神奈川県議会2004年9月定例会 次世代育成特別委員会のまとめ
児童虐待対策を抜本的に強化 「親子支援チーム」の全県配置と児童福祉司の増員を約束
松崎: 10月には児童虐待防止法が改正され、住民や関係者の意識も高まり、さまざまな施策が行われているのに、子どもの命が奪われる痛ましい事件が後を絶たない。神奈川県での現状は。
県側: 神奈川県内の児童虐待の相談件数は、平成14年度は862件で13年度よりも3件少なく、やや高止まりの傾向と思われたが、今年1月に岸和田で痛ましい事件があったこともあり、15年度は30%増えて1121件となった。相談の内訳は身体に対する虐待が41%、保護の怠慢や拒否も41%であり、児童の年齢は乳幼児が50%、小学生35%、中学生以上は15%だ。いまも相談が急増していて毎月100件を超えている。
松崎: 先日も栃木県で4歳と3歳の子どもたちの虐待事件があった。事件のたびに警察との連携を含む児童相談所の対応が問題になる。どう受け止めているか。
県側: 栃木県の事件では問題点として次のことが言える。まず、児童相談所が、同居人による傷害事件だとして、「虐待」として認識していなかったこと。次に、警察との連携が不十分だったこと。さらに問題なのは、子どもが祖母宅へ引き取りになったあと、結局同居人のいる自宅へ戻ったことを把握していながら、家庭訪問など実地に調査に行かなかったこと。このような対応の結果、家族に対して的確な評価や判断ができなか
松崎: 神奈川県でも同じような事件が起きる可能性があるのではないかと心配している。今度の法改正でも家庭への強制立ち入り規定がまた見送りになったなかで、児童相談所と警察の連携など、現状でのぎりぎりの取り組みを求めたい。
県側: 県は各市町村での児童虐待防止策の一つとして「虐待防止ネットワーク会議」を整備するように呼びかけている。関係機関による相互連携の仕組みづくりであり、ここに警察も参加するよう働きかけている。改正後の児童虐待防止法には「警察署長に対する援助要請」が明確化されている。児童相談所の調査を保護者が拒む場合や一時保護中の児童の引き取りを保護者が強引に要求する場合に、児童相談所長が警察署長に援助要請を行わなければならないと定められたので、当然要請する。県としては、地区担当の児童福祉司に任せ切りにせず、進行管理を行う専任者を配置し、さらに中央児童相談所に「子どもサポートチーム」を設置して、医師や弁護士も加わって、他の児童相談所に対しても専門的な立場から後方支援を行っている。その上で各児童相談所が処遇会議で検討して児童のケアとサポートにあたっている。
松崎: 児童虐待の相談件数が一貫して増えている中で、児童相談所は誰から見ても判るくらいに体制を強化してもらいたいというのが県民の声だ。
県側: 虐待した親と子が再び一緒に出直せるようにすることを目的に、今年度は相模原児童相談所にモデル的に「親子支援チーム」を設置した。この親子支援チームをできるだけ早期に県内すべての児童相談所に設置する。
松崎: 国会の審議を見ると、今後児童相談の窓口は市町村になる方向だが、親への支援、専門的な相談や一時保護はこれまで通り県が負うことになる。その中心は今と同様児童福祉司が担う訳で、ぜひとも増員をしてもらいたい。 県側: 児童福祉司の増員はもちろん、心理判定員についても、増大する児童虐待へ有効な対応ができるように体制の充実に取り組んでいく。