平成26年3月3日 NPO法人に対する監査や支援について

松崎:    NPO法人に対する監査や支援について何点か伺う。

福祉やまちづくり、また、災害救援などの様々な分野で、多くのNPO法人が活動しており、今後ますますその存在意義は高まっていくものと考える。私も現在、2つのNPO法人の役員に就任しているが、事業・予算規模ともに大きく、事業や会計の進め方などについても、法人内部でチェック機能を働かせ、適切な運営を行っている。

しかし一方で、法令違反を犯すなどの悪質なNPO法人の新聞報道も時々見受けられ、NPO法人に対する社会的信頼が損なわれることにも繋がりかねないと認識している。

NPO法人は、本来は、自由な市民活動を行うものであるが、行政による監督についても重要なファクターであると考えている。

そこで、NPO法人に対する監督の考え方や、内部における自主的な管理体制への支援について、何点か伺いたい。

法令違反等の悪質な事例で、最近、県内のNPO法人が新聞で大きく取り上げられた事例があれば、報道の範囲内でよいから教えてほしい。

NPO協働推進課長:        県の所管NPO法人ではないが、新聞報道によれば、横浜市のNPO法人が運営する介護保険事業所において、常勤専従であるべき管理者が確保されていないなどの人員基準違反等が認められたために、介護保険事業所の指定を取り消されたという事例があった。

この取消しは介護保険法に基づくものであるが、特定非営利活動促進法いわゆるNPO法違反としては、新たに介護保険事業を実施するにあたり必要であった定款変更の手続きに際し、臨時総会を開かずに虚偽の議事録を作成して申請していたことも判明し、その議事録に基づいて行われた定款変更の認証の取消しも行われたという事例があった。

松崎:    本県で実際に認証取消しを行ったという事例はどれくらいあるのか。

NPO協働推進課長:      

 本県における認証取消しの実績と数ということであるが、平成10年12月にNPO法が施行されてから、平成26年1月31日現在で、101法人となっている。

そのうち、政令市等の所管法人を除き、本県が実施した取消しは、73法人である。

その73法人のうち、62法人は事業報告書を3年間未提出であったことが取消し事由となっており、残りの11法人は、設立登記完了届出書の未提出など、全てNPO法に違反した事例である

松崎:    今言われた認証の取消しの中で、悪質なものはあるのか。

NPO協働推進課長:      

 平成20年になるが、理事長に詐欺の疑いのあった法人を取り消した事例がある。

これは、警察からの法人情報に関する照会を受け、県としてもNPO法に基づく調査を行ったところ、NPO法に規定する役員に関する要件に違反することが判明した。

NPO法では、法人の役員について、親族数の制限があるが、この法人の場合は、役員の親族制限に違反しない旨の虚偽の誓約書を提出して、設立認証を受けたものである。

NPO法に基づき、役員の親族関係について報告を求めたところ、申請時に親族関係にあったことを認めるとともに、他にも、NPO法に基づいた届出等の手続きを行う必要性も認識していないなど改善の意思もなく、改善命令を出しても改善が期待できないことから、改善命令を経ずに認証を取消したという事例が1件あった。

松崎:    悪質なものがあるということであるが、本県では、法人に対する寄附者への税制優遇措置が付与される県指定NPO法人制度を推進しており、さらに、認定NPO法人も増加しているが、こうした法人に対する監督は、指定・認定を持たない通常のNPO法人と比べて、どのように行っているのか。

NPO協働推進課長:      

 まず、NPO法の趣旨からすると、NPO法人自体は、市民からの信頼を得て市民によって育てられるべきという観点から、市民による活動の監視が基本であり、行政の関与は極力排除するということが法の趣旨となっている。

そのために、設立認証を得ただけの法人に対しては、基本的に法令や定款に違反する疑いがあると認められる「相当な理由」があるときに、報告、事務所への立ち入り、検査を行い、必要な場合には改善命令を行って、改善がされない場合は認証を取り消すことになっている。

今委員からご質問のあった指定・認定NPO法人については、税制優遇措置を付与するための制度であるので、厳しい基準というか監督という形になっている。具体的には、県指定法人の資格を得る審査の段階で、学識者や弁護士、税理士等により構成される審査会において、事業の公益性のほか、会計処理の状況などを、専門家の見地から審査を行っている。

また、認定法人については、審査段階で法人の事務所に赴き、総会・理事会の開催状況等の運営面や、税金の納付、会計の処理状況、領収書の管理など、実際の書類を確認する形で調査をしている。

こうした審査の過程で、適切な運営・管理がなされていない場合は改善指導を行い、改善が見られるまでは、指定や認定は行っていない。

また、通常の認証をとっただけのNPO法人は毎年提出する事業報告書等を提出しているが、県指定法人、認定法人の場合には、そのほかにも、取引の相手方や金額、寄附金の支出状況等の報告書を毎年提出する必要があり、また、他者に助成金を支出した場合にはその実績を遅滞なく報告する必要がある。

こうした提出書類等を通じて、法人の運営や会計の状況を逐次確認している。

松崎:   NPO法人が増えるにしたがって、問題となるNPO法人も増えてくるという傾向にあることが答弁からもわかった。

企業の場合は、コンプライアンス、法令遵守や、アカウンタビリティ、財務に関する説明責任があるが、それに倣えば、NPO法人についてもやはり法令遵守、あるいはまた、財務・会計に関する説明責任があると思う。それについてのチェックということも必要である。県としても、助言・指導というものを、もっと強めていっていただきたいと思う。

組織的に脆弱なNPO法人というのも一方にある。たいていの場合は、市民のボランティア活動から発したというケースも多いであろうと思う。今後、県としては、特に、法人の管理・監督は少し強制力を持っていることは分かったが、法人の内部的な管理体制を自主的にどう作り上げるかについて、どういうふうに支援するかというところが、おそらく市民の自主的な活動というところからすると大切になってくると思うので、最後、そこについて、考え方を聞きたい。

NPO協働推進課長:      

 委員ご指摘のとおり、NPO法人は自らが組織をしっかり作りあげて、市民に対して説明責任を負っていくことが本来の姿である。

組織的に脆弱な法人に向けて、今年度から開始した、かながわボランタリー活動推進基金21の支援メニューの一つである、「ボランタリー団体成長支援事業」により、財務力や情報発信力、いかに市民の方々に自分たちの情報を発信するかということであるが、強化に向けた個別指導などを引き続き行うとともに、コミュニティカレッジにおいて、法人のリーダーとして活躍できる人材育成や組織のマネジメント力を強化する講座を開催して、法人の組織力強化のための支援をしていきたいと思う。

また、法人の設立相談の段階から、法人の成長に合わせた支援メニューを体系化して、きめ細かに支援する仕組みを今後整えていきたいと考えている。

こうした支援により、認証NPO法人から、法人の信頼度が増す指定・認定NPO法人への移行を支援してまいりたい。

さらに、指定・認定を取得したNPO法人については、NPOの認知度向上のためのキャラクターである「かにゃお」のフェイスブックによる発信に加えて、来年度からは、かにゃおが法人を訪問取材して活動を紹介するホームページを新たに立ち上げ、NPOの広報支援と併せて、法人の活動への県民参加、それから寄附金が集まるよう側面支援を検討していきたいと思っている。

松崎:    地域課題等の解決に向け、非常に活発に活動をしているNPO法人がたくさんある中で、問題がある法人が出てきているのも事実である。

多数の自由な自主的な活動は尊重されなければいけない。ただし、他方で、法令違反を行うような不適切な法人に対しては、早期に適切に対処していただきたいことを要望し、バランスのとれた法人対応をしてもらうとともに、法人の内部管理体制の強化に向けての支援をお願いする。