神奈川県議会 平成17年9月定例会環境農政常任委員会質疑のまとめ

(2)アスベスト対策条例の制定と国、市町村との連携強化を求める               

松崎       アスベストの問題だが、いろいろな形で報道されており、国においても新法を制定する方向で検討が進められているところである。

松沢知事からは、今後のアスベストの飛散防止対策をより確実なものとしていくため検討を進めていくという本会議での答弁があった。

わが会派のはかりや議員の代表質問においてアスベスト対策についてとりあげさせていただいた。また、民間建築物の解体工事などに対する条例等による規制が必要ではとの要望を行ったところである。

 そこで、アスベストに関連する安全対策規制や指導のあり方についてどのような形で考えているのか、何点か伺っていきたい。

 まず、確認だが、解体工事に対する規制がどのように行われているのか、伺いたい。

県側       アスベストに関しましては4つほど法令規制が設けられております。

一つは、石綿障害予防規則いわゆる「石綿則」でございます。

 これは、アスベストによる労働災害の防止を目的に、建築物の解体工事等に対する規制として、平成17年7月1日から施行されており、国の所管であります。

手続としては、除去工事が行われる2週間前までに労働基準監督署へ届出を行います。

規制の概要は、解体する建築物の事前調査、石綿作業主任者の選任、その解体現場で働く労働者への特別教育の実施等が規定されており、作業基準といたしましては、呼吸用保護具の使用、アスベスト飛散源の密閉、関係者以外の立入禁止措置等が定められております。

 なお、工事注文者に関しては、事前調査等に要する期間の確保、必要な経費の見積への配慮が求められております。

 次に、大気汚染防止法ですが、これは解体工事については、平成8年の改正で規定され、アスベストの環境中への飛散防止を目的に、耐火建築物で延べ面積500㎡以上で、吹付けアスベスト施工面積50㎡以上建築物の除去等の工事を対象に、解体工事等を行う14日前までに、県や政令市長への届出が規定されております。

 作業基準としては、作業場を隔離し、二重の扉を設け内部を負圧にし、飛散防止のため湿潤化して作業を行い、排気は高性能のエアフィルターによる浄化等が定められております。

また、工事注文者に対しては、施工方法や工期等、作業基準の遵守を妨げる条件を付与しない配慮が求められております。

3番目は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、いわゆる「建設リサイクル法」がございます。これは、建築資材のリサイクルが目的で、解体に先立ち、事前措置としてコンクリート等に付着した吹付けアスベスト等の除去を規定しております。対象は、解体工事など一定規模以上、床面積の合計80㎡以上であって、解体工事等に着手する7日前までに、届出が必要となっております。

最後に、廃棄物の処理及び清掃に関する法律でございます。これは、解体工事に伴って発生するアスベストを含む廃棄物の適正処理の確保が目的で、吹付けアスベストや除去したアスベスト成形板等の廃棄物の処理を定めています。

松崎       9月13日の朝日新聞に福井、鳥取の両県では条例の制定、もしくは準備をしているとの報道があった。条例制定のポイントとしては、面積要件を撤廃し、小規模建築物の解体工事の届出を求めることにある。また違法であれば、改善のための勧告、命令や罰則、罰金もあるということである。全国的なアスベスト条例規制の状況はどのようになっているのか伺いたい。

県側     環境省から入手した情報及び新聞報道をもとに、他都道府県における条例によるアスベスト規制の動向について、聞取り調査により把握いたしました。

 その結果、自治体によって差違はあるものの、条例規制の概要については、先生がおっしゃったように、吹付けアスベストの除去工事に関して規模の大小を問わず、届出の対象とする、規制対象を吹付けアスベスト以外も含める、また、解体工事では測定義務はないが、その義務を課すといったこととなっております。

これは、国が現在大気汚染防止法の政省令の改正について検討しておりますが、条例の内容はその改正内容と、ほぼ同じような状況となっております。また、京都府、福井県、鳥取県の3つの自治体において、新たな条例の制定が予定されており、施行日については、いずれも11月1日の施行ということでございます。

また、現在、アスベスト規制に関する条例を既に持っている7都府県の内、大阪府、石川県、徳島県の3府県においては、11月以降、順次施行が予定されているところでございます。

さらに、静岡県、大分県、東京都は今後の国の動向を見ながら、条例の見直しを検討する予定があるという状況でございます。

 なお、兵庫県については、工事現場でどのような工事が行われているかを周辺住民に知らせるために、標識の掲示を義務付けております。

松崎       他県と比べると、本県の状況は11月の段階でどのような違いが出てくるのか。例えば11月1日に小規模な建物の解体工事を行う場合に新たに条例を制定する県と神奈川県ではどのような規制の違いが出るのか。

県側        神奈川県においては、アスベストを含む建物の解体におきましては、大気汚染防止法による規制を行っておりますので、大気汚染防止法の対象である延べ面積500㎡以上、吹付けアスベスト施工面積50㎡以上の除去工事について届出を受けますが、それ以下の部分については特段の措置は講じておりません。

松崎       端的に聞くが、他県の状況を見るにつけ、本県でも同趣旨、同内容による条例の規制が必要ではないかと思えてくるが、その点については県としてはどのように考えているのか伺いたい。

県側        本県では、8月18日に「アスベスト問題に対する当面の対応について」を策定し、現在、取組を進めているところでございますが、その中でも、今後、増加が見込まれる解体工事については、しっかり対応すべきことと考えております。

 解体工事における飛散防止対策を確実なものとしていくためには、まず、解体工事の実態把握を行い、アスベストの飛散がどのような原因で発生するかといった解明が重要であると考えており、今議会でお願いしております補正予算によって環境調査等を行い、実態を把握することが大事であると考えております。

まずは、この調査をきちんと実施することが重要であり、その調査結果を踏まえ、また、国の法令改正の動向も見据えながら、アスベストの飛散防止のために効果の高い対策を構築していく考えでございますので、その結果から条例制定ということも考えられます。

松崎        そうであれば、調査を行ってだいたいの状況が把握できたならば、条例を制定することもありうるということか。

県側        調査の結果がこれからなので具体的な内容をいうことは難しいですが、飛散防止対策を講じていく上で、例えば規制的な措置によって行うことで効果が得られるものですとか、あるいは自主的取組等によって対応できる部分などが考えられますが、その中で規制的な措置が必要と言うことであれば、条例制定という形で行うことも考えられます。

松崎       具体的な条例の中味がどうなるかということを問いかけたいが、恐らく今の話だと調査をやってだいたいのところが見えてからということを再三おっしゃっているわけですから、そこのところをまずしっかりやっていただいて、必要に応じて条例によってということに取り組むのであれば、その時は速やかに取り組んでいただきたいと思うが、いずれにしても、福井県や鳥取県のように条例に新たに制定しようとするところも、何を懸念しているのか、なぜ条例を制定まで踏み込むのかという動機の部分だと思う。それぞれの県のまた県民の皆様が訴える不安や、また、現実のものとなってしまった危険というものをどう緩和していくか、安全対策をどうしていくか、規制の対象外となっている小規模の建築物の安全対策をどうするのかということだと思う。

現在、1,000平方メートル以上の建築物の調査を行っているという説明を何度か受けているが、問題は8月の常任委員会でも質問させていただいたが、1,000平方メートル未満の小規模な建物に対してはどのような安全対策を行っていくのか。具体的に今現在ある建物についてどういう安全対策をとっていこうとしているのか対策の中味の部分を伺いたい。

県側        まず、現在使用中の建築物に対しては、その所有者の方が、自らの建物の管理の一環として、安全対策に当たっていただくことが原則だと考えておりますので、小規模の建築物の所有者の場合は、特に、自らどのように建築物を調査してよいか困る場合が考えられるため、アスベストの飛散が問題となる「吹付けアスベスト」を中心に分かりやすく解説した「チェックマニュアル」を今月中に県や市町村の窓口等といった、多くの方の目にとまる場所にてお配りする予定でございます。

 なお、このマニュアルについては、横浜市や川崎市でも同じものを作成する予定となっており、小規模の建築物の所有者や管理者の方の手に渡るよう、お配りする予定でございます。

 また、実際にチェックを行う際には、いろいろと分からない点も出てくると思いますので、相談窓口により皆様の疑問点に対応を図るとともに、実情に応じて情報提供の内容や方法を改善してまいりたいと考えております。

 次に、小規模の建築物の解体工事に対する安全対策についてですが、大気汚染防止法の対象外の小規模のものについては、石綿障害予防規則を所管している神奈川労働局との連携や、解体工事現場での飛散防止対策が適正に行われているかの確認を9月補正でお願いしております環境調査の中で対応していく予定でございます。

 さらに、飛散性が無いといわれているアスベストを含む成形板等などにつきましても解体工事については、実態把握のための環境調査を行ってまいりたいと考えております。

 その中で、環境調査の結果、問題が認められた場合、現場での飛散防止対策が不十分 であったのか、または、管理体制に問題があったのか等の原因を究明して、対応を図ってまいりたいと考えております。

松崎       アスベストの除去という不測の出費に対応可能な企業・個人と、そうではない人たちとの間で対応に差が出るのは問題である。大阪市では、神奈川県にもある環境整備融資制度を活用して、アスベスト除去費用について、中小企業を対象とした融資を予定していると報じられている。また、板橋区・練馬区でも、低利融資や利子補給などの制度が整備されている。このように、都市部では今後老朽化した住宅が増えていくことから、解体・除去費用に対する一定程度の公的支援が各自治体で整備されてきているが、神奈川県ではどのように考えているのか、伺いたい。

県側        アスベスト問題については、全国規模の問題であり、基本的には環境保全面、健康面、建築物というような施設に対する対応についても、国によるしっかりとした対策が講じられるべきと考えております。

 今後の建築物の対策については、所有者の方に対する調査費用や、吹付けアスベストが見つかったことに対する除去作業の費用が重くのしかかる場合も考えられますので、県としては、9月5日の県・横浜市・川崎市の3首長懇談会におきまして、国に対して財政的支援を要望いたしたところでございます。

アスベストの除去等に要する費用については、既存の中小企業の事業資金に対する融資制度は様々な用途に対応できますので、現時点では、その中でのアスベスト除去工事費用等への対応は可能でございます。

 なお、これ以外の対応につきましては、いわゆる中小企業における環境保全対策としての融資である「フロンティア資金」では、先の融資より若干利率が有利となりますが、現在のところ融資対象事業メニューに含まれておりませんので、早急に「アスベスト対策会議」にて、検討してまいりたいと考えております。

松崎       早急な検討ということは、どのような方向での検討か。

県側        メニューに織り込む、という方向での検討でございます。

松崎        早急とはいつ頃までになるか。

県側       商工労働部との協議もあり、明確には言えませんが、できる限り早急に対応したいと考えております。

松崎       県内でも湯河原の町営住宅でアスベストが使われているということで、住民が一時的に退去し、改修後に戻るという報道がされているが、安全面は大丈夫なのか。

県側        県土整備部によりますと、当面は転居しても、いずれ戻りたいという意向が住民の間に強いため、湯河原町では住民に一時転居をしてもらったうえで、建物を使用可能にするためのアスベストの除去、囲い込みなどの対処方法を検討中と聞いています。

松崎        一次的には建物管理者として市町村が対応することになると思うが、市町村単独での対処に限界があると市町村が判断した場合、また県として市町村の対応に問題があると思うことがあれば、公営住宅の安全対策を県として考えなければならないと思う。市町村に対する支援についてどのように考えているのか。

県側        県土整備部からの情報ですが、アスベストの除去等に対して、国から交付金による支援の可能性もあるとのことですので、県土整備部としては国から交付される交付金の手続きや、除去対策に対する技術支援などを行っていきたいとのことでございました。

松崎        テレビの映像では、台所の天井に吹付けアスベストと思われるものがあったりする。まさに今暮らしているところにある危険であり、公営住宅について不安を感じている人は相当いる、と思う。公営住宅における問題は、これまでのアスベスト対策がどこまで取られてきたのかが集約されているように思う。県としては万全の支援対策を考えていただきたいと思う。

 最後の質問であるが、アスベストについては労災問題、公害問題など問題の広がりが大きく、対策を行う場合でも、国県市の役割分担の問題がある。また、その一方で、労働行政、環境行政など分野別の縦割りの問題もある。

注目すべき取り組みとして、滋賀県の事例を紹介したい。大気汚染防止法が中小規模の建築物の解体を対象としていないことから、滋賀県では滋賀労働局と協定を締結して 協調してアスベストの飛散防止の監視を行う、という全国初の取り組みを図っているとの発表があった。

 先ほどの答弁の中で、本県でも神奈川労働局と連携して取り組みを行っているとの話があったが、もう少し県民に見える形にするため、たとえば協定などのような形で連携できないものか伺いたい。

県側        神奈川労働局とは、今回のアスベスト問題の発生の早い時期から協調して情報交換などを行っており、今後も、このような連携した取組を行っていくことについては、双方の考え方は一致しております。

 県内において飛散防止対策を徹底していくためには、大気汚染防止法の対象外の小規模の解体工事を把握していくことは重要であり、そのためには滋賀県のように労働局との情報交換のための「協定」という手法は有効と考えられますので、そのような手法を視野において、より緊密な連携を図り、県内のアスベスト対策を進めてまいりたいと考えております。

 当面、労働局との話し合いが10月上旬に予定されていますので、「協定」等の手法についても提案するなど、双方が効果的に進められるよう、取り組んでまいりたいと考えております。

松崎        確認だが、10月上旬の労働局との話し合いにおいて、労働局との協定も視野において提案すると受け止めてよいのか。

県側        その通りでございます。