神奈川県議会2004年12月定例会 次世代育成特別委員会のまとめ

子どもへの虐待対策の強化を推進させる

松崎:   児童虐待は行政が対応を誤ると大変痛ましく取り返しのつかないことになる。栃木県小山市での事件は世間に大きなショックを与えた。同居人による児童虐待はこれまであまり聞いたことがないが、県内ではどの程度発生しているのか。

県側:   平成15年度の児童虐待相談件数1121件のうち、実の父母や養父母以外のものによる虐待は、99件で兄弟姉妹や祖父母、その他同居している親族によるものだ。

松崎:   同居人による児童虐待が発生した場合、児童相談所が対応していくにはどのような課題があるのか。同居人は親ではなく監護権も養育義務もない。単なる傷害事件と考えれば、児童相談所は警察に任せて引いてしまうのではないか。

県側:   指摘の通り一般的には傷害事件として扱われる場合も多いかと思われる。ただし本県ではこれまでも、児童に着目した対応を図っており、警察が傷害事件として対応している場合でも、児童虐待が行われていた事実があれば、児童に与えた影響等を踏まえた対応が必要であり、支援が必要な場合は、児童相談所で心理的ケアを行っている。

松崎:   次に、親として食事を与えないとか、養育を放棄するなどのネグレクトは、県内でどの程度発生しているのか。

県側:   平成15年度の1121件のうち458件で、全体の40%を占めている。平成11年度は134件だったので大きく増えている。虐待全体に占める割合は40%前後で推移している。

松崎:   表面に現れにくいから、発見が難しいと思うが、どう対応しているのか。

県側:   一番多いのは、近隣、周囲からの相談だ。夕方や夜間に家の外に出されて放置され、食事が与えられていない場合や、ひどいものは、コンビニで万引きに至ったときなどにネグレクトが疑われるという、相談だ。そうしたときに、保護者から話を聞き、子どもからも丁寧に聞く。ネグレクトを受けた子どもは、親からの愛情が薄い、手をかけられていないという状況にあるので、情緒障害的な状況、ひどいときは発育不全が認められることもある。また虐待者は子どもとのかかわりを積極的に持たないため、子どもは親に捨てられたと感じて非常に不安定な心理状況にある。子どもに対しては心理職員が中心になって子どもに接し心のケアを行っている。

松崎:   虐待の原因が自分にあると思い込む子もかなりあるだろう。その子どもの心を解きほぐし、暖めて、言葉を引き出さなければならない。一方で、子どもの心に負担をかけないように進める必要もあろう。様々な配慮を要する現場の職員の苦労を察すると、マンパワーを含めて児童相談所を専門機関としてどのように強化していくのか、ぜひ聞きたいと思う。

県側:   児童相談所への相談は、児童福祉司のほか心のケアを心理判定員が行っているが、年々難しいケースが多くなってきた。専門職の増員についてはこれまでも努力してきたが、現場はまだ、過重な負担がある。今年度は親子支援チームをモデル的に相模原児童相談所に設置し、親子関係改善の取り組みを始めたところだが、他の児童相談所にも拡大したいと思っている。

松崎:   新年度から行うのか。

県側:   そうするべく人員配置をお願いする。

松崎:   了解した。ところで、横須賀市が児童相談所を設置したいと表明しているが、県のエリアとしては三浦地域と横須賀を一体として区分し、相談体制を敷いているので、ここから横須賀が抜けると他の地域にとっては児童相談体制の低下が懸念されている。

県側:   県の相談所をどこに置くのかという課題もあるが、県としてはしっかりと所管エリアを担って行く。

松崎:   児童相談体制の水準を下げない、むしろ向上させるという決意か。

県側:   その通りだ。 松崎:   よろしくお願いする。