平成20年10月8日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<東アジアを中心とした国際観光客誘致について>

松崎       ● 来年の3月に富士山静岡空港が開港するという、静岡県もアジアを重視しているようであるが、便数は少なめかなという気もする。隣県静岡のことですから、本県西部には、やはり一定の観光客の入り込みも新たに期待が持てるのではないかと私は思う。また、2010年10月末には羽田が再拡張・国際化することになる訳ですが、こうしたインフラ整備について、課題はありますが、しかし、開港する、再拡張がなされるということは確実な訳です。その際、就航路線先にも関係しますが、やはり、東アジアからの外国人観光客が大幅に増加してくるのではないかと予想をしている訳です。大勢の方々がこういった予想を既に持っていると思います。そうすると、そのことに対して、本県として観光戦略、あるいは来年は条例でしょうか、これを打ち立てていく訳ですけれども、この東アジアからの大幅な増加が見込まれる外国人の観光客に対して、どのように、戦略を打ち立てていくのか、考え方というものを是非、お伺いしたいと思っております。

そこで、まず、具体的に、富士山静岡空港、それから国際化後の羽田空港において、海外からの利用者数、特に東アジアですね、どのくらい見込んでいるのか、伺いたい。

答弁要旨               ○ まず、富士山静岡空港につきましては、現在就航要請中の路線も含めて、計画の中では32万人を見込んでいるとのことです。現時点で確定している路線は、韓国・ソウルとの1日1往復が就航表明されている状況です。

次に、国際化後の羽田空港の見込みについてですが、国際線につきましては、昼間の時間帯、朝6時から22時までの時間帯で、700万人程度の旅客数を見込んでいる状況です。

松崎       ● 特に東アジアについて、何か考えていたり、人数の予測を立てているということはありませんか。

答弁要旨               ○ 東アジアからの人数をどれくらい予測しているか、ということなんですが、この数値につきましては、国別の目標数値、ビジット・ジャパン・キャンペーンで1,000万人にして、特に東アジアについては力を入れていくという考え方で進めております。その国が、韓国を筆頭に中国、香港、台湾といったところを東アジアとして中心に取り組んでいく。

松崎       ● お答えの中で、ざっくりではあるけれども東アジア重視なんだと、ビジット・ジャパンのプロモーションは世界的にやっている訳ですけれども、特にアジアだと、またアジアのお客さんの呼び込みというのは我が国だけではなくて、マレーシアなんかも猛烈にやってますね。シンガポールも猛烈ですね。香港もやってます。東アジアでお客さんの奪い合いをやっているという状況があると思います。

 そこでお聞きしたいですが、我が国として、東アジアに対しては、どういう誘客活動をやってきたのか、ご存じの範囲でお聞かせいただければと思います 。

答弁要旨               ○ 国は、訪日外客数1,000万人を目標に取り組んでおります重点市場は、12の国・地域を重点市場として誘客活動をしてきております。県としては、東アジアの韓国、台湾、中国、香港等を、外客誘致のメインターゲットとして、海外観光展への出展、メディア・旅行会社を対象とした招聘による視察ツアー等を広域連携で取り組んできた。

具体的な取組としては、羽田空港の再拡張・国際化に伴う点では、神奈川県、横浜市、川崎市の三団体で共同で羽田国際化のPRに努めています。これはメディア・旅行会社の招聘をして、県内の視察をして、旅行会社においては旅行商品化、旅行雑誌については、それを記事にするということでございます。

それから、本年4月には、山静神の三県知事が共同で中国・上海市を訪問し、観光トップセールスを行ったところです。

松崎       ● つまり、本県としても、横浜、川崎、また県内の市町村とも協力をしながら、積極的に

来てください、便利になりますから、神奈川に是非どうぞということを、海外に出かけていって、実際に東アジアのお客さまを誘致しようということで、積極的に活動を続けてきたところだという訳でありますね。

そうすると、その目論見どおり、その考え方どおり、観光客が実際に富士山静岡空港、そして羽田を使ってどんどん神奈川へ来るということを想定しなければいけないと思う。そうすると、今度は、実際に地域において、韓国の方、中国の方、マレーシアの方、シンガポールの人、シンガポールは華僑の方も多いですが、イスラム教も非常に影響がある、マレーシアもそうです。インドネシア、中国の方もそうだと思いますが、いろいろな人たちが来る。その受け入れの体制は整っているのか、ということを次に取り上げさせていただく。

 例えば、外国人観光客が駅や、あるいは、羽田以降の乗り継ぎで、ターミナル部分での観光案内所等の対応というのは、韓国語で聞かれてきます、中国語で聞かれてきます、マレー語で聞かれてきます、インドネシアの言葉で聞かれます、あるいはブルネイの言葉で聞かれてきます。といった場合に、対応がきちんとできるように、今、整っているのでしょうか、あるいは、整っていないとすれば、どうやって整えていく考えか 。

答弁要旨               ○ 受入体制整備の中の一つの、外国人観光客に対する観光案内所についてどうなっているかというご質問ですが、一定の基準を満たした観光案内所を「ビジット・ジャパン案内所」と命名して指定している。

この「一定の基準」とは、一つとして、外国人観光客受入れに積極的な地域であること、二つ目に外国語対応が可能であること、三つ目には、対面式案内であること、四つ目に外国語パンフレットを常備している、このような条件のもとに、現在、ビジット・ジャパン案内所、略してV案内所と改名し、現在、全国で220ヶ所を超える案内所が指定されています。

本県には、横浜駅、新横浜駅、桜木町駅、鎌倉駅、箱根湯本駅などの、多くの外国人観光客が訪れるであろう、あるいは訪れているターミナル駅に案内所として設置している。現在、その数は9月までは県内には10箇所でしたが、新たに、この10月1日から、小田原駅観光案内所がV案内所として指定を受けたことから、全部で11箇所となっている。

この観光案内所につきましては、本県を訪れる外国人観光客の数から考えますと、県内の案内所の大半が英語対応のみとなっております。主要ターゲットである韓国、中国など、東アジアの観光客に対して、まだ充分な対応が取れていないことも現実であります。

現在、この対応を考えますと、箱根町の総合観光案内所、これは箱根湯本駅にありますけれども、こちらが、英語、韓国語、中国語の対応ができるスタッフを配置している。そして、横浜では、テレビ電話通訳システム、いわゆるコールセンターを利用して、独自に横浜市が契約をして、韓国語、中国語が対応できるようにしている。

委員ご指摘のとおり、今後ますます、東アジアから誘客をしていく、同時に増えていくという中で、現在、この案内所に対する県としての対応が直接的にはできておりません。

ほとんどJNTO直接の対応になっておりまして、一つだけ、かながわ屋の中にありますV案内所、これが県直接に運営している案内所であります。県内の連絡会等を作りながら、充実に努めていく必要があると認識している。今後、受入体制の中の重要な部分の一つとして捉えて、案内所の充実に取り組んでまいりたいと考えている。

松崎       ●是非、取組みの強化をお願いしたい。ただ気になるのは、やはり戦略本部を設置し、そして次は条例を作ろうとしている本県で、しかも重視しているのは東アジアだとはっきりしていて、知事を含めて、日本から渡って、中国に出かけて行ったりしている中で、来てくださいと言いながら、実際に来てみたら、本県としては政策の一貫性というか、体制の整備というのが、他の団体にお願いもしていないという状況では、およそ観光重視の政策だと、あるいは東アジアともっと交流を深めていくと言っていけないと思うので、是非とも、仕組みをどういうふうに作るのかということを、まず、自分の手元のところで考えていただいて、それから連携だと思うのです。初めから、こちらはやっていないが連携だけ取るんだということでは、お願いベースの話しでしかない、決定権も予算も向こうにあるということでは困ります。

それで、一つこれは実際に関係する方々から、繰り返し声が届いていることの一つに、通訳案内士制度というものが法律であるんですね。実際に全国版の通訳案内士というのが免許に近い、独占みたいな業務であって、有償つまり対価を得てやっていい通訳案内というのは、この通訳案内士に限るということなんですけれども、本県でこの全国版の通訳案内士の方というのは何人くらい、いらっしゃるのでしょうか

答弁要旨               ○ 通訳案内士につきましては、本県は1,662名です。

松崎       ● 外国から年間何人くらいの観光客の方が本県に来ていらっしゃいますか。

答弁要旨               ○ 推計の調査しかありませんけれども、2006年ベースで138万人という状況です。

松崎       ● 1千人台の方々で130万人台の方々を案内するのだから、非常に難しかろうということは想像に難くないところです。この通訳案内士だけが業としてやっていいということですが、そうすると他はボランティアということになります。シティガイド等、いろいろな方がいらっしゃいますが、海外からの観光客がこれから、羽田の国際化もあって大幅に増えてくる、東アジアからも誘致活動を一生懸命やっている。それでは、旅館やホテルなどで中国語や韓国語の研修ももっと強化しなければならないということになってくる訳ですが、一方で、ごく限られた全国レベルでの通訳案内士という業としてやる方と、それから後はシティガイドのボランティアみたいな、この2極化された極端な通訳案内体制というものの、実は間をとって、地域限定での通訳案内士をできるという制度になっているということを聞くのですが、神奈川県では現実、神奈川版の通訳案内士制度というものはやっていますか。

答弁要旨               ○ 現在、実施はしておりません。

松崎       ● 現在、実施していないということでありますが、神奈川版の通訳案内士というものを中間の位置づけとして認めていくことにより、いわば、神奈川を訪れてくれる多くの観光客、にとって、より便利になっていいことではないか。どうでしょう。

答弁要旨               ○ 今ご指摘の地域限定通訳案内士制度の前に、昭和24年にできました通訳案内士法があり、それに基づく通訳案内士、これは国家資格になっております。今現在、この2つの制度がある。

通訳案内士についてですが、通訳案内士は報酬を得て、海外からの観光客向けに外国語で観光案内を行うことを業として行う者を通訳案内士としております。これは、今申し上げました通訳案内士法による国家資格でございます。

この「通訳案内士」の制度の目的は、海外からの観光客に日本の情報を正しく伝えて、我が国への適切な理解・良好な印象を促していくために設けられた制度です。

次に、お尋ねの「地域限定通訳案内士」についてですが、「外国人観光旅客の来訪地域の整備等の促進による国際観光の振興に関する法律」、いわゆる外客誘致法の改正によって、この「地域限定通訳案内士」の制度が平成18年4月に創設された。

この改正の目的は、地域によっては通訳案内士が不足している状況の中、2010年までの訪日外国人数1,000万人を目標とするビジット・ジャパン・キャンペーンを展開する上で、語学の堪能なガイドが多数必要となることから、各地域の判断で外国人旅行者の受け入れ体制を整えることが出来るようにするためです。

この「地域限定通訳案内士」は、制度を導入した都道府県で試験を実施して、その合格者は、当該都道府県の範囲でのみ報酬を得て通訳案内業務を行うことが可能な地域限定通訳案内士として登録を受けることが出来る。

そこで、全国の導入状況ですが、通訳案内士制度を導入したところは、平成19年度に静岡県、岩手県、長崎県、沖縄県の4県、さらに、本年20年度は北海道、栃木県の2道県が導入したことから、現在、6道県で地域限定通訳案内士を導入している。

松崎       ● 詳細な解説、ありがとうございました。本県でも、この制度を是非導入すべきだと思いますが、どうですか。

答弁要旨               ○ 本県がこの通訳案内士を導入すべきだとのご指摘でございます。将来的にはその必要性を感じていますが、神奈川の通訳案内士は、実は全国で2番目に多い1,662名。最も多いのは東京都の3,737名。1都3県の合計の人数は、約7,000名。これらの方が全国どこでも案内ができる通訳案内士です。

本県のみでなく、周辺の東京都や静岡県等も含めて広域的に活動できる通訳案内士に対して、先ほども申し上げましたが、地域限定通訳案内士の活動範囲はその県、単県のみになります。資格の活用が難しく、受験者数を継続して見込み難い。要するに、やる以上は毎年、受験者の希望があるということが条件になっている。しかしながら、今後のことを考えると、ニーズは当然ありますが、実は現行の通訳案内士制度の課題もある。

例えば、通訳案内士は更新制となっていない。一回合格して通訳案内士として登録すれば、生涯有効な資格として事業を行える。2つ目は、通訳案内士の登録が能力証明として利用されており、必ずしも登録者全てが通訳案内士としての活動をしていない。活動実態も行政として把握が非常に難しくなっている。事業として生計を立てる通訳案内士と、市民ボランティアによる地域の通訳ガイドとの棲み分けという課題もある。更新制がないということで、今後、地域限定通訳案内士制度については、地域限定制度固有の課題のほか、いま申し上げた現行の通訳案内士制度が抱えている問題が残っているので、こちらの方も一方で解決していく必要がある。県として把握だけはできているのですが、その人たちがどの位活動できているのか、生計を立てられている人がどの位いるのか、全く掴めていない状況にある。今後、市民ボランティアとの役割分担など、広域連携を通じて、制度の見直しも含めて働きかけていく必要があると認識している 。

松崎       ● お言葉を返すようですけれども、これについて導入してはどうですか、ということを、前にもお話しをしたことがあって、その時には考えてもいないという話しだったものですから、そうすると考えていなかった訳で、そうすると実態が分からないのは当然ですね。逆に言えば、実態をきちんと把握していないところに問題を感じます。と言うのは、例えば、有名な観光地があります。そうした所を市民ボランティアの方々に案内してもらう。各自治体の関係の観光協会がやる。その時に、例えば弁当代を払う。あるいは交通費として実費をお支払いするというところまで含めて、例えば1日2千円をお支払いしたということに関して、県当局なのか県の観光協会なのか分からないけれども、県の方から、その2千円を払うのはとんでもないと、それは至急もう1回戻してもらえと、そういうことまでやっているという話しを聞くんです。これから東アジアを含めて観光客をたくさん誘致してこようとしている時に、ボランティアと通訳案内士の棲み分けなんて言われるけれども、現実には、交通費すら出ないような世界で、何がボランティアでこれから大勢呼び込んできたお客さんに対して、やってくださいベースで対応できますか。一方では、免許としての独占みたいな部分を認めていくということを国がやっている訳ですけれども、これに対して更新がなくて問題ならば、更新をするように変えてほしいということを、県として国に対してもの申すべきではないですか。そういった点からすれば、改善点があるならば、それを明白にして、国に対して要望すべきですし、それから、県として観光戦略を打ち立てると、本部まで作ったというのであれば、これに関して、どういうふうに人の手当をするのかということを、資格制度の問題に限定しないで、きちんと打ち出すべきでしょう。そこのところについて検討しているのかどうか、そこをお聞きしたいと思います。

答弁要旨               ○ 今、観光振興にあたって、いろいろな課題が見えてきている。この振興条例を制定していく、あるいは基礎調査をしていく。これらを機に、今後の振興計画を進めていく中で、国際観光戦略をどうしていったらいいのか、あるいは宣伝戦略をどうしていったらいいのか、検討していかなくてはいけないと考えている。

今ここで、具体的に通訳案内士の制度をどうしていくのか、国際観光戦略の中で受入体制整備というのは検討しなければならない重要な課題です。神奈川県としても、大変遅れてきたところですので、特に受入体制整備に重点をおいて、今後は取り組んでいく必要があると考えている。

したがいまして、いろいろな課題はもう1度、今までやってきたことを踏まえて、今後、検討する中で、県としての姿勢を明らかにしていきたいと考えている 。

松崎       ● 地域限定通訳案内士だけにこだわって、ものを言っている訳ではないので、そこのところは県の方でよく検討していただきたいし、将来的に必要性を認めるという言い方で議会答弁をしたということは、一体、将来的というのは、いつのことを指しているのか、必要性を認めるなら何故やらないのか、せめて、検討は今日からでもできるのではないか、ということを最後に申し上げて、質問を終わります。