平成28年 予算委員会質疑要旨(3月16日(水))

【投資的経費と県債管理】

松崎        私から、もう一点お聞きしますのは、投資的経費と、県債管理の事柄についてであります。

 まず、お聞きしますが、今回の当初予算では、投資的経費が14.1%伸びております。どういう理由によるものなのでしょうか。

財政課長                投資的経費の内訳を見てまいりますと、「公共事業費」と「県単独土木事業費」は、前年度と比較してほぼ横ばいとなっておりますが、「その他投資」が前年度6月現計比で124.3%、194億円の増と大幅に伸びてございます。

 その他投資が大幅に伸びた理由でございますが、高度経済成長期に集中的に整備いたしました県有施設の耐震化や老朽化対策に必要な経費を計上したこと、また、リニア中央新幹線の整備に伴う相原高校の移転費用、こうしたものを今回計上していることが、大きな要因となってございます。

松崎        今そういったお答えがあったのですが、平成28年度当初予算をみますと、例えば県立学校施設再整備計画、いわゆる新まなびや計画として、県立学校の耐震対策や、トイレ環境の改善に関する予算が計上されております。

 計上されておりますが、これらの事業につきましては、平成35年度までに完了することとしております。その理由はなんでしょうか。

まなびや計画推進課長        新まなびや計画は、平成28年度から39年度までの12年間を計画期間としておりますが、県立学校の耐震化につきましては、生徒等の生命・安全に係る事柄であること、また、県立学校の洋式化等のトイレ整備につきましては、生徒・保護者等からの改善要望が大変多く、老朽化対策の中でも特に優先度が高い課題であることなどから、計画の前期を中心に、平成35年度を目途に完了するよう取り組んでいくこととしたものでございます。

松崎        県立学校の耐震対策につきましては、生徒や教職員の命に関わる重要な取組であります。また、トイレ環境の改善を求める県民の声、これはずっと高まっているわけですが、県立学校の魅力向上という観点からも急がれるトイレの洋式化についても、我が会派として早期の対応を求めてきたところである。そこで、新まなびや計画におけるこれらの事業については、よりスピード感を持って、前倒しして取り組むべきと考えますが、教育局長、いかがでしょうか。

教育局長                県立学校の耐震化、それとトイレ整備にあたっては、早期に完了させるため、生徒等が校舎を使用している中での工事、いわゆる「居ながら工事」により実施する予定としております。

 ただ、騒音などによる学校活動への影響等も勘案しないといけない、ということがありますので、大きな音が出る工事は、夏休み期間中を中心に実施するなどの対応が必要となり、一般の工事と比べ、工期が限定されるということなどから、この完了目標を一気に早めるのは、なかなか難しいところです。

 しかし、委員のお話のとおり、児童・生徒の生命に関わること、安全で快適な教育環境のもとで、より良い学校生活を第一に考えるべきことと、改めて噛み締めております。

 今後、具体的な施工方法やスケジュールを詰めていくことになりますが、そうした中で、少しでも早く整備が完了するよう、県教育委員会として、最大限知恵を絞って取り組んでまいります。

松崎        最大限知恵を絞るということであります。完了目標があるけれどもということであります。やはり県民の多くの皆様が求めていること、また命に関わることは求めているかどうかということではなく、命に関わるという現実がございますので、そこのところを踏まえた対応を是非お願いします。

 今伺っただけでも、今後も投資的経費の財政需要は大きいわけであります。

 今後の投資的経費とその財源となる県債につきまして、どのように見通しているのかお聞きします。

資金・公営事業組合担当課長            今定例会の、総務政策常任委員会、行財政改革・地方分権特別委員会でご報告いたしました中期財政見通しに基づいてお答えいたしますと、投資的経費につきましては、「かながわグランドデザイン第2期実施計画」のプロジェクト事業費や、「新まなびや計画」に基づく県立高校の改修工事費など、現時点で想定し得る事業費はすべて見込んでおります。

 しかしながらこれは、現時点で想定できる事業費の見込でございますので、推計の最終年度に向けましては、事業進捗に伴いまして、今後の見込額は減少していくことになります。

 一方で、委員ご指摘のとおり、今後東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた施設整備や、県公共施設の老朽化対策など更なる費用が見込まれますが、これらの事業費は、現時点で具体的な金額を見込むことは困難です。

 こうした事業費を考慮いたしまして、計画上減少することになりますが、それを減らさず28年度と同じ推計に置いています。

 投資的経費の財源となる県債につきましても、28年度と同じ水準の750億円で推移していくものと見込んでおるところです。

松崎        今答弁がありましたが、不確定要素として見込まなければならないので、減少していくはずの費用についても、これを減少していくとは見込まないで、その当初かかっているお金と同じだけのお金がかかるものとして、敢えて厳しめに計算をしているというお答えでありました。

 その点を踏まえまして、2つの県債管理目標、今は前倒し達成できている、その要因と、今後、2つの目標を継続して達成していくためのポイントは何か、それぞれお答えください。

資金・公営事業組合担当課長            緊急財政対策の取組による事業見直しや不用県有財産の積極的な売払い、徴収努力による税収増等によりまして、財源確保が行われまして、県債の新規発行抑制を進めるとともに、借替債の発行抑制、いわゆる前倒し返済を計画的に行ってまいりました。

 これに併せまして、臨時財政対策債につきましては国に対して、粘り強く要望してきた一部が取り入れられ、配分方法の見直しや配分割合の引き下げが行われたことによりまして、臨時財政対策債の発行額が減少しました。こうした取組により前倒し達成できたものと考えています。

 次に、目標を継続して達成するためのポイントでございますが、今後、新たな財政需要が見込まれますけれど、これまで以上に事業の優先順位の見極め、スクラップ・アンド・ビルドを徹底することによりまして、県債の発行額をしっかりとコントロールすること。

 また、臨時財政対策債につきましては、速やかな廃止と交付税への復元、これまで以上に徹底して国に要請してまいります。

 そのことによりまして発行額を減少させていくこと、こうした取組により、引き続き県債全体を抑制していくことが、「プライマリーバランスの黒字化」「県債残高の減少」を維持していくポイントと考えています。

松崎      

 ポイントについてはよくわかりました。

 それではご説明の中にありましたが、前倒し返済がその都度その都度可能な財政状況にあるかどうか、そしてまた、臨財債の発行が少なくて済むかどうか。それが毎年、臨財債の発行が、今から見て来年度も再来年度もその先も少なくて済むかどうか。 ここのところは、いわば、たまたま今回がよかっただけとも言える、そういう状況なのかなというふうにも県民の方からも受け止められると思います。

 同時に、これから先どのように取り組むのかとお聞きしましたら、今のお答えでは、優先順位をつけていく。では優先順位をつけようとしてもつけられない、例えば介護・医療関係、様々な公共の建物の維持・修繕、人件費等も含めた、いわば、企業でいえば固定的に必ずかかってくるお金。

 ここのところは、県という地方自治体においてもやっぱりかかるわけですから、ここを見込んでいかなければならない、そうすると、自由度があるのは10%台というこの状況に、これから先もそう変化はないだろうというのが大方の見込ではないかな、と思うんですね。

 その中で、目標達成をしていかなければいけない、さもなければ神奈川県にとっては大変な借金の重みが、結局、政策をほとんど打てない状況に追い込まれることにつながりかねないと思います。

 そこで、お聞きしたいんですけれども、28年度までとされている臨財債、28年度までということは、その後については、動向は不明なわけです。でも、臨時財政対策債がどうなるかということは、本県の財政にとって、大変重要なかかわりを持つ事柄でございます。

 その不明なままの臨時財政対策債を見込みつつ、中期財政見通しも立てておられるわけですから、それではお聞きしますが、今後の公債費についてどのように推移すると見込んでいるのか。

資金・公営事業組合担当課長            20年9月に発生しましたリーマンショックに伴いまして、大幅な県税収入の減によります財源不足によりまして、臨時財政対策債の大量発行を余儀なくされました。特に22年度から26年度まで毎年2,000億円を超える規模の臨時財政対策債を発行してまいりました。既にその償還が本格化し、今後も年々償還額が増えていくことから、公債費は当面、増加していく見込みです。

 今回、ご報告いたしました中期財政見通しでは32年度の公債費の推計額は、約3,260億円、28年度の当初予算の2,946億円と比べまして、314億円程度増加する見込みです。

 なお、30年代中盤まで公債費については増加していく見込みと推計しています。

松崎        公債費について推移をお聞きしたわけですから、その見込ということについてはお答えがあったわけですけれども、そうしますと本県の財政は大変厳しい状況が続いていくということになるわけであります。

 そこでお聞きしたいわけですが、今後の県債発行の基本的な考え方と、県債管理に関して次なる目標をどう考えているのか、総務局長にお聞きします。

総務局長                県債は、社会基盤整備の財源としては、一定程度の活用は必要であると考えておりますけれども、ただ、その償還には非常に長い年月がかかります。

 そのために、これは必ず予算化をしなければいけない義務的経費ということで降りかかってまいりますから、将来に渡って発行額と償還額の見通しを立てておかなければいけないと思います。

 こういう見通しの下に、発行額をコントロールしていくことが今後の県債発行の基本的な考え方だと考えております。

 そして、今後ですけれども、実は本県は平成9年度に、「10年以内に新規発行額を自主財源の10%以内とする」という、そういう10%目標を掲げてから、目標を見直しながら県債管理をやってまいりました。

 ようやく、ここで二つの目標を達成したわけですけれども、平成9年度から実に20年近くかかっております。

 しかしながら公債費は平成9年度は1,281億円でした。この28年度は2,946億円、そして、ピークとなります30年代半ばは3,600億円程度まで増えていくのではないか、そのように推計しております。

 県債管理の目指すべきところは、公債費を減少させていくこと、これが、やはり最終の目標だと思っておりますし、それまでの間、増えていく公債費を少しでも緩やかにしていく、こういうところもやっていかなければいけない、そういう意味では今回ようやくスタートラインに立ったと、そういうような認識を持っております。

 これから、新規目標として35年度までにこの県債残高を2兆円台にしようと、そういう目標を掲げさせていただきましたので、今よりも6,000億円程度残高を減少させていく、これをなんとしてもやっていかなければいけない。

 もしこれができませんと、やはり本県財政、先ほど委員がおっしゃったように、公債費負担で必要なサービスができなくなってしまうというような危機感もございますから、公債費の増加のカーブを緩めて、そして、その先の公債費の減少を確実なものとしていく、こういうことを達成することで将来に渡って必要な県民の皆様へのサービスをしっかり確保できるよう、頑張ってやっていきたいと思っています。

松崎        ぜひよろしくお願いいたします。 平成28年度の当初予算は、かながわグランドデザイン第2期実施計画を着実に進めるために、果敢にチャレンジするとともに、学校施設の老朽化やトイレ整備、横断歩道などの交通安全施設の整備など、県民生活に身近なところに配慮しつつ、財政健全化の象徴である、県債管理目標を前倒して達成しています。

 経済情勢が不安定さを増している懸念要素もございますが、県民に笑顔で暮らしていただくために、慎重の中にも攻めの気持ちで取り組んでいただきたいと思います。

 厳しい状況の中で、財政健全化も含めまして今回の予算に対する知事の思いをお聞きします。

黒岩知事                平成28年度当初予算は、「かながわグランドデザイン第2期実施計画」を策定して初めての当初予算となりますので、この計画で掲げた施策を着実かつスピーディーに実施するための予算として編成いたしました。

 28年度は、新たな企業誘致施策である「セレクト神奈川100」や、「県立高校改革」「新まなびや計画」もスタートいたします。そして、2019年にはラグビーワールドカップ、その翌年にはオリンピック・パラリンピック競技大会が日本で開催されることから、この二つのビッグイベントに向けた準備も、しっかり進めてまいります。

 一方で、中期財政見通しでもお示ししたように、今後も介護・医療・児童関係費や公共施設の老朽化対策に多額の費用が見込まれることから、財政健全化に向けた取組も着実に進める必要があります。

 特に、県債の発行については、将来の公債費負担として本県財政に大きな影響を与えることから、計画的にコントロールしていく必要があります。そこで、現在、県債残高は3兆6,000億円を超えていますが、今回、「平成35年度までに2兆円台に減少」という新たな県債管理目標を設定いたしました。

 この目標の達成に向けて、全力で取り組んでまいります。また、3つの特区を最大限活用した経済活性化、「セレクト神奈川100」による企業誘致、ラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックの開催を契機とした観光戦略などにより、経済のエンジンをしっかりと回して、その成果を将来的な財政基盤の強化につなげてまいります。

 このように、28年度当初予算により、神奈川モデルの創造・発信に積極的に取り組むと同時に、新たな財政健全化の取組をスタートすることといたしました。

松崎        共に頑張っていきたいと思います。