩記録などの写しが残っている場合には、可能な限りでフィブリノゲンが投与されたかどうかを調査いただきたいという。その結果、平成6年以前に血液製剤のフィブリノゲン製剤を投与された元患者の方々が判明した場合には、その方々にお知らせして肝炎検査の受診をお勧めいただくことと、それから、その患者からのお問い合わせがあったときには、可能な限り情報提供いただくこと、そんな通知が出てきております。

 先ほど、委員お話しの42名の血液を投与した方々も含めて、今フィブリノゲンについてできる限りの調査をということで、国の方から実はそういう通知も来ておりますが、実はフィブリノゲンの納付先として公表された今五つの病院のうち、例えばカルテを永年保存しているこども医療センター、これは現在23万7,000件のカルテを保管しております。これを全部調べるということになりますと、カルテを調べますので医師が日常の診療業務の中で調べるということになりますから、相当大変な作業になるというふうに考えております。今後、各県立病院とよく調整をしながら検討してまいりたいと考えております。

松崎:    今、私がお伺いしたのは、その23万件のカルテという前段で、御相談があった方々があって、200人以上があって、そうした方々について、輸血した方々が42名であるということがこどもセンターでわかっているならば、そうした方々について今フォローはしていないけれども、今後フォローは可能ではないですかとお聞きしているんですが。

髙橋県立病院課長:            実は、当時カルテで相談をした、その相談票をカルテに張りつけて保存をしております。一部は、何名かの方はお名前もわかっているところでございますので、よくこども医療センターと調整してできるところから取り組んでまいりたいと考えております。

松崎:    今、一方ではお話がありましたけれども、こども医療センターについてカルテについては、永年保存しているというお話がありました。そういたしますと、今、厚生労働省から今月の7日ですからつい最近ですけれども、なるたけとにかくフォローしてもらいたいという要請があるようですから、さかのぼっていくこと自体は可能なんですね、件数というよりは。

髙橋県立病院課長:            カルテ23万件全部調べるということは、相当細かいですので、どうやっていくのかなというのは、正直言って大変苦慮しております。また、カルテの中に多分手術せんが添付されているわけですが、その際に輸血ということと、フィブリノゲンの投与ということが同時に記載されているかどうかということについては、これは全部調べてみないとわからないというところもございます。いろいろ、医師の方からお聞きするところでは、こども医療センターでは輸血をしてなおかつフィブリノゲンを投与した場合には、そういったことをきちんと記載しているというようには聞いておりますが、それぞれの個々のドクターがどういうふうに対応したかということになりますので、これを全部しっかり調査しないとわからないというところがあります。

 それから、もう一つは、お聞きしている限りでは、こども医療センターでフィブリノゲンを相当使ったというような記憶は、個々の先生にお聞きすると、そんなに多くはないのかなと、そういう中で23万件全部調べるということが、非常に医療をやりながら医師がどこまでできるかということは、現実問題としてあるんだろうというふうに理解をしています。

松崎:    ここは、平成18年度決算の委員会ですから、ちなみにという形でしかお伺いできないのかなというふうには思っているんですけれども、さはさりながら人の命にかかわる重大な問題でありまして、平成18年度自体、実はこの取り組みを既に行っていたということでありますのでお聞きするわけです。

今、お聞きすると、23万7,000件のカルテがあるんだと、それをチェックするのは現実問題として困難が伴うというようなお話があったんですけれども、一方で厚生労働省自体は既に28万人の追跡調査を行うという方針を示しているわけでありまして、そうした点からすると、やはりC型肝炎全体とすれば300万人ということでありますが、対応をとっていかなければいけないという状況もあるかと思います。

今、県立病院のお話を踏まえて、かつ本県としてどういうふうに取り組んでいくのか、保健福祉部長の方で考えがあれば、特に受診率の向上、あるいは早期発見等も含めてお聞かせいただきたいと思います。

吉川保健福祉部長:            ただいま委員のお話がありました、この肝炎問題、生命にかかわっていくという重要な課題であると、私ども認識してございます。

そこで、私どもの取り組みとしましては、まずはきちっと肝炎についての、いわば病気の内容ですとか、あるいはそれに対する対処の仕方ですとか治療等含めて、正しい認識、知識を持っていただくということが大事だということで、平成16年度当時相談窓口を開設し、それからまた肝炎であるかどうかということについて、きちっと受診をしてもらうと、検査をしてもらうと、こういった対応をしたところでございます。

その後につきましても、平成18年度、実は大きな柱としては今言った相談あるいは受診の呼びかけとなるわけでございますが、そのほかに例えばシンポジウムをやったり、あるいは講演会なんかで周知したり、これは各保健福祉事務所でもきちっと取り組んでいただくというような形で、実績もございます。私どもとしましては、今後とも引き続きこうした取り組みをして、少なくともそういった肝炎についての正しい知識を持っていただいて、早期に受診していただく、それがある意味では健康回復の一歩となるわけでございますので、そうした取り組みを引き続きやっていきたいと、こういうふうに考えております。

松崎:    今までの取り組みを引き続きということでありましたが、やはりいっとき平成16年12月に大きな問題になった時点で、検査を受ける方がふえたけれども、平成18年度に至っては非常に低調であったという報告も伺っているところであります。一方では、事柄の重要性にかんがみて、県立病院では異例ともいえる調査を行っておられる。ということは、やはりこどもセンターはこどもセンターなりにやっぱり子供たちに投与したのではないか、あるいは輸血した後どうなったかということを、非常に心配しておられるんだと思います。私も心配している一人でありますけれども、今、保健福祉部長がおっしゃったように、やはり人命にかかわる大きな問題であるということに変わりはありませんし、それから製薬会社が報告させていた副作用情報というものが放置されていた点から、この業者に対するある種の不信というものを、県民の少なくない方が抱いているようにも、私は心配しています。 薬害肝炎患者の救済を第一に、それからもっと言うと、C型肝炎そのものに対する取り組みの強化という中に、それを位置づけていくことという2本の柱をもっと明確にして、踏み込んで対策を平成18年度よりも19年度、平成19年度よりも20年度というふうに高めていっていただきたいということを要望させていただき、次の質問に移ります。