平成19年11月13日神奈川県議会決算特別委員会での質疑のまとめ

○ 財政の自立の観点から見た財政運営について

松崎:    財政に関して、もう一点触れてまいります。それは、財政の自立の観点から見た財政運営についてであります。

 この点につきましては、平成18年度決算を見ますと、県税収入の大幅な増収を受けて、自主財源が1兆1,439億円ということでありますから、前の年度と比較して690億円も増加して、そして歳入全体に占める自主財源の比率も7割近くに達しているということがございます。これに、平成19年度から本格的に実施されている税源移譲の暫定措置と言えるこの所得譲与税の1,638億円を超えたものが本当の意味での自主財源と言えると私は思いますけれども、まず確認の意味で、平成18年度において県税に所得譲与税を加えた額は幾らになるんでしょうか、お聞きします。

納谷税務課長:    平成18年度決算におけます県税収入額、これは1兆658億余万円ございます。所得譲与税、今お話のありました1,638億円、これを加えますと合計で1兆2,297億余万円でございます。平成17年度に対して、1,858億余万円増加しております。

松崎:   それでは、その後平成19年度で所得譲与税、これが廃止されまして、そして本格的な税源移譲が実施されたわけでございますが、現段階での税収の見込みを、この委員会の設置されている部分でもありますけれども、平成18年度とそれでは比較すると、実質的な税収はどのくらいの増加となっているんでしょうか。

納谷税務課長:    平成19年度の現段階での税収見込み、9月現計予算ということでお答えさせていただきます。平成19年度の9月現計予算額でございます、これは県税収入で1兆2,557億余万円となっておりまして、これは税源移譲分が含まれたものになってございます。ここから、先ほど申し上げました平成18年度に決算におけます県税収入プラス所得譲与税1兆2,297億余万円を差し引いた額、これが約260億円となります。この額が、実質的な増収額というふうになろうかと考えております。

松崎:    そういたしますと、言われているほどというか、思われているほどには、実は平成19年度の実質的な税収は、思ったほど伸びていない、そしてこの実質的な税収増加額の中には、税源移譲に伴う増収分と、それからもう一つはいつも出てきますけれども自然増収分が含まれていると思うわけです。そうしますと、それぞれどのくらいになるんでしょうか。

納谷税務課長:    ちょっと繰り返させていただきますと、所得譲与税は平成18年度で廃止されましたので、平成18年度に交付を受けまして1,638億余万円、これは平成19年度になくなります。平成19年度は本格的な税源移譲が行われましたので、その分、その税源移譲の分が9月現計予算ベースでは1,769億余万円と見込んでおります。したがいまして、この1,769億と1,638億、差し引きました130億余万円がいわゆる税源移譲されたものに係る平成19年度の増収分と、このように考えられると思います。

 先ほど申し上げました、実質的な税収増加分260億円がございます。これに今の130億円を差し引きますと、残額も約130億円ということになります。ただ、この130億円の中には、定率減税の廃止などのいわゆる税制改正による増収額ですとか、水源環境保全のための超過課税による税収額、このいわゆる制度改正による分が含まれておりますので、これらを差し引きますと、いわゆる9月現計予算における税収見込みの内容といたしましては、県税収入全体としては、結果として自然増収というのは見込めていない状況になっていると、こういう状況でございます 。

松崎:    非常に、一般的に財政の話をするときに、自然増収というのは大抵の場合にはあるもの、所与のものとして見込んでいる場合が多いわけですけれども、今お聞きすると、その自然増収が見込めないというお話であります。それでは、なぜ見込めないのか、その伸びがなぜ見込めないのかお聞きします。

納谷税務課長:    増収が期待できない主な要因といたしましては、まず法人2税でございますけれども、企業収益は引き続き増益基調で推移するというふうな予想もございますが、本県におきましては主力の自動車関連、これが乗用車の販売不振などによりまして大幅に落ち込むというようなことで、法人2税全体としては、ほぼ前年並みにとどまるだろうという予算ベースの見込みになってございます。その他の消費関連税目につきましては、例えば乗用車の販売不振を背景といたしました自動車2税、これが伸び悩んでおりますし、地方消費税につきましても、輸出に伴います還付額の増加などから、これもなかなか伸びが見込みにくい状況になっていると。したがいまして、9月現計予算までの姿としては、県税収入全体としては伸びが見込めない状況になっているということでございます。

 ただ、これはあくまで現計の予算ベースでございます。今後の見込みということになりますと、若干予算額に対しては法人税収等中心に、若干多少の増収が期待できる場面もあるのかなと、これは先行き今後の話になりますので、多少不透明な予測でございます。

松崎:    税務課長から、そのように先行きに関して、若干でも光があるんだというふうにお答えをいただけるということは、ある意味ちょっと心強いんですけれども、ちょっとだけですよね。

 一方で、地方交付税もこれはもう言うまでもありません、減少しているところでありますが、平成18年度の交付税と平成19年度ではどれぐらい差があるんでしょうか。そして、その差を入れると、税収の増収額はどのくらいと言えるでしょうか。

中島財政課長:    平成18年度の本県への地方交付税でございますけれども、646億余万円でございます。このうち、普通交付税が640億余万円となっておりますので、平成19年度の普通交付税は既に216億余万円という交付決定がなされておりますから、平成18年度との差額でいきますと、マイナスで424億余万円という形になります。普通交付税の減収幅は、先ほどの実質的な税の増収260億円を逆にマイナスの面で上回っているということになりますので、これを差し引きいたしますと、逆に約160億円のマイナスというような形になっております。

松崎:    わかりました。

 これまで、税源移譲に伴う税収の影響額などを、るるずっと確認をしてきたわけでありますが、一言で言えば、税源移譲による大きな増収は期待ができない、そして財政自立というにはまだ遠いというのが現状であろうかということであります。三位一体の改革というものを踏まえて、こうした本県の今の財政の現状について、どう認識していますか。

中島財政課長:    税源移譲を含めた実質的な税収増が見込めないという、歳入面での状況がございます。かえって、大幅なマイナスだという状況でございます。歳出面の方に目を転じてみますと、税源移譲がありまして、国庫補助負担金の改革がセットでやられました。これの中には、例えば国民健康保険の県の負担の導入だとか、介護給付費の負担金に県費負担の割合が増になるとか、裁量の余地のない義務的な経費の増加というのがございました。こういうようなことがありましたの、三位一体の改革に対して、これは地方の裁量の余地が拡大したわけではない、かえって国の歳出の抑制に使われてしまったという厳しい地方からの評価があるという状況になっております。

 加えまして、実は三位一体の改革とこの同時期に、社会保障制度改革というものもなされました。これは、一例を申し上げますと、都道府県と政令市等の関係でございますけれども、障害者の自立支援法、今まで大都市特例というのがございましたが、政令市等についても新たに県が一般の市町村と同じように負担するような制度になりました。このための義務的な歳出増というのもかなり大きく響いてきていると、そんな状況にあります。こうした介護・措置・医療関係費、平成17年度以降非常に大幅に伸びております。本県の歳出に占める義務的な経費の割合は、非常に大きいというふうに先ほども答弁いたしましたけれども、これがこの先もどんどん膨らんでいくような要素がございますので、そういう面では財政の硬直化という点で非常に懸念をしているということでございます。

松崎:    一方では、社会保障制度そのものの持続可能性ということも考えていかなければいけませんし、ましてや年金に対して税を入れていくんだなんていう議論も、これは与野党問わずあるわけでありまして、この点のところについては、きょうはそれ以上踏み込みませんけれども、しかし一方で本県の財政的な自立ということを考えますと、それなくして地域主権、あるいは本当の意味での神奈川らしい県というものをつくっていこうということが成り立っていかないわけであります。

そこで、お聞きしますけれども、あえてお聞きしますが、そういった厳しい状況の中で、それでは義務的経費の抑制について、どのような取り組みができるのかお聞きします。

中島財政課長:    大変難しい課題であると、国の制度がいろいろと変わってまいりますので、それによって都道府県の負担が非常に大きくなってくると、そういう制度の改革というものの影響をもろにかぶってくるという面が1点ございます。

 しかしながら、やはりこの義務的な経費のうち介護・措置・医療関係費というものは、これは国の制度として決められているものもございますし、また県民生活に直接影響のあるものですから、これを削るということは基本的には難しいと。そういたしますと、やはり本県独自で取り組んでいけるもの、その義務的な経費をできる限り抑制していくということが、やはり財政自立に向けてのポイントになろうと思います。そういう意味では、先ほど来も御答弁いたしましたけれども、人件費の抑制、公債費の抑制、ここについてはみずからの努力でやっていける余地がございますので、なかなかそれを一遍にということは難しゅうございますけれども、引き続きこの点については強力に取り組んでいくということが最大のポイントになろうというふうに思っております。

松崎:    そういたしますと、さっき縷々お伺いしたプライマリーバランスの平成22年度の達成目標というものを、1年前倒しまで含めても取り組んでいきたいという話と、今のこの本県の財政的な自立ということは、実は根幹のところで全く表裏一体といいますか、そういう状況であると思うわけです。そうしますと、独自に取り組むことができる義務的経費の抑制に努める、しかし一定の行政水準は維持する、そして安定的な税収の確保、そしてさらに自律的な財政運営へと向かっていこうとする中で、先ほど自民党のしきだ委員の質問の中にも、この法人2税、そして今の説明の中にも法人2税、これ特に地方法人2税の部分についてお聞きしますけれども、配分見直しを国が検討していると、地域間格差の是正のためであると、そして大都市と地方の知事の間で意見が割れていると、そして八都県市の首脳の会議の中でも大きな議題となったということが、けさ新聞報道なされているわけでありますが、この点についてそれでは本県として、朝日新聞の記事なんか読むと、本県のスタンスが明確に出ているわけです。バツと書いてありますけれども、ただバツだと、バツの数が多い、少ないということだけが報道されている現状は、私はちょっとそれでは物足りないというか伝わっていかないのではないかと危惧しているんです。

そこで、お聞きしますけれども、もっと踏み込んで、そしてまたポジティブに、ネガティブな話にポジティブにといっても大変ですけれども、でもそこでも考えていただきたいわけです。本県税収の増加と安定を図りつつのそういったことも含めて、どういう取り組みを考えていくのかお聞かせください。

納谷税務課長:    昨今、地域間の税収格差を是正する方策として、お話しのように取りざたされております法人2税の配分見直し、この論議でございますけれども、これは地方の法人2税と申しますのは、応益負担、負担分離の原則という地方税の根幹的な原則がございます。この地方税の原則を無視した議論でございますので、これにつきましては断固反対するということともに、やはり格差是正というのは本来地方交付税の復元充実をもって対応すべきであるということでございます。私どもはそういった主張をしておりますし、それは国に要望しておりますし、今後ともそういう主張は続けていかなければならない、このように考えております。

 三位一体の改革によりまして、国から地方へ3兆円規模の税源移譲がなされましたけれども、国と地方の事務配分を考えますと、移譲の規模というのはまだまだ不十分でございます。事務配分に見合ったさらなる税源移譲が必要であると。ですから、そのためには、それと安定性を備えた税体系にしていくということが必要でございます。消費税から地方消費税への税源移譲ですとか、あるいは所得税から個人住民税へのさらなる税源移譲、こういった税源移譲によりまして国と地方の税源配分をまずは5対5にしていくとともに、偏在性の少ない安定的な税体系の構築に向けた抜本的な見直しを図っていただく、これが必要であると考えております。そういう趣旨で、今後とも県内市町村や関係団体とも協力しながら、引き続き強力に国の方に要請していきたい、このように考えてございます。 松崎:    余り繰り返しになるような要望はあえて申しませんけれども、きょう委員会で答弁をいただいた内容についてきっちりと、粛々とではなくて情熱を込めて取り組んでいただきたいということを要望して、次の質問に移ります。