2019年6月26日

総務政策常任委員会(立憲民主党・民権クラブ 松崎 淳委員)

これまで、私は財政問題、とりわけ財政健全化について、継続的に取り上げて、知事をはじめ、当局と議論を行ってまいりました。

そうした中で、私の提言が、実際の財政健全化に貢献してきていると、自負もしております。

例えば、平成19年から、将来世代への負担軽減のためプライマリーバランスの黒字化の重要性を訴え続け、それが、30年度までのプライマリーバランスの黒字化の達成、そして平成35年度までの県債残高の減少という当初の県債管理目標の設定となり、そして、26年度のプライマリーバランスの黒字化、27年度の県債残高減少と、目標の前倒し達成につながったと思っております。

さらには、令和5年度までに県債残高を2兆円台に圧縮するという、現在の県債管理目標が設定され、現在、当局に置かれては、その達成に向けて、鋭意取り組みを進めていると承知しております。

こうした県債管理目標は、財政運営の基本、言わば県政の背骨にあたるものと重く受け止めています。

今回の行政改革大綱案にも謳われていますが、財政運営というものは、将来的な展望をもって行っていかなければならないと、私は、常々考えています。

そうした点から、財政見通しの必要性をこれまでも訴え、それが、平成28年度の中期財政見通しの策定へ、そして、知事の答弁にもあった「今年度中に推計し直す」という答弁につながったものと受け止めています。

今回は、知事再選後の肉付け予算が上程されており、「第2期行政改革大綱案」も報告いただきましたので、財政運営という視点から、何点か伺っていきたいと考えています。

問1 まず、「第2期行政改革大綱案」の中で、「財政改革」という取組分野が掲げられていますが、これを位置付けた意味について、確認しておきます。  

(行政管理課)

〇 平成27年7月に策定した前大綱においても、「財政改革」を取組分野のひとつとして位置づけ、取り組んできました。

〇 その結果、県税の収入未済額を圧縮したほか、県債全体の残高も減少に転じるなど、着実に成果をあげることができましたが、県債残高の更なる減少など、継続的に取り組むべき課題は残されています。

〇 また、本県財政は、今後、急速な高齢化などに伴いまして、介護・医療・児童関係費などが増加するとともに、老朽化した公共施設の維持修繕費にも多額の費用が見込まれ、厳しい状況が続くと想定されます。

〇 こうした中、政策課題に着実に対応し、今後も質の高い行政サービスを提供していくためにも、持続可能な財政基盤を確立していかなければなりません。

〇 このため、前大綱に引き続き取組分野のひとつとして位置付けたものです。

問2 まず、今後、老朽化に伴う多額の維持修繕コストが見込まれる、公共施設の計画的な管理・利用について、触れたいと思います。 今回の大綱の中に「民間資金・ノウハウの活用」というものがありますが、施設の管理・利用の基本的な県のスタンス、考え方について、確認しておきます。 (施設整備課)  

(施設整備課)  

〇 平成29年3月、県民が安心して安全かつ快適に利用できる公共施設等を、経済的なコストで適切に提供することを基本理念に、「神奈川県公共施設等総合管理計画」を策定しました。

〇 この中では、「財政負担の軽減・平準化」と「公共施設等の最適な配置の実現」を目標に、施設の総量削減、施設の合築や民間資金・ノウハウの活用を図っていくこととしています。

○ この公共施設等総合管理計画の目標を達成するため、令和2年度までに、施設ごとの「長寿命化」や「統合・廃止」等の方策を定める個別施設計画を作成し、その後、個別施設計画に基づいた取組を進めます。

問3 具体的には、どのように民間資金やノウハウを活用していくのでしょうか。  

(施設整備課)

○ 民間資金やノウハウの活用については、施設の特性や規模、立地条件によって、実現性が異なることから、個々の施設ごとに検討し、取り組んでいます。

○ 例えば、高津合同庁舎は、主要駅に近く、商業地にある利点を活かし、事業用定期借地権を活用し、民間事業者に土地を貸して、その事業者が施設を建設し、土地貸付料収入で県機関の借上げ賃料を賄うことで、実質県費負担ゼロを実現しています。

○ また、最近のPFIの活用事例としては、「体育センター等」の建設があります。これは、PFI手法を活用して民間事業者が施設整備等を行うことで、県が自ら実施する場合に比べ、約2割の財政負担額を減ずることができました。

○ 今後も、施設整備にあたっては、様々な条件を踏まえ、個々の施設にふさわしい、民間資金やノウハウの活用を検討していきます。

問4 県財政に寄与するようしっかりと取り組んでいただきたいと思います。そうした観点から公共施設の計画的な管理・利用については、試行とかではなく、一定のボリューム・規模を示すべきです。EBPMや効果測定を考え、数値を入れた達成目標を示すべきと考えますが、いかがでしょうか。   

(施設整備課)

〇 庁舎等の施設においては、施設の特性や規模、立地条件は異なるため、どの施設で民間資金・ノウハウを活用できるかなど、個々の施設ごとに検討し、最もふさわしい手法を選定していきます。

○ そのため、全体として民間資金・ノウハウの活用件数、削減額など、具体的な数値目標を設定することは困難ですが、施設の更新の検討にあたっては、統合廃止による最適配置を検討するとともに、整備する施設については、その都度、民間資金・ノウハウの活用について検討し、可能な施設については、積極的に導入することで、財政負担の軽減等に向けて取り組みます

問5 まず、中長期的な財政運営の基となる「中期財政見通し」について、今年度中に推計し直すことと承知していますが、具体的には、いつ、我々の前にお示しいただけるのでしょうか。

(財政課長)

○ 「中期財政見通し」については、今年度中に見直し作業を行い、年明けの「令和2年/第1回/県議会定例会」の会期中に、案をお示しする方向で検討している。

問6 時期を明らかにされたことは、一定評価をいたしますが、今後、令和2年度予算の予算編成方針等も出されていきますが、なぜ、その時期(年度末)まで、かかるのか、確認させていただきます。    

(財政課長)

○ 年明けにお示しする理由についてだが、見直しに当たっては、

① まず歳入面では、

次期見通し期間の発射台となる令和2年度の税収を、今年10月に予定されている消費税率引上げの影響なども含めて、的確に見込むためには、今年度(元年度)の税収動向をできるだけ正確に把握する必要があり、今年度を通じて精度の高い税収見積りができるのは、年明けの令和2年1月頃になること

② また、歳出面でも同様に、

毎年(平均で)100億円以上の増を続けている介護・医療・児童関係費を的確に見込むためには、今年度(元年度)の実績を踏まえ、最新のトレンドを把握した上で、令和2年度以降の金額を見込む必要があること

などから、令和2年度当初予算の編成作業と合わせて推計作業を行い、年明けの「第1回/県議会定例会」の会期中に、案をお示しする方向で考えている。

問7 今回の行革大綱では、「質的向上」ということが謳われていますが、財政という点からみると、事業の質を高めることはもちろん重要ですが、それと同時に事業の規模という点も重要と考えます。そういった視点から、どのようにEBPMを活用していくのか、伺います。    

(財政課長)

○ 委員ご指摘のとおり、(財政的観点からは)事業の質と同様、事業の規模についても、大変重要と考えている。

○ したがって、EBPMの考え方に基づき、個別の事業ごとに、事業と成果との因果関係を明確にした成果目標を設定し、成果を検証することで、事業規模の是非や事業廃止を含めて、より効果的な事業に、限られた資源を重点的に配分していきたいと考えている。

問8 次に、現在取り組んでおられる「県債管理目標」について、伺っていきます。 まず、令和元年度の当初予算の時点で、県債管理目標の達成見込みはどのような状況だったのか、確認します。

(資金・公営事業組合担当課長)

○ 県債管理目標は、本県の県債現在高を令和5年度末までに2兆円台に減少させるというもので、平成27年度末以降、県債現在高は5年連続で減少している。

○ 令和元年度当初予算編成の時点では、元年度末の県債現在高は3兆3,469億円となる見込みだった。これは県債管理目標を策定した際に想定していた残高(3兆3,416億円)を50億円程度上回っている。

○ また、来年度以降、県債管理目標の目標年次である令和5年度までの4年間において、毎年170億円程度の抑制が必要となっていた。

○  そうした中でも、県債の発行抑制に努め、目標を堅持していく方向であった。

問9 今回、肉付けということで、多くの投資的事業が計上され、その財源として、県債も153億円増額されることになりますが、これを踏まえて、県債管理目標達成の見込みを伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

○ 令和元年度末の県債現在高は、補正前時点では3兆3,469億円の見込みだったが、今回の補正予算により、153億円増加し、3兆3,623億円となる。

○ この結果、県債管理目標における発行抑制ペースからの遅れは、当初予算時の50億円程度から、200億円程度に拡大する。また、令和2年度から5年度までの4年間でも、発行抑制の必要額は毎年200億円以上に増加する。

○ 県債の発行額は、今後の景気動向にも左右される可能性があり、毎年200億円以上の発行抑制は簡単ではないが、後年度への負担を増やさないためにも、県としては引き続き県債管理目標の達成に取り組んでいく。

問10 今後の財政需要、特に県債関連を見ますと、令和2年度も、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策は行っていかなければなりません。さらには、長寿命化対策はもとより、施設の老朽化対策も順次行う必要があると認識しています
   一方、こうした県債発行の他にも、景気動向などによっては、減収補填債の発行の可能性等も視野に入れておかなければなりません。
  後年度負担を考えると県債は極力発行抑制すべきと考えますが、県民生活に悪影響が出るような抑制は望ましくないと考えます。
  こうした状況の中で、どのように県債管理目標を達成しようとしているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

○ 委員ご指摘のとおり、国土強靭化対策や施設の老朽化対応、また、今後の景気動向によって、県債の発行額は膨らむ可能性がある。

○ しかし、将来の公債費負担の減少のためには、県債管理目標の達成は必要不可欠な取り組みである。

○ そのため、通常の県債については、県民サービスの低下を招かないよう、収支のバランスを見ながら、従来の施策・事業の見直しに加え、これまで以上に事業の優先度を厳しく見極め、発行額を抑制していきたい。 ○ また、臨時財政対策債については、今後も引き続き廃止や縮減を国に働き掛け、発行額の圧縮に取り組んでいく。

(要望)

  我が会派としては、財政運営につきまして、予測しがたい税収動向に左右されつつも、待ったなしの財政需要、行政課題には、的確に対応していただくよう従前から求めてきたところです。

そうした点を踏まえてこそ、財政運営の持続可能性の議論は成り立つと思います。 中期財政見通しや県債管理目標もその一つの手法であると考えます。私どもの求めることは、引き続き、堅実な財政運営を行うことにより、県民の暮らしを支え、将来の不安を取り除くことにつきます。当局のご尽力を切に要望します。