2009年2月定例会での本会議代表質問

<質疑と答弁のまとめ>

民間の知恵と活力について

●松崎  

(1)まず、NPOと連携した特別支援教育の推進について伺います。

統廃合により児童がいなくなった並木第三小学校の校舎を仮校舎として、県立金沢養護学校が平成19年度に開校し、続く20年度に隣接する富岡東に本格開校しました。

校舎が完成するまでの1年間でしたが、金沢養護学校は、地域の皆様に温かく迎えられました。

例えば、体育祭や文化祭の際に、地区の自治会や民生委員・児童委員など多くの方がボランティアで参加し、行事を支えました。

私を含む地域住民の心に今も刻まれていること、それは、かつての並木第三小学校の関係者が、大人も子どもも、こぞってボランティアに参加したことです。

保護者たちが学校の周りの草取りを行いました。

旧並木第三小学校防災委員会の呼びかけで、かつてこの小学校で学んでいた子どもたちが参加する少年野球チームや少年サッカーチームのみんなが、総勢300名で校舎の清掃を行いました。

そして、このような関係が、他の場所に校舎が移っても続いています。

このように、市民が、自分の住む地域の学校づくりに参画し、汗を流し、子どもたちが真に必要とする支援を地域一体となって提供すること、こうしたことが障害のある子どもたちの成長につながっていくのではないでしょうか。

県内各地域においては、すでに様々な市民活動が組織されておりますが、その中には、障害のある子どもたちの生活を支援することを目的とし、そのための様々なノウハウを蓄積しているNPO法人も多数存在しています。

障害のある子どもたちが、充実した学校生活を過ごし、健やかに成長し、そして、それぞれが希望する形で、自立と社会参加を実現していくことを支援するために、私は、地域の力、とりわけNPO法人を活用した学校支援が必要と考えています。

●そこで、教育長に伺います。

障害のある子どもたちへの適切な支援のためには、子どもたちの発達段階に沿って、その時々に応じた様々な支援が必要だと考えますが、特別支援学校における教育の推進にあたり非営利の市民活動、NPO法人を活用していくことについて、どのようにお考えか、ご所見をお伺いします。

○教育長                教育関係について、お答えします。

NPO法人と連携した特別支援教育の推進についてお尋ねがございました。

障害のある子どもたちの自立と社会参加に向け、各特別支援学校では、これまでも日常の教育活動に加え、病院や児童相談所、ハローワークなど、関連する各機関と連携した取組みを行ってまいりました。

 しかし、特別支援学校に通う児童生徒数の増加や、障害の多様化などの課題がある中、金沢養護学校のように、地域のボランティアの協力を仰ぐとともに、今後は、様々なノウハウや専門性を有するNPO法人の力をお借りして、子どもの発達段階に応じた支援に取り組んでいく必要がございます。

具体的には、入学前の支援として、例えば、障害のあるお子さんを初めて育てる保護者のために、NPOから専門家を講師に招いた研修会の実施や、NPO、県民からの政策提案事業でございますが、入学後、障害のある子どもが放課後に充実した時間を過ごすことができるよう、NPOと協力して、特別支援学校を活用したモデル事業を実施し、子どもの活動の場の確保を図るなどの取組みを、新たに進めてまいります。

 また、卒業に向けましては、これまでも特例子会社で構成するNPOと連携して行っている、就労支援に関する取組みをさらに拡充してまいります。

このほかにも、NPOと連携した取組みには、さまざまな可能性があると考えておりますので、県教育委員会といたしましては、今後、NPO法人などとの協力を強め、障害のある子どもたちが生き生きと学び、自立して社会参加ができるよう、支援の充実に努めてまいります。

以上でございます 。

●松崎   (2)次に、行政システム改革における民間活力のさらなる活用について伺います。

行政改革の手法としては、英国やニュージーランドをはじめとする欧米諸国では、赤字財政や公的債務が肥大化してきたことを受けて、民間企業で活用されている経営理念や手法を、可能な限り公共部門へ適用することにより、公共部門の経営革新を図ろうとする取組みがあります。

我が国においてもそうした流れを受けて、独立行政法人の設置や施設整備に係るPFI手法の導入などが進められ、一定の効果を収めてきたと受け止めております。

私は、企業経営の手法を取り入れ、行政全般を民間企業化して合理化を図ることが、本県の行政システム改革の目的であるとは考えておりませんが、個々の行政サービスの提供に民間のノウハウを取り入れて、業務の効率化や経費の抑制を図っていくことは、財政再建に取り組む上で不可欠であると認識しております。

一方、近年は、地方公共団体の公の施設の管理における「指定管理者制度」の導入や、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」の制定に伴う官民競争入札の実施など、民間事業者のノウハウを活用する制度が創設され、民間活力の活用を推進する環境が整えられています。

また、こうした動向と相まって、従来は行政が担うものとされてきた公的サービスの分野において、NPOや企業等といった多様な公的サービスの担い手が、活動を展開しております。

現在、県が実施している業務のうち、許認可事務等を除く行政サービスの中には、私の目から見ても、引き続き県が責任を持って行うべきと考えるものがありますが、民間が担った方がサービスの向上が期待できる、あるいはコストを削減できると思われるものも少なからずあります。

●そこで、知事に伺います。

県では、行政システム改革基本方針の取組項目の1つに「民間活力の積極的な活用」を掲げており、この未曾有の財政危機を乗り切るためには、これまで以上に民間活力を効果的に活用していく必要があると考えますが、そのためにどのような取組みを展開していくつもりなのか、お伺いします。

○知事  

 次に、行政システム改革における民間活力の効果的な活用についてのお尋ねであります。

本県では、簡素で効率的な行政運営を実現するため、県が担ってきた公共サービスを民間が提供することにより、サービスの向上やコストの節減を図ることができる場合には、できる限り民間に委ねるという基本原則のもとで、民間活力の活用を推進してまいりました。

例えば、本年度の新たな取組みとして、保育士試験の業務を県が指定した民間機関に移譲したほか、自動車税コールセンターの運営業務、さらに県営住宅の家賃や県立病院の医療費の未収金の回収業務について、民間委託化を行ったところであります。

一方、現在、県が直面している未曾有の財政危機を乗り切るためには、これまで以上に民間活力を、積極的に活用していく必要があります。

そのためには、民間委託化等に向けた事業の選定や実施方法の検討を、行政サイドだけで行うのではなく、県民や事業者に提案や意見を求めて、幅広く検討していくことが効果的であると考えております。

そこで、来年度からの新たな取組みとして、「県民参加型公共サービス改革モデル事業」をスタートさせることとしております。

具体的には、「民間委託化の効果が見込まれない」、あるいは「適した事業者が見当たらない」などの理由から、県が直接担っているサービスについて、事業の概要や経費などをホームページに掲載し、県民や事業者から、民間が実施する場合の具体的な提案や意見をいただく仕組みを整備いたします。

そして、いただいた提案や意見をもとに、民間委託化の可否を検討するとともに、民間委託化が可能と判断される業務については、競争入札やプロポーザル方式により、最も適した事業者を選定し、民間活力の積極的な活用を推進してまいります 。

●松崎   (要望)

民間の知恵と活力についてのところにつきましては、新たに新年度、県民の皆様の参加をいただく形の中での新たな事業の展開というようなことをご答弁いただきました。

ぜひとも、民間委託ありきとか、あるいはまた、すべてを民間企業のようにしてしまおうとか、そういうような発想でないのでありますが、しかしながら、今の状況下で、しかも神奈川力を、民の力を結集をして、神奈川を良くしていくんだという思いの中で、ぜひとも推進を図っていただきたいと思います。