平成20年8月20日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<「次世代高性能電池技術・拠点集積」について>

松崎       ●  今朝、神奈川新聞に「次世代高性能電池技術・拠点集積」という記事が掲載されていたが、これに関連していくつか伺いたい。

 脱温暖化に貢献する産業の集積については要望の中でも、特に力を入れて取り組むようにお願いしてきたところである。

すでにリチウム電池、太陽光発電の技術が県内に集積しつつあり、EVの普及を県として図っていることから、自動車業界に限らず新エネルギーに関し広く各種の業界が県内に立地をしていると見聞きしている。

  まず確認の意味で伺うが、こうした新エネルギー関連企業のインベスト神奈川の活用状況はどうか。

答弁要旨               ○ リチウム電池や太陽光発電などの新エネルギー関連産業の活用状況については、本年5月19日に日産とNECの合弁会社である「オートモーティブエナジーサプライ(株)」が座間市にEV用リチウムイオンバッテリー製造のための本社・工場、研究所を設置するということ、同日に「オートモーティブエナジーサプライ(株)」に電極を供給する「NECトーキン(株)」が相模原市に工場を設置するということ、本年7月3日に「昭和シェル石油(株)」が厚木市に太陽電池の量産化に向けた研究所を設置するということ、で申請をいただいている。お話のあった新エネルギーに直接関係するのはこの3件である。

ただ、日本ゼオン(株)、(株)アルバックのような素材産業、製造機の製造メーカーにもインベスト神奈川を御活用いただいており、先ほど申し上げたような新エネルギー関連企業にこうした企業が支援して、集積の効果がさらに上がっている 。

松崎       ● 県は、脱温暖化や新エネルギーという分野に明るいという印象があるが、技術的な評価として、県はどのように考えているのか伺いたい。

答弁要旨               ○ 電気自動車、太陽電池などに関連する技術として、電気を集める蓄電技術や、動かすためのモーターとそれをコントロール、制御するパワーエレクトロニクスと呼ばれる技術がある。

蓄電技術としてリチウムイオン電池関係については、東工大、横浜国大、神奈川大、東京工芸大など、県内大学で先進的な研究をされている先生方がおり、神奈川には先進的な高いポテンシャルがあると考えている。

松崎       ●産業集積という意味で潜在力があるということで、そういうポテンシャルを高めていくために先ほどお話に出た7大学を含む技術連携を推し進めていくものと思うが、県は何を何処までどのようにかかわっていくのか、どのような役割を果たしていくのか、伺いたい。

答弁要旨               ○ 産学公連携を後押しするため、県に先進的な技術が集積しているということについて周知していくことが1つの役割だと考えいる。

先進的技術を周知するという意味で、来週8月25日、リチウムイオン電池研究会フォーラムを産業技術センターで行う。今日締め切りとなっているが、今のところ150名近くの申込があるということで、非常に注目されている。

このフォーラムでは、先ほどお話に出た大学の先生や、「インベスト神奈川」で誘致したオートモーティブエナジーサプライという電池をつくっている企業の方から、先進的技術についてお話いただき、県が技術交流の場をつくっている。

リチウムイオン電池については、横浜国大、日産自動車、県産業技術センター、そして中小企業として、横浜国大の元教授が社長を務めているKMラボが共同でリチウムイオン電池の新しい材料開発や評価を進めているところである。

また、パワーエレクトロニクスについては、横浜国大、産業技術センター、KASTが中心となり、電気自動車に合った制御システムなど、世界一の”電費”を目指した共同開発をすすめているところである 。

松崎       ● 世界一の電費か。

答弁要旨               ○ 電費である。普通のガソリン車では燃費と言うが、電気自動車ですので、1キロワット時当たり何キロ走るかという値で電力消費率ということで、電費と言っている。ガソリン車で言えば、燃費の一番良いものをつくろうということになる。

松崎       ●それを目指しているのは神奈川県か。

答弁要旨               ○ KASTが研究プロジェクトのリーダーとなり、横浜国大と産業技術センターを中心に推し進めているものだが、このプロジェクトに参画する企業に研究開発を進めてもらう。

松崎       ● KAST(神奈川科学技術アカデミー)が横浜国大らを中心とするプロジェクトを提案し、3年かけて世界一の電費の電気自動車を実現させようというものか。

答弁要旨               ○ そのとおりである。

松崎       ● 「神奈川R&Dネットワーク構想」における大企業から中小企業への技術移転や中小企業技術の活用などの取組とあわせ、県内の新たな雇用創出も、ゆくゆくは考えられているということか。

答弁要旨               ○ まだ、研究開発段階であるが、プロジェクトが成功した暁には、産業としての広がりもできるし、電気自動車の普及にも役立つと考えており、県内の仕事対策と経済の活性化に結びつくものと考えている。

リチウムイオン電池そのものの生産については、大企業でしかできないわけだが、そこに使われている部材、部品については、中小企業の力が大きな役割を果たすと考えており、うまくコーディネートしていきたいと考えている 。

松崎       ● このような新エネルギーに関わる企業に対する企業誘致の取組はどのような状況か。

答弁要旨               ○ EV、電気自動車は裾野が大変広い分野であるので、中小企業を含めた地域経済の活性化に大きく貢献するものと考えている。

また、太陽光発電などの新エネルギー関連産業は長期的に大きく成長する分野であろうと考えており、本県が将来的に持続的に活力を失わないためには大変重要な分野であると考えている。

そこで、今年度の企業誘致の行動目標「企業誘致戦略2008プロモーション300」の中で、「新エネルギー・EV等の脱温暖化に貢献する産業」の集積に特に力を入れて置いて取り組んでいる。

具体的には、先ほども申し上げたとおり、モーターや電池の電極技術などのコア技術を持っている企業を分野ごとにある程度リストアップし、こうした分野を担う企業に対して優先的にアプローチを行っている。また、最近、EVや新エネルギー関連の情報がかなり新聞記事を賑わしているので、これらを元にして、すぐにアプローチをする等々の取組を進めている 。

松崎       ● 例えば実際の企業の動向で、あと一歩遅かったら、この企業は誘致できなかったというような事例はあったか伺いたい。

答弁要旨               ○ 企業は我々の方に最初にアプローチすることもあるし、既存の県内企業の場合は地元の市町村にまず相談するということもある。

タイミングや誠意、そして具体的な支援策といったものをタイムリーに企業に提供していくということが必要と考えている 。

松崎       ● こうした企業が県内に集積することで、本県経済も高度化、活性化を促進することができ、こうした流れを更に加速させる必要があると考える。

例えば、サービス業なども引き続き必要がある訳だが、特に、脱温暖化に貢献する企業の誘致、新エネルギーなどは大変有望である。

ただ、課題として、インベスト神奈川、R&D構想、いずれも平成21年度で終了する。

そこで、インベスト神奈川やR&Dの取組の終了後について、現時点でどのように考えているのか伺いたい 。

答弁要旨               ○ 県外からの企業誘致や県内企業の再投資は

施設建設に伴う県内企業の受注増加、税源涵養、雇用の場の確保・創出などの面で、大変重要なことであると認識している。

また、産業構造が日々変化して行く中で企業が発展していくためには、経営戦略上、継続的に設備投資をしていかないと、持続的な活力は出てこないと考えている。

こうした認識のもと、まずは21年度までインベスト神奈川を一生懸命やる、1社でも多くの企業の投資を呼び込む取組を進めなければならないと考えている。

そして、インベスト神奈川終了後の取組については、これまでの成果、あるいは産業全体の状況や県の財政状況等を踏まえながら、皆様から御意見をいただき、あり方について検討してまいりたいと考えている。

また、「神奈川R&Dネットワーク構想」については、「インベスト神奈川」による集積効果を県内産業の活性化につなげようとするものだが、平成21年度末にこの構想を推進している神奈川R&D推進協議会が終了する。

今後、平成22年以降については、構想を推進する何らかの体制を考え、引き続き、これまで行ってきた取組につなげていきたいと考えている。このために、現在神奈川R&D推進協議会のメンバーとなっている13社に対して、引き続き活動していただきたいと働きかけるとともに、残り1年と7ヶ月の間に成果のある活動を進めていきたいと考えている 。

松崎       ● 「神奈川R&Dネットワーク構想」、「インベスト神奈川」の期限終了後も基本線は変わらないだろうと思う。産学公の公の役割を見える形で示していただきたい。

産学公の連携が本格的に動きだしたということは、神奈川県にとって好機だと思う。産業クラスターというものは、名前ばかりが先行するきらいがあるが、県で実際に動き出している新エネルギー分野での産業クラスターというのは、これからの県の産業、未来を決定づける大きなポテンシャルを秘めていると考えられる。

「神奈川R&Dネットワーク構想」、「インベスト神奈川」の終了後については、こうした新エネルギー分野等に配慮していただき、持続可能性に着目した検討をお願いしたい。