神奈川県議会 平成17年9月定例会環境農政常任委員会質疑のまとめ

(3)地球温暖化対策は、誰もが参加できる取り組みの強化を           

松崎       カトリーナが、アメリカで大変な猛威をふるった。そしてまた、その後、リタということで、その間にも4つハリケーンが発生した。また、毎年のように、このところ我が国にも大型の台風が襲来している。これは、地球温暖化が原因ではないかとの声も聞かれる。そういう昨今の気候の変動、気象の現象という点から見ても地球温暖化対策は、その名の通りグローバル、またローカルの両面から急務である。しかしながら、我が国の現実は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出は増え続けているとの報道もある。一部、例えば京都のように顕著な取組みをしている例も聞かれるが、まだまだこれから、取組みの強化、深化が求められているところである。

そこで、我が県における地球温暖化対策について何点か聞きたい。明らかにしていきたい。

まず、温暖化対策としてどういう対策が効果があり、また、県民の皆さまに大変に大きな問題であると認識していただき、そして取組みに参加していただける、そういう視点も重要であると思う。

このところ、サマータイムについて、一部我が国の中で取り入れてみようという動きがあり、実際に北海道で実験が行われたと聞いている。このサマータイムを導入することが果たして、地球温暖化対策上有効なのかどうか、私ははっきりと見解を持っていない。他の大多数の県民もそうだと思う。そこで、端的に地球温暖化対策という視点から見て、サマータイムが、果たして有効なのかどうか、県ではどのように考えているか。

県側       県としてというお尋ねですが、県として積算したものはございませんので、国の方のデータを使ってお答えします。国では、平成10年9月に「地球環境と夏時間を考える国民会議」を設け、そこでサマータイムを実施した場合の効果等について検討を行っており、平成11年5月に報告書を出しています。それによりますと、直接的な省エネ効果ということで、家庭用の照明の需要が減ったり、業務用も減るということで86.8万キロリットル、これは原油換算の数字です。その反面、明るい時間に余暇にいそしむということで、逆に二酸化炭素の排出が増える部分があり、余暇需要の拡大の影響で36.8万キロリットル消費が増えるという積算があります。合わせますと、50万キロリットル減るというのが国民会議の報告書のデータでございます。

松崎       そうすると、その試算の上では、サマータイムの導入は省エネルギーという観点では有効だということか。

県側       今の試算によりますと50万キロリットルの省エネ効果があるといわれておりますが、それ以外に課題があるといわれておりまして、例えば、労働強化につながるのではないか、朝早く出て、その分遅くまで働かされてどうなるかということ、夕方の明るい時間が活用できるようになると言われ、例えばテニスをすることなどが例示されているが、そういう環境がないと効果的な活用につながらないということもあります。

お答としては、省エネの効果は確かにありますが、日本全体の効果を考えますとプラス、マイナスいろいろな面があるというのが実態ではないかと考えております。

松崎       とういうことは、結論はどちらとも言えないということか。

県側       北海道で16年度、17年度に実験をしておりますが、北海道だけで、それも一部だけで実施しておりますので、全国で一律で実施した場合どうなるかというのは別な議論があるかと思いますが、効果は明らかではありません。健康面でも1時間早く起きなければいけないということで体調が狂うというご意見もありますので、はっきり言って何とも申し上げられませんが、もしも、これをやるとすれば、国民的な合意形成の下で実施するというようなことになるのではないかと思います。

松崎       そうすると、時間、検討が必要な将来含みの政策というか、方向の中では、政策としてもう少し検討が必要ということか。

県側       おっしゃるとおりです。国会にもサマータイム制度推進議員連盟というのが、平成16年8月にできまして、議員立法で提案するといわれておりますが、それもなかなか出せないということは、やはり合意形成が難しいということがあるのではないかと考えております。

松崎       温暖化対策をどのように進めるのかは環境農政部の課題、県挙げての課題だと思うが、県内の基礎データを知りたい。二酸化炭素の排出状況は神奈川県はどのような状況になっているのか。

県側       県内のデータは、2002年、平成14年のものが最新でございます。まだ推計値ですが、概ね変わらないと思いますのでご報告しますと、合計で、約7,019万トンとなっております。その中でボリューム的に多いものは、産業部門が2,922トンで41.6%、運輸部門が1,210万トンで17.2%、家庭部門が1,049万トンで14.9%、業務部門が895万トンで12.8%、となっております。伸びが多いものとしては業務部門で、71.8%の増加となっており、飛び抜けて大きな伸びとなっております。

松崎       オフィス等の業務系からの排出が、71%、90年対比で伸びているということだが、その中身、内容をもう少し詳しく聞きたい。

県側       業務部門というのは、オフィスビル、病院、ホテル、デパート、そういうものですが、その業務部門の床面積が90年対比で39.9%増えております。数字を申し上げますと、90年が5,185万㎡だったものが2002年では7,253万㎡に増えております。その中でも、床面積のおよそ半分が事務所のビルですが、それが90年には2,525万㎡だったものが、3,885万㎡に、53.9%増加しております。この床面積の増が大きいということと、単位面積当たりのエネルギー消費も増加しておりまして、90年に240.4kwh/㎡だったものが14.4%増えており、275.1kwh/㎡になっております。これはOA化ということと、世界が一つになっており24時間対応しているということで伸びているのではないかと考えられます。

松崎       IT化ということと、グローバル化ということであるが、世界の主要国である我が国は、当然その輪の中にあるわけで、それを踏まえた対策を考えていかなければいけないということを、改めて、痛感する。もっとも手っ取り早くということで、総理、また松沢知事もそうだが、ネクタイをはずしてクールビズということで、職員も室温を28℃にする取組みを23日までしていた。このクールビズが温暖化対策に、どのくらい効果があったのか。

県側       国では、6月から9月末までということで、まだ途中経過ということになってしまいますし、あくまでも推計ということですが、ご説明させていただきます。まず、オフィスの温度を、26℃から28℃に2℃上げるとどのくらいの効果があるかということを、財団法人の省エネルギーセンターが示しております。これによりますと、冷房のための消費エネルギーの約17%が削減されるのではないかと推計しております。

このデータを基にいたしまして、東電等10社が入っております電気事業連合会で推計したところ二酸化炭素の排出を約79,000トン削減する効果があったと試算しております。これは、あくまでも推計の推計でございますが、どれだけの事業所が参加して、何度下げたかという前提の下で計算すると、これだけ減っていると言われているものでございます。

松崎       夏が終わって、これからだんだん寒くなってくるという時期に、そろそろ言われ始めているのが、クールビズならぬウォームビズである。予測なのでどれくらい答えられるかわからないが、ウォームビズも効果があるのか。

県側       手元にどれだけ削減できるかのデータは持っておりませんが、冷房と暖房とどちらがエネルギーを使うかというと、冷房の方が少ないのです。家庭で申しますと、二酸化炭素の排出量の換算で一世帯あたり年間約5,600kg、これは2003年のデータでございますが、その中で冷房が1.2%、それに対して暖房は11.5%となっております。これがオフィスビルそのもの全部に当てはまるとは思いませんけれども、このように暖房で温度を下げるということでは効果があるのではないかと考えております。それと昨日の官房長官の記者会見では、暖房温度については、政府は19℃、企業は20℃ということが、省エネルギー省資源対策推進会議で決められていたようですが、実際には企業は暖房24℃以上に設定していたところが多いということで、暖房の方が温度を下げる幅としては大きいものがございます。ただ、この場合は、寒いと感じる方が多いと思いますので、ウォームビズで靴下を2枚はくとか、対応が必要になりますが、可能性としては温度の調節の幅が大きくなりますので、効果も大きくなるのではないかと考えられます。

松崎       県庁も実施するか。

県側       県庁は既に温度を下げております。20℃あたりにしておりますので、これ以上下げる余地があるかどうかわかりません。しかも寒くなって、たくさん着込んで仕事の能率が悪くなっても仕方がございませんので、その辺も踏まえて、今後考えていくものと考えております。ただ、基本的にはそういう対応は神奈川県は既にしていると考えております。

松崎       程度問題ということもある。それによって健康を害するということがあっては何もならないわけだが、クールビズでは神奈川県、あるいは我が国政府、中央省庁、官邸もそうだが、我が県、職員はがんばった。私も含めて全県民挙げてのクールビズだったと思う。ウォームビズについてはもっと効果が大きいであろうということがデータでも裏付けられているようであるから、ウォームビズについても県民の皆さまに周知をしていく、官房長官の談話でも発表されているようだから、我が県としても率先して取り組んでいく必要があると思うので、これは当局に対してお願いする筋合いのものとはちょっと違うような気もするが、県民の皆さまへの周知であるとか、ご協力をいただくという場面も出てくると思われるので、前向きに取り組んでいただきたいとお願いをする。

もう一つ、全県民参加という広がりのある取組みがある。ライトダウンキャンペーンというのが年々広がりを見せている。最初、全国で取組みが始まったときには、2003年には2,278か所、500万人が参加をした。2004年、昨年は6,088か所、640万人が参加をした。今年はこの規模をはるかに超えて3倍以上、4倍近い、22,000か所程度、全国で参加している。このライトダウンキャンペーンというのは、夏至の日の直前の日曜日、今年の場合は6月19日の夜を「ブラックイルミネーション2005」と題して、午後8時から10時までの2時間、ライトアップ施設とか、各家庭の電気を一斉に消すというもの。全国でどれくらい参加しているか、長いリストがある。神奈川県が参加しているか確認すると、参加しているとのことで安心したが、それくらいの感じで、今ひとつ神奈川県として、県を挙げて取り組んでいるというイメージがわかない。あまりPRを受けた記憶がない。県の参加、県内の参加の状況はどういう状況か。

県側       県といたしましては、国からのキャンペーンの呼び掛けを受け、市町村に対して協力を呼び掛けておりますが、それが全県民に対してということになりますと、まだそこまでのPRが進んでいないということは反省すべき点ではないかと考えております。

神奈川県内の参加施設でございますけれども、マリンタワーですとか、横浜コスモワールドのコスモクロック、それから横浜港のシンボルタワー、その他工場ですとか、スーパーなど133施設が参加していると把握しております。

松崎       もっと盛り上げていく必要があると思うが、その点についてはどのように考えているか。

県側       今年の場合は、6月19日の8時から10時にライトダウンしたということで、その間にCO2は確かに減っておりますが、その量はたいしたことはないと思います。ただ、こういうことが必要なんだということを皆さんに認識していただいて、できることからやっていただくという、そういう意味では意義が深いものがあるのではないかと考えております。今後こういう形で、いろいろなものをできるところからやっていただく、まず、温暖化が進んでいますよと、そして対策をみんなで取る必要がありますよということを認識していただいて、とりあえずこういうことをやりませんか、ということを呼び掛けさせていただくということは非常に重要だと考えております。来年度も同様の取組みは続きますので、その際には今年度以上のPR活動をさせていただきたいと思っております。

松崎       このライトダウンキャンペーンが非常に有効だと思えるのは、各家庭が、各家庭単位で参加できる。そして夏至の日、ほんのわずかの時間だが、午後8時から10時まで電気を消す。その間、治安の面ではいろいろ配慮が必要だが、参加でき、実感できる。国内の総量としてどの程度の省エネ、温暖化対策としてどのくらいの効果があったのか、データはあるのか。今年はどのくらいの効果があったのか。

県側       キャンペーンに参加登録した施設の申告に基づくものでございますが、それによりますと、削減された消費電力量は、約60万kwhとなっており、二酸化炭素に換算すると約227トンでございます。

松崎       このように、明らかにはっきりとわかる。参加したということと、直接これくらいの効果があるということが、相関関係がはっきりとわかる。そういう意味では効果的な施策ではないかと思う。また、先ほど課長から、国の方から、環境省からという答弁があったが、これは環境省が勝手に考えたのではなくて、世界中で同時にこのライトダウンを同時に行う、例えば、エッフェル塔もホワイトハウスも一斉にライトダウンする。そういう意味ではグローバルで、地球規模である。その意味でも、目に見えて、参加する意識も高まって、かつ、それが世界のどこへ行ってもそういうことに私も参加した、あなたも参加したの、ということで共通の言葉にもなる。そういう意味では、有効であると思う。今年はもう過ぎたので、今年取り組んでこられたということであるので、来年、より一層取組みを強化していただきたい、ということをお願いする。