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2019年3月1日

(質問要旨)行財政改革の推進について

(松崎)

 まず、これまでの行政改革の取組みについて、確認したい。

 岡崎県政において、平成9年度に「行政システム改革推進本部取組方針」を策定し、3つの目標を設定して取り組んだと承知しているが、どのような目標であったのか。

(県側)

 平成9年度に策定しました「行政システム改革推進本部取組方針」は、当時の本県の財政状況がバブル崩壊後の長引く景気低迷の影響により、財政破綻が危惧されるなど、非常に厳しい状況であり、より簡素で効率的な行政システムの再構築が必要不可欠であったため、数値目標を設定し、全庁挙げての抜本的な見直しを行うこととしました。

 その中で、3つの目標を設定いたしましたが、その内容は、

・ 今後10年以内に、県債の新規発行額を税収等県が自ら確保できる財源の1割以内に抑制する。

・ 今後10年以内に、知事部局の職員数を1割程度削減し、当面5年間で5%削減する。

・ 本庁組織の部・局、室・課の数を5年間で1割以上削減する。

としておりました。

(松崎)

 その達成状況は、どうであったのか。まず、県債について確認したい。

(県側)

 「今後10年以内に、県債の新規発行額を税収等県が自ら確保できる財源の1割以内に抑制する」という目標は、9年目にあたる平成18年度最終予算で達成しました。

(松崎)

 次に、職員数や組織数についてはどうか。

(県側)

 職員数については、平成9年度当初に13,551人であったところ、5年後の平成15年度当初には、11,970人ということで、1,581人、11.7%の削減となり、「10年以内に1割程度の削減」という目標を大幅に前倒しして達成しました。

 また、本庁組織数についても、平成9年度当初に14部局・149室課あったところ、平成15年度当初には、10部局・117室課ということで、部局数で28.6%の削減、室課数でも21.5%の削減となり、「5年以内に1割以上削減」との目標を大幅に超えて達成しました。

(松崎)

 松沢県政においては、平成15年度に「行政システム改革の中期方針」を策定したと承知しているが、主たる目標である「県債」「職員数」「組織数」について確認したい。

(県側)

 平成15年度に策定しました「行政システム改革の中期方針」では、行政システム改革の視点から県行政の今後の方向性を明らかにするため、

 ・ ゼロ成長の時代に対応した、より簡素で効率的な県政の実現

 ・ 県民・市町村から期待される役割と責任に対する的確な対応

の2つの目標を掲げ、取組みを進めてきました。

 数値目標についてですが、「県債」については、引き続き「新規発行額を自主財源の10%以内」を目標とし、その達成に向け、「新規発行額を当面、1,400億円を上限として抑制」することとしました。

 また、「職員数」は、平成19年度当初までに、15年度と比べて知事部局の職員数を1,000人削減することを、「組織数」は出先機関を平成15年度の212機関から175機関に削減するという目標といたしました。

 なお、「職員数」及び「組織数」については、その後の方針改訂等の中で、さらに目標を上積みし、平成22年度当初までに、

・ 職員数について、1,500人以上削減、

・ 出先機関数については、150機関程度に見直す

こととしました。

(松崎)

 その達成状況は、どうであったのか。まず、県債から確認したい。

(県側)

 平成15年度以降、県債の新規発行額については、毎年1,400億円以下に抑制してきました。

 その結果、「自主財源の10%以内」の目標は、(先ほど答弁したとおり)平成18年度最終予算で達成しました。

(松崎)

 また、松沢県政において、私もこれまで問題視してきた、現世代と将来の世代の受益と負担の関係を表す「プライマリーバランス」を、県債に係る目標として設定したと承知しているが、目標の内容と、達成状況を確認したい。

(県側)

 平成19年7月の「行政システム改革基本方針」において、「平成22年度末までのプライマリーバランスの黒字化を実現する」という目標を設定しました。

 しかし、平成20年のリーマンショックを受け、臨時財政対策債の大量発行を余儀なくされたことから、22年度末までという目標は達成できませんでした。

 なお、その後、平成25年2月に策定した「県債管理目標」において「平成30年度までにプライマリーバランスの黒字化」という目標を掲げ、平成26年度最終予算で黒字化を達成しました。

(松崎)

 次に、職員数や組織数についてはどうか。

(県側)

 職員数及び組織数については、平成15年度当初を起点とし、平成22年度当初までに、

・ 職員数について、1,500人以上削減、

・ 出先機関数については、150機関程度に見直す

との数値目標を設定し、取組を進めました。

 その結果、平成21年度当初の時点で、職員数は、平成15年度当初の11,970人から10,470人へ1,500人削減し、また、出先機関数についても、212機関から148機関へ見直すなど、1年前倒しで目標を達成しました。

 そこで、改めて、平成21年度当初を起点とする2年間で、

・ 職員数について、500人以上削減、

・ 出先機関数についても、130機関程度に見直す

との目標を新たに設定し取組を進めた結果、職員数については、平成23年度当初には平成21年度当初比で500人の削減目標を達成しました。

 また、出先機関数についても、134機関まで見直しました。

(松崎)

 黒岩県政になってから、平成24年1月には、多額の財源不足に対応するため、「神奈川県緊急財政対策本部」を立ち上げ、全庁を挙げて取組みを推進したと承知しているが、その取組の概要について確認したい。

(県側)

 「当面の財源不足対策」と「中長期的展望の下に今後の政策課題に着実に対応できる行財政基盤を確立すること」を目的として、平成24年1月に「神奈川県緊急財政対策本部」を立ち上げ、2年間で予測された1,600 億円の財源不足解消に向け、すべての事務・事業に対しゼロベースから見直しを実施することとしました。

 特に、「県有施設の見直し」、「県単独補助金・負担金の見直し」、「人件費の抑制」、「公共建築工事の積算方式の見直し」を重点的な取組みとして、全庁一丸となって見直しを進めました。

 その結果、必要な財源を確保することができ、26 年度までの財源不足対策に目途が付いたため、緊急財政対策本部は25年度末で解散しましたが、「県有施設の見直し」など中長期的課題は「行政改革推進本部」に引き継ぎました。

(松崎)

 こうして、行政改革の歴史を振り返ってみると、量的削減を実施してきたのがよくわかる。

 そうした状況を踏まえ、現行の『行政改革大綱』では、行政組織の総合力を高める「質的向上」に着目した改革を進めてきたわけだが、これまでの削減中心の取組みではなく「質的向上」に着目した改革とした理由について、改めて確認したい。

(県側)

 現行の「行政改革大綱」は、平成27年7月に策定しましたが、これまでのような職員数や出先機関数の大幅な削減を第一優先とした量的削減は厳しい状況にありました。

 具体的には、職員、組織数について、削減目標を掲げて改革を始めた、平成9年度と比べますと、知事部局の職員数で、13,551人から平成27年度当初で7,461人と5~6割程度まで削減いたしました。また、出先機関数も、279機関から111機関と4割程度まで削減するなど、かなりのレベルまでスリム化を進めていました。

 一方、県政を取り巻く社会構造の変化への対応や神奈川県がけん引役となって成長戦略を実現していくなど、将来に向けて様々な施策に取り組んでいく必要がありました。

 そうしたことから、量的削減を中心とする改革ではなく、限られた人材や組織を有効活用するために、業務量を考慮した上で、職員・組織・仕事の質を向上させ、行政組織の総合力を高める「質的向上」という、新たな発想をもって改革を推進することとしました。

(松崎)

 現大綱は、今年度で終了になるが、総合的に現行の大綱の取組みをどう評価しているのか。

(県側)

 現行の行政改革大綱を策定した平成27年度以降、「質的向上」に着目した改革に取り組むとともに、平成29年度からは働き方改革にも集中的に取り組みました。

 その結果、今年度、月平均で60時間を超える残業した職員の数が、前年度比で5割以上も減少するなど、長時間労働が是正されつつあります。

 また、職員の意識や仕事の進め方に「よい変化」を感じている職員の割合が、この3年間で3倍に増加するなど、県庁の組織風土について大きな改善が図られています。

 さらに、この間の財政面においても、県債の年度末現在高が5年連続で減少するなど、取組の成果を上げてきたものと考えております。

 その一方で、職員の意識の中には、「業務が多忙で余裕がない」「業務改善を提案しても周囲の協力が得られない」と感じている職員が依然として多く、今後、業務量を減らすためのプロセスの改善やそれを後押しする体制づくりが課題となっております。

 こうしたことを踏まえると、現行の大綱による取組は着実に成果を上げてきましたが、やるべき課題も残されており、まだ道半ばであると認識しております。

(松崎)

 現行の大綱の総括を踏まえて、今後の行政改革について、どう進めていこうと考えているのか。

(県側)

 先程答弁いたしましたとおり、この4年間の取組により、職員の意識や組織風土に改善がみられるなど、着実に成果が上がってきていますが、一方で、県庁に変えたほうがよい風土はまだ多く残っており、まだまだ十分ではないと考えております。

 また、全体の業務量の削減までには至っていない現状からも、今後は業務のやり方や仕事そのものの見直しを組織的に取り組む必要があります。

 こうした状況を踏まえると、これからの行政改革においても、引き続き「質的向上」を目指した取組を進めていく必要があると考えています。

 また、AIやロボットによる業務自動化を行うRPAなど、ICTの発展が目覚ましいことから、ICTを積極的に活用した行政運営の効率化を進めていくほか、事務の適正な執行を確保するための内部統制体制を整備していくことや、国における地方行政体制のあり方の検討動向も踏まえ、将来の県行政のあり方も検討していく必要があります。

 今後の行政改革にあたっては、職員一人ひとりの能力をより高めていくことで、行政組織の総合力をさらに向上させ、新たな時代に適応する行政組織の構築に向けた改革を進めていきます。

(参考)

AI:Artificial Intelligence の略

RPA:Robotic Process Automationの略

(松崎)

 今後、質の高い行政サービスを提供するためには、限られた資源で効果的・効率的に業務を遂行していかなければならない。そのためには、AIなど新しい技術の導入や、職員の質の向上が不可欠であるが、どのように考えるか。

(県側)

 今後、生産年齢人口の減少が見込まれる中、限られた人材を有効に活用し、質の高い県民サービスを安定的に提供していくためには、県の業務の中にICTを積極的に取り入れていくことが大変重要です。

 AIやRPAを積極的に活用していくことは、仕事そのものの見直しや業務プロセスの改善にもつながり、仕事の質を高めていく今後の行政改革に欠かせないものと考えております。

 この2月には、庁内で導入に向けたプロジェクトチームを立ち上げたところであり、今年度実施したRPAの実証試験の結果や他の自治体の導入事例なども参考にしながら、導入に向けた検討を進めていきます。

 また、今後の環境変化や新たな課題に的確に対応していくためには、職員の質を高めていくことも大変重要であり、まずは、積極的な採用活動等を行い優秀な人材の確保を図ります。

 入庁後も、職場でのOJTや研修等を通じて、職員一人ひとりの専門性や政策形成能力を高め、自ら課題を発見・設定し、解決に向けて主体的に行動できる職員を育成してまいります。