神奈川県議会2004年9月定例会 次世代育成特別委員会のまとめ

支援を要する子どもたちに「教育相談コーディネーター」1500人を養成・配置へ

松崎:   これまでの障害児に加え、軽度発達障害の子どもたちの教育にどのように取り組んでいくかが、大きな課題となっている。文部科学省には、これまでの「特殊教育」から「特別支援教育」に移行するという議論もある。県教育委員会としてはどのように考えているのか。

県側:   文部科学省の特別支援教育という考え方は、通常の学級に在籍しているLDやADHDなどの軽度発達障害児まで対象の幅を広げ、これまで制度のはざまにいた子どもに対しても焦点を当てようというものだ。神奈川県教育委員会としては、さらに観点を広げ、不登校やいじめといった今日的な教育ニーズのある子どもにも応じた支援を行っていくという意味で、特別支援教育の「特別」を取ってしまい、「支援教育」と呼び、その子の能力を最大限に引き出していく教育を目指している。

松崎:   現状を見ると、学校の中で、特殊学級と他の学級との間で、先生方の間で、子どもたちへの指導を充実させようとすればするほど、お互いの取り組みを尊重するあまり、互いに「聖域」に踏み込まないようになってしまうと思うので、もっと校内の連携を図るべきではないか。一方、学校と外の機関との連携も重要だと思うが、「もっと連携してください」と県教委が学校に文書を送付するだけではうまく機能しないだろう。やはり学校ごとに内と外を結びつける技量をもつスタッフが常駐することが必要ではないか。

県側:   まさにそういう意味合いから、国では、特別支援教育コーディネーターを養成すべく、その指導者を対象として研修を始めているが、神奈川県では、対象となる子どもの幅を広げていることもあって、教師間や保護者、さらには校外の医師などの専門家との連携をコーディネートする「教育相談コーディネーター」と銘打って、実はその養成研修に直接取り組み始めたところだ。

松崎:   教育相談コーディネーターの養成ということだが、どの程度の人数をどのくらいのスパンで養成しようとしているのか。

県側:   少なくとも、全部の学校に最低1人はいないと意味がない。県として年間160人を養成し3年間で480人にするのと、横浜のような政令市や中核市にも同様の研修を設けてもらい、すべての学校に1人を配置する。県教育委員会としては、さらにその3倍は必要だと考えており、9年間で約1500人を養成し配置する。横浜市などにも同じ内容の取り組みを求める。

松崎: 大変大がかりな事業であると認識し評価したい。内容的にも工夫をはかり、「教育相談コーディネーター」が現場に赴いたときにその役割を十二分に果たすことができるよう、特段の配慮を願いたい。

保護者や地域住民と大きなズレ・教育に携わる人の意識改革を急げ

松崎:   横浜市教育委員会が、今年発表した「教育ニーズ調査」の結果は驚くべき内容に満ちている。市教委を訪ねて行き詳しい説明を聞いてきたので、要点をご紹介したい。まず、国際理解教育を進めるにあたり、保護者の58%が「英語教育を積極的に進めるべきだ」と回答しているのに対して、教員は33%にとどまっており、ITを利用した教育についても67%の保護者が「強化すべきだ」と回答しているのに対して、教員の回答は47%であった。次に、「教員に望むこと」という問いには、地域住民の66%が「社会人としての常識を身につけること」と答えているのに、教員のなかでそう望まれていると意識しているのは21%となっている。さらに、「あなたの知りたい学校情報」について46%の保護者が「具体的な各教科の指導方法」と回答しているのに、教員が「発信したい学校情報」にあげているのは学校行事が主で「教科の指導方法」は14%でしかない。横浜市教育委員会ではこの調査結果を極めて前向きに受け止めていて、今後の教育改革に活かすとの意向であり、伺った私自身が大変感銘を受けた。このデータ自体は市教委のホームページでも公開されたところであり、県教育委員会としてはどのような感想を持っているのか、率直にお聞きしたい。

県側:   たしかに保護者と教員との間に認識や意識のズレがある。教育に対するニーズを巡って違いがある。県教育委員会としては、このような保護者のニーズを受け止めながら、家庭や地域と協力・連携して教育活動を進めていくことが必要であり、調査結果を真剣に受け止めていくことが極めて大切であると考えている。

松崎:   保護者と教員の意識にずれがあるということについては、たまたま、このようなデータが浮かび上がってきたが、このことはデータがなくともこれまでも指摘されてきたことではなかったか。また、同じような状況が横浜市以外でも深刻化しているのではないかと心配だ。具体的に県教育委員会としてどう取り組んでいくのか。

県側:   保護者と教員との間に認識のズレがあるということについては、しっかりと受け止めていくことが大切だ。いま、各学校では「開かれた学校づくり」に取り組んでいるが、教員による自己点検だけでなく、保護者や地域住民、学校評議員による外部からの評価を積極的に取り入れ、家庭や地域と連携した「開かれた学校づくり」を一層推進しなければならないと考える。それとともに、何より教員一人ひとりの意識改革が必要だ。

松崎:   県内の小学校や中学校で外部評価が実施されている割合は、どちらも60%台にとどまっている。外部評価に参加している人のうち、地域住民は19%に過ぎない。学校がもっと地域の方々の声に真摯に耳を傾け、考え方を取り入れていくことが求められているのだから、率直な意見を聞く機会をぜひ数多く設けていただきたい。