2015年9月25日(金) 本会議一般質問

(質問要旨)

2.くらし輝くふるさと神奈川

(2)水産業活性化指針と東京湾漁業の今後について

(松崎)   

  次に、水産業活性化指針と東京湾漁業の今後についてお聞きします。  私の暮らす金沢区は海の恵みがあり、古くから漁業が行われております。私自身も海が大好きで、生き物や水産業に関心を持っております。しかし、現在の東京湾の状況は、環境の変化によりかつての豊かさが失われ、生態系そのものの保全や漁業の将来を心配しております。

 本県は水産業が本来の活力を取り戻すよう、平成17年にかながわ水産業活性化指針を策定しました。この指針では10年後の平成27年、つまり本年における目標を掲げ、水産物の地産地消やブランド化、多様な担い手の育成・確保、漁業者の主体的な資源管理の取り組みと栽培漁業の推進、さらに豊かな水辺環境の保全・創造など重点的に取り組む施策が示されております。これらの目標は計画どおり、今の時点で全て達成されていますでしょうか。

 そこで、この指針策定時を振り返ってみますと、東京湾において、その主要な漁獲物であるシャコがほとんどとれなくなった時期でありました。漁業者は県の支援を受け、禁漁などの措置により資源の回復を図りましたが、現在においても十分回復していないのが実態であります。マコガレイなど他の魚も不漁となっており、東京湾の漁業生産量は非常に低い水準が近年、続いております。このため、東京湾の漁業者は経営的に厳しい状況に置かれております。

 不漁の考えられる原因の一つとして、近年、東京湾の海底付近の海水の酸素が少なくなってしまう貧酸素水塊の影響の拡大により、環境が変わったことが挙げられております。

 さらに、相模湾では県西地域の定置網におけるブリの豊漁等、明るい話題もございますけれども、三浦半島沿岸を中心に、地球温暖化の影響によるものと思われる海藻がなくなってしまう磯焼け現象が最近発生しており、海藻を餌とするアワビなどの魚介類の減少が心配されております。 水産業振興のためには、その畑となる漁場環境について早急に解決を図る必要があります。 このような水産業の現状の中で、この水産業活性化指針が今年、目標年度の節目を迎えたわけであります。  

 そこで、知事に伺います。

 県民への多様な県産水産物の提供について、この10年間、県では水産業活性化指針に基づきさまざまな取り組みを行ってきたところですし、また、今年度予算においては沿岸域水産資源再生を推進しているところですが、不漁が続く東京湾漁業の現状を踏まえ、漁業生産の回復の観点で今後どのような方向で取り組んでいくのか、具体的な事例を交えて知事の所見をお伺いします

(黒岩知事)           

 次に、水産業活性化指針と東京湾漁業の今後についてお尋ねがありました。

 県内水産業の近年の状況としては、相模湾における定置網漁業の漁獲量は増加していますが、東京湾では、漁場環境の悪化もあり、漁獲量は低迷しています。

 東京湾の漁業生産の回復に向けては、現在、検討を進めている次期水産業活性化指針に、具体的な取組を盛り込んでまいります。

 なお、具体的な取組につきましては、後ほど環境農政局長から答弁させます。

(環境農政局長)   

 東京湾の漁業生産の回復に向けた具体的な取組についてお答えいたします。

 東京湾の漁業生産の回復に向けては、二枚貝養殖の導入、栽培漁業の推進、漁場環境対策の三つの方向で取り組みます。

 まず、一つ目の、二枚貝養殖の導入については、人気が高く、水質浄化機能も期待できる、カキやホタテガイの養殖を広めていきます。

 近年、横浜や横須賀の沿岸で、漁業者がカキやホタテガイの試験養殖に取り組んだ結果、技術的に可能であることが分かりましたので、今後は規模の拡大と、安定的な生産を支援します。

 二つ目の、栽培漁業の推進では、対象とする魚を、より価格の高いメバルやカサゴに拡大していきます。

 三つ目の、漁場環境対策としては、藻場が消失する磯焼けに対し、海藻を食べる魚のアイゴなどを効果的に駆除する方法を研究します。

 また、6月から10月にかけて、海底付近の酸素濃度が極端に低下する現象、いわゆる貧酸素水塊については、発生状況の調査を充実し、漁場を選択するための情報として、漁業者に提供することで、その影響の軽減を図ります。

 こうした施策により、東京湾の漁業生産の回復に向けて着実に取り組んでまいります。 答弁は以上です。

(要望)                東京湾は、戦後の開発で沿岸の樹木が伐採され、さらに埋立により海の生物の揺りかごである干潟や藻場が消失し、横浜からは金沢区の野島海岸を残して自然の海岸線が失われてしまいました。  

 横浜は、海に面しているにも係わらず、港湾施設や工場によって県民と海との間が分断をされ、県民と海との距離が遠くなってしまいました。  

 このため、古くからの生活習慣、それは、海の恵みを大事にして生きるというライフスタイルが、脇に追いやられていると感じております。  

 今回、水産振興についての質問において、県においては二枚貝の養殖など東京湾の漁業資源の再生の取組みについて答弁をいただきましたけれども、私は、海の再生というのは、単に、海の生物、あるいは水質のことにとどまるものではなく、われわれ人間が本来の海の恵みに日々感謝して暮らすこと、つまり我々のふるさとを取り戻すことにつながるものと考えております。  

 県におかれましては、県民の皆様の子や孫の代まで、海の恵みに感謝して暮らすことができるように、県として積極的な取り組みを進めていただくことを要望します