平成26年11月5日決算特別委員会での質疑のまとめ

がけ崩れ災害対策について

松崎:     今年は、広島県の大規模な土砂災害をはじめ、相次ぐ台風などにより、全国で多くの自然災害に見舞われました。本県におきましても、10

月の台風18号の際には、多くのがけ崩れが発生し、残念ながら横浜市内では、2名の方が亡くなられています。そこで、本県におけるがけ崩れ災害対策について、伺います。

 まず、神奈川県では、がけ崩れ災害に対して、ハード・ソフト両面から取り組みを進めていると伺っておりますが、まずハード対策としては、どのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

砂防海岸課長:     県では、がけ崩れ災害のハード対策として、高さ5メートル以上、傾斜度30 度以上、住宅5戸以上など、一定の要件を満たす急傾斜地につきまして、コンクリート擁壁や法枠工等の防災施設を整備しております。

松崎:     次に、ソフト対策についても併せて伺います。

砂防海岸課長:    ソフト対策につきましては、大きく2点ございます。まず1点目としては、県民の皆様に、お住まいの地域の危険度を理解していただくことなどを目的に、がけ崩れの危害が生ずる恐れのある区域を、土砂災害警戒区域に指定しております。2点目は、市町村長による避難勧告の発令などに役立つよう、豪雨な

どにより、がけ崩れが発生する恐れが高まったときに、横浜地方気象台と協同で、土砂災害警戒情報を発表しております。

松崎:     今お答えのあった、ハード・ソフト両面の取り組みを進めるための事業について、平成25 年度の決算額と取り組みの進捗状況をお聞きします。

砂防海岸課長:    まず、ハード対策の施設整備につきましては、急傾斜地崩壊対策事業により実施しておりまして、平成25 年度の決算額は、単独事業、公共事業を併せまして、46 億9,367 万余円でございます。この事業の対象となる急傾斜地

が、県内には約2,500 箇所ほどございまして、平成25 年度末の整備率は約5割となっております。

 次に、がけ崩れなどへのソフト対策につきましては、砂防関係事業調査費により実施しておりまして、平成25 年度の決算額は、3億8,955 万余円で、土砂災害警戒区域の指定に必要な調査を実施いたしました。急傾斜地に関

する土砂災害警戒区域につきましては、これまで6,039 区域を指定しております。県内には、こうした指定が必要と想定される箇所が、土砂災害全体としましては、10,800 箇所ほどございますが、このうち急傾斜地の崩壊危険箇所としましては、約9,000 箇所ほどございまして、指定率は約7割となっております。

松崎:    台風18 号に伴う大雨によって、横浜市内で発生したがけ崩れで、2名の方が亡くなられたということは先ほど申し上げました。このがけ崩れ災害の発生箇所は、土砂災害警戒区域に指定していたのでしょうか。

砂防海岸課長:    横浜市内におきましては、中区野毛町、緑区白山の2箇所で、それぞれ1名の方が亡くなりましたが、2箇所とも土砂災害警戒区域に指定済みでございます。

松崎:    私も現場へ行きましたが、特に中区の方は、近隣の住民の方々が、通り抜けの道として使われており、車が折り返せないほど細くなっていく道ですが、人の通行はかなりありました。しかし、危険を注意喚起するものもなく、お墓や住宅があり、差し迫った危険があるようには受け止められませんでした。そのように、土砂災害警戒区域に指定はされているが、あまり危機を感じない場所というのは多いのではないかと感じましたが、そのあたりは、どうお考えでしょうか。

砂防海岸課長:    ただいまお話のありました、危険だと思われる箇所というところでございますが、今後調査をして、土砂災害警戒区域に指定されるであろうという箇所が県内に9,000 箇所ほどございます。現在は、6,093 箇所ほど指定しておりまして、その区域については、住民の方に周知しているところでありますが、残りの箇所についても、早急に調査をしていく必要があると思っておりま。

松崎:     調査をして、指定をしていかなければならない箇所がまだ膨大にあるとすると、その一つ一つの箇所について、どんな危険があって、それを防ぐためにはどうすればよいのかということについての、人命に直結する周知ですとか、避難の仕方については、さらにこれを、同時に進行させていくという点で、様々な取り組みが必要だと、改めて受け止めております。

 そこで、がけ崩れ災害の発生箇所について、台風18 号の際の土砂災害警戒情報の発表状況を伺います。また、併せて避難勧告の発令状況についても伺います。

砂防海岸課長:    台風18 号に伴う土砂災害警戒情報につきましては、中区を含む横浜市南部地域では10 月6日の7時10 分に、また、緑区を含む横浜市北部地区では8時10 分に、県が横浜地方気象台と共同で発表しております。次に、横浜市が発令する避難勧告につきましては、中区野毛町では発令されておりません。また、緑区白山では6日の10 時半頃にがけ崩れが発生しておりますが、避難勧告はその約1時間半後の12 時に発令されております。

松崎:    横浜市においては、土砂災害警戒情報が発表されていたにも関わらず、避難勧告を発令していなかったということですが、報道によりますと、避難所の確保の問題から、包括的に避難勧告を発令するのは現実的ではないとのことでした。横浜市では、台風19 号の接近に備えた緊急対策として、独自に市内の危険度の高い崖地を約200 箇所選定して、ホームページで公表しました。そして、選定した崖地の周辺地域には、土砂災害警戒情報が発表された時点で、自動的に避難勧告を発令することとしていました。実際に台風19 号が接近した際に、この200 箇所を対象に避難準備情報を発令した後、地域一斉メールで、市のホームページで選定箇所を確認するよう周知したところ、アクセス集中によりホームページが見られないなど、逆に市民に不安

を与えることとなりました。

 このように横浜市をはじめとした各市町村では、様々な課題を抱えていると思いますが、県として、市町村と連携したソフト対策の中身をどのように充実させて推進していくのか、今後の取り組みを伺いたい。

砂防海岸課長:    県では、県内市町村との情報共有や意見交換を行いまして、総合的な土砂災害対策を推進するために、市町村との連絡会議を設置しております。9月には、広島で起きました土砂災害を踏まえまして、安全防災局との共催で、この連絡会議を緊急に開催し、空振りを恐れずに、早めに避難勧告を発令することなどについて、市町村に働きかけをしました。

 台風18 号や19 号への対応のおきましては、各市町村で課題があった一方で、他の市町村で活用できる取り組みもあったと考えております。そこで、年内を目途に、安全防災局との共催で、再度、連絡会議を開催し、各市町村において工夫した取り組みや課題を共有するとともに、県として、できる限りの支援を行っていくことで、土砂災害防止のためのソフト対策の充実に取り組んでまいります。

松崎:    年内に開かれる会議というのは、どういった形で開かれて、どういったメンバーが集まり、どこまでのことを共有しようとしているのか、また、どのように県や市町村の取り組みを充実させるのでしょうか。

砂防海岸課長:  

 この会議は、総合的な土砂災害対策を推進するため、市町村と連絡調整をする会議でございます。県内市町村すべての、砂防や河川事業等に携わる担当部局で構成されております。県では、砂防海岸課に加え、安全防災局

にも協力いただいております。それぞれの取り組みの結果や課題を持ち合うことで、空振りを恐れずに避難勧告を早く発令するためにはどうしたらよいか、見出せないかと考えております。

松崎:     単なる情報共有ではなく、達成目標をどこに置くのか、どのような神奈川県の姿が望ましいのか、そしてそこにおける市町村の役割は何なのか、また、色々な形で関わりのある方々がどうやって英知を結集するのか、どのようにお考えでしょう。

砂防海岸課長:    市町村との関係という以前に、県では、9,000 ほどがけ崩れの危険箇所があるなかで、まだ7割程度の調査しか済んでおりませんので、県内全域において、残りの危険箇所を洗い出していって、住民の方に周知することを早急にやらなければならないと思っております。一方で、目標ということで申し上げます

と、市町村が避難勧告を出すために必要なハザードマップを一時も早く作成していくことを目標としたいと思っております。

災害対策課長:    今回の台風18 号、19 号における様々な災害については、我々も教訓を得たと感じております。10 月3日には、各種会議で、避難勧告を、空振りを恐れずに出してくださいというお願いを、各市町村に強く発信いたしました。

実際に、避難準備情報や避難勧告が多く出たことも事実でございます。我々の最終的な目標としては、被害者のない神奈川県をつくっていきたいと思っておりますので、情報発信の強化や、市町村をはじめとする関係機関との連携強化を進めながら、被害者ができるだけ少なくなるように取り組んでいきたいと思います。

松崎:    最後に、浅羽県土整備局長の、県民の命を守る決意を是非お聞かせいただきたいと思います。

県土整備局長:    自然災害から、県民の皆様方の命、財産、暮らし、これをしっかり守ることが私どもに課せられた重要な使命であると、また責務であると考えているところでございます。そのため、これまでも、がけ崩れなどの土砂災害を防止するための施設の整備を進めてまいりました。

 一方、この厳しい財政状況の中にありましては、一気に行うわけにはいきませんので、住宅の立地状況などを踏まえて、優先順位の高い箇所から、順次対策を実施するなど費用対効果をしっかり見据えたうえで、着実に整備を進めているところでございまして、引き続きハード対策として進めてまいる予定でご

ざいます。

また、すべてのハード対策を実施するということになりますと、多大な年月を要しますので、災害の危険度が高まったときには、避難をしていただくという、ソフト対策の充実が非常に不可欠であると認識しているところでございます。砂防海岸課長が申しあげましたように、土砂災害警戒情報の提供や、避難

勧告を的確に出していただくよう市町村への働きかけを行っているところですが、県民の皆様に、お住まいの地域が、どのような危険な状況にあるのかということを、しっかり認識していただくことが何よりも重要でございますので、まずは土砂災害警戒区域の指定を、早期に進めてまいりたいと思っております。

この警戒区域の指定については、国の補助金もありますので、来年度には全箇所の調査に着手できるよう、しっかりと国に働きかけてまいりたいと考えております。

県土整備局といたしましては、出先の土木事務所はもとより安全防災局を含めた関係部局との連携、市町村との緊密な調整を含めまして、ハード対策・ソフト対策に使命感を持って、全力で取り組んでまいる次第でございます。

松崎:    全箇所の調査に着手ということにも言及がありましたが、県民の命を守るということについ

て、手遅れということがあってはならないと思いますので、そこのところを、しっかりと取り組んでいただくことを要望します。