2013年3月4日 

文教常任委員会質疑応答要旨

○世界遺産登録推進と北条氏の金澤文庫から持ち出された第1級資料について

松崎:    緊急財政対策の県有施設の見直しに、今の県立金沢文庫が項目としてあがっている。見直しの具体的な方向としては、「現行運営の継続」ということで、受ける印象は、現状維持ということである。

 一方、金沢文庫は、本県として、世界遺産登録をめざしているところの「武家の古都・鎌倉」という大きな目標に、ずいぶんと深い関わりも持っている。それに関しては、この委員会資料の15頁に、世界遺産登録に向けてのいろいろな取り組みが記述されている。

 さらに、17頁には、「社会教育施設のマグネット化」があり、金沢文庫において「武家の古都・鎌倉」の世界遺産登録の特別展示会などを開催していくという記述がされている。

 そこで、聞きたいのは、基本的な方向は、もちろん是とするが、わが会派としても、他の会派の多くの議員と同じように、登録を推進する議連に役員を出しており、実際、登録に向けて、国、地方を問わず、一貫した取組みをこれまでしてきた。

 ただし、気になる点がある。それは、県立金沢文庫というものと、それから、北条氏が創設をしたところの、元の金澤文庫という両面から考えていかなければならないが、それをどのように世界遺産の中に位置づけていくのか。

 そこで、元あった金澤文庫というのは、本来、非常に稀有な資料を集めていたと思うが、主に徳川家康などによって、ほとんど持ち出されたということである。本来あった資料というのは、今、どこにあるのか 。

文化遺産課長:  金澤文庫に収蔵されていた書籍類は、「金澤文庫本」と呼ぶが、鎌倉幕府の滅亡後は、称名寺が引き継いでいる。その後、松崎委員ご指摘のように、徳川家康が一部を持ち出して以降、散逸が著しくなった。家康は、持ち出した「金澤文庫本」を江戸城内の富士見亭文庫、のちに紅葉山文庫と呼ばれるが、そこに収めた。その後、そこからさらに、尾張徳川家、水戸徳川家、加賀前田家などに譲られ散逸していったということである。

 現在の県立金沢文庫には、殆ど称名寺関係の約13,000点の古書類が保管されおり、散逸した「金澤文庫本」は、これまでの調査では、現存のこれらとは違って、中国の宋で印刷された宋版と呼ばれる書物などを中心に約1,300点あるということである。これらの散逸した「金澤文庫本」のうち、紅葉山文庫は、明治維新の江戸城開城の後に、新政府に接収されている。その後は皇室財産である「御物」となり、現在は宮内庁の書陵部が管理しているという状況である。

 その他は、東京大学とか京都大学などの大学、それから博物館などに所有権が移り、それぞれが所有している。

松崎:    宮内庁書陵部をはじめ、東大、京大などに散らばっているということであるが、実際、私のほうで調べたところでは、ほとんど国宝あるいは国宝級のものである。これらのものを取り戻そうというよりも、宮内庁書陵部にある御物であるから、皇室の、国宝という指定すら行われない、天皇の宝物であるので、これを簡単に元の金澤文庫に戻してくださいというのは、なかなか難しいのではないかということを研究者の方々に聞いている。

 県立金沢文庫としては、これは、致し方のないものとして諦めてしまうのか、それとも、何か、その原状回復とは言わないが、「武家の古都・鎌倉」を物語る貴重な真髄となるべきものについて、どのように世界遺産登録を睨んで、取り組んでいこうと考えているのか。

文化遺産課長:    現在散逸しているこれらのものについては所有権が移っており、元の帰属に戻すというのはなかなか難しい状況であるが、県立金沢文庫では特別展示会を開催する際に貸し出しを受けて出品をしている。しかし、宮内庁書陵部の所蔵資料については、昨年金沢文庫の特別展示で出品を検討したが、警備体制の問題等があり最終的に借用することができなかった。このように、御物については借用が非常に難しいという制限があるが、今回の協議を契機として今後宮内庁とも協議を更に進め、借用による特別展示が実現できるようにしっかりと取り組んでいく。

松崎:   (要望)無理にごり押しすべきだというふうには私も考えないが、一方では世界遺産登録を進めていこうとしている中にあって、可能な限りの努力は払うべきである。また、北条氏がもともと集めたものであったが、それが後には、徳川家康という人というよりは、徳川政権そのものが、武家を証明するような、謂わば、武家の棟梁であることを証明するためには、この御物となったものが、必要であったと言われるぐらいの、非常に世界遺産登録、あるいは、武家文化とは切っても切り離せない価値があるとの定評である。  先ほど、宋版と言われたが、北宋、南宋という、古代から続く中国の文明の流れの中で言えば南宋という非常に文化が発達発展した、後は元という国になるが、その前の中国という国の文化の水準というものを語る上でも貴重なものであると聞いている。ぜひとも、そこは連携した展示などにも取り組んでいくという、非常に心強い答えであったので、しっかりと推進していただきたいと強く要望する。