平成30年 予算委員会質疑要旨(3月15日(木))

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【国民健康保険について】

松崎        人口減少を見据えました国民健康保険財政の将来推計は行っているのか。

田熊医療保険課長                本県の人口は減少傾向となりますが、1人当たりの医療費が高い高齢者の比率は、平成37年度以降、高まる見通しです。

 このことを踏まえ、今後の国民健康保険医療費について推計したところ、平成47年度には、約1兆4,500億円となり、平成27年度の約6,547億円と比べると、約2.2倍になると見込んでいます。

 一方で、歳入については、国民健康保険制度が、構造上、保険給付費に応じて国や県などからの負担金・交付金が支払われる仕組みになっているため、特に推計は行っていませんが、歳出の伸びを勘案すると、中長期的には厳しい財政状況にあると認識しています。

松崎        心配をしているのは、多くの県民の方々にとっても同じ心配があろうかと思いまして、やはり、ここは財政負担を真剣に考える意味でも、本県の国民健康保険財政がどのようになっていくのか、しっかりと推計を行っていただきたいと思います。

 33市町村中、どれぐらいの市町村が一般会計からの繰り入れを行っているのか。

田熊医療保険課長                平成28年度においては、33市町村中30の市町村が、一般会計からの法定外繰り入れを行っており、このうち決算補填等を目的とした繰入を行っているのは、25市町村となっています。

松崎        国民健康保険は、半分を公費、半分を保険料で賄う、これが大原則。保険料が足りないからといって、さらに税金で補てんするのは税による二重負担であり、過重な県民負担に他ならないと思います。一般会計の繰り入れはあるべき姿なのか、当局の考えはいかがか。

田熊医療保険課長                市町村の国民健康保険特別会計に赤字が生じた場合に、その補填のために行う一般会計からの繰り入れについては、本来、被保険者の保険料で賄うべき費用を、住民全体の負担によって賄うことになりますので、計画的・段階的に赤字を削減し、解消していく必要があると考えています。

松崎        今のご答弁からすると、当局としても、一般会計からの繰り入れは本来あるべき姿ではない、ということだと受け止めさせていただきます。 ○ それでは伺いますが、平成30年度の国民健康保険財政の県への移管に伴いまして、市町村の一般会計からの繰り入れは解消されるのでしょうか。

田熊医療保険課長                決算補填等を目的とした一般会計からの繰入金については、計画的、段階的に解消していく必要があります。

 このことについて、県では、市町村と協議を重ねた上で、一般会計からの繰り入れに関する考え方を整理し、国保制度の運用に関する県内の統一的な方針である「国民健康保険運営方針」に記載しましたので、基本的にはこの方針に沿って対応していただくべきか、と考えています。

松崎        考え方を整理するというのは大いにやっていただかなければいけないが、やはり、つまり一般会計からの繰り入れを解消するということは、はっきりと打ち出していただかなければならない。そして、なんでそんなことを申し上げているのか、ということは、繰り返しにもなるが、本来は公費50%、保険料50%という原則があるからである。このことは申し上げておく。

 では、次に、保険料について伺う。平成30年度の保険料は全県的に、これは統一されるのか。

田熊医療保険課長                平成30年度に、本県において保険料の統一は行いません。

松崎      

 行わない、というお答えでございました。他都道府県の状況はいかがか。

田熊医療保険課長                平成30年度に、保険料の統一を行う都道府県はないと承知しています。

 ただし、大阪府、広島県、奈良県、滋賀県につきましては、保険料を統一する方向で準備を進めている、と聞いています。

松崎        今の答弁でちょっと気になったのだが、30年度の統一のところはないが、大阪、奈良、広島、滋賀の4府県については、将来の統一を目指しているという答えだった。

 そこで伺うが、他の地方公共団体、都道府県として、こうやって統一した保険料にしていこう、という動きがある中で、どうして本県では統一した保険料にできないのか。

田熊医療保険課長                本県は、各市町村の一般会計からの繰入額に大きな差が生じており、また、医療費水準にも差があります。

 このような状況のまま、保険料を統一しようとすると、保険料が急激に上昇する市町村が出てくる可能性があり、被保険者に大きな影響が生じてしまいます。

 このことから、市町村との協議を重ねた結果、平成30年度には、統一しないこととしました。

松崎        保険料が住んでいる場所によって異なるというのは、本来はおかしいことであると私は思う。都道府県移管した考え方自体も、広域化をして、負担を平準化しようという考え方である。将来的には統一した保険料にすべきだ、と私は考えるが、その点について、当局はどうお考えか。

田熊医療保険課長                現時点では、本県において、保険料を統一する環境が整っていないため、統一保険料とはしませんが、各市町村と協議を行った結果、今後、市町村間の一般会計からの繰入額に大きな差がなくなるなど、統一保険料水準とする環境が整った段階で、統一することについて、県及び全市町村で検討を行うこととしています。

松崎        もう一つお聞きするが、先ほどから答弁の中にもあるが、国民健康保険の保険料が今よりも変動する市町村も出てくるかもしれないことを、この点をどうするかしっかりと向き合って、調整をして答えを出していく、というのが県の役割と思うが、この点についてはどう考えるか。

田熊医療保険課長                中には、市町村によっては保険料の変動が大きくなるところもあるかと思いますので、そうした環境を見極めた上で、そういった環境が整ったところで、統一に向けての話し合いをしたい、と考えております。

松崎        整えるということについても、やはり県の役割があると思う。それはなぜか、と言うと、現実に今、統一の保険料を求める声が県内の市町村からすでに複数出ていると仄聞をしているからである。市町村の声もよく聞いて、ぜひとも取組をしていっていただきたいと求めておく。

 例えば、ご高齢になられて収入が減った方、あるいはまた、失業された方などの理由から、どうしても保険料を納められなくなる方が出てくる。これが、一般会計からの繰り入れが生じる一つの要因である。少子高齢化が進む、あるいはまた、経済状況に変動がある。こうした中において、この傾向はより一層顕著になるというふうにも危惧されるが、当局はどのように考えているか。

田熊医療保険課長                保険料については、負担能力に応じてご負担いただくことになっており、病気や失業などの特別な事情がある方に対しては、減免する仕組みもあります。

 このため、高齢化の進展や、経済状況の悪化により、所得が少ない被保険者が増えた場合は、保険料収入が減ると考えられます。その際、減免による保険料収入の減少を埋めるための、一般会計からの繰り入れが増えることは考えられます。

松崎        そして、もう一つ。決算補填を目的にした一般会計からの繰り入れというものがある。これの状況はどうなっているのか。また、それに対して、どのように取り組んでいくのか。

田熊医療保険課長                本県における、平成28年度の決算補填等を目的とした一般会計からの繰入額は、約300億円となっています。

 県と市町村が協議して策定した、「国民健康保険運営方針」においては、各市町村が、決算補填等を目的とした一般会計からの繰り入れを、なぜ行わなければならないか、要因を分析し、真に解消することができないのか、あるいはどこまで削減が可能なのかを検討した上で、計画的・段階的に削減を行っていく旨を記載しましたので、県は、市町村が、この取組を進めるように促してまいります。

松崎      

 決算補填についてと、それから先ほどのそれぞれの方々の経済状況、その他少子高齢化等々による状況とでは、やはり事情が少し異なると県は受け止めている、ということでよろしいか。

田熊医療保険課長                そのとおりでございます。

松崎      

 実はなぜこれを聞いてきたかと言うと、運営主体は都道府県だ、という理由で、県が不足分を一般会計から繰り入れることにならないか、ということを心配しているからである。そうなれば、国民健康保険に、ただでさえ厳しい県財政が圧迫をされていく、という事態が危惧されるわけで、こうしたことは絶対に避けなければならない、というふうに思う。そこで、この点に関する決意を保健福祉局長に伺う。

武井保健福祉局長                まず、制度的なことを少し申し上げますと、今回の制度改革によりまして、県は国保財政の責任主体となるわけでありますけれども、国民健康保険事業会計に対する県からの繰入金の負担割合は、これまでと変更はございません。

 また、保険給付費が仮に見込みを上回った場合でも、国庫を財源とする「財政安定化基金」から貸し付けを受けられる仕組みも設けてございますので、県財政に大きな影響が生じることはないものと考えています。

 ただ、一方で、先ほど課長答弁もございましたけれども、国民健康保険の財政運営は、医療費の増加等によりまして、今後、厳しさを増すことが予想されますので、国保財政の責任主体として、市町村としっかりと連携をいたしまして、保険料の収納率の向上、そして医療費適正化に向けた取組を着実に進めることによりまして、財政運営の健全化を図ってまいりたいと考えております。

松崎      

 今、局長から、かような答弁をいただいたが、私の心配するところは、負担割合が未来永劫ずっと変わらないという保証は一体どこにあるのだろうか。国のバックアップは本当にずっと続くのだろうか。そうした心配を、ぜひとも解消していかなければならないな、と思っておりますが、知事に聞きます。

 難題山積というふうに見えるところも多々ある国民健康保険の財政運営において、県財政を圧迫しないようにするためにこれまでの議論を踏まえて、どのように保険財政の運営に取り組まれていくのか、知事の考えを伺う。

黒岩知事                国民健康保険制度、これは市町村が個別に運営しているため、小規模な市町村の場合は、財政運営が不安定となるリスクがあります。この新たな制度では、都道府県が財政運営の責任主体となりますので、市町村の財政リスクが分散・軽減され、制度の安定化が図られる、というものであります。

 都道府県が、こうした財政運営の責任主体を引き受けるにあたっては、国の責任において、財政支援の拡充を行うことを前提としたと、こういった経緯がありますので、今回の制度改革によって、都道府県に新たな財政負担が生じることがあってはならない、と考えています。

 こうしたことから、県では、「持続可能な国民健康保険制度を構築していくための財政基盤の確立」を国に要請してきたところでありまして、今後とも、必要な財政措置が講じられるよう、国に働きかけてまいりたい、このように考えております。

 また、この制度の運営面におきましても、国や県の交付金を活用して、「未病改善」に向けた市町村の取組を支援し、医療費の適正化を促進するなど、財政運営の責任主体として、国民健康保険制度の安定化に努めていきたいと、そのように考えております。

松崎      

 知事から答弁をいただいたが、ぜひとも国に対しても、また制度そのものについても、しっかりと心配りをいただきつつ、かつ言うべきことはきちんと主張を継続していただいて、ぜひともこの国民健康保険財政の安定に努めていただきたい。

 国民健康保険は規模も大きくて、その財政運営のひっ迫を招いたとするならば、県財政をこれまでにない財政危機に陥らせかねないものである。未病改善の取組を取り入れることにより、保険料そのものを抑制することも重要であると同時に、やはりここは、縷々申し上げましたように、負担の公平、こういったものを旨として財政運営を行っていただくよう要望して、次の質問に移る。