平成30年 予算委員会質疑要旨(3月15日(木))

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【未病改善の取組について】

松崎        未病改善の取組について何点か伺いたい。条例でも全国初の取組として組み入れられたオーラルフレイルについて伺いたい。平成30年度予算には、口腔ケアによる健康寿命延伸事業費があるが、その事業内容について説明願いたい。

鈴木健康増進課長                平成30年度の取組としては、本年度に作成したオーラルフレイル改善プログラムを一部の地域において実証・検証し、プログラムの改良を図り、地域での普及定着に向けて取り組むとともに、県民の理解の促進を図るための普及啓発を行いたいと考えています。

松崎        オーラルフレイルという言葉を、最近メディア等でも多く見かけるようになったと思われる。その取り上げられ方も、本県で進められている未病改善の入口として、重い位置付けとして語られているというのが率直な実感である。

 しかし一方で、フレイルとは何なのか、意味がはっきり分かりにくいと思われている方も多いのではないか。

 オーラルフレイルという言葉をわかりやすく伝えていくことが、入口として重要だと考える。

 オーラルフレイル改善プログラムは、たとえ有効性を実証できたとしても、患者の自己負担ということではなかなか普及しないと思うし、かといっていつまでも県費を投入し続けるわけにもいかないが、今後の展開をどのように考えているのか。

鈴木健康増進課長                オーラルフレイル対策は、ささいな口の衰えということもあり、歯科専門職による診断・指導が欠かせないことから、自立的な普及には保険適用されることが必要と認識しています。

 今回の診療報酬改定では、新たに、口腔機能が特に低下している者について、保険適用となりましたが、オーラルフレイルは、より早い段階での対策で、高い改善効果が期待できますので、保険診療の対象拡大に向けて取り組んでまいります。

松崎        保険診療点数化が必要であると、県として考えているということだが、一部の方には実現しているけれど、もっと広げていかなければ、施策の推進には繋がらないと思っている。

 保険診療点数化というのは、ただ県が国に要望すれば実現するものではないと承知している。保険診療の世界に組み込んでもらうというのは、エビデンスが必要になると思われるが、いかがか。

鈴木健康増進課長                その通りです。

松崎        プログラムを実施するグループと、実施しないグループに分けた比較は当然だが、改善プログラムを実施したか、しないかだけでなく、その他の要素に影響されていないかどうかもエビデンスを得る上では重要である。例えば、そもそも食が細いとか、年齢層が違うとか、所得格差があり、そもそも栄養状態が違うなどということがあると、得られる情報が変わってくる。そういった点については配慮しているか。

鈴木健康増進課長                オーラルフレイル改善プログラムは、65歳以上のオーラルフレイルとされた方に対して実施しており、年齢や、要介護度、体重、食生活、歯の状態などの身体状況、外出頻度などの社会的行動の状態について、プログラム実施前後の状況を把握しています。

 その上で改善プログラムの効果測定を行うことで、プログラムの有効性など、エビデンスの蓄積・確立を目指しているところです。

松崎        エビデンスを蓄積していかないことには、保険診療の点数化には結びつけることが難しいと思われるため、ぜひその蓄積に努めていただきたい。

 ちなみに、歯と口腔機能の低下が全身の健康・栄養状態に影響を及ぼし、ひいては健康寿命に影響することについては、エビデンスは確立されているのか。

鈴木健康増進課長                近年の研究において、オーラルフレイルを放置すると、栄養状態や、社会参加などに影響を及ぼし、要介護になるリスクが約2.4倍に高まることが、明らかになっています。

松崎      

 つまりそれはエビデンスが確立されているということか。

鈴木健康増進課長              そのように承知しています。

松崎        では、オーラルフレイルの保険診療点数化について、これまでの国の働きかけは、どのように行ってきたのか。また、国の動きはどうなっているのか。

鈴木健康増進課長                オーラルフレイルにつきましては、新しい概念であることから、県としても、実態調査や改善プログラムの作成など、取組を始めた段階にあり、国に対する具体的な働きかけはこれからということになります。

 なお、国では、8020運動のように、歯を何本残すかといった取組だけでなく、噛みあわせや、嚥下能力といった、口腔機能の維持・向上の取組にもウエイトを置いていくに方向あります。

 こうした中、県としては今後、現在進めている改善プログラムによる口腔機能の低下を防ぐ効果を提示するなど、保険診療の対象拡大に向けて、国にしっかり働きかけてまいりたいと考えています。

松崎        先ほども健康保険財政についてあったが、このことをしっかり取組んでいくことが、我が県にとっても大切な保健医療、保険診療においても大切な鍵を握っていると考えているため、ぜひ取組をよろしくお願いしたいと思う。

 平成30年度新規事業の認知症未病改善推進強化事業費では、子どもからのアプローチにより、祖父母等の認知症未病改善の行動促進を図ることとなっているが、具体的にはどのような内容なのか。

石川未病対策担当課長        子どもからのアプローチによる認知症未病改善の取組として、地域で運動教室などの未病改善を実践している団体などと連携し、子どもと高齢者が一緒に、頭を使いながら身体を動かす、コグニサイズなどのデュアルタスク運動に取り組める場を作っていきたいと考えています。

 また、子どもと高齢者が一緒に継続的に取り組める運動プログラムを、プロスポーツチームと連携して作成の上、実施し、併せて参加者への効果測定も行いたいと考えています。

松崎        コグニサイズは、認知症未病改善に有益であることは分かっているのか。

石川未病対策担当課長        コグニサイズは、頭と体を一緒に動かすデュアルタスク運動ということで、一定の効果があると認識しています。

松崎        認知症未病改善推進強化事業では、「高校生を対象に認知症への正しい理解を促進する」ともあるが、高校生にとって認知症は自分事とは全く考えられてないはずで、座学では効果も薄いのではないかと思う。学習効果を上げるために何か工夫が必要ではないかと思うが、どうか。

石川未病対策担当課長        県立高校で実施する未病学習では、いかにして高校生の関心を引き出すかが、大きな課題であると認識しています。

 そこで、認知症の授業では、座学に加えて、認知症の方が経験する幻覚などの症状を映像で観ることができる、バーチャル・リアリティも活用することを考えています。

松崎        高校生に限らず、当事者にならなくては、なかなか認知症を自分にかかわる問題として実感できないと思う。若い先生や高校生に、一人称の体験としてVR体験をしてもらうことで、効果は上がると考えているのか。

石川未病対策担当課長        バーチャル・リアリティは、生徒と教師が、ゴーグル状の機器を身に付けて、疑似的に認知症の症状を体験するものです。例えば、認知症の方がバスから降りようとする場面において、本人には、バスを降りるステップが、絶壁の崖に立っているように見えるなど、認知症の症状を実感することで理解を深めていただき、学習への意欲を引き出せると考えています。

松崎      

 高校の授業で行うというのは、公立高校としては聞いたことはないが、前例はあるのか。

石川未病対策担当課長        高校の授業における認知症VR体験は、私立高校での実施例はありますが、県立高校での実施は、全国初の取組であると承知しています。

松崎      

 全国初というのは、意欲的な取組と受け止める。一方、前例がないということは、いろいろと工夫をして導入しなければならないとも思うが、どうか。

石川未病対策担当課長        高校の未病学習自体が、高校からの要請に基づいて実施するものなので、意欲のある学校に学んでいただくということで、効果も期待できると考えています。

松崎      

 未病改善、認知症予防、認知症になった方々の行動について理解をする、そこを一体となって取り組んでいかなくてはならないという危機感の表れと受け止めている。未病改善については、色々な年齢層を想定して、幅広く取り組んでいかなくてはならないと思うので、是非とも推進していっていただきたい。また、オーラルフレイル改善プログラムについて、エビデンスを集積し、保険診療報酬点数化を実現していただきたい。こうした未病改善にしっかり取組んでもらうことによって、国民健康保険財政の安定化にもつながるという期待をしている。