令和5年3月9日 予算委員会・一般質疑(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)
(松崎委員)
次に、宅地の耐震化について伺います。
日本では度重なる地震から得た知見によりまして、建物の耐震基準が定められ、耐震改修の促進など、建物には耐震性が必要との認識は浸透してきております。
一方で、建物が建つ土地の地震被害についてはあまり注目がされておりません。阪神淡路大震災や新潟県中越地震といった大きな地震では家屋が潰れる被害以外に、こちらパネルにもございますが、住宅が建ち並ぶ住宅地が地滑りを起こしたり、地表面が大きく波打ち住宅が傾いたりしたとの報道が散見されました。
昨年10月、地元横浜市から「大規模盛土造成地の地盤調査」を実施する旨の情報提供がありました。それがこのパネルに示された場所であります。パネルをご覧いただけたらと思いますが、これは横浜市から提供のあった地図でございます。着色されている箇所が盛土をされているところであります。ご覧の通り、市内全域に数多く存在しておりまして、盛土された土地の多さに正直、驚いたところであります。
また、宅地の耐震性を高める工事につきましては、パネルのように擁壁を築造したり、また、地下水位を下げるための水抜き管を設置したりと、多様な方法があるようですが、いずれも大規模な工事で、費用と期間が必要になります。
そこで「大規模盛土造成地」の地震対策について伺います。
まず、確認のため、大規模盛土造成地とはどのようなものか。また、どうして盛土をした宅地は地震によって地すべりを起こしたりするのか伺います。
(建築指導課長)
大規模盛土造成地は、宅地を造成する目的で、谷を埋めたり、盛土した土地で、谷を埋めたものについては3,000㎡以上、盛土したものについては高低差が5m以上のものを対象としております。
これらは、開発許可を受けるなど、法令に則って施工されたもので、熱海で発生した土石流災害を引き起こした盛土とは異なります。
大規模盛土造成地は、大きな地震が発生し、地面が揺すられた時に、土の性質や地下水位によっては、地すべりを起こすことがあると考えられています。
(松崎委員)
高度成長期の住宅需要を背景とする大規模な盛土造成地は、本県のみならず、全国的な課題だと思います。国はどのような措置をとったのか。また、本県ではどのような対応がされているのか伺います。
(建築指導課長)
平成16年の新潟県中越地震の際、造成した宅地の地すべりが起きております。
国は、これを受けて平成18年に、大規模盛土造成地の調査と耐震化工事の実施に対して補助を行う「宅地耐震化推進事業」を創設しております。
県では、この補助制度を活用して平成22年度から調査を実施しております。
(松崎委員)
大規模盛土造成地は県内にどのくらいあるのか。また、そうした造成地に対して、県ではどのような対応をしているのか伺います。
(建築指導課長)
大規模盛土造成地については、県と開発許可権限を有する12市が対応することとなっており、それぞれ調査を行ったところ、横浜市で3,271箇所、川崎市で1,093箇所を含め、県内全域で6,280箇所ありました。
そのうち、県が所管する16市町村内には398箇所ありました。
この398箇所のうち、現地調査の結果、擁壁の亀裂、地下水の流出などが確認され、耐震性が疑われる箇所について詳細調査を実施しています。
(松崎委員)
現在、県所管区域では詳細調査を実施しているとのことでありますが、何箇所で実施しているのか。また、どのような調査をどれくらいの期間行っているのか伺います。
(建築指導課長)
県所管区域で詳細調査を実施したのは5箇所です。
詳細調査では、盛土の深さ、範囲や地下水位の変動を把握します。
調査の結果、1箇所については安全であることが確認できましたが、4箇所については、現在、調査を継続中です。
継続中の4箇所について、地下水位は季節によって変動しますので、通年で観測する必要があり、数年間継続して観測を行っています。
(松崎委員)
大規模盛土造成地の耐震性については、得られた調査結果からどのように判断するのでしょうか。
(建築指導課長)
得られた調査結果から、一定の計算式のもとで安全かどうか解析ができます。
その解析結果を有識者で構成する検討会にお諮りし、耐震性の評価をいただきます。
いただきました評価をもとに、県が、耐震性について最終的に判断いたします。
(松崎委員)
検討会はどのようなメンバーで構成されていますか。
(建築指導課長)
検討会の委員は、地震地盤工学の専門家、応用地質学の専門家、建物の基礎構造の専門家の3名の方にお願いしております。
(松崎委員)
今後、耐震性が不足していることが明らかになった大規模盛土造成地は、耐震対策に取り組むことになりますけれど、対策を進めるうえでの課題は何か、建築住宅部長の認識を伺います。
(建築住宅部長)
大規模盛土造成地は、耐震性が不足していても、目に見えず、日常的には実感しにくいものであるため、住民の方々にご理解していただくことは、容易ではないと考えられます。
また、耐震性の不足をご理解していただいたとしても、数十戸からなる大規模な住宅地にあっては、個々の家庭によっては事情が異なるため、対策工事の実施に向けた全員の合意形成を図っていくことが大きな課題であると考えております。
(松崎委員)
課題を踏まえて、大規模盛土造成地の耐震化を進めるために、県はどのように取り組んでいくのか、県土整備局長に伺います。
(県土整備局長)
大規模盛土造成地の耐震化を進めるためには、耐震性が不足していて、対策工事が必要であることを、住民の方々に理解していただき、合意していただくことが必要となりますが、住民の方々だけでは、なかなか進まないことも想定されます。
そこでまず、耐震性が不足している点については、同じような地盤が過去の地震でどのような被害を受けたのか、写真や映像でご説明し、また、どの程度の地震でどの位の被害が生じるのか図や模型を用いて説明することで、理解の醸成に努めます。
また、耐震工事の必要性につきましては、その場所にはどのような対策工事が適当で、そのための費用はどの程度かかるのか、さらに、工事に際し、住民の方々の仮移転が必要になるかなど、住民の方々が判断する上で必要な情報を丁寧にお知らせしていきます。
こうした取り組みを通じ、住民の方々のご理解が進み、一刻も早く工事の実施につながるよう市町村と連携しながら、県としてもしっかりと取り組んでまいります。
(松崎委員)
もし、自分の家の建っているところがこのような形で耐震性に問題があるということが分かった場合、その通知を役所から受けた住民の1人として、当然対策が必要だと思うけれど、所要の資金をみんなで出し合ったとしても、それが十分かどうかは定かではない。
また、合意がそもそも図られるかどうかもよく分からない、といった状況に陥るわけであります。
そうしたときに、こういう状況でしたよ、お宅のところは危ないですよ、ただ言うだけではなくて、そこから一緒にどうしましょうかということを共に考える必要があります。
そして、なおのこと財政的にも何らかの援助、支援というものも当然必要だと思います。その結果、初めて県民生活は安全安心なものになるわけでありまして、たまたま自分のところが危なくなかったから助かった、いやそうじゃなかったから非常に困ったということでは困るわけであります。
そうした意味ではこの調査と並行して、そうなった場合の各ご家庭をどのようにご支援申し上げていくのかということも、それは一緒に合わせて考えていっていただくというのが県のあるべき姿なんじゃないかなと思いますので、そこはですね、そうなったときどうするのかということもしっかりと検討の中に加えていっていただくようにお願いいたします。
また県土整備局に置かれては、そういったことも常に考えながら進めてこられた経緯もあると側聞しておりますので、そこは県庁全体で一緒に知恵を合わせて、力を合わせて、心を合わせて、どうやって実際に安心安全を確保するかということを考えていっていただけたらなと思います。 何しろ災害に対する備えということは、もう言うまでもないことでありますので、是非とも、台風も含めて、あるいは大雨も含めて、ぜひ備えを万全なものにしていっていただくようお願いを申し上げて、次の質問に移ります。