平成26年9月30日 環境農政常任委員会での質疑のまとめ

○ 公共事業評価について

松崎      

 午前中に引き続き質問、質疑を行わせていただきます。

 公共事業評価について伺います。

 私ども神奈川県におきましては、豊かで美しい海に囲まれ、県土には癒しを与えてくれる森林や大切な自然環境、景観というのがございます。田園風景もまだたくさん広がっているわけであります。一方そうした自然あふれる地域に目を向けてみますと、産業構造の変化に伴いまして、農林水産業のいずれでも従事者が減少傾向にあるなど、厳しい状況にあることを承知をしております。こうした地域の方々にとって、公共事業は自分たちの産業を守り発展させていくために重要なものであり、地域からの切望する声を、住民代表である議会が受け止め、当局との議論を経て、事業の必要性を判断し、実施を決定しております。こうした中で、環境農政局では、さまざまな公共事業について、公共事業評価委員会の意見を聴いて、公共事業評価を行っております。確かに県財政が厳しい中では、第三者の意見を聴くことの必要性について、理解をいたします。一方では、地域の発展のために公共事業を切望するそれぞれの方々の利益にかなっているのかどうかということについても、やはりきちっと見ていかなければいけない、というふうに思うわけであります。そこで、この際、何点か公共事業評価について伺います。

 まず、その目的というものをどのように捉えているのか、お聞かせいただきたい。

塩田管理担当課長                お答えいたします。公共事業評価の目的でございますが、環境農政局では、所管いたします公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るため、計画期間や規模の要件を満たす事業について、再評価及び事後評価を実施しているところでございます。以上でございます。

松崎        では、評価の対象となる事業は何で、評価はどのような視点で行なわれているのかお聞かせください。

塩田管理担当課長                お答えいたします。全ての公共事業が本評価制度の対象になるわけではなく、環境農政局で定めた実施要領によりますと、再評価の対象となる公共事業につきましては、まず、補助事業及び交付金事業といった、国庫補助事業等については、事業採択後5年経過後に継続中のもので、県単独建設事業については、事業実施5年経過後に継続中のものでございます。以後、それぞれ評価を5年ごとに実施することとなっています。

 もう一方の事後評価の対象となる公共事業の方につきましては、実施要領によりますと、全体事業費5億円の事業、過去に再評価の対象となった事業、過去に実施した事後評価の結果、再度事後評価を実施することとされた事業のいずれかの公共事業でございまして、原則として事業完了日から5年を経過したものが対象となります。

  次に、評価の視点でございますが、まず再評価の場合には、継続中の公共事業について、事業の進捗状況、社会経済状況の変化、事業採択した際の費用対効果分析の要因の変化、代替案の可能性などの視点によりまして、評価を行なってございます。その結果、事業の継続にあたり、必要に応じて、見直しを行なったり、事業の継続が適当と認められない場合には、休止や中止となる場合もございます。

  また、事後評価の場合には、完了した事業の効果や周辺環境への影響などを事後的に評価いたしますので、費用対効果分析の算定基礎となった要因の変化ですとか、事業の効果の現れ方、社会経済情勢の変化などの視点により評価を行ないまして、事後評価をさらに実施するかどうかを検討することになります。以上でございます。

松崎        評価の流れ、それから何件これまで公共事業について評価を行なってきたのか。

塩田管理担当課長                お答えいたします。神奈川県が、継続、休止、中止といった各評価対象事業の対応方針案を作成いたしまして、学識経験者の方々など、第三者で構成いたします、神奈川県環境農政局公共事業評価委員会に対しまして、この方針案について、意見を求めます。そして、その意見を尊重いたしまして、県の対応方針を決定する、という流れになってございます。

  なお、この対応方針案、評価委員会の意見及び対応方針については、毎年、第1回の定例会でご報告させていただくとともに、記者発表等により公表をいたしております。

  次に、これまで実施してきました公共事業評価の件数でございますが、再評価につきましては、平成10年度から平成25年度にかけまして、83件、事後評価につきましては、平成18年度から平成25年度にかけまして、30件、合計113件の評価を実施してきております。以上でございます。

松崎        これまでに113件ということでございます。今、公共事業評価の流れを伺いましたけれど、この評価結果を決定するにあたり、意見を述べる公共事業評価委員会の構成員である委員の役割というのは、極めて重要というふうに受け止めました。その委員はどういう観点から選任していますか。

塩田管理担当課長                お答えいたします。公共事業評価委員の委員には、6名の方を選任しております。

  選任の視点といたしましては、まず、農林水産業に関する技術的分野の有識者といたしまして「農業・農村」「森林・林業」「水産・漁業」の各分野をご専門とされている学識経験者を、大学の教授等でございますけども、それぞれ選任しています。  そのほか、社会情勢に関する分野の有識者として弁護士、環境に関する分野、地域社会形成に関する分野の有識者といたしまして、NPO法人の副理事長等を、それぞれ選任いたしております。以上でございます。

松崎        今伺いますと、大学の先生、それから、弁護士とか自然保護団体の方ですとか、あるいは分野別では農業、などなどという風に仰っていましたが、どうなのでしょうか、そのメンバーの方々というのは、公共事業を客観的に評価するための、専門的な訓練とか、そういうものを習得されたような方々なのでしょうか、それとも、そうではなくて、それぞれの分野ごとに、頼んでいっただけということなのでしょうか。あるいは公共事業の現場というものを、かなりたくさん、長年かけて見てこられたような方々なのか、それともそうではないのか、その辺をお伺いします。

塩田管理担当課長                お答えいたします。公共事業の評価委員は、私どもの要綱の第4条の規定によりまして、「地域の実情をよく理解している、公平な立場にある学識経験者等の第三者の有識者の中から就任を依頼する」という風になっております。そうした中で、現在、公共事業全般に対する県民の要請を的確に反映させるため、社会情勢全般にわたり幅広く精通し、行政にも詳しい「弁護士」、環境農政局の公共事業は、自然環境への配慮が特に必要なことが多いため、「自然保護に造詣の深い有識者」、公共事業の推進には、地域住民の方々の合意形成が重要でございますので、「地域社会づくりに造詣の深い有識者」、そして、公共事業を技術的・専門的側面から検討するため、「農業・農村、森林・林業、水産・漁業、をそれぞれ専門とする学識経験者」の方々から成っておりますので、そういう意味では、色々なこれまでのご経験の中から、様々な公共事業等々、見ておられてきた方々だと承知しております。以上でございます。

松崎        そこへ、公共事業評価という形で、諮問をして答えをもらおうということになると、どうしても、物差しとして一本入ってくるのが、評価の視点としてなのですけれど、公共事業の適否について、金銭的な費用対効果という視点で判断する物差しが一本入ってくると、どうしてもそこへ思いきり重きが置かれることになりはしないか、という懸念を持つのです。

 というのは、農林水産業に限りませんけど、公共事業にはそれぞれ必要とされるに至った経緯がございまして、洪水を調節したいということもあるでしょうし、河川について幅広く利用しようということもあるでしょう。そういう風にそれぞれの歴史的経緯とか様々なものがあっての、公共事業がスタートしていて、積み重ねられていくわけなのですけれど、そこに費用対効果という物差しが一本入れば、そのところにぐっと重きが置かれるという経緯があって、これがいいか悪いか、そこで判断されていくことになりはしないか、つまり、判断の物差しが幾つもあるはずなので、そこのところを公平に見て、判断される委員会になっているのかどうかが、関心があるのですけど、その点はどうでしょう。

塩田管理担当課長                お答えいたします。評価につきましては、先ほどご回答いたしました評価の仕組みに基づきまして、コスト削減や費用対効果の面だけではなく、今、委員がおっしゃられた、たとえば洪水の調整ですとか、河川の利用等、公共事業にはさまざまな目的がございます。そのために、環境に配慮した工法の採用ですとか、あるいは将来における利用のされ方、今お話しましたとおり、整備のされたものが産業に与える影響といった社会経済的視点、あるいは先ほどの、洪水の調整等、住民や利用者の安全の確保、あるいは、田んぼが実際に雨が降った場合に、いきなり水が流れるのではなくて、そこで溜めて、あとで徐々に流すことによって水を溜める機能、これもまた洪水を防ぐ機能の一つだといわれていますけれども、そういった防災機能などの事業効果の現れ方といった視点も加えて、さまざまな観点から公共事業に対する評価が行われているというふうに考えております。以上でございます。

松崎        今の所見は、ほ場整備に関わる部分で、特に国営の灌漑事業ですとか、それから土地改良の大規模なもの、というのは必ずそこに付随的かどうかはともかく、そういう目的が含まれていることは承知をしております。そこには土壌などのいろいろな問題があって、何年もかけてやらなければいけないような事業ですから、その事業を途中だけ見て、その一瞬だけを切り取って、うまくいっていないだとか、やめるべきだという判断を下すというのは、余程なことがあってのことだと思うので、公共事業評価もその科目の性質に応じてきちっと深掘りしてやらないと、正しい評価はなかなか難しいと思うんです。そこでお聞きするんですけど、これまでの公共事業評価、とくに環境農政局所管のようなところの公共事業評価で、県が出した対応方針が休止とか中止になった公共事業はあったのでしょうか。あったとすれば、それがなぜ休止とか中止になったかという理由を伺いたいと思います。

塩田管理担当課長                お答えいたします。再評価の結果によりまして、事業を中止いたしました事例は、これまで過去に1件ございます。それは平成21年度に実施いたしました再評価において、農免農道整備事業について中止と評価し、事業を中止したものでございます。この事業につきましては、平成2年度に事業着手し、930mの農道整備を行う計画でございましたが、用地買収が思うように進まず、平成20年度までの19年間におきまして、施行された区間が514m、進捗率が55%にとどまる中、平成21年度には国庫補助事業の期限も迎えることになっていました。また、平成21年度の再評価時点でも、費用対効果分析におきましても、費用に対しての効果が0.55と、1を大きく割りこむという状況になりましたため、対応方針を中止としたものでございます。

 なお、この他に、クマタカの生息調査のため、事業を一時休止していた国庫補助事業の林道開設事業がございます。それにつきましては、平成12年8月に、与党三党において決定されました、「公共事業の抜本的見直しに関する三党合意」の見直し基準により中止事業と位置づけられましたので、平成12年9月に県として事業中止を決定いたしまして、その年度の公共事業評価委員会において中止を決定した経緯を委員にご報告したものがございます。以上でございます。

松崎        それぞれの経緯について伺ったところであります。それについてはその当時のそれぞれの判断があり、最終的には議会においてもそのことについては議論ないしは同意がなされているのかな、というように受け止めさせていただいたところであります。ただですね、地域の方々がもともとは切望して実施をされている公共事業というところからすると、関係者という以上に、必要とされている県民の方々が、その後どのようになったのかということは、やはり大切な視点だと思われます。確かに税金が投入されている事業ではあるので、必要だというところが、その後有益性がはたして、疑問符がついていないかということはチェックをしていく必要があると思うのですけれども、県民の皆様、つまりは納税者である方々に対して、どういう風な形でアピールあるいはまた、ご理解いただくということがなされているのでしょうか。

塩田管理担当課長                お答えいたします。県のホームページや、パンフレットによる広報の他に、実際に県民の方に、事業の実施により整備した施設等に触れていただくような事業も行っております。例えば、ほ場や農道、水路などの生産基盤を整備するとともに農村公園や集落排水などの生活環境を整備するという、農業農村整備事業というものがございますが、それにつきましては、農地造成した畑でのだいこんの栽培収穫体験ですとか、農道を利用したウォーキング、あるいは農業用水路での田んぼの生き物調査など、一般公募による親子を対象としたイベントにより事業を紹介いたしまして、農地の持つ食糧生産機能や多面性機能の発揮など、事業の効果をアピールし、ひいては農業農村整備事業への理解の促進に努めているところでございます。

  お答えいたします。県のホームページや、パンフレットによる広報の他に、実際に県民の方に、事業の実施により整備した施設等に触れていただくような事業も行っております。例えば、ほ場や農道、水路などの生産基盤を整備するとともに農村公園や集落排水などの生活環境を整備するという、農業農村整備事業というものがございますが、それにつきましては、農地造成した畑でのだいこんの栽培収穫体験ですとか、農道を利用したウォーキング、あるいは農業用水路での田んぼの生き物調査など、一般公募による親子を対象としたイベントにより事業を紹介いたしまして、農地の持つ食糧生産機能や多面性機能の発揮など、事業の効果をアピールし、ひいては農業農村整備事業への理解の促進に努めているところでございます。

松崎        それは、公共事業の有益性一般についての理解を県民にいただくということでございまして、そういう側面は確かに大切かと思います。しかし、もう一つは先ほどおっしゃったように、中止した例もあるわけですよね。そういう場合における県民の理解をいただくということが、これは中止ですから、期待されたものに対して、税金をある程度投入した上で中止するわけですから、県民の理解というのはもっと必要になると思います。こういった場合の県民の理解はどうやって得るのですか。

塩田管理担当課長                答えいたします。中止になった場合の、県民の方への理解の進め方でございますが、まずは、公共事業によって本来でしたら恩恵を受ける方々、地域の方々に対してのご説明が必要になるかと思います。平成21年度に中止いたしました農免道路整備事業につきましても、実は最終的に地権者との用地交渉が決裂してしまったために、これ以上事業が難しくなったという側面がございます。そういったことがございますので、中止を決定するにあたりましては、事業推進会議の役員の方ですとか地元小田原市に事業中止の方針をお伝えするとともに、地元の説明会を開催いたしまして、事業を中止する旨を丁寧に説明させていただいたところでございます。それが平成21年8月くらいの段階でございまして、そういった手続きを経て、丁寧に関係者の方々にご説明をしたうえで、最終的に平成21年度の再評価において対応方針が中止となったということでございます。以上でございます。

松崎        恐らくは、思いとしては地元地域の方々には残念な思いがその後も残ることだと思います。先輩方もずっとそういうご経験なされてきたことだと思いますし、私自身も議員ですから、地元において、もしそのようなことがあれば、それは残念な思いというものを、行政は行政として、私は議員としてやはり受け止めていくということになるわけであります。そのときに、ああ、こうであればもっと地域が発展したのにな、と思われる場所になっていくということもあるわけです。なので、そこのところをもう一回どのようにすれば、地域発展ができるかということを真剣にもう一度取り組まなければいけないということも起きてくるというわけで、そのことも踏まえて判断をしていかなければならないということもありますし、その後の対応ということもやらなければいけないというふうに思います。これはやっぱり行政と議会がそれぞれ、共同して、連帯して責任を負っていかなければならない。それくらいやっぱり地域重視というのは、重い判断だと思うんです。

 最後に伺いますけど、評価というのはこれからも続けていくということでありますから、今年度も評価を実施すると思うのですけれども、どういうスケジュールで行うのでしょうか。

塩田管理担当課長                お答えいたします。今年度につきましては、県では10月から11月にかけて評価対象となる公共事業に関しての対応方針案を作成いたします。そして公共事業評価委員会では、その対応方針案に対して、現地調査を行います。そして年内に評価委員会として意見を具申いただきまして、県はそれを受けて年明けに対応方針を決定いたします。そして対応方針を含めた評価結果を公表するというスケジュールで予定しております。この評価結果等につきましては、平成27年第1回定例会の環境農政常任委員会で、ご報告をさせていただく予定でございます。以上でございます。

松崎        しっかりお願いいたします。

  要望を申し上げます。私は環境農政局で実施されている公共事業評価につきまして、地域の実情をやっぱりよく聞いていただいて、委員の方々には、正しく評価をして、意見を出していただきたいと願っているところであります。伺ってきた中で、現場や会議において地域からの声をしっかり聞いていただいているということでありますけれども、そこのところは重ね重ねよろしくお願いしたいと思っております。

  また、今後とも当局におかれましては、公共事業評価におきまして、必要としている地域の実情を踏まえていただき、そしてまた、社会基盤整備や防災対策など、県民の期待のあるところについては、同時に県民の理解も得ていただきながら、情報提供も含めて効果的に広報もやっていただきながら、県民とともに正しい評価を進めていただきたいということを強く念願いたします。