神奈川県議会 平成17年6月定例会本会議での一般質問と答弁

<質問項目のまとめ>

(1)         戦後60年と関連の課題について

戦後60年を迎えての所感と、県民が直面してきた基地問題についての方針を知事に問うとともに、教育長に、戦争の記憶を語り継ぐことへの認識と取り組みを聞く。

(2)         精神医療について

-1-          県立精神医療センター芹香(きんこう)病院について

県立病院が受診の要請に即応しなかった患者さんが、どこで受診することもできないまま、自ら命を絶たれたことについて、知事に認識を聞くとともに、患者さんへの対応や訪問看護、生活支援についての所見を病院事業庁長に尋ねる。

患者本位の医療が確保されているのか、芹香病院の姿勢、諸課題の解決に向けた病院事業庁長の所見を聞く。

-2-          県立精神医療センター芹香(きんこう)病院について

県立病院が受診の要請に即応しなかった患者さんが、どこで受診することもできないまま、自ら命を絶たれたことについて、知事に認識を聞くとともに、患者さんへの対応や訪問看護、生活支援についての所見を病院事業庁長に尋ねる。

患者本位の医療が確保されているのか、芹香病院の姿勢、諸課題の解決に向けた病院事業庁長の所見を聞く。

(3)         大規模災害等への対応について

-1-          空の機動力の確保について

災害時に活躍することになる県と県警のヘリコプターは、現行の5機中2機ともに20年の耐用年数を経過しており、更新時期が到来している。わが県における現行の5機体制の堅持と24時間体制化について、知事に所見を聞く。航空隊の現状や今後の運用方針について警察本部長に聞く。

-2-          首長の専門的訓練について

災害の特性を正しく捉え、迅速・的確な応急対策を行うためには、地方公共団体の首長等の優れた判断力と強力なリーダーシップが重要であり、首長を対象とする専門的で実践的な訓練や研修が必要なのでその実施を知事に求める。

-3-          関係機関の情報共有と連携強化について

災害現場において、関係機関が緊密な連携を図る前提となる情報共有を確実に行うための無線通信システムが是非必要なので、県はこうした観点から、国に対して必要な周波数の確保や無線資機材の配備等を求めて積極的に働きかけを行うよう知事に求める。警察本部長に消防等との情報共有の現状と認識を聞く。

-4-          大規模災害における障害のある子どもや家族の避難場所について

大災害がおきた際の避難所生活では、身体的あるいは知的に障害があるために、特別な介護が必要な子どもたちと家族に、肉体的にも精神的にも大変大きな負担がかかることが予想され、中越地震では困難な状況のあったことが伝えられている。避難場所として、県立の盲・聾・養護学校を活用するよう、教育長に求める。。

<質問内容>

(1)         戦後60年と関連の課題について

 戦後60年を迎えたこの時点から振り返って見ますと、我々は平和の恩恵を十分享受してきました。平和なくして経済の発展はなく、生活水準の向上もありえませんでした。10年前に戦後50年を迎えたときには半世紀の区切りということもあり、国を挙げて平和について考えるイベントなどが多く催され、普段、あたりまえと思っている平和について思いを深め、平和を守っていく大切さを改めて考える良い機会になったと思います。

  そして、今年は60年です。しかし、10年前と違って「戦後60年」という言葉を見ることも少なく、盛り上がりに欠けるところです。将来、戦後100年を迎えるときには大きな機運があるのかもしれませんが、その時には実際に戦争を体験した人々がほとんどおられなくなっており、戦争の悲惨さ、平和の大切さを、身をもって伝える人の存在が遠くなります。その意味で、私は、10年の区切りである今年が大きな節目であり、大切であると思っています。

  広島市においては、これまでも、被爆体験の若い世代への継承等に市をあげて取り組んでいて、児童・生徒が在学中に被爆体験者の話を聞く活動が行われていると聞いていますが、神奈川県も、軍事関係施設が多くあったことから空襲がたびたびあり、県内には大きな戦争の傷跡を残しています。そして、いまだに米軍基地があり、戦後は続いているのであります。神奈川こそ県民を挙げて平和について考え、平和を守っていくことを考えなければならないと思います。

●           そこで、知事に伺います。

戦後60年を迎えて、あの戦争の記憶を語り継ぎ、次の世代に伝えていくのが今ほど大切な時はないと思います。知事はどういう所感をお持ちであるのか、お聞かせください。また、県民が直面してきた基地問題について、特に最近の原子力空母の配備の問題と第一軍団司令部移転の問題について、どのように取り組んでいかれるつもりか、知事の方針を伺います。

○           松沢知事答弁

私の祖父と伯父は、60年前の昭和20年8月9日、不幸にも長崎で被爆をいたしました。一命は取り留めたものの、その後、苦しみの日々を送りました。私は、戦後生まれではありますが、幼い頃から何度か長崎の伯父を訪ね、原爆の凄まじい惨状やその後の惨劇について、生々しい話を聞きました。以来私の心にはこれは強く焼き付いております。

戦争で疲弊した我が国は、先人のご努力により、世界に類を見ない早さで復興を実現いたしました。今に生きる私たちは、こうした先人の努力を基礎として、平和で豊かな生活を享受しているわけであります。

私は、戦後60年という区切りの時に、先人が築き、守り通してきた平和の尊さを、我々一人ひとりが再認識することは非常に重要であると考えております。また、世界で唯一の原爆被爆国の国民として、二度と戦争を起こさせないよう、戦争の悲惨さと核兵器の恐ろしさ、そして平和の尊さを、様々な機会に次の世代と世界の人々に伝えていく責務があると思います。

さらに、将来にわたって戦争に巻き込まれることのないよう、自国の国民を確実に守るとともに、世界平和に貢献できる安全保障体制を構築していく必要があると強く思う次第であります。

県としても、万が一の武力攻撃事態や大規模テロの際に、県民の生命を守り被害を最小限に止めるため、国民の保護に関する計画の策定や、関連する施策の構築などを着実に進める責任がございます。

私は県民そして国民の安全を守るため、しっかりとした安全保障体制の構築に向け、政治に携わる者としての責任を果たしてまいりたいと考えております。

次に基地問題、特に原子力空母の配備と第一軍団司令部移転の問題について、どのように取り組んでいくつもりなのか、私の方針についてのお尋ねがございました。

本県では、戦後まもなく、旧日本軍の施設からホテルや個人住宅に至るまで、様々な施設が接収され、今なお多くの米軍基地が県民生活やまちづくりに大きな影響を与えているところでございます。

こうしたことから本県といたしましては、これまでも、基地の整理・縮小及び返還の促進と、地元の意向尊重を基本として、様々な取り組みを進めてきたところでございます。

お尋ねのキティホーク退役後につきましても、国に対して、もし仮にどうしても後継艦が必要というのであれば、空母艦載機による騒音問題の抜本的解決を図った上で、通常艦の配備に向け最大限努力するよう求めてきたところでございます。

また、第一軍団司令部の移転問題につきましても、仮に報道が事実とすれば、基地の機能強化等につながる可能性があることから、県民負担の軽減を念頭に対応するよう国に求めているところでございます。

私といたしましては、これまでも我が国政府はもとより、アメリカ国務省など関係方面から情報収集に努めてきたところでありますが、今後とも、様々な機会をとらえて国に情報提供を求めるとともに、基地関係市を支援する立場から、地元の意向が実現できるよう、できる限りの努力をしてまいりたいと考えております。

●           つぎに、教育長に伺います。

教育長は戦後60年についてどのように認識しておられ、児童・生徒に平和の尊さ、平和を守っていくことの大切さをどのように伝えようとしているのか、お答えください。

○           引地教育長答弁

  戦後60年、我が国で平和が保たれ、豊かで安定した暮らしができていることは、多くの先人のご苦労とともに教育の果たしてきた役割が大きいものと考えております。

  また、今このときも世界各地で起きている紛争等をニュースで見るにつけ、平和のありがたさを改めて実感するとともに、平和の尊さ、平和を守っていくことの大切さをきちんと子どもたちに伝えていかなければならないと考えております。

  子どもたちが本当に平和の大切さを理解するためには、知識だけではなく、より年齢の低い段階から身近に戦争の悲惨さや平和の尊さを感じることが大切であると考えております。

  そこで、現在学校では、学習指導要領に基づいて、社会科や道徳あるいは総合的な学習の時間等において平和の大切さについて取り上げておりますが、そうした際には、地域のお年寄りに戦争体験を話していただくなどの取り組みも行っております。

  しかし、松崎議員お話の通り、こうしたお年寄りがだんだん地域で少なくなっているというのも事実でございますので、悲惨な戦争の記憶を次の世代に引き継いでいくためにも、こういった機会が大切にされ、より多くの学校で実施されるよう働きかけてまいりたいと考えております。

  また、平和を守る心を育てていくためには、それぞれの国や国民が互いに理解し合い、認め合うといった相互理解や共感する心を持った国際人として育っていくことも不可欠であります。

  そこで外国籍の子どもたちの多い学校では、日本文化の紹介とあわせて、それぞれの国の文化を授業などで取り上げたり、外国籍の子どもと保護者が自国の料理や歌を披露したりするなどといった交流も進めております。

  県教育委員会といたしましては、今後とも市町村教育委員会と連携して、こうした子どもたちを国際人として育てる取り組みをはじめ、学校における優れた取り組みを広く県内に提供するなど、戦争の悲惨さや平和の尊さについて若い世代がしっかりと受け止め、次の世代に引き継いでいくための教育の充実に努めてまいりたいと考えております。

(2)         精神医療について

-1-          県立精神医療センター芹香(きんこう)病院について

厚生労働省の発表によれば、昨年1年間の自殺者は3万227人で、2年連続で3万人を超え、とりわけ、うつ病などによる働き盛りの中高年の方の自殺が増えています。

県立病院のうち、このような精神疾患を専門に扱う精神医療センターの芹香病院では、「県民に信頼され親しまれる病院」を基本方針に、常に県民のニーズを考え、心あたたかい医療を実践することを目指しておりますが、この芹香病院の患者さんについてある話を伺いましたので、それに関連していくつかお尋ねします。

その患者さんは、私もよく存じあげている方で、かねてから芹香病院にかかっており、何度か入院をされたこともありますが、先日、大変残念なことですが、自ら命を絶たれました。

その患者さんは、自殺される前日に救急車を呼んで、駆けつけた救急隊員に芹香病院へ行きたいと話したため、救急隊員が芹香病院への受診を要請しました。ところが、芹香病院は、救急隊員から患者さんの話した症状を聞いて、つまり「芹香病院で処方された薬を多く服用しおなかが痛い」ということから、まず芹香病院に来るのではなく、内科のある病院を受診するよう勧めたと言うことです。関係者によると救急隊はこのため、近隣の3つの内科に受診を打診していずれも断られており、患者さんは結局、そのまま自宅にいました。またこのあと家族に対し「芹香院も冷たくなったな」「生きていると迷惑しかかけない」「お母さん、ごめんね」と話していたということです。

近年、在院期間の短縮という大きな医療の流れがあるということは、私も承知しております。その考え方自体は否定するものではありませんが、かかりつけの患者でありながら、入院を希望する患者さんに対して、入院させないということになってしまうのではないでしょうか。

さらに、この方が芹香病院を退院した後の訪問看護や生活支援について、適切に行われていたのでしょうか。

●           まず、知事に伺います。

県立病院が受診の要請に即応しなかった患者さんが、どこで受診することもできないまま、自ら命を絶たれたことについて、どのように認識されているのか、ご所見を伺います。

○           松沢知事答弁

  答弁に入ります前に、松崎議員の親しい方がお亡くなりになられたことにつきましては、心からお悔やみ申し上げたいと存じます。

  自殺される要因はいろいろでございますが、その予防のためには、心を許してこだわりなく相談をしていただけるような状況を作ることが、何よりも必要であると考えております。

  精神疾患で悩んでおられる方々にとりましては、芹香病院のような精神医療を行う病院が、相談をしやすい体制となっていることが必要であると考えております。

  私も今月16日に、移動知事室で、芹香病院にお伺いして、直接、院長及び関係者から精神医療の考え方などの話を聞きましたが、芹香病院では、医師がじっくりと丁寧に、時間をかけて相談に乗った上で、治療を行っております。

  それに加えて、医療相談室を設け、専門の相談員を配置し、病気についての不安や心配にお応えするとともに、患者さんの退院後の住まいや訪問看護の利用方法など様々な相談をお受けしております。

  しかしながら、今回のご指摘の事例については、通院中の患者さんに対するケアという観点から、重要なことと受け止め、引き続き県民の皆様からご信頼をいただけるように務めてまいりたいと考えております。

●           また、病院事業庁長に伺います。

芹香病院ではこのような患者さんに対して、入院を抑制するというような治療方針を持っているのでしょうか。また、訪問看護や生活支援についてどのようにお考えなのか、お伺いします。

○           堺病院事業庁長答弁

  答弁に入ります前に、芹香病院にかかられていた患者さんが、お亡くなりになったことにつきまして、私からも心よりお悔やみ申し上げます。

  最初に、精神医療センター芹香病院における入院や訪問看護、生活支援についてのお尋ねでございます。

  まず、芹香病院での入院につきましては、患者さんの症状に応じて、ご本人やご家族とも十分にお話をさせていただきながら、最も適切な治療方針を決定しておりまして、必要な場合には、入院していただくようお勧めしております。

  また、精神疾患をお持ちの方が身体症状を訴えられて、救急車で搬送されるといった場合に、救急隊員から連絡を受けますと、患者さんのお話をよくお聞きし、精神症状も合わせて、訴えている内容を総合的に把握し、最優先で処置しなければならない治療を判断し、対応しているところでございます。

  このように、患者さんの状態に合わせ、症状に対する適切な理解のもとに、最も適切な治療を行っております。

  次に、訪問看護や生活支援についてでございますが、近年、精神医療の流れとしては「入院医療中心から地域生活中心へ」という方向であり、こうした状況を踏まえて、芹香病院でも、入院当初より早期の退院を目指して計画的な治療を行い、患者さんのできるだけ早い社会復帰を支援しているところでございます。

  また、芹香病院では、患者さんが地域やご家庭でより安定して快適な生活を過ごすことを支援するため、ご家庭に訪問スタッフがお伺いし、患者さんがお困りになっていることを一緒に考えながら暮らしのサポートを行っております。

  訪問看護や生活支援は、患者さんの地域での生活を支援する大切な事業であり、また、地域と病院を結ぶ大切な取り組みでありますので、今後とも関係機関との連携や体制の強化を図り、充実してまいりたいと考えております。

次に、芹香病院における医療提供の考え方についてですが、私は、昨年の決算特別委員会において、県立病院における医師の確保対策について質問しましたが、精神科の医師は、他の診療科に比べて確保が難しいという答弁がありました。

その原因としては、公立病院の精神科医の待遇、業務の過酷さがあり、また、開業するための設備投資が少なくてすむといったことから、県を退職するケースが多いとのことでした。

したがって、単に医師不足というだけではなく、治療の中心となる中堅の医師が不足しているのではないか、また、そのことによって、適切な医療ができないのではないか、深く懸念しているところであります。

先ほどお話をしました患者さんは、3年の間に3人も主治医が替わったと聞いていますが、このような医師不足がその背景にあったのではないかと思われます。

適切な医療を提供するために、特に精神科におきましては、患者さんと主治医の信頼関係が非常に重要であるといわれていますが、本当にそれができていたのか疑問とするところであります。

心あたたかい医療を提供する県立病院として、精神医療センターにおける「患者本位の医療」ということは大変重要なことと考えています。

●           そこで、病院事業庁長に伺います。

患者本位の姿勢を、芹香病院は本当に貫いてきたのか、見直すべき点や改めるべき点はないのか、諸課題の解決に向けた病院事業庁長のご所見と決意をお聞かせ下さい。

○           堺病院事業庁長答弁

  芹香病院は、統合失調症、うつ病、神経症など様々な精神障害を対象として、一般精神医療と精神科救急医療などの専門的な精神医療を行う本件の中核病院として、これまでも大きな役割を果たしてきました。

  病院の基本理念として「患者さんやご家族に信頼される心あたたかい医療を提供し、本県の精神医療の発展に努めること」を掲げております。

  そのことから、患者さんの症状やご家族の意見、家庭環境など様々な要素を総合的に考慮し、最も適切な治療方針を立てるとともに、インフォームドコンセントの観点から、患者さんおよびご家族に十分な説明を行い、医療を提供する側と受ける側が互いに情報を共有した上で、治療を行っております。

  一方、昨今の精神医療を取り巻く環境は、社会環境が大きく変化し、ますます複雑多様化しておりますので、患者さんの症状も多岐にわたり、難しい判断が求められております。

  さらに、重症患者の治療に当たる県立病院では、精神科医が定着しにくい状況があり、主治医が短期間で替わらざるを得ない場合もあることから、優秀な精神科医の人材確保が、大きな課題であると認識しております。

  また、県立の精神病院として求められる役割を果たしていくため、施設面も含めた療養環境の整備が課題となっております。

  今後とも、これらの課題の解決にできる限り努力するとともに、これまで以上に患者さんとの信頼関係の構築に努め、引き続き、芹香病院の使命である「心あたたかい、患者本位」の精神医療を提供してまいりたいと考えております。

●           <堺病院事業庁長に対する再質問>

  芹香病院へ行きたいと言った患者さんに即応しなかった点について再質問します。病院事業庁長の答弁では「患者さんから聞いて、最も適切な治療方針を決める」とのことです。ところが、この患者さんの場合は、患者本人の言葉ではなく、救急隊員からの情報によって、医師が芹香病院ではなく他の内科を受診するように勧めたということです。これが、果たして最も適切な治療方針といえるのかどうか、その点に沿って再度お答え願います。

  知事も6月17日に移動知事室の一環で芹香病院を訪れたとのことですが、私も最近、芹香病院を訪ねて院長から医療体制について詳しく説明を受け、医療環境の厳しさを実感したところです。

  経営面と裏腹の関係にある事柄だと思うのですが、芹香病院では、一般の精神医療よりも診療報酬の点数が高い治療、たとえば思い認知症の患者さんや急性期の患者さんの治療に重点がどんどん移ってきていると感じました。

一例を挙げますと、院長の説明では、電極をこめかみに当てて行う電気ショックによる治療は減少しているとのことでしたが、実際は訪問した当日6件の治療が行われていたばかりか、後で聞くと、それもまれなことではない、ということでした。

  また私は、昨年の決算特別委員会でも、芹香病院で医師が不足している点について取り上げ質問をしました。実際に2人の欠員が出ている中で、患者本位の医療を貫いていくことは、大変困難だと思います。

  こうした状況の中で病院事業庁長は患者本位の医療についてどのように取り組んでいくのか、決意を再度お聞きします。

○           <堺病院事業庁長の再答弁>

  まず、今回の内科と精神科の診療の問題ですが、通常、救急隊員から連絡を受けると、その場で医師はどの病気を先に治療することが最も患者のためになるのかということを判断し、回答するため、今回もそのような判断であったと考えています。

  しかし、松崎議員からの指摘のように、私も何度も芹香病院を訪れ様々な改善点を探っていますが、精神疾患を持つ患者さんが同時に身体疾患を持っている場合やその逆のケースが非常に多いことを認識しています。

  このことは、芹香病院だけに限らず、ひとつの病院の中だけでなく地域のネットワークの中で解決すべき問題であろうと考えています。身体的疾患は多岐にわたるので、今後は地域とのネットワークの中でこの問題に対処していきたいと考えています。

  最後に、医師の問題ですが、松崎議員の指摘のように、精神科医の開業による退職という問題がありますが、これによって医療の質を低下させるわけにはいかないので、臨時の雇用などを踏まえながら、できるだけ医師の充足に力を入れていきたいと考えています。

●           <堺病院事業庁長に対する要望>

  医師の確保という点に光を当てて対応することも必要ですが、部分の課題ごとにどうするか、というだけでなく、県立病院の精神医療のあり方を全体としてどうしていくのかということについて、見直していただきたいのです。

患者本位の医療を掲げる県立病院なのですから、本当にそういう体制になっているのか、芹香病院の現状を総合的に検証し、その結果見直すべき点については誠意を持って見直しを行うことを心の底から強く要望します。

-2-          県立精神医療センター芹香(きんこう)病院について

さらに精神科救急医療体制における、いわゆる二次救急の体制整備状況についてお聞きします。

私は、横浜市内で精神障害の当事者と家族を支援する市民活動に関わっており、精神に障害のある方が地域で安心して暮らしていける仕組みづくりが大切と常々考えているところですが、そうした仕組みの一つに救急体制の整備の問題があります。

本県での精神科救急医療体制は、公的精神病院、民間精神病院、横浜市、川崎市、神奈川県警など関係機関の密接な連携の下に成り立っています。特に「自傷他害のおそれのある精神障害者」に対しては、精神保健福祉法第24条によるいわゆる警察官通報について平成14年度から24時間で対応する体制が整えられており、関係機関には引き続き努力をお願いするところです。

しかしながら、現代の社会は、人間関係が希薄化してきている中で、非常にストレスの多い社会になってきており、精神に障害のある方に限らず、特に障害のない方であっても、急激に精神症状を悪化させるような場合が増えてきているのではないかと考えています。

実際、平成12年度の精神科救急情報窓口の受付件数が、およそ2,400件であったことと比較して、平成16年度は約3,800件にまで伸びていることをみますと、潜在的な需要はもっと多くてしかも増加傾向にあるものと考えます。

こうした状況に対応するため、本県においては、「初期・二次救急」についても専用の窓口を設置しており、平成15年度から土・日の「二次救急」の受付を24時間対応とするなど順次、体制を整備し、取組みを進めていることは理解していますが、月曜日から金曜日までの平日午後10時から翌朝8時半までは、相変わらず「空白の時間帯」のままです。

  このように「自傷他害のおそれはありませんが、急激に精神症状を悪化させた方」に対応する「二次救急」への取り組みは、まだまだ弱いと思います。

●           そこで、知事に伺います。

  精神科救急医療体制における「二次救急」についても24時間体制の拡大が急務と考えますが、今後、具体的にどう取り組んでいくのか知事のご所見を伺います。

○           松沢知事答弁

  精神障害のある方が地域で安心して暮らしていくためには、精神科救急医療、なかでも二次救急の24時間体制の整備は重要であり、これまで段階的に体制の充実に努めてきたところです。

  松崎議員のお話のとおり、平成15年度に芹香病院において、土曜・日曜の24時間を通した受け入れ体制を開始したのをスタートに、民間精神科病院にも協力していただきながら、夜間10時までの受け入れ病院を順次拡大してまいりました。

  二次救急における夜10時から朝8時半までの空白の時間帯の対応につきましては、救急用ベッドを増やすことが前提となりますが、深夜に対応していただいている既存の5つの基幹病院にこれ以上増やすことは難しい状況にあり、また、救急に携わる指定医の確保についても、各病院が大変苦労されているところです。

  このような状況の中で、今後、横浜市立みなと赤十字病院と、これから開設を予定している横浜市立東部病院に、平成19年度を目途に精神科救急の基幹病院に参加をしていただくこととしております。

  県といたしましては、各精神科病院等の協力をいただきながら、引き続き二次救急の24時間体制の拡大に向け、取り組んでまいりたいと考えております。

●           <松沢知事に対する再質問>

  二次救急の24時間体制への拡大、平日の夜10時から朝8時半までの空白の時間帯の解消という点について、知事から重要な答弁がありました。横浜市立みなと赤十字病院と横浜市立東部病院が19年度から基幹病院に参加するという点です。

  それをもって、この空白の時間帯についても24時間体制化が図られると理解してよろしいでしょうか。

○           <松沢知事の再答弁>

  これによって、24時間体制の空白の部分が完全になくなるわけではありませんが、より埋める形になると思います。引き続き、残りの空白を今後どのように埋めていくかということを、しっかりと検討し、取り組んでまいりたいと思います。

(3)         大規模災害等への対応について

-1-          空の機動力の確保について

 サンフランシスコ地震ではヘリコプターの速やかな対応で大規模火災を早期に終息させましたが、阪神淡路大震災では発生直後のヘリコプターの対応ができなかったと聞いています。即座に対応していたならば被害を最小限に抑えることができたであろうことは、震災後、神戸大学などの専門家により研究論文等で指摘され今日に至っています。

  このように、ヘリコプターの持つ機動性は、緊急時に特に威力を発揮し、とりわけ、発災後初期には情報収集はもとより、多くの人命を救う活躍を期待通りに果たしています。

  神奈川県の防災力を向上させるために活用できるヘリコプターについては、現行の5機体制の堅持や、24時間の運行体制に速やかに移行することなど、災害に対する即応体制が整備されるべきであると考えています。

  そのためには、災害時に活躍することになる、警察機「かもめ」が今年で24年目、県政機「さがみ」が今年で21年目を迎え、現行の5機中2機ともに、警察庁の定める基準に照らせば、20年の耐用年数を経過しており、更新が必要であることは、改めて指摘するまでもありません。

●           そこで知事に伺います。

大規模災害への対応という観点から、災害時にヘリコプターという「空の機動力がどの程度確保されているか」によって、県の防災力が大きく左右されるものと考えておりますが、県行政の最高責任者であり、また、地域の防災力を結集して、県民の生命・財産を守る立場にある知事として、わが県における現行の5機体制の堅持と24時間体制化の必要性について、どのような認識をお持ちなのか、ご所見を伺います。

○           松沢知事答弁

  大規模な災害が発生した際には、ヘリコプターは、いち早く被災地の上空から被害を把握することや、孤立地域からの救出、救助、重傷者の搬送など多くの場面で、大変有効なものであると認識をしており、このことは実際の訓練などを通しても実感しているところです。

  現在、県内の地方行政機関として、県警及び県が5機、横浜市、川崎市の消防局が2機ずつ計9機のヘリコプターが配備されておりますが、これは、全国的にみても、決して低い水準ではないと認識をしております。

  県内で災害が発生した場合には、これらのヘリコプターで対応することになりますが、より大規模な災害が発生し、さらに多くのヘリコプターが必要となった場合には、県は他の都道府県の緊急消防援助隊を要請したり、さらに自衛隊や海上保安庁に要請したりすることなどによって、航空機を確保して、災害時の機動力を増強して、県民の生命、身体及び財産を守るために全力で取り組んでまいります。

  松崎議員から、県の5機体制を堅持し、24時間運航できるようにしたらどうかというお話がございましたが、現行の5機体制については財政状況が大変厳しい中ではありますが、なんとか維持できるように努力をしてまいりたいと考えております。

  24時間運航体制につきましては、必要となる人材の確保などの課題があり、早期に実施することは難しい面もありますので、今後の体制については、県警本部を交え、検討を行ってまいりたいと考えております。

 さて、県警では新潟中越地震にヘリコプターを派遣し、孤立した山古志村から住民を救出するなどの活躍をしたと聞いています。

  もとより、地上のパトカーと連携した犯罪の捜査、海・山の救難救助に活躍していることは承知していますが、今後発生が懸念される大規模地震や突発重要事案等に対する危機管理の面から、ヘリコプターの存在は大変重要です。 

  警察機「かもめ」が今年で24年目、県政機「さがみ」が今年で21年目を迎えそれぞれ更新時期にあること、など、解決していくべき課題があることも認識しています。

  地震や重大事件等に対応するため、警視庁や大阪府警では航空隊の24時間体制を確立していますが、本県では実施されていないため、直ちに対応することができない現状にあります。人員等の問題もあると思いますが、その必要性を考えた場合、速やかに24時間体制を確立するべきです。

●           そこで警察本部長に伺います。

県民の安全で平穏な生活を確保するという警察の責務を果たすため、危機管理面をも踏まえて、県警航空隊の現状、活動状況、今後の運用方針などについて警察本部長のご所見を伺います。

○           伊藤警察本部長答弁

  はじめに、「県警察航空隊の現状と今後の運用方針等」についてですが、航空機の運航管理状況につきましては、現在、県から運航管理を委託されているいわゆる県制機1機を含めた5機を運航管理していて、このうち3機が国費、2機が県費による配備となっています。

  次に、航空隊の活動状況ですが、飛行時間の制約や操縦士等の人員的制約から昼間のみの勤務体制となっています。このような制約の中で、時差出勤や休日勤務により最大限の勤務体制を確保し、県内全域にわたるパトロール活動を行って、空からの犯罪の予防と検挙に努めています。本年6月1日までの具体的な活動結果としては、地上のパトカーと連携して強盗事件の被疑者を逮捕するなど、7件8人を検挙しているほか、山岳及び水難事故に29回出動して10人の方を救助しています。

  航空隊の今後の運用方針についてですが、松崎議員の指摘のとおり、警察機「かもめ」と県政機「さがみ」は、それぞれ警察庁が指針としている20年の更新期間をすでに超え、あるいは超えることとなるわけですが、現在の治安情勢や大規模災害等への危機管理を踏まえた運航等を確保するには、現行の航空機の5機体制は必要であると考えています。

  また、航空隊の24時間体制につきましては、夜間における大震災等の発生に際し、被災状況の把握や被災者の救助活動のほか、突発重要事案や重大事件の発生時における情報収集、犯人の追跡と検挙活動等に有効であり、さらには上空からの警戒による犯罪抑止効果が極めて大きいと考えています。

  県警察といたしましては、航空機の5機体制の堅持と航空隊の24時間体制を確立することは、危機管理と治安維持の両面において、県民から期待される警察の役割を果たすために必要でありますので、議会をはじめ、関係当局のご理解とご協力を得ながら、検討してまいります。

-2-          首長の専門的訓練について

直下型地震はいつ、どこで起こるか分かりません。それが6,500名の命を奪った「阪神・淡路大震災」の大きな教訓の一つでした。この尊い犠牲を無駄にすることのないように、国、県、市町村及び関係機関は、この10年間、地震の被害を最小限に止めるための予防対策や災害初動時の応急対策体制の充実などに取り組んできたところであります。

こうしたなか、昨年の10月23日に発生した「新潟県中越地震」の際には、官邸、警察庁、防衛庁をはじめ、各省庁の対策本部が地震発生後速やかに設置され、自衛隊や緊急消防援助隊への早期の派遣要請が行われるなど、円滑な初動対応がなされました。「阪神・淡路大震災」の際には、総理に第一報が届いたのが約1時間50分後、政府の非常災害対策本部の設置が決定されたのが、地震発生から4時間以上経った後の閣議であったことなどを思い起こすと、「危機」に対する対応が随分と早くなったという印象を持ったところであります。

しかしながら、この新潟県中越地震では、被災地との通信が途絶し、被害状況の把握が遅れたことや、避難者のケアが不十分であったことから、本県では、これらを踏まえて「地域防災計画」を修正し、「災害時医療体制」の強化を図ったところであり、また初動段階での一層確実な情報収集が図られるよう、現在防災行政通信網の整備に取り組んでいると承知しております。

このように、県、市町村等においては「地域防災計画」や応急対策体制の充実が着実に図られているところではありますが、いざという時に、これらを的確に運用し、迅速かつ効果的な災害対策を行うことができるかどうかは、運用にあたる職員の対応能力によるところが大きいと考えます。

中でも、災害発生時に第一線の対応を担う地方公共団体の長は、活動環境等が激変し、平常時とは異なる危機的事態の中で、人命に直接関わる応急対策の方針決定や重大な決断を、自らの責任で、迅速かつ的確に行わなければなりません。

例えば、平成12年7月の三宅島の噴火に伴う同年9月の全島あげての避難や、昨年10月の新潟県中越地震における山古志村の全村避難の決定などは、その典型的な事例であると考えます。

災害の態様は多岐に渡り、同じ災害は一つとしてないといっても過言ではありません。災害の特性を正しく捉え、迅速・的確な応急対策を行うためには、地方公共団体の首長等の優れた判断力と強力なリーダーシップが重要であります。

●           そこで、知事に伺います。

私は、知事、市町村長など、災害時の応急対策のトップリーダーとなる立場の皆さんを対象とする、専門的かつ実践的な訓練や研修を、県として具体的にプログラムを組んで行っていく必要がある、と考えますが、知事のご所見を伺います。

○           松沢知事答弁

  大規模な地震等の際には、自治体の長は、たとえば県レベルで申しますと、切迫した状況の中で緊急医療チームや広域応援部隊をどこに重点的に投入すべきか、というような重大な判断を下さなければなりません。そうした判断やその後の対応が、最終的にどれだけの人命を救えるか、あるいは被害をどれだけ小さいものにできるか、といったことを左右する重要な要素になるのではないかと認識しています。

  昨年、実際に新潟県中越地震の現地に赴き、新潟県知事や山古志村の村長と意見交換をしてまいりまして、こうした思いを強くしたところです。

  そうした観点から、県、市町村とも、毎年度「災害対策本部訓練」などを実施し、様々なシミュレーションのもとに、首長が指揮を執り、災害時における情報分析や判断能力を養うなど研鑽を重ねています。

  また、自治体の長などを対象とした専門的な研修につきましては、国の「消防大学校」が、平成15年度から「危機管理セミナー・トップマネジメントコース」を開講しており、県が県内の市町村を取りまとめ、昨年度までに県内から延べ11市4町の首長などが受講し、今年度も9市1町が受講を予定しています。

  こうした専門的かつ実践的な研修につきましては、ノウハウの蓄積があり、適切な講師が確保できる消防大学校のような専門機関が行う教育プログラムに参加するのが、合理的かつ効果的であると考えています。

  県として、今後ともこうした専門的な研修に、より多くの市町村が参加されるよう、積極的に働きかけてまいります。

-3-          関係機関の情報共有と連携強化について

2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロは、米国内において各行政レベルでの危機管理に対する対応を根本から練り直す必要性を浮き彫りにしました。例えば、全米各地の警察と消防では事件の直後から機関相互の情報共有のあり方を危機管理の視点から全面的に見直し、ニューヨークやサンフランシスコでは、同一の周波数を使って瞬時に情報共有ができる通信システムを構築しています。

「9.11テロ」によりニューヨークでは、一般市民のほかに353人の消防士と警察官の命が奪われました。世界貿易センタービルに近接するニューヨーク市の危機管理センターが崩壊し、消防司令部の指揮官が死亡したことにより、系統だった指令ができずに、貿易センタービルの真下で活動していた消防士や警察官にビル崩壊の危機が差し迫っていることが伝えられず、多くの尊い命が奪われたとニューヨーク市警出身の州政府安全保障局長から直接聞きました。

一方、昨年10月の「新潟県中越地震」では、全国から消防職員や警察官が被災地に派遣され、それぞれの地元警察や消防と連携して、被災者の救出・救助に当ったことは記憶に新しいところであります。

その際、消防、警察、自衛隊などの各関係機関が、一致協力した活動を展開し、多数の被災者の方々を救出するなど、めざましい活躍をされました。特に消防、警察、自衛隊が災害現場で情報を共有化し、それぞれが持つ技術と装備、人員などの特長を発揮した結果、土砂崩れ現場における幼児の奇跡的な救出や困難な現場での多くの方々の救助に至ったと聞いています。

いうまでもなく災害が発生した場合には県、市町村などの行政と消防、警察、自衛隊などの関係機関が迅速に連携し、それぞれの組織が持つ機能を十分に発揮して、応急活動に対処することが必要となります。特に災害現場で、実際に救出・救助活動に従事する機関同士が情報を共有することは極めて重要であり、その良否が救出活動の結果を左右すると考えます。

しかしながら、自治体、警察、消防が平素の活動に使用している無線通信システムは、それぞれの活動目的に沿っておのおのが異なるシステムを運用していることから、互換性のない仕組みとなっております。

一方、災害発生時に備えて整備されている防災行政無線は、交通や通信の途絶した孤立地域からの情報収集や、病院、電力会社などの生活関連機関と市町村の間の通信を確保することを目的とした通信網であり、システム全体を統括する機能は県や市町村の各災害対策本部に置かれていますが、地域や警察署、災害現場を網羅するものではありません。

また、地震災害やコンビナート災害等の大規模災害に備え、防災相互通信用無線が、国、地方公共団体、電力会社、鉄道等の防災関係機関に導入されてはいるものの、専用の無線設備も専用の周波数無線も、それぞれの防災関係機関が自前で用意することとされており、実際の無線機材の整備の厚みは機関ごとに大きな差があります。

このように、県内で災害が発生した際、災害現場で活動する消防、警察、自衛隊といった実働部隊が情報を共有化する通信システムは、十分ではないのが現状です。

●           そこで、知事に伺います。

まず災害時にける情報共有の必要性について、どのように認識し、どのような対応を取っているのでしょうか。

また、災害現場において、関係機関が緊密な連携を図る前提となる情報共有を確実に行うための無線通信システムが、是非必要なので、県は、こうした観点から、国に対して必要な周波数の確保や無線資機材の配備等を求めて積極的に働きかけを行うべきである、と考えますが、知事のご所見を伺います。

○           松沢知事答弁

地震などの災害が発生した際には、地元の県、市町村、警察や消防はもとより、自衛隊や、緊急消防援助隊、警察の広域緊急援助隊などが相互に緊密に連携しつつ、応急対策活動に当たる必要があり、そのための情報共有は、大変重要であると認識しています。

災害が発生した際の情報共有には、県・市町村・関係機関等の本部間の情報共有と、災害現場における警察・消防等の現地部隊間の情報共有の2つのパターンがあります。

このうち、本部間の情報共有については、県警察、市町村消防、自衛隊などの機関との間に神奈川県防災行政無線を配置し、被害情報の伝達や、応急対策活動の相互調整等を行うことができる体制をとっております。

この防災行政無線については、より高性能でかつ信頼性の高い通信網にすべく、現在再整備を行っているところです。

一方、災害現場における情報共有につきましては、警察、消防等の現地の指揮官が直接顔を合わせて行うのが原則ではありますが、それができない場合等に活用できる無線システムとして「防災相互通信用無線」があります。

こうした、異なる機関が共通に用いることのできる無線は、災害現場での連携の強化に役立つものと考えられますが、実際に運用する場面では、隣接する複数の現場間での混信を防止する措置や、現行のトランシーバーのような相互に会話する方式から電話と同様に同時に会話できる方式にすることなどの課題もあります。

現在国は、防災行政無線用の周波数帯の全面的な見直しを行っており、その中で、新たに「防災相互通信用無線」の周波数帯を確保するべく検討していると聞いています。

周波数の割り振りは全国共通の制度でありますので、今後、他の自治体や関係機関の動向も踏まえた上で、こうした課題の解決につきまして、国への働きかけを考えております。

●           また、警察本部長に伺います。

実際の災害現場においては、警察と消防等との情報共有はどのように行われているのでしょうか。また、今後、より一層の連携強化を図るための方策等について伺います。

○           伊藤警察本部長答弁

  災害が発生した場合に、警察といたしましては、消防等の関係機関と緊密に連携のうえ、負傷者の救出救助を最優先として、現場周辺の交通規制、死傷者の身元確認、警戒線の設定等の初動措置を講ずることになります。

  発災現場におきましては、こうした現場活動を迅速的確に実施するためには、被害規模・被害状況をはじめとする災害情報を迅速に収集し、これを国や県はもとより関係機関と共有することが極めて重要です。このため県警察としては、警察本部に設置される警備本部に情報を集約し、警察庁に連絡するとともに、県の災害対策本部等との情報の共有を図ることとしています。

  さらに、災害現場においても警察と消防等関係機関が情報の共有を十分に行うことは極めて重要であり、このため、災害現場に関係機関の現場指揮官が集まる合同式所を設置するなどにより、活動区域や任務分担を十分調整し、迅速な救出救助や被害の拡大防止に必要な措置を講じています。

  以上申し上げました消防等関係機関との連携をさらに強化していくためには、実践的な合同訓練を積み重ねることが必要と考えていますので、このため、6月16日に、警察・消防・鉄道事業者の三者合同で鉄道事故を想定した災害警備訓練を実施しました。

この訓練は、無線機を携行した警察と消防の現場指揮官による合同指揮所を設け、相手方の無線も傍受しながらリアルタイムで災害情報の共有化を図り、救助活動を実施していくという試みを加えて実施しました。

その結果、合同指揮所内では、警察と消防の指揮官が、お互いの部隊が協力してどのような活動を展開しているのかを十分に把握の上、救出救助活動を行うことができたので、現場での関係機関と瞬時に情報共有することがいかに有効かを確認したところです。

今回の訓練でも明らかなように、警察と消防の情報共有と連携が密であればあるほど効果的な活動ができるものと考えています。したがって、今後ともこうした関係機関との実践的な訓練を積み重ね、一層の連携強化が図られるよう、務めてまいりたいと考えています。

-4-          大規模災害における障害のある子どもや家族の避難場所について

 最後に、大規模災害時における、障害のある子どもやそのご家族の避難場所について伺います。

  私は、障害のあるなしにかかわらず、ひとり一人の子どもが十分尊重される社会を目指すべきだと考えておりますし、神奈川の教育も同様の姿勢を貫いているものと受け止めています。子どもたち本人を中心軸として教育施策を考えるという基本に、今後も揺るぎはないと確信しているところです。そしてこのことは、近い将来、発生することが懸念されている関東地域での大地震が現実となった場合に想定される、子どもたちの避難生活においても、当然尊重されるべきであると考えております。

万一、このような大災害がおきた際は、地域にお住まいの多くの子どもとご家族が、一定の期間、避難場所とされた学校の体育館などで、共同生活を余儀なくされることになるでしょう。

  しかし、このような状況のもとでは、身体的あるいは知的に障害があるために、特別な介護が必要であり、何がおきているのか理解することが難しい子どもたちに、肉体的にも精神的にも大変な負担がかかることが予想されます。実際、中越地震における報道などによりますと、このような避難場所における生活の中で、体温を調節することが難しい子どもがインフルエンザにかかりやすかったり、環境の変化が苦手な子どもがパニックになったりするなど、困難な状況のあったことが伝えられています。そして、その結果家族の方々は、共同生活を余儀なくされている人々への迷惑を考え、いたたまれずに、周りの方々に子どもの特性を説明して回ったり、しかたなく避難所を出て車の中で過ごしたりという例があったということであります。災害により大変な思いをされている中で、さらに加えてこのような対応をされなくてはならないということは想像を上回る大変さなのであろうと思います。

  このような中、長岡市立養護学校では自校の児童やそのご家族の困難に際し、障害のある子どもとご家族に「大変ならこちらへ」と呼びかけたところ、多くのご家族が最初の避難場所から養護学校に移られたそうですが、家族から、「理解ある先生のいるところで、養護学校の仲間の家族と過ごすことができ、最初の避難場所にいた時より落ち着けた」などの声が数多く寄せられたとのことであります。

  こうした実際の場面での対応は、本県における大規模災害時の対応を考える際に大いに参考になるとともに、是非とも生かしていく必要があるものと考えております。

●           そこで、教育長に伺います。

本県でも、大きな災害が発生した場合には、障害のある子どもとそのご家族などの避難場所として、県立の盲・聾・養護学校を活用すべきであると考えますので、ご所見を伺います。

○           引地教育長答弁

  大規模災害時における避難生活につきましては、慣れない環境の中で共同生活を強いられるなど、大変なご苦労があると承知しています。とりわけ、障害のある子どもたちにつきましては、松崎議員のお話にもあったとおり、体温調節の困難な子がインフルエンザにかかったり、環境変化の苦手な子がパニックを起こしたりしたなど、ご家族を含めより大変な避難生活を強いられたものと認識しています。

  このため、障害のある子どもやそのご家族の避難場所については、ひとり一人の障害の状態に配慮し、より安定した生活が送れるような特別な対応が必要となりますので、盲・ろう・養護学校をその避難場所として活用することが大変有効であると考えています。

  そこで、教育委員会では、市町村から県立の盲・ろう・養護学校に対して避難場所として活用したいとの打診があった場合、一般の避難場所としての指定はできるだけご遠慮申し上げ、その代わりに、障害のある子どもとそのご家族がいざというときに利用することができる特別の避難場所として提供してまいりたいと考えております。しかしこうした取り組みは全国的にもあまり例がありませんし、また、地元の方々のご理解も必要でございますので、安全防災局をはじめ関係部局と連携して早急に市町村と相談を行い新たな仕組みづくりを進めてまいります。