平成28年 行財政改革・地方分権特別委員会(3月8日(火))質疑記録

【中期財政見通しについて】

松崎:    私としては昨年度、決算特別委員会におきまして中期財政見通しを示すよう、昨年度のうちから、一昨年の11月頃でありますが、宮治財政部長にもこれについて前向きなご答弁をいただいたことが記憶に残っているんです。また、ここ10年くらいずっとこのことについては、取り上げて、今回、あるいはまた予算、決算各委員会で、求め続けてまいったところでありまして、こういった形で中期財政見通しが示されたということはある種の感慨をもって、受け止めているところでございます。

 もちろん示された内容は甘くない、むしろ厳しいものでありまして、本県財政は今なお不十分な歳入や硬直化した歳出といった根本的な課題がある。ということでありますから、これまで10年を超えて色々なやりとりをしてきた中で浮き彫りになってきた課題を一つ一つ点検しながら、本日も若干ではありますけれども、質疑をさせていただきたいと思っております。

 財政の健全化につきましては、本県これまでも一生懸命取り組んできたと思います。例えば、将来の公債費負担の減少に向けた取組み、これを進めて、昨年度のプライマリーバランスの黒字化に続きまして、もう一つの目標であります、県債現在高の減少、これも実現をしたということであります。大変な努力があったと受け止めております。

 一時はですね、この二つについてどう実現するんですかということを問いかけるだけでも、達成までに大変な労力を要することが誰の目にも明らかだったわけですから、取り上げて質問すること自体が気が重い、そしてまた、いつ達成するかわからないことを議員として、明日にでもできるかのように質問するのも、いささかのこれは忸怩たるものがあったということを申し上げておきたいと思います。

 ただですね、達成をしたと言いますけれども、こういう独自の取組みを懸命にやったとしても根本的な課題は残ったままだということは、本会議における我が会派を含めた各会派の代表質問等においても明らかになっているところかなと受け止めております。

 そこでまず伺いますが、我が会派の代表質問におきまして、たきた団長からも指摘をしたところですが、地方税財政制度そのものが、本県の厳しい財政構造の原因のひとつであることは顕然たる事実であって、今も変わっていないわけです。本会議では黒岩知事からも答弁があったのですけれど、当局は、地方税財制度のどのような点が問題だと認識しているのか伺います。

財政課長:            地方自治体が、地域の実情に即した施策を自主的・自立的に行うためには、まずは、やはり地方の仕事量に見合った税財源が確保されなければならないと思います。しかしながら、現行の地方税財政制度では、地方と国の税源配分が4対6であるのに対しまして、歳出規模は6対4と逆転しております。地方は仕事量に見合った財源を確保できていない、という根本的な問題がここにあります。また、税源配分のアンバランスを調整する地方交付税総額、これも十分に確保されていない。これも課題であると思っております。

 そこで、現行の地方税財政制度を抜本的に見直して、個人所得課税や消費課税について、国から地方への税源移譲などを実現して、地方の仕事量に見合った税源を確保していくことが不可欠であると考えております。

 さらに、抜本的な見直しがなされるまでの間は、地方の財政需要に必要な地方交付税の総額については確保していく必要があります。こうしたことを実現するために、地方税財政制度の抜本的な見直しを国に対し要請していくことが重要であると考えているところです。

松崎:    今、言われた抜本的な改革、見直しと言うけど改革ですよね。これは国に対してどのように働きかけていくのでしょう。この質問するのもう8回目くらいですけど。

財政課長:            この改革を実現するためには、国に対して強く要請していくことが重要だと考えております。これまでも、何度も国に対しては要請をしてまいりました。これまでの取組みも含めましてお答えいたしますと、本県独自の取組みといたしましては、「国の施策・制度・予算に関する提案」、これで国に求めていくほか、本県だけではなくて地方が団結して国に求めていくことも必要だろうということで九都県市、また全国知事会を通じて、また、意を同じくする都市部の自治体と連携して、この地方税財政制度の抜本的な改革を求めてまいりましたし、これからも求めていかなければならないと考えております。

 今回、こういった形で「中期財政見通し」をお示しすることができました。

 ともすれば、本県、都市部にある都道府県につきましては税収も比較的豊かじゃないかと思われがちなところがありますけれども、やはりこうした苦しい財政運営を毎年強いられているんだというところにつきましては、今回の中期財政見通しのデータを上手く使いながら国に対してしっかり、具体的な数値で明らかにしながら、説明して訴えていくことが重要ではないかと考えております。

 今後も、国に対しまして、この中期財政見通しのデータを最大限活用して理解を求めて抜本的な改革につながるよう、求めてまいりたいと考えております。

松崎:    その際にですね、臨財債をずっと押し付けられて、この厚みのある臨財債を押し付けられているというのが全国的な都道府県からすると極めて少数派という問題が一つあるのと、もう一つは財政の健全さを表す指標。特に県債を発行するときに「いい県債ですよ」と言うための指標。これと実際の財政状況がまったく正確に表されていないという問題。問題は他にもあるのですけど、この大きな二つの問題について平田課長はどう考えていますか。

財政課長:            臨財債の発行につきましては、確かに、都市部の、どちらかと言うといわゆる財政的な指標が豊かと思われるところに傾斜して配分されているところは、一面ではやむを得ない部分もあると思うのですね。最終的にそれはちゃんと償還していかなければいけないということで。

 ただ、その比率があまりにも偏りすぎているというのが私どもの課題の認識でございまして、そこにつきましてはこれまでも国に対して再三要請してまいりまして、一時は配分の比率が8割を超えようかというところもございましたが、これを6割を切るまで見直しが実ってきているところでございます。ただ、そもそも臨時財政対策債は、本来は、地方交付税という形で交付されるまでのあくまで代替措置で臨時的なものでございます。これの抜本的な廃止は引き続き求めていかなければならないと考えております。

松崎:    愛知県なども同じような状況だと言うのだけど、しかも、あそこにはトヨタという大きい企業があってですね、企業城下町で、中堅から下請けまで一旦潤えば、今、特に潤っていると思いますけどね。そこは非常に法人税収から考えても、好調な面が出てくる。そういった意味では本当に神奈川県が最もそういうしわ寄せを、顕著に受けているという認識があるのだけど、そこは感覚は同じなのでしょうか。また違う感覚をもっているのでしょうか。

財政課長:            たしかに県内にある企業の状況というのは各県異なるところはあろうかと思いますけれども、今委員がおっしゃられた臨時財政対策債の過重な配分という観点から言うと、愛知県と本県はこれまでずっと同じような状況で、相当、大きな比率を配分させられてましたので、このあたりについては、やはり同じ思いである自治体として訴えていく部分もあるかと思います。

松崎:    次に県債関係について聞きますけど、県債関係を25年度以降発行抑制をずっとかけていたかと思うのですけど、実績を簡潔にお答えください。

資金・公営事業組合

担当課長:            県債発行抑制の実績ですが、平成25年度207億円、平成26年度401億円、27年度は524億円 抑制してまいりました。  

 28年度当初予算案では、52億円の借替債の抑制をご提案させていただいておりますので、これを合わせますと、抑制規模は約1,200億円程度になります。

松崎:   目標は前倒しで達成しておられるのですが、要因は何でしょう。

資金・公営事業組合

担当課長:            県債管理目標を設定した当時の25年度の県債の発行額をベースとして、今後とも3,000億円を超える程度の規模で県債を発行し続けたことを想定したものでございます。  

 その後、緊急財政対策の取組みや税収増などによりまして、財源を活用し、県債の新規発行の抑制、借替債の発行抑制、合わせて国に強く要望をしてまいりました臨財債の配分方法の見直し、配分割合の引き下げが行われましたことによって臨財債の発行額が減少いたしました。  

 目標設定時の想定より県債の発行抑制が進んだこと、こういったことが前倒しができた要因です。

松崎:   それはつまり裏を返すと、当初の目標設定が低かったということではないですか。

資金・公営事業組合

担当課長:            県債発行目標の達成というのは、今申し上げましたような様々な取組みをした結果でして、当時の設定としては決して低いものであったとは認識しておりません。

松崎:    そこはそのように当局は言うと思います。

 ではお聞きしますけれども、県債現在高の減少を実現したのに、なぜ公債費は増えているのでしょうか。

資金・公営事業組合

担当課長:            平成20年9月に発生しましたリーマンショックに伴いまして、大幅な税収不足が発生し財源不足が発生しました。

 21年度以降、交付税の代替措置であります臨時財政対策債が大量発行を余儀なくされました。

 この、21年度以降に大量発行しました臨財債の償還が本格化しまして、年々償還額が増えていることから、県債残高が減少しても、しばらくの間、公債費は増加している状況です。

松崎:    緊急財政対策、24年の10月の策定したもの、ここにおいてはですね、公債費は毎年200億ずつ増加していくことを推計していたわけです。   

 ところがそこまで伸びていってないじゃないですか。この辺どうなんですか。

資金・公営事業組合

担当課長:            緊急経済対策におきましては24年10月に公表いたしました義務的経費の長期推計をベースにしまして、今後とも毎年3,000億円程度の規模で県債を発行し続けるものとして想定して設定しました。   

 その後、機会あるごと国に働きかけ、臨財債の配分方法の見直し、配分割合の引下げが行われ、臨財債の発行額は減りました。

 また、今までその他の県債についての発行抑制の努力を続けてまいりました。

 借替債の発行抑制も行ってまいりました関係で、残高が減少に転じるとともに、県債の現在高が減少したことによって、それほど伸びてこなかったということです。

松崎:    今のは減少を後追いで説明しているだけであって、私が聞いているのは、目標設定あるいは途中の段階においてもきちっと状況に合わせて適切かつ的確な政策誘導を含めてやっていかなければいけないものではなかったのかという意味合いなんですよ。その点、池田さんどう思いますか。

資金・公営事業組合

担当課長:            減少しましたのは、今のようなお話で減少したということですが、これまでも様々な、いわゆる発行規模につきましてはその時の財政状況に応じて発行してきました。 そういった内容で、発行抑制を含めながら、発行規模も含めながら対応してきたと考えています。

松崎:    確かに、全体を最後引き受ける、そして歳入歳出を管理していく立場にあるわけだから、そういった説明も一応合理的だなと思いますけれども、しかし一方では総額としてきっちりと抑え込んでいこうという決意のもとに設定してきたはずなので、やはり政策誘導という観点を持っていなければ、これは逆に言うといろんなところで配慮がうまくきき、そして国の対応も、こちらの要望もあったのでしょうけれども、しかしだからといって結果の説明だけではなかなかこれは通らないものだと思いますよ。

 トータルとして通したい、結果を実現しなければいけないというのは、非常に高い、高邁な理想というのを厳格にやらなければいけないわけですから、そこのところについての感覚というものは常に持っていなければいけないなと私は思っています。   

 これは今までの議論をやってきた当時の感じなんですよ。

 そこでお聞きしますけれども、新たな県債管理目標を設定するとのことですが、どういう考え方で設定したのでしょうか。

資金・公営事業組合

担当課長:            これまでの県債発行抑制の努力や、臨財債の国への要望等により、配分方法の見直しや、配分割合の引下げに伴い、臨財債の発行額の減少によりプライマリーバランスの黒字化、及び県債残高の減少という現行の目標は達成が出来ました。   

 しかしながら先ほど申しましたように、公債費は今後も増加が見込まれます。   

 そこで、将来の公債負担の減少を目指しまして、現行の目標の年次は35年度でございますが、残しつつ、取組みをより踏み込み推進させるため、これまでの目標設定の3つの視点であります、「平成30年度前半までに達成可能な目標であること」、「取組み成果を県民にわかりやすく示すことが可能な目標であること」、「現在の県民サービスを極端に低下させない目標であること」という3つの視点を継承しつつ、「平成35年度までに県債残高を2兆円台に減少する」という新たな目標を設定しております。

松崎:    プライマリーバランスの目標は、今回ございませんけれど、どう考えて外されたのですか。

資金・公営事業組合

担当課長:            プライマリーバランスにつきましては、世代間の受益と負担の関係を示します、地方債と公債費を考える上で非常に重要な指標であると考えています。   

 これまでの取組みより県債の新規発行額が減少するとともに、21年度以降大量に発行することを余儀なくされました臨財債の償還が本格化し、年々公債費の償還額が増えていることから、プライマリーバランスの黒字化が続くものと推計してございます。   

 また現在高を減少させるためには、プライマリーバランスの黒字化の維持というものが必要になります。   

 従いまして、県債現在高を2兆円台に減少させる目標を設定しました以上、県債の発行抑制が進むことになり、プライマリーバランスの黒字が前提となりますので、今回の目標からは外しております。

松崎:    甘くないの。

資金・公営事業組合

担当課長:            逆に言いますと、黒字化を実現できませんと今の目標を達成できないということになりますので、黒字化はもちろん達成したいと考えております。継続していきます。

松崎:    つまり、甘くないんじゃなくて、甘いんじゃなくて辛いということですね。

資金・公営事業組合

担当課長:            頑張ってまいります。

松崎:    頑張るというのは当たり前だと思います。

 目標を掲げる以上はね。ただ問題は、そうすると35年度の県債残高は、じゃあどれくらいだということなんでしょうか。

資金・公営事業組合

担当課長:            今回の推計は、5年間の県債の新規発行見込額を受けまして積算したもので、32年度までは推計をしています。   

 ただ仮に、県債の新規発行額が33年度以降、32年度と同額に発行したということで推計しますと、35年度末の現在高は3兆1,300億円程度と推計しています。

松崎:    そうすると、3兆6,000億円くらいだから、5,000億円くらい、そのままじゃないけどお金だからね、5,000億円くらい縮減する感じなのかしら。

資金・公営事業組合

担当課長:            今後償還が進む分がありますので、35年度の現在高としては3兆1,300億円を想定しております、5,000億円ほど下がります。

松崎:    いずれにしましても現下の状況、また中小企業の経営状況、景況感なんか、また1月以降のものも考えますと、いま足元から見通しただけでも厳しい目標出ていたかと思うんですけれど、実際にこれから見込まれる需要、財政として出動しなければいけない場面だけを考えても、まず、非常にステーブルな話としても公共施設の老朽化対策、あるいは新まなびやとか、必要なものがありますよね。   

 それからオリンピック、パラリンピック、ラグビーもそうなんでしょう、それだけの公共的なものを財政出動して作りますよね、そういうことをやると、当然のことながら、その単年度の予算ではきかないことが誰の目にも明らかなわけで、県債発行していかざるを得ない。   

 本当にそれを目標設定を帳尻だけですよ、帳簿の尻だけを見て、5,000億円縮減するということは、それがいろいろある上に、当然あるわけだから、言ってる意味分かりますか。だから、そうすると、今後の県債発行をどのように考えているのか、新たな県債管理目標に向けどう取り組んでいくのかをもう1回、よく伺いたい。

資金・公営事業組合

担当課長:            今後、介護・医療・児童関係費などのさらなる増加や、委員ご指摘の通り公共施設の維持修繕コストの増嵩など将来の歳出圧力はますます高まってまいります、県債も貴重な財源として、一定程度活用していかざるを得ないと認識しています。

 一方で、多額の県債の発行は、義務的経費でございます将来の公債費負担の増加に直結します。

 こうした中で、県債管理目標を達成するには、今後も毎年度の財政運営の中で、施策・事業のこれまで以上に徹底した見直しや、優先順位の見極めにより、財源を確保しまして、県債の発行抑制に努めていく必要があると考えています。

 また、県債現在高を押し上げている主な要因は、臨財債ですので、今後とも、国に対して、臨財債の速やかな廃止と交付税への復元を粘り強く要請してまいります。

 こうした取組みを重ねまして、可能な限り、県民サービスの低下を招かないように、収支のバランスを見極めながら、臨財債を含めた県債の毎年度の発行額を抑制することで、目標達成に向けて、着実に取組みを進めてまいりたいと考えています。

松崎:    私の直感的なことだけ申し上げておきますけど、臨財債を本来の地方交付税に復元してもらいたいというのはもう県是みたいなもので、このやり取りするたびに、この話必ず聞いてますけど、私の今の直感だと、こう言っては大変失礼なんですが、この臨財債を半分程度復元したとしても、本県のこれから見込まれた財政事情を考えると危機的なことになるという感じがします。中期財政出したら3,750億円財源不足、というか企業では欠損ですよね、がはっきり出てる。そのことに対してどのように手当てするのか聞くと、「ない」って言う話です基本はね。

 税収が増えたらいいけどとか、あるいは、あれがこうなったたらいいけどっていう話があるけど、それはいわば雨が降ればいいけどとか、天気になればいいけどっていうのとほぼ同じですよね。

 我が県の置かれた企業の状況っていうのは決してそれほど暗澹たるものではないと思いますね。立地してるコストっていうのはすごいんだから。そのことに対してそれを上回る利益を常に果たし続ける企業でなければ、5年10年とここに立地し続けられない状況が実はある。中小なんか特にそう。そういうことを考えると決して甘くはないと私は認識してます。それは臨財債の復元は必ず答弁で言っているけど、そのことがあったらこうなるなんていう、甘い状況にもう実は神奈川県はないのではないかという認識です。この認識をもって、もう一段踏み込んで、「甘くないんだな」という認識の下でやっていかなければいけないということを私は強く思っています。

(要望)

 要望を申し上げます。県債管理目標を前倒しで達成してきたことは、会派としても評価をしております。また、財政問題、特に県債全体の抑制について、これまで機会あるたびに我々は取り上げてきたわけですけれども、将来世代に負担を先送りすることなく、計画的な財政運営を行うためには、財政の健全化は本県の重要課題である。これも会派として認識しております。ここで、取組みを減速させることなく、本県の将来世代に負担を先送りしないように、新たな県債管理目標に向かって、より厳しい感覚をもって規律ある財政運営にしっかりと取り組んでいただくよう要望しまして、次の質問に移ります。