平成22年3月3日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

中小企業対策:<子ども産業への取組について>

松崎       ● 子ども産業、子どもを取り巻く産業への取組ということで何点か伺いたい。

先ほどの答弁の中でも、神奈川は人だと、人材育成だ、ということがあった。資源の少ないわが国は、人が宝である、人材育成こそが神奈川県の資源、一番の基本だと思っている。

昨日、政府の予算が衆議院で可決され、参議院に送付をされたので、この年度のうちに、一般会計92兆円の予算を含む政府予算は成立をすることが確定的となった。

そこで、連日報道されているのが、子ども手当ということもあり、これの持つ影響というものを、極力客観的に分析していく必要があると思っている。該当する世帯へ、本県で子ども手当が交付されるということになると、今後かなりの予算が投じられるということになってくる。

児童手当も存続をしているので、それを組み込んだ形での22年度は、子どもさんお一人当たり月額1万3千円ということであり、子どもの育成に関わりのある業界、企業等にとっては、業績を伸ばす一つのきっかけになっていくのかな、と思っている。

まず、子どもを取り巻く産業について、県はどのように把握しているのか。

産業活性課長       ○ 子どもを取り巻く産業につきまして、特に定義づけて動向を把握しているということはございませんが、子どもを取り巻く産業という観点で捉えますと、例えば、「育児関連の業種」ですとか、学習塾や習い事などの「教育・学習産業」、遊園地や映画館などの「娯楽・レジャー産業」、子供服などの「ファッション産業」、ゲームソフトなどの「コンテンツ産業」、さらには、学資保険などの「子ども向け保険事業」、こういったものが子どもを取り巻く産業と言えるのではないかと考えております。

松崎       ● 子ども料金を設定しているというものでいくと、電車とかバスとか、航空機、航空産業、映画、そういうものがすぐ思い浮かぶが、子ども手当をどう使うか、ということについて考えると、子どもを取り巻く産業という観点から範囲が非常に広いわけで、逆に言うとこうした産業への需要みたいなものがどのように見込めるのか。

産業活性課長       ○ 子ども手当が実際に、お金として使われるということになれば、ただ今申し上げたような、あるいは、今おっしゃられたような様々な産業にビジネスチャンスが生まれる可能性があるのだろう、と考えます。 

 しかしながら一方で、支給された子ども手当の使い道と言いますか、使われ方につきましては、神奈川新聞の報道によりますと、「使う」と「貯蓄する」という2通りございまして、教育費に充てるという声が多い一方で、生活費に充てるという声もあったという報道がございました。

 また、ある民間の調査会社の調査結果でございますけれども、子ども手当の使い道のトップは、「子どもの将来のための貯蓄」という回答が半数に達し、次いで「塾代」ですとか、「授業料等の補填」となっております。

 また、別の調査会社の調査では、年収が1千万円以上の家庭では、「学校教育費以外の教育費として使う」との回答が多かったということですが、年収が300万円以下の家庭では、「家族の生活費に使う」との回答が多かった、という調査結果が出ています。 

 こうしたことから、子ども手当が実際にどのように使われるのかということにつきましては、制度が開始されてみないと本当のところはわからない、ということだと思います。 

子ども手当の産業への需要の見込みについては、手当制度が実際に始まって動向がどうなっているのか、よく見極める必要があると考えています。

松崎       ● 制度は4月から始まって、6月には第1回の支給が行われて、それは4月、5月分、次が10月で、6、7、8、9月の4ヶ月分、その次が2月でまた4ヶ月分、というくくりである。

 22年度については、12ヶ月分のうちの10ヶ月分が支払われる。

 毎月1万3千円ということであるので、年額トータルすると、15万6千円ということであるが、実際にその支給を受けるであろう本県の子ども達、その金額のトータルはどれくらいの規模なのか。

産業活性課長       ○ 本県の22年度ということで申し上げますと、支給対象者が約120万人いると言われておりますので、10ヶ月で計算しますと、

1,560億円程度になると推計されます。

 また23年度以降につきましては、仮に年額2万6千円とすると、3,700億円程度になるだろうと推計されます。

 ただし、児童手当が支給されておりますので、この額がいくらかというところは正確に把握しておりませんが、荒っぽく申し上げますと、22年度に関して言えば、子ども手当ができたことによる増加分という意味では、1千億円程度になるのではないかと見込まれます。

松崎       ● 22年度が1,560億円、次の年度で3,700億円というのは、相当に大きな、金額ベースで見れば規模ですよね。

貯蓄に回すって方もアンケートのお答えでは半数くらいおられるということですが、逆に言うと、半数くらいの方は教育費なり、生活費もあったが、消費する。

 そこで、県内で是非消費していただきたい、できれば県外からの消費も呼び込むということも必要と思うが、どう考えているのか。

産業活性課長       ○ トータルで考えればかなりの額が支給されるということですから、それを実際に使っていただいて経済効果を生む、ということが、私共としても望ましいことだと考えています。

そうした意味で、子どもを取り巻く産業分野で成長ができる可能性があるだろうと考えます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、実際にどのような使い道、あるいは貯蓄されてしまうのか、本当のところはよくわからないということもございますし、またもう一つ扶養控除の一部もこの手当の支給を機に廃止されるといった要素もございますので、実際にどのような経済効果を生んでくるかということは、なかなか難しいと考えております。

 そういった意味でもよく見極める必要があろうかと思います。県内にお金が落ちるということは最も望ましいことでありますが、そういったところがよく見えないということもございますので、まずは、来年度に予定しております「産業構造分析調査」、これは、本県の産業構造の分析ですとか、今後の成長産業について調査をしていくものでありますが、そういった調査の中で、子どもを取り巻く産業の状況ですとか、今後の成長の可能性についても調査できないか、検討したいと現在考えております。

 そうしたことを踏まえて、さらに具体的な何か対策が取れるのか否か検討する必要があると考えております。

松崎       ● 子ども手当について、かなりの手当が県内に落ちるということは、想定として見込まれる。そういう意味では、是非とも県内の消費を促す、それから、できれば県外からも消費を呼び込むという努力は必要であると思う。

それからもう一つは、県内の企業に投資を呼び込むための方策ということも、県として検討していく必要がある。

 子どもに関して、そういった産業が将来的にも有望な産業となるということを考え、かつ新たな市場、子ども市場とでも言うべきマーケットがいずれできていく可能性が高いということからすると、マーケットができればそこに投資がついてくるわけで、産業構造そのものにも影響を与えていくと思っている。

 産業振興の分野は、高齢の方々に対するサービス産業であるとか、あるいは母子関係であるとか、あるいはこういった子どもに関する産業であるとか、様々ある。そういう産業の振興、あるいは産業構造の転換、競争力の強化といった点についても十分目配りの利いた施策を打っていっていただきたいと思うが、如何か。

産業活性課長     ○ 子ども手当そのものもそうですが、現在少子高齢化が全国的に進んでいます。たまたま本県の場合には、転入人口が多いということで増加が続いておりますけれども、私の住んでいる地元でも、子どもの数が減ってきておりまして、例えば学習塾が撤退をして、子どもの多い新興住宅地に移転した、といった事例を見ておりますので、そういった社会動向というものが経済産業構造にかなり影響を与えると実感しております。

子ども手当もそうですが、例えば人口の減少、いずれ本県も人口の減少に転ずるわけですが、そういったことが今後止まるのか、どうなっていくのかは、産業構造を考える上で大きな要素となってきます。

 成長を考えるときには、そのマーケットの大きさと技術、技術革新と言いますか、2つの要素があると思いますけれども、技術革新そのものは現役の世代が頑張って進めていくということになりますが、将来のマーケットがあるかないかということは、産業としてそれに取り組むかどうかのインセンティブとしてもだいぶ違ってまいりますので、そういったことも注視しながら、県としてどう取り組んでいくのか、十分考えていく必要があると思っております。

松崎       ● (要望)まず、ものづくり産業の高度化だが、この部分に関しても、神奈川版の成長戦略、あるいは神奈川版のニューディールという政策が深く関わってくる。

 それからもう一つは、子ども手当を一つの契機として、世代に対する様々な産業の集合ということが、また同時に、それは、ご高齢の方々に対する様々な産業振興ということも対となってもっと出てくるだろうという部分についても、しっかりとした取組をお願いしたい。

 もう一つは、中小企業に対する支援というものについても、ものづくり産業の高度化、やはりここの部分をしっかりとやっていく、いよいよまったなしに本格的に取り組んでいっていく、その真っ只中にあるという認識を持っているので、格段の取組の強化を要望します。