平成26年11月5日決算特別委員会での質疑のまとめ

財政運営について

松崎:     今回、平成25年度決算の報告を頂いたわけですけれども、そもそもこの予算につきましては、当初予算で退職手当を計上できなかったり、企業庁からの借り入れがあったりと、いびつな形でスタートした予算だと思いまして、昨年のこの場でも質問したところでございます。

このような形でスタートした予算、これが決算では実質収支・単年度収支ともに黒字となったわけであります。県当局もいろいろと苦労し工夫した結果であるとは思います。

そこでまず、今回の決算が黒字になったその理由について伺います。

平田財政課長:     平成25年度の当初予算編成作業は、700億円の財源不足が見込まれる厳しい財政状況の中で始まりまして、当初予算の発表時におきましても、職員の退職手当の計上を留保するなど、十分な財源が確保できないままスタートした予算でございました。

 しかしながら、緊急財政対策に基づき、ゼロベースからの徹底的な見直しにより、財源確保に取り組んだことに加えまして、株価の上昇、また好調な企業収益を反映して県税が前年度より増収となった結果、退職手当も補正予算で計上することができましたし、また、企業庁からの借り入れの必要もなくなって、一般会計の実質収支・単年度収支ともに黒字とすることができたものでございます。

松崎:     緊急財政対策の取組みの成果も踏まえて、今年度当初予算は税収増を見込んで、また経済の成長エンジンをまわす施策にも積極的に取り組むなど、厳しい見直しの成果をもとに攻めに転じた予算となっているということであります。さらに決算を見ても、3年ぶりに実質収支・単年度収支とも黒字。

 しかしながら、本県の財政構造を見ると決して楽観はできない状況であると私は思っております。来年度当初予算編成に向けた依命通知でも550億円の財源不足が予測をされているわけであります。市町村や県民を巻き込んで緊急財政対策に取り組んで、25年度決算は黒字となったのに、昨年の同じ時期の見込みである500億円を超える財源不足が来年度は見込まれているのであります。どうしてこのようなことになるのか伺います。

平田財政課長:    本県財政は、全庁をあげて緊急財政対策に取り組んだ結果、2年間で1,600億円と見込まれた財源不足を解消することができました。

しかしながら、歳入面では多額の臨時財政対策債に依存せざるを得ない。また歳出面では義務的経費の割合が8割を超えるなど、不十分な歳入、硬直化した歳出といった財政構造は、根本的には改善されておりません。

 こうした財政構造の課題を抱えた状況で平成27年度の財政収支を見通したところ、地方消費税の増収が見込まれるものの、その増収に伴う市町村への税交付金が大幅に増加すること、また、地方交付税と臨時財政対策債は減額となる見通しであることなどから、実質的な増収は110億円に留まるという見込みでございます。

 また一方で、歳出面、これは国の社会保障制度改革などに伴う介護・措置・医療関係費の増加などによりまして、義務的経費は660億円と大幅に増額となり、27年度当初予算編成に向けては、現段階では概ね550億円の財源不足を見込んでいるところでございます。

 この財源不足額、先ほど申し上げました緊急財政対策の成果、これを織り込んでもなお生じるものでございまして、本県財政、引き続き厳しい状況であることから、今後の予算編成を通じて、さらなる収入確保と歳出削減を強力に推進していきたいと考えております。

松崎:     そういう答弁を聞いていますと、今まで取り組んでいた様々な歳出カット、あるいはまた県有施設の見直し等の、ああした、まさに血の滲むような改革というものをもし着手しておらなかったら、大変なことになっていたということのようにも私には受け止められます。

 ただそうは言いましても県民の皆様にとってみれば、日常の生活に波及する大きな、いわばショックがあったわけでありまして、そのショックに対して、やはりこれは私ども神奈川県として、またこれはこれできちんと答えていかなければいけない。でないとサービスは低下したまま、財政は一向に良くならないということを繰り返していく、その先に神奈川県の将来が展望を描けないと思うんですよ。なので、もう少しこの点に絞ってお聞きしていきます。

 介護・医療・措置関係費の増大、それから公共施設の維持管理コスト、また地方税収で賄いきれない財政需要、こうしたところに補填されるところの地方交付税も、本県の場合は、その多くが後年度に負担を残す臨時財政対策債で配分されております。今後も公債費の増大が見込まれるわけですから、本県の財政運営は、今申し上げたように予断を許さないと思います。

こうした今後増大する公債費負担を考えますと、県債管理が財政健全化に向けた大きなテーマの一つと考えます。私もこれまで、プライマリーバランスを黒字化する、その目標年次を明確にするよう訴えてきたところであります。昨年、県債管理目標が設定をされ、プライマリーバランスの黒字化と県債残高の減少を掲げたのは一定の評価をするところであります。それに関連して何点か伺います。

 そもそも25年度決算で前年度より県債が増加した理由についてまず伺います。

落合資金・公営事業組合担当課長:                25年度の県債新規発行額は3,002億円でありまして、前年度に比べますと5億円増加しております。

 これは、臨時財政対策債以外の県債については96億円減少いたしましたけれども、その一方で臨時財政対策債が101億円増加したことによるものです。

松崎:    25年2月に県債管理目標を設定しておりますけれど、その内容と、これまでの取り組み状況について伺います。

落合資金・公営事業組合担当課長:                県債管理目標につきましては、臨財債を含む県債全体を対象にいたしまして、「30年度までにプライマリーバランスを黒字化する」と。それから「35年度までに県債全体の残高を減少する」という2つの目標を具体的に掲げております。

これまでの取組状況といたしましては、25年度につきましては、臨財債について本県として初めて46億円の発行抑制に踏み切りました。「通常の県債」につきましても、当初予算から161億円を抑制いたしました。

 また、26年度につきましては、借替債を100億円抑制するなど、2ヵ年でだいたい308億円の県債を抑制しております。

松崎:    その答弁は分かります。もう一つお聞きしたいことがあるんですけれども、そもそもということでもあるわけなんですが、県債管理目標の設定というものがありますよね。大変大切な作業だと思うんですけれども、その中にですね、臨時財政対策債も含まれるというふうに設定されていると思うんですが、間違いないですか。

落合資金・公営事業組合担当課長:                目標に中には臨財債を含んでおります。

松崎:     ここなんですけれども、これを含むか含まないかについて、県庁の中で、特に財政当局、あるいはまた知事、あるいは担当副知事を含めた中で議論はなかったんでしょうか。もう含めることを所与の前提として始めから考えているんですか。どっちですか。

落合資金・公営事業組合担当課長:                県債管理目標を設定する前は臨財債を除いた「通常の県債」について発行抑制していこうということで考えてございました。ただ先程来話に出ておりますけれど、緊急財政対策をやった中でですね、調査会の先生の方々から「臨時財政対策債も地方の借金にかわりはない」と。「それも含めて適正に管理すべきだ」というご提言を頂きました。そうしたご提言を踏まえまして、庁内で議論をして、臨財債も対象に含めるといったような判断をしてございます。

松崎:    そこをお聞きしたいです。その提言があったというのは分かりますよ。有識者の方々が大所高所からいろいろなご議論をなさったということも知ってます。ただそれを受けて、どういう議論をして、これも含めようというふうに判断をされたのか、そこの部分なんですよ。

落合資金・公営事業組合担当課長:                臨財債の性格から申し上げますと、国の厳しい財政状況を背景といたしまして、本来であれば国が地方に交付すべき地方交付税の代わりに発行可能額を決めまして、地方の借金として一方的に押し付けているものでございます。

 本県では、先ほど申し上げましたけれど、従来から県独自の借金であります「通常の県債」の抑制に取り組んできましたけれども、近年ですね、どうしても巨額の発行を余儀なくされております臨財債が県債全体の残高を押し上げて、将来の公債費負担を増加させる要因となっております。

 そうしたことがありまして、本県の県債発行の約8割を占める臨財債につきましても県債管理目標の対象に含めて、これを抑制していかなければならないということで目標の中に入れてございます。

松崎:    でもね、私は思いますけれど、それを唯でさえ重いと感じているかばんの中に、更にですよ、本来なら国が後でちゃんと手当してあげるよと約束をしているものを、更にわざわざ自らの手で重い荷物の中に更に入れる訳ですよね。そのことと私は等しいと思うんですよ。それを県民に対して「こういう理由でこうだから、この重い荷物を更に入れているんですよ」とどうやって説明するつもりですか。

落合資金・公営事業組合担当課長:                臨財債も含めて県債だいたい今3,000億円規模でございますけれども、これは将来発行し続けることになりますと、緊急財政対策の中でもお示しさせて頂きましてけれども、平成30年代半ばにはですね、義務的経費が増えまして、県の全ての歳入をもってしても義務的経費すら賄いきれないというような状況になってございます。そうしたことになってはですね、県財政そのものが立ち行かないということもございますので、今から臨財債を含めて将来の公債費負担を減少させるために抑制をしていきたいということで、この目標を設定してございます。

松崎:     そこはですから、ある意味、背に腹はかえられない事態に至ることを避けるためのやむを得ざる判断だと思うんですけれども、私は「やむを得ざる判断」と言う前には、必ず「緊急」だとか「喫緊」だとか、そういうものが付くべきだと思ってます。これを乗り越えて行くために、恒常的に借金を返す中にこれを無限定に組み込ませるということを、地方自治体の中でも大きな自治体である神奈川県が設定をしていくということになると、それはあらかじめ、いつの間にか所与の前提とされてしまって、国からは「それは神奈川県さん、しっかり頑張って返していって下さいよ」というふうに、いつの間にすりかえられるのではないかという危惧を持つんですよ。その辺の危惧っていうのはないんですか。

落合資金・公営事業組合担当課長:                地方交付税の算定上はですね、後年度きちんと臨財政の償還分も含めて算定をされるということでございますけれども、実際に地方交付税の推移等を見ますとなかなか全体としては増えていかないと、そういった状況もある中で、将来確実に担保されるかという点については、算定上入っておりますけれども、実額としてくるかどうかというのは分からない状況でございます。

 そうした中で、本県としてもやはり将来負担があるということですので、臨財政についても出来る限り抑制をしていきたいというふうに考えてございます。ただご心配のように、当然この目標を作るに当たっては、県民サービスといったような点も配慮いたしまして、当然、現世代の受けるサービス、それから将来世代が受けるサービスというものに非常なアンバランスがあってはいけないというようなこともございまして、毎年度50~100億円程度発行抑制をしていけば、何とか今掲げている目標を達成できるのではないか、というような点から一応目標を定めた次第でございます。

松崎:    最後のところの答弁は大変注目すべき答弁だなというふうに受け止めさせて頂きますけれども、それでは伺いますが、その一方でどうしてもここで議論しなければいけないもう一つの問題がございます。それはプライマリーバランスでありまして、平成30年にこのプライマリーバランスを達成すると、そしてまたバランスをさせると、そしてまた県債残高につきましても、平成35年を目標として、これも達成をするということになっています。が、そうやってある程度達成の見込みというものをいろんな意味でバランスさせていくことの、トータルのバランスですね、これを見込みをつけていくと、50億~100億と具体的な金額のご提示がありましたけれども、それならば、このプライマリーバランスであるとか、県債残高であります、これらの目標についても、30年、35年と言わずに目標の前倒し、これ考えていく必要があるんじゃないですか。

落合資金・公営事業組合担当課長:                介護・措置・医療関係費、それから公共施設の維持修繕コストの増加など、歳出圧力はますます高まっておりまして、また27年度に向けては財源不足も見込まれる中にありましては、県債も貴重な財源の一つとして活用していかざるをえないだろうと考えております。

 実際の県債の発行規模につきましては、経済の状況ですとか、地方財政対策に大きく左右される面もありますし、また県民サービスへの影響なども考えまして、毎年度収支のバランスを見極めながら慎重に決定していく必要があろうと思っております。

 そうした中にありまして、気持ちとしては目標を前倒しするぐらいの強い決意で財政運営に取り組みつつも、まずは今掲げている県債管理目標の着実な達成を目指してまいりたいと思っております。

松崎:    この委員会で財政問題を当局と論じるのはこれで7回目になります。ここ3年はずっとこの問題を取り上げてきたわけでありますけれども、目標年次を設定するまでで大変長い時間を要したというふうに記憶をしています。目標年次を設定されたわけですから、私としては、これはやっぱり次の目標を、これはなるべく早い時期に達成していくという意気込み、あるいはまた具体的な手法、様々な創意工夫、ということを重ねていただきたいと思っています。これは何も県民の皆様にご不便あるいはご負担をお掛けするということばかりが解決策ではありません。あれを利用できない、ここもロックがかかってしまった、ここも廃止になる、ここは売ってしまった、ということばかりを続けていくと、民間企業でも、どのような団体でも先に見えるのは決して明るい未来ではないと思うんです。だから、そこのところで工夫をしなくてはいけない、知恵を絞らなければいけないと思っているわけです。そして、それはなぜするのかと言えば、やっぱり、この神奈川県というものを持続可能なものとして、次の世代にお渡しをしていくという責務が現役世代である私たちにはあるからだと思っております。

 そこで次の質問をさせて頂きたいと思っておりますが、将来的な財政見通しというのを、やっぱり、これは県民の皆さまにお示しをするということは大変重要なことだと思いますし、財政健全化方策を作るべきだと、歴年、私だけではありません、会派のメンバーも主張してきたところであります。現在、緊急財政対策、先ほどご報告もありましたけれども、いったん終了をしております。つまり、これといった中期財政見通しがないという状況に今あるわけです。ところが来年度につきましては、550億円の財源不足が見込まれるということを、当局自らの手で依命通知という形で、いわば明らかにされている、また財政危機が目の前にあるという状況に立ち至っている訳です。そこで、いつまで経っても中期財政見通しを作らないということがあってはならないと思います。今後も厳しい財政運営が見込まれるという、この現実の中にありましては、場当たり的な対応ではなくて、中期的な財政見通しや健全化方策を直ちに作る必要があると考えます。いかがでしょうか。

宮治財政部長:    自治体の財政が単年度主義を原則としている中にございまして、将来の財政状況を見通し、中長期的な展望を持って毎年の財政運営を行うこと、これは、委員ご指摘のように、大変に大切なことであるという認識をしてございます。

 この、将来の財政状況を見通す、という作業を行う際に、現行の制度を前提として、そこに一定の与件を与えて見込むという作業をするわけでございますけれども、現在、たとえば消費税率がどうなるのか、法人の実効税率がどうなるのか、さらには新たな子育て支援制度、医療介護サービスの新たな支援制度、国民健康保険制度の大きな改革などといった、地方財政の根幹に関わるような大きな制度改正が大変多く予定をされているところでございます。

 こうした状況下で将来推計を行いましても、すぐに実態と乖離をしてしまいまして、使えない推計となってすぐ陳腐化してしまうことが非常に懸念をされるわけでございます。

 従いまして、現時点で直ちに中期財政見通しを作成するということは大変難しいと考えておりますけれども、今後、消費税率の引き上げですとか、社会保障制度改革の詳細、そちらが明らかになると思われますので、そうした動向を見極めながら、新たな中期財政見通しや健全化方策について作成を検討してまいりたいと、このように考えております。

松崎:     長年この中期財政見通しについては策定をすべきであるというふうに主張させて頂いてまいりましたけれども、その作成について、前向きなというか、一定の前を向いた答弁を得たというのは、私の過去の記憶では初めてであります。ただ、そこに今縷々述べられたようにまだ不確定な要素があるということでございますので、そういった不確定な要素につきましては、その状況が明らかになった時点におきまして、それを織り込みつつ、的確な策定をぜひ進めて頂きたいと思います。

では要望を申し上げます。県民、市町村に大きな混乱を巻き起こしながら進めてきた緊急財政対策本部も解散し、25年度決算の黒字とともに、今年度予算は過去最大規模の積極型予算としてスタートしました。

しかしながら、先に出された来年度当初予算編成に向けての依命通知では、550億円の財源不足が見込まれるとされております。こうした財源不足が生じるのは、地方税財政制度の構造的な課題があることはわかっておりますし、このことにつきましては、今後も国に対してきちんと要請していく必要があります。また、介護・措置・医療関係費の増加や、老朽化が進む施設やインフラの維持管理に今後多大なコストがかかることを考えますと、将来世代に負担を先送りすることなく、計画的な財政運営を行っていく必要があります。

そのためにも、県債管理目標の早期達成はもとより、中期財政見通しについて答弁がありましたように策定を強く要望して、次の質問に移ります。