2013年5月17日

文教常任委員会質疑応答要旨

○世界遺産登録について

松崎:    世界遺産登録について民主党神奈川クラブとしても質問させていただく。

まず目処として、今後とるべき方針を結論づけるのは今月の末ということだったが、4県市と国とで協議をしているということであれば、大体のところどちらの方向へ進もうかということは決めて取り組んでいるのではないか。

文化遺産課長:    5月9日から、具体的に文化庁と4県市の職員で内容の分析等を始めたところである。どちらにという結論は出ておらず、現在分析を進めているところである。

松崎:    先日の神奈川新聞社の報道で、大震災が発生した場合、鎌倉には従来より考えられていたよりはるかに高い14mの高さの津波が到来するという恐ろしい想定を神奈川県が出して、そのことがイコモスの評価に影響を与えたのではないかということを大々的に報じられていた。このことは今日報告されていないが、本当であればこれからどういうふうに対処したらいいのかというのが全く違ってくると思う。把握している情報があるならば、いまここで出していただきたい。

文化遺産課長:    イコモスの勧告に関して、災害等のリスクについて言及された記事が掲載されていたのは事実である。イコモス勧告の中でそうした記述があったことについては、我々も文化庁に確認したが、震災リスクがそのままイコモス勧告の評価結果に結びついているものではないととらえ、勧告の概要の中には震災リスクについてはあえて掲載をしていないという回答を得ている。

松崎:    それはイコモスの見解なのか。文化庁の見解なのか。はっきりしていただきたい。

生涯学習部長:    震災等のリスクがあるという可能性の記載があったことは事実であるが、勧告の「不記載」評価に影響しているものではないという判断を文化庁がしている。

松崎:    そこはとても大事なことだと思う。影響を与えていなかったということでは終わらない。津波の部分について深刻な影響があるということになれば、もはや世界遺産委員会で審議をしてもらうという選択の余地がない。取り下げるしかないのである。文化庁がこう言っているからこうだということと、実際にイコモスにこう考えたからこうだということをしっかり踏まえる必要がある。構成資産が少ないとか国宝に指定されているものが少ないというのは、元々わかっていたはずである。何故そのような状況で世界遺産候補として押し出していこうとしたのか、本当は問わなければいけなくなってしまう。津波の被害想定というのも、県が算出していることなのではっきりわかっていることである。やはり災害対策についての考えを示す必要があったのではないかと思う。

また、構成資産が少ないといわれているが、一方でイコモスが今回述べているところによれば、社寺や切通については数少ない形ある資産であると言及していた。これらは説得力を持った世界遺産であると県教委は考えていたはずだが、イコモスがこのような答えを出すと想像がつかなかったのか。

生涯学習部長:    鎌倉については、イコモス勧告にもあるが、真実性の部分については遺跡・遺構があるので、そういうものがあったという事実は証明できている。ただし、完全性ということでは、土の中に埋まっている遺跡も数多くあるということで、数は少ないという認識はあったが、武家の古都・武家政権発祥の地ということで三方を山に囲まれ、一方を海に開くという地形や他の部分を含めて証明できるということで政府とも協議しながら今回推薦をしていただいた。

松崎:    私は世界遺産に関わるところの金沢区地元から選出をされているので、「不記載」の知らせを聞いたときは、実際に現地称名寺にいた。実際に近辺に住んでおられる方々等と話をしたが、皆さん非常に落胆されていた。まだ期待が膨らんでいるという風には思えなかった。むしろ、持ち上げられたローカルプライドが逆に落とされたというのが地域の皆様の言葉であり、実感であった。心が傷ついたという状況がいまの地元の状況である。だからこうしてほしいということにいきなり結び付けたくはないが、やっぱりどうしていくつもりなのか。世界遺産を引き続き目指すかどうかということも大事だが、神奈川県民のかけがえのない歴史的・文化的な遺産をめぐって、一時は世界の称名寺・鎌倉だとしてきたものが、一展ここで予想とは違った残念な状況になっているわけで、世界遺産とは別に県教委としてどう考えているのかお聞かせ願いたい。

生涯学習部長:    私どもも今回愕然としたというのが正直なところである。鎌倉、称名寺を含めて大変文化財的価値がある部分であるので、今後もしっかり保全していかなくてはならないと考える。世界遺産登録の価値というのは、今後その文化財を後世にしっかりと引きついでいく保存管理の部分が一番重要な部分であると思っている。今回世界遺産になるために各神社仏閣の史跡の保存管理計画を5、6年かけて策定し、将来にわたって保存していくという体制を整えていったという面では、今回は残念な結果になったが、今後につながるものであると考える。今後とも、鎌倉と十分に連携しながら、様々な世界遺産候補の資産を後世に引きついでいく取り組みや、文化財保護の取り組みを継続していきたい。結論を出すにあたっては、世界遺産に向けて最善の道を十分に検討させていただきたいと思っている。

松崎:    5月6日に称名寺で薪能が行われて、1200名以上の大勢の方が来られて、狂言と能を堪能された。私も同席したが、金沢区だけでなく鎌倉や逗子からも色々な方が来られて、文化遺産というものを来世次代へ伝えていきたいという気持ちが伝わってきた。そういう文化というものを神奈川県民の宝物としてどうやって守り伝えるのかという取り組みはこれを契機として強化していただきたいと思っている。

 世界遺産をテーマにして神奈川県では予算立てをしているが、推薦を撤回することになった場合、年度の区切りからいうと既に執行が始まっているものはどういう風に扱っていくつもりなのか

生涯学習部長:    世界遺産に向けての県予算のうち、直接的な部分としては、4県市の推進委員会への負担金ということで3市と一緒に県も予算を出している。今年の登録はないということになれば、必要ない経費については残すということになる。ただ、八幡宮や永福寺跡等の史跡整備については、資産を保護するということで今後ともやらせていただきたいと考えている。その部分の予算については、しっかりと史跡保護の整備のために継続してきたいと考えている。

松崎:    普遍性ということは、県教委としても力強く主張されていたことで、その重要性は今も何も変わっていないと思う。むしろ大変傷ついた周囲の方々の気持ちを考えると、ローカルプライドをきちんと高めていく取り組みを強化していただきたい。これで、私の質問を終わりにする。