環境農政常任委員会 質疑応答要旨
令和5年3月1日
松崎 淳 委員(会派 立憲民主党・民権クラブ)

松崎委員

本県育成のイチゴ新品種「かなこまち」につきまして、伺います。イチゴは、冬から春にかけてスーパーなどの店頭を鮮やかに彩ります。また、各地のイチゴのもぎ取り園では、休日ともなると家族連れなどで大変な賑わいをみせる人気のフルーツです。全国的にも生産が盛んで、福岡県や栃木県などイチゴの主産県のオリジナル品種が知られています。神奈川県では、新たに「かなこまち」というイチゴの新品種を育成しているので、私も食べてみました。大変美味しかったです。味は大変甘く、またさわやかな味わいであり、これは非常に有望な品種なのではないかと直感したところであります。魅力的な新品種や新しい商品が出回り、流通が活発になれば、本県経済の活性化に寄与し、市場拡大と雇用創出にもつながるので、関係者はもちろん、県民の皆様の関心も高いところであります。そのためには、「かなこまち」の生産を振興し、消費者にしっかりとPRしていくことが、必要であると考えているので、何点かお伺いします。まず、「かなこまち」は、神奈川県の農業技術センターで育成したと聞いたが、その育成の経過について伺います。

鈴木農政課長

 国や他県からイチゴの新品種が出てくる中で、県内のイチゴ生産者からも、「神奈川県オリジナル品種を育成してほしい」という要望が寄せられていました。そこで、県農業技術センターでは、平成29年度に「紅ほっぺ」と「やよいひめ」を交配し、味や食感が良く、大粒で収穫量が多い優良な株を選抜育成しました。その後、生産者が試験的に栽培を行った結果、評価が高かったため、「神奈川県生まれの美しくて美味しいイチゴ」という思いも込め「かなこまち」と名付け、令和2年9月に種苗法に基づく品種登録を出願しました。

松崎委員

「かなこまち」の品種の特性について、伺います。

鈴木農政課長

品種の特性ですが、甘みが強く、酸味とバランスの良い濃厚な味わいの大粒品種です。 市場出荷しても傷みにくいように、果実はやや硬めだが、硬すぎずジューシーさもあります。色は鮮やかな赤色で、果実の中まで赤いのも特徴です。12月中下旬から5月頃まで、収穫できます。

松崎委員

 糖度は12度と聞いたが、そのような高い糖度なのか。

鈴木農政課長

 糖度ですが、大体10~12度ということで、高いもので12度を超えるものが出てきます。

松崎委員

非常に甘くて、さわやかな味わいで、有望な品種の「かなこまち」ですが、今現在の生産や販売の状況について、伺いたい。

井上農業振興課長

現在、県内のイチゴ生産者で組織をしている「神奈川県いちご組合連合会」の会員のうち75名が生産を行っている状況であります。主な栽培地域については、横須賀市、小田原市、秦野市、厚木市、海老名市などとなります。また、主な販売先としては、県内のJAの大型直売所などでの販売、また、観光農園での摘み取りを行っている状況でございます。

松崎委員

 何名中何名ぐらいの方が生産しているのか、お答えいただきたい。

井上農業振興課長

 「神奈川県いちご組合連合会」は会員が128名で、そのうちの75名で生産をしている状況です。

松崎委員

 それは、多いのですか。ほとんどの人が、がんばっているということですか。それとも、少ないのですか。

石井農水産部長

 このイチゴは、先ほど課長からの答弁がありましたように、平成29年に育成し、令和2年に品種登録したということで、本格的に作り出したのは今年度産からということになります。まだ、農家の全部がということではありませんが、ある程度試しに作ってみようかという方から、最初に試作で作っていただいた方にはかなり評価していただいており、128名中75名でありますので、かなりの人に作っていいただいていると考えています。特に、本県の場合は、直売やもぎ取りという形でやっているので、全部を入れ替えてしまうことはないこともあり、この程度にとどまっていますが、新品種としては、かなりの人が作っていただいていると考えています。

松崎委員

 部長から非常に的確な答弁をいただいて、安心しました。新品種はリスクがあると皆が思うが、定着の傾向が明らかとなりました。僕らがあと一押ししなければならない場面であることを、ここで認識を新たにしました。続いて、「かなこまち」に関する、予算の確保の状況について、伺います。

鈴木農政課長

農業技術センターでは、令和4年度の一般研究費1,090余万円の一部を用いて、「かなこまち」の苗を温室に定植する時期や株間の検討、育苗期間中の施肥量など、安定生産技術の開発を行っています。令和5年度も同様に一般研究費を用いて、安定生産技術の開発を実施していく予定です。また、農政課の農林水産物ブランド推進事業費を用いて、ポスターなどを11万円で印刷し、生産者団体や市町村等行政機関に配布しています。令和5年度もブランド推進事業費などで販売宣伝を実施していく予定です。

松崎委員

 今まで世の中になかったものを、新たに世の中に受け入れていただき、しかも普及を目指そうということだと思います。必要に応じて予算は措置されると思うので、正確に言うと状況に対して措置していくとなると、常に遅れていくので、先取りで戦わなくてはいけないことを考えると、なかなか歯がゆい面が当局としてあると考え、そこはしっかりと先取りした予算をその年度に使うという意気込みで、取り組んでいってもよいと私は思います。その際に、だれもが知っているブランドとして「あまおう」とか「とちおとめ」があります。最近、「とちあいか」にかえていこうとしているようですが、そういうふうに他県は戦略的に考え、プロモーションされ、そして実際に普及をしているわけです。そこへ本県が新たな品種を確立し、まず、本県自体の県内のマーケットでどうするかということになるかと思うのですが、普及を図りながら、同時にマーケットを開拓していかなければならない。知られるようにしながら、実際に買われるようにしなければいけない。大変ですよね。「あまおう」を作っている福岡県の農家の皆さんも、おそらく最初は、楽勝でどんどん行けたわけではないと思います。栃木県も同様だと思うし、あるいは他のフルーツについても同様と言えると思います。最近、聞いているところでは、岡山県の(シャイン)マスカットについても、生産する技術を他国に盗まれて大変な思いをされたという一部情報が出回っています。真偽のほどはわかりませんが、大変な思いをされているのは事実でありますので、そのようなことも考えをめぐらせれば、究極のところは消費者の方々に支持され、買われて、おいしいと言われて、さらに食べたいということになるのでしょうけれども、その到達系を目指すために、いろいろなことを考えていかなければならないと思います。そこで、「あまおう」とか「とちおとめ」、これらのように知られているブランド、ブランドイチゴと言っていいのですが、これらはどういうふうにして消費者に支持されてきたのか、県としてはどう見ていますか。

井上農業振興課長

 「あまおう」については福岡県、「とちおとめ」「とちあいか」については栃木県で生産をされているということで、それぞれ品種育成をした県や農業団体が連携して、新品種への転換、栽培技術の向上に取り組み、生産者団体が中心となって共同選果や共同販売を行っていると聞いています。特に「あまおう」については、県が品種登録を行っており、農業団体が商標登録を行い、権利を守るとともに、栽培を県内に限定しているとのことです。また、栽培管理をしっかりと行って、品質を保つなど、ブランド化を図っているということです。また、両県とも全国有数の生産県で育成された品種ですので、全国の市場をターゲットとして販売戦略をたてていることで、東京市場など大消費地の市場でマーケティングを行い、生産者団体がホームページや広報誌、新聞、メディア等を活用して消費者へのPRを行っているということでございます。

松崎委員

 この県庁のすぐそばにある大きな百貨店とか、そこのいわゆるデパ地下と呼ばれるような食品売場にも、こうしたブランドイチゴを活用したフルーツの店やケーキの店があり、行列ができています。それはおいしいからです。おいしければ、それ相応のお金を払って買われるわけです。そういうフルーツのお店やケーキのお店とかが果たした役割も、僕は大きいと思います。「あまおう」とか「とちあいか」もそうですが、そういうことを考えると、やはり相当戦略を練り、練るだけではだめで、実際にやはり足を使い、それから人の輪も広げて、イチゴを真ん中に置いて、一生懸命考えながら実践するという活動が積み重ねられて、こういうふうになっていると思います。そこで「かなこまち」ですが、生産を拡大して消費者にもっと食べていただきたいという思いを私も共有したいのですが、品質の向上とか、品種のPRをはじめ、様々やらなければならないことがあるということが当局の分析でも明らかであるので、今後どう進めていくのかお聞きします。

井上農業振興課長

「かなこまち」については、今、生産現場での本格的な栽培が始まってまだ1年で、生産量が十分でないことや、生産者間での品質の差があって、収穫期間をとおして安定した品質の果実を収穫するための栽培技術の確立が課題ということで受け止めています。そのため、まずは、安定した品質の確保と生産量の増加が重要であると考えており、生産者に「かなこまち」の味などの特性を発揮できるように、肥料の時期や量などについて、普及指導員等が現場の状況を確認しつつ指導していきたいと考えています。また、そのような栽培技術の確立をして、生産量を増やしていきながら、先ほど委員がおっしゃられましたように、「かながわブランドサポート店」のホテルのバイヤーに働きかけ、レストランのデザートに利用してもらうなど、その販売方法を工夫し、県民をはじめ多くの皆さまに知ってもらい、食べてもらえるよう、関係機関と連携して、神奈川生まれの新しいイチゴをPRしていきたいと考えております。

松崎委員

 私だけでないと思います。イチゴの好きな人は我が会派にたくさんおり、会派のメンバーでも試食して、美味しいと皆が言っています。ただ、美味しいを美味しいと言っているだけでは、マーケットは占められているので、ここで「かなこまち」が新たに食い込んでいくことは、相当大変な道のりが予想されます。なので、本県として、押していくという覚悟だとか決意を持っているのか、持っているのであればそれ相応のボリューム感のある施策を打っていっていただかないと、品種育成をやっていて、改良普及をいろいろされていることもわかりますが、この辺を狙おうとか、こういうボリュームで行こうとかがないと、生産農家も困ってしまうので、そういうところで覚悟をもって示していただかないと、議員として質問した意味も分からなくなってしまうので、局長に腹の内をはっきり話していただきたい。

鈴木環境農政局長

 新しい品種を作り、それを世に出すに至るまでには、長い年月と、多くの作業、研究、検証を重ねてきていて、まさにこの「かなこまち」も、農業技術センターでそういうことを経て、生み出された品種です。先ほど課長から、特徴として甘みと酸味のバランスもよいという話をしましたが、「かなこまち」を作っている生産者にも話を聞いたところ、最近甘みの強い品種は出てきているが、酸味があって甘みが引き立つという意味合いにおいて「かなこまち」の品質は、生産者に愛されてきていると私も理解しています。今まで答弁させていただいたように、今の段階は、まずは品質を安定化させる、私も自分で何カ所かで買ったりはしていますが、味の安定化はまだ課題の段階にあるのかなと思っています。それと、どんどん宣伝していくには、それに答えるだけの量がないと、「どこで食べられるのか」ということになってしまうので、まず生産量の拡大、品質、味の安定化を図っていきたいと思います。それとともに、どうしても神奈川県の場合は、生産者が増えたとしても全国に広げられる量はないと思うので、逆に神奈川県に来ていただいて、「かなこまち」を食べていきたいと思っていただけるようにしていきたいと思います。そのためには、県民の皆様にまず愛され、それが広がり、例えば神奈川県のホテルのレストランに行けば「かなこまち」が食べられるとか、そういう形にしていけば、地域活性化とか、県が目指している地産地消型の農業だとかの振興につながると考えます。生産量拡大と同時に、どうやってマーケティングしていくかを常に考えながら、実際に作っている生産者の御意見等を踏まえながら、進めていきたいと思います。我々としても、長年かけて品種を開発した「かなこまち」なので、ぜひ広めていきたいと思っています。

松崎委員

 やはり、作っている農家さんの御理解とか協力なしに、この話は進まないと思います。私の親戚も農家が大変多く、農産品を作るということは大変であるが、でもそれだけ夢があり、楽しいものでもあるし、家族でずっと伝えていきたい生産体制というのは、そういうところにあり、そこの基本は揺るがすことができないことは重々承知しているので、そこは県としてもしっかりと受け止めていただきたい。また、消費者に対し、本県の消費者だけに限らず、プロモーション戦略をしっかりと打ち立て、知事もその分野は非常に得意だと思うので、そういうことをしっかりと打ち出して、地産地消にもつなげていただきたいと思います。期待できる品種であり、全国的に普及を図っていただきたいので、ぜひよろしくお願いします。