平成26年2月27日 外国人学校生徒等支援事業について

松崎:    平成26年度当初予算案として提案されている「外国人学校生徒等支援事業」については、昨年12月にその基本的考え方が初めて明らかにされ、この常任委員会にも報告があり、また、質問としても取り上げて質疑を行い、その際、何点か指摘させていただいたところである。議会内でも「唐突だ」という意見があり、私自身もそのように受け止めた。

来年度からの新事業の導入ということになれば、学校のみならず、そこに通う生徒、保護者に与える影響も危惧されるところである。

そこで、これに関していくつか質問させていただきたい。

本事業については、12月の当常任委員会で、その基本的考え方が初めて報告されたところであるが、それ以降、各学校に対しては、どのように説明を行ってきたのか

私学振興課長:    12月の議会では唐突感があるというご意見をいただき、各学校に対しては丁寧な説明を、というご意見を頂いた。議会中・議会後を含めて、朝鮮学校全学校に対し複数回、全て回っていろいろとご意見を伺った。その際には、基本的な考え方、制度の中身、経過措置も含めてこちらの考え方を説明し、ご意見等を丁寧に伺った。

松崎:    その際、各学校からはどのような意見が出たのか。

私学振興課長:  

 経常費補助から学費補助への大きな考え方の転換ということで、やはり学校としては経常費補助の部分が廃止となった場合の影響が一番大きな声としてあった。それから制度転換するにしても、唐突感という話と関連するかもしれないが、一気の制度変更は避けていただきたい、影響が少ないようソフトランディングするような経過措置を検討していただきたい、事務負担に対する懸念、声としてはその3点が大きな意見であった。

松崎:    現実に生徒を預かっているからこそ出てくる声だと思う。順次伺っていくが、まず、学校として、経常費補助がなくなるということは、その運営に大きな影響が出ることは明らかである。この点について、具体の制度を検討する中で、どのように考えたのか。

私学振興課長:  

 経常費補助は運営費に対する補助なので、学校経営に直結するものであるが、学校からの意見は様々で、急な学費の値上げは困難であるので経過措置を設けて欲しいとか、また、他の学校からは、導入するのであれば、保護者が混乱するので、段階的でなく一気に切り替えたい、あるいは、保護者等への周知期間が必要だから、1年程度の猶予が欲しいなどの意見をいただいた。

 そうした学校の意見を踏まえ、新たな支援制度の設計にあたっては、極力、そうした声を反映させていただき、3年間の経過措置の中で、最終的には4つの選択肢を設け、学校の事情や状況によって、学校がいずれかを選択いただくことで、新たな支援制度に円滑に移行できるようにしていきたい。

松崎:    学校の選択を強調される気持ちはわからなくも無いが、これまでどおり経常費補助を続けることは選択できないのか、その点を聞いている。これは、そもそもどういった考え方で経常費補助を行ってきたのか、そしてそれをぱっと廃止してしまうということが今まで続けてきた考え方に照らしてどうなのかということを聞きたい。

私学振興課長:  

 外国人学校への経常費補助は、数十年にわたり県が私学助成の一環として行ってきた制度。今回は、基本的な考え方にあるように、外国人学校であるがゆえに影響を受ける部分について、子ども達が安定的して教育を受ける機会を確保する、こういう視点の中で、制度を補助対象額を切り替えたもの。今まで経常費補助に変わるものであれば、学費補助が影響を受けるが、極力それを少なく押さえるということで、数年間の経過措置で、たとえば4分の1ずつ、3分の1ずつ、周知期間については1年間といった形で選択肢を用意させていただいて、なるべく円滑に移行できるよう考えている。

松崎:    経常費補助を何ゆえ行ってきたのか。

私学振興課長:  

 経常費補助の目的は、学校の健全な発達、安定した運営、これは法律の目的にもなっているが、これにより私学の安定的運営により私学の健全な発達を促す、ということの一部として県の私学助成がなされている。

松崎:    つまり、財政面で行き詰るような状況で子ども達を預かって教育を行うということは好ましくない、経営の健全性ということが教育内容に波及、影響していくから、県としては各種学校である外国人学校についても、一定程度、見ていこうという認識でよいか。

私学振興課長:  

 根拠となる法律「私学振興助成法」の補助の目的は、学校の安定的な経営と私学の健全な発達が大きな目的となっているので、学校が安定的に運営でき、私学教育が充実できるように、ということの一部について、私学助成をしている。

松崎:    その趣旨に基づく支援、財政支出を完全に廃止するということは、子ども達に対する学費の支援に切り替えるということをはずして考えた場合、正当性はあるのか。大丈夫か。かならず影響は出るわけで、「子ども達に」ということはわかるが、一方で学校に対する支援は継続して行うべきである、ということは、議論として成り立つと思うがどうか。

私学振興課長:  

 子ども達の部分を置いておいて、学校運営費への補助についてどう考えるかという質問でよいか。

松崎:    誤解の無いようにしたいが、子ども達がどうでもいいといっているわけではない。

私学振興課長:  

 経常費補助が切り替わってなくなることについて、学校運営との関係でどうなのか、ということだが、経常費補助は学校に対する直接的助成であり、学校にとってみれば、運営費として収入部分の一部が県から公的助成として学校に入ってくる、ということでは、安定的収入であろうといえる。今回、各学校から頂いた意見のなかでは、一番大きく、真っ先に不安の声が出た。

松崎:    学校というものが経営面で健全性を維持している。また、そこに通わせている保護者、勉強しに行く生徒の三者にそれぞれ光を当てて支援をするということが必要と考える。

それからもう一つ、事務負担の話を伺うが、外国人学校にとって、今回の制度変更により、具体的にどのような事務負担が発生すると想定しているのか。

私学振興課長:  

 学校に在籍する生徒への制度周知や、個別の問い合わせ対応、申請書類や所得を確認するための書類などを生徒から集めて、一括して県に提出していただくなど、各学校に取りまとめをお願いする事務が発生する。

また、外国人学校固有の問題として、外国人学校に通う子どもや保護者の中には、日本語を全く話すことができない方も多くおり、学校によっては国籍も50から60というような学校もある。そうした方々に、制度の周知や、個別の質問対応など、学校で英語だけではなく、その他の言語で全て対応していただくことをお願いせざるを得ない、という負担を学校にお願いすることを考えている。

松崎:    50から60の国籍とさっと答弁されるが、具体に対応する学校にしては大変な負担ではないか。制度の内容もがらっと変わるし、新たな手続きもあるかもしれない。各家庭にはそれぞれ経済的事情など様々な事情があって暮らしている場合もあるし、困った事態が生じることも十分想定されるが、それを各学校に負担させるということで県は制度変更を考えているのか。

私学振興課長:  

 先ほど、例としてあげた国籍50から60の学校は、学校内の言語を英語に統一している学校であり、英語を使える生徒が入っている。それ以外は、スペイン語など主要言語の対応となる。学校は、常日頃から生徒や保護者と接しており、国籍50から60というのは誤解を与える答弁であった。

松崎:    先ほどの答弁と今の答弁は全く真逆だが、学校に生じる事務負担はたいしたことないのか、大変なのか、どちらか。

私学振興課長:  

 制度周知用PRのチラシとかパンフレットなど、外国語に翻訳したものを作っていただく、ご協力いただくことも考えており、そういった意味での負担は新たに発生すると考えている。

松崎:    私はそれだけではないと思う。個別に対応する中で、各家庭の事情もあるだろうし、暮らし向きも差がある。そうした中で保護者、生徒一人ひとり対応しなければいけない学校の負担だが、もっと人間的な言葉があればいいが、情報共有してお互いに納得して進もうというところまで、気持ちが前向きになっていただけるよう、様々な手を尽くし、配慮するということ。こういうことが各学校に求められて、それは教育の場であるということ。そいうところについて、県としてはどのような配慮をするのか。

私学振興課長:  

 パンフレットや翻訳以外にも、文化や考え方の違いが様々ある生徒等を相手にしている学校について、いろいろご理解いただいたり、説明する必要があると考えている。そこで、そうした部分で学校に事務負担が発生すると考えており、質問に対する答えとしては、個々の学校から事務負担についての配慮をお願いしたいという声は多くから頂いており、こうした学校側の要望も踏まえ、一定の事務負担に対し、事務的経費の一部支援という形で、そうした声に応えたいと考えている。

松崎:    事務的経費の一部について負担をしていきたいとの答弁があったが、具体的な規模や金額は何かわかれば(教えてほしい)。

私学振興課長:  

 詳細な算定基準、金額はこれから詰めていくが、基本的には、今、国から就学支援金の事務に対しては、県に対し事務費を出している。これを今の県と学校の関係に置き換え、一定の事務をお手伝いいただくことに対して一定の補助を行うことが基本的な考え方であり、我々が考えている規模としては、申請書に取りまとめる時期というものがある。そこに学校で事務補助や、アルバイトなど雇用する必要が出てくる、という人件費分ぐらいはこちらで見れないか、と考えている。

松崎:    50から60の国籍とさっと答弁されるが、具体に対応する学校にしては大変な負担ではないか。制度の内容もがらっと変わるし、新たな手続きもあるかもしれない。各家庭にはそれぞれ経済的事情など様々な事情があって暮らしている場合もあるし、困った事態が生じることも十分想定されるが、それを各学校に負担させるということで県は制度変更を考えているのか。

私学振興課長:  

 学校に在籍する生徒への制度周知や、個別の問い合わせ対応、申請書類や所得を確認するための書類などを生徒から集めて、一括して県に提出していただくなど、各学校に取りまとめをお願いする事務が発生する。

また、外国人学校固有の問題として、外国人学校に通う子どもや保護者の中には、日本語を全く話すことができない方も多くおり、学校によっては国籍も50から60というような学校もある。そうした方々に、制度の周知や、個別の質問対応など、学校で英語だけではなく、その他の言語で全て対応していただくことをお願いせざるを得ない、という負担を学校にお願いすることを考えている。

松崎:    予算を審議する議会で、それが迫ってきている中で、具体的にどのように算定されているのかわからないとのことだが、概算でもいいので、何か検討はしていないのか。

私学振興課長:  

 今の事務的経費の部分で言えば、集中する時期は2か月程度なので、アルバイト賃金の2ヶ月分程度、数十万円を考えている。

松崎:    1校あたり数十万円ということか。

私学振興課長:  

 そのように考えている。

松崎:    前回の常任委員会でも質問させていただいたが、経常費補助が無くなった分保護者への負担が増すことが考えられ、その懸念について指摘しているところだが、保護者への配慮は何か考えているのか。

私学振興課長:  

 外国人学校生徒等支援事業は、国際情勢等の不安定さに影響を受けることなく、安定的に教育を受ける機会を確保することを目的とする、所得区分に応じた学費補助である。

経常費補助がなくなることで、学校の授業料が値上げされるか否かは、学校自身が経営判断の中で行うものであるが、新制度はまさに、そうして発生する学費の負担増を、新たな考え方のもとで所得に応じて支援しようとするものである。

松崎:    それは制度の説明をもう一度したのか、保護者に新たに配慮をするということか。

私学振興課長:  

 保護者の負担への配慮は、まさに今回の所得に応じた保護者への支援なので、ある意味、制度の説明になってしまうが、今回の制度が保護者への配慮ということになる。

松崎:    所得が高い世帯は、なぜきつい負担をこれからは負わねばならないのか。

私学振興課長:  

 これは二つの考え方がある。「一律平等」という考え方と「所得に応じてより厳しい年収の家庭に手厚くする」というもの。

今回の国の就学支援金の制度変更もそうであったが、高校の無償化、所得無制限でやっていたところを、910万円という一つの考え方の中で、財源を厳しい家庭に手厚くしようとするものであった。

 この制度のベースである学費補助も同じであり、所得の厳しい世帯に補助を手厚くして、家庭の経済格差が子どもの教育に影響を与えないように、ということが考え方の基本にあり、その中でやっている。両方の考え方があるが、県としては経済格差が教育格差にならないようにと考えている。

松崎:    今の答弁で考え方としては両方あるとのことだが、私は、例えば何年も前から検討してきて、それで結果こうなった。途中経過においては、所得を重視したいが、県民、保護者、学校関係者はどう考えるか、といった意見を聞く機会があるなどいろいろやって、ここに至ったというように、よく県が施策を新しく打ち出す際や今までのやり方を変えるときのやり方、そういうステップを踏んできたのなら、ある程度理解もできるが、なぜ所得が高いと負担増かもしれないという危惧を持たねばならないのか。

 この説明は各学校に対して行っているのだろうが、所得の高い家庭には学校が説明することになるが、事務負担といっているが、もっと違う言葉があると思うが、これは教育の場であるから肯定するのだろう。その部分にどのように配慮するのか。普通なら「なぜ」という気持ちが出ると思うが、どうしても不条理感がある。そのため、丁寧に理解を得ていく、こういう姿勢とか変わり方の根本が無いといけないと思うが、局長はどのように考えるか。

県民局長:          

 そもそもこの制度を創設しようとしたのは、学校への補助から子どもに着目した補助に切り替えていく必要がある、としたときに、やはり学費補助では、所得に応じた補助を今も他の私立学校でも行っており、就学支援金とともにやっている中で、ここをベースにしている。そうすると、どうしても経済格差が教育格差に及ばないようにするという考えなので、高所得者の方には相応の負担をしていただき、低所得者の方に支援を厚くするというのが基本的な考え方。

 今回、そういうふうに外国人学校への支援をかえたということについて、学校だけでなく、保護者にも丁寧に説明せよというのはもっともな指摘であるので、それについては各学校と協力して、移行のための準備期間もあるので、その過程を通じて説明させていただきたい。

 これまでの間、私も各学校に説明させていただいたが、各学校の方々からはご理解いただけたものと考えている。更にその上で、保護者への説明を学校に負担していただくことになるので、ここについても支援させていただきながら、丁寧に理解を進めていこうと考えている。

松崎:    4月から国籍を問わず消費税が上がり負担が増える。神奈川県にも、地方消費税という形で既に予算に盛り込まれ、議会に諮られている。従って、もともと外国人の方は日本人と比べると、神奈川で暮らす上でも、子育ての上でもさまざまな条件や環境におかれている。

 多文化共生を標榜する黒岩知事は、こうしたことを行う以上、そこで直面するであろう保護者に対しては、学校任せにするのではなく、県としてこういう考え方で臨むんだ、ということを明確に示し、ご理解いただき、そして学校とともに一緒に発展していこうという基本線をお示しいただき、結果として、より幸福を追求できる社会になったという実感があることが大事なので、局長からいただいたた答弁は重要。

 最後に、課長から、今まで学校と色々なやり取りがあったとのことであり、先ほどのしきだ委員の質問の中でも当該学校との間の様々なやりとり、あるいはこれからどうしていくのかという考え方についてもいろいろ議論があったと受け止めているが、今、インターナショナルや中華系も含め、いろいろなやり取りをした上での検討というのは、最終的に全校の理解は得られていると胸を張っていえるか。

私学振興課長:  

 12月の議会以降、各外国人学校を幾度も訪問し、様々意見交換を重ねてきた。その中でいただいた声を制度設計に取り入れられるものについては取り入れて、この形が出来上がっている。各学校と直接やり取りしている中で、最終的には、外国人学校に通う子ども達であっても、安定的に教育を受ける機会を確保したいという県の考え方をご理解いただけたものと考えている。

松崎:    そうはいっても、学校の事務負担についてもこれからで、一定の規模で考えないといけないとか、今までの経緯の中で取組み、議会に新たに報告しなければいけないこともあるので、まだつめなければならないところがあると考える。我が会派としても、今後の様々な審議の場で審議を行わせていただきたい。

 要望を申し上げる。12月の議会以降、制度の具体的な検討を進めていくということで続いていたが、各学校に対して説明をしてきたことは、答弁の中で明らかになった。ただ、そこで示された今日の質疑の中で、輪郭がはっきりしてきた保護者や学校関係者が抱えている課題、県当局がこれから検討しなければならないこと、説明責任などはこれからということなので、またご報告いただき、議論させていただきたい。

 今後、外国人学校生徒等支援事業の制度導入にあたり、各学校に大きな影響が生ずることのないよう、県としても、引き続き丁寧な対応をお願いしたい。