平成18年8月17日 閉会中審査

神奈川県議会厚生常任委員会での質疑のまとめ

1 診療報酬改定に伴うリハビリテーションの問題点について

松崎       ●  6月定例会の常任委員会で、本県の自殺の状況や自殺防止対策に係る本県の取組みについて質問したが、それによると、全国では自殺者が年間3万人を超える状況にあり、本県においても1,700人を超えているという。

 本県の人口10万人当たりの自殺率は全国で最低であるとしても、自殺者の数は交通事故による死者数を遙かに上回っており、看過することができない状況にある。

 そこで、自殺防止に係る県の考え方について、さらにお聞きするが、まず、本年6月に自殺対策基本法が制定・公布されたが、この法律により、県としてどのような対応が求められることとなるのか。

障害福祉課長       ○ 自殺対策基本法は、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止と自殺者の親族等に対する支援の充実を図り、国民が健康で生きがいを持って暮らすことができる社会を実現するために制定されたものである。

 この法律は、平成18年6月15日に成立し、6月21日に公布されたが、施行日は公布日から起算して6か月以内となっており、現時点では施行されていない。

 地方公共団体の責務については、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、実施することとされているが、具体的には、情報収集・分析等の調査研究、普及啓発、人材の確保、養成、心の健康保持に係る体制の整備、必要な医療の提供体制の整備、自殺発生回避のための体制の整備、自殺未遂者・親族への支援、民間団体の活動に対する支援が定められているところであり、これらは同時に国の責務ともされている。

松崎       ● ただ今の説明によると、自殺防止等に関し、「情報の収集・分析」、「普及・啓発」、「人材の確保・養成」、「職域、学校、地域等における心の健康保持のための体制の整備」、「自殺未遂者や自殺者の親族等に対する支援」など多様な取組みが求められていると考えるが、自殺対策基本法の制定にあたり、国はどのような動きをしてきたのか。

障害福祉課長       ○ 国は、平成10年に「自殺による死亡者数」が3万人を超過したことを受け平成12年に策定した「健康づくり日本21」において、平成22年までに死亡者数を22,000人にすることとしている。

 また、平成17年7月には参議院厚生労働委員会の「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」を受け、政府は「自殺対策関係省庁連絡会議」を設置し、平成17年12月に「自殺予防に向けての政府の総合的な対策について」をとりまとめ、関係省庁が連携して、自殺予防対策に取り組むこととしている。

 厚生労働省でも、平成18年3月31日付けの社会・援護局障害保健福祉部長名で各都道府県知事等に「自殺予防に向けての総合的な対策の推進について」という文書を通知しており、この内容は、主に3点ある。

 一つは、自殺予防を総合的な対策として、効果的に実施するため、様々な分野の関係機関・団体により構成される自殺対策の検討の場である自殺対策連絡協議会(仮称)を、すべての都道府県において2年以内に設置すること。

 二つ目は、相談体制の充実ということで、精神保健福祉担当部局の相談窓口に留まらず、他の関連部局と連携しながら、健康問題、経済問題、法律問題等についても相談窓口を充実させること。

 三つ目は、情報発信・普及啓発ということで、各種相談窓口の連絡先を県民に周知し、自殺予防対策について情報を提供していくことである。

松崎       ● 新聞報道によると、青森県では、精神保健福祉センターが中心となって、小中学校で「子供からの心の健康づくり」を目指す事業が始められているが、精神保健福祉センター、音楽療法士、学校というそれぞれの現場が持っているノウハウを持ち寄ることで、新たな取組みができるのではないかと思う。

 また、仙台市では、住民健診などを活用した「高齢者のうつ対策」を市内全域で始めるとしている。最近のように近所のことをお互いが知らないという状況の中では、うつ対策も重要な課題だと思うが、こうした取組みを県としてどのように認識しているか、簡単でいいので、お聞かせ願いたい。

障害福祉課長       ○ 青森県は、自殺の死亡率が、全国で2番目に高く、様々な観点から自殺予防に取り組んでいる県の一つだが、高齢者等の成人を対象として、地域の保健所等で講演会等を実施する中で、小さい頃から「こころの健康」に対する意識を育てることが大切という意見を受け、小中学校の授業の中で取り上げるようになったと聞いている。

 その内容としては、こころの健康の講演や音楽を取り入れながら、人と人が、気持ちを伝え合うことや自分を大切にすることを体験的に学べるような授業を行っているとのことである。

 青森県が現在行っているように、子供のうちから心の健康づくりに取り組むことは、身体の健康づくり同様に考えられるべきものであり、非常に有意義な内容であると考えている。

 また、仙台市の高齢者うつ対策については、40年前に大規模開発で造成された団地に住む方々を対象に東北大学が実施した取組みをモデルにした事業と聞いている。30代で入居した方も70代となり、高齢化の進んだ団地では70才以上の方の2割に「うつ症状」があったという調査結果であった。

 高齢化が進んだ地区での課題は東北の農村に多いと言われ、高齢者のうつ対策への取組みもそういった地域を対象にしたものが多いわけだが、都市部での取組みは、神奈川県においても参考となる取組みであろうと認識しているところである。

松崎       ● ところで、本県の芹香病院ではストレスケア病棟について検討しており、A2病棟56床をストレス病棟にしていくということだが、その設置目的や規模等の内容をお伺いしたい。

県立病院課長       ○ 平成18年3月に策定した「病院事業経営基本計画」に位置づけしたところである。

 「病院事業経営基本計画」における計画期間内の取組みとしてストレスケア病棟の整備を掲げており、1病棟を改修し、明るくゆったりした治療と休養ができる病棟の整備を検討していきたい。

松崎       ● 検討していくのは整備していくということか。

県立病院課長       ○ そうである。

松崎       ● 開設の時期はいつか。

県立病院課長       ○ 検討中であるが、平成20年度当初には開設したい。

松崎       ● その整備はA2病棟を軸にしているのか。

県立病院課長     ○ 現在はA2病棟を対象としている。

松崎       ● 横須賀市では、県内初となる「自殺対策連絡協議会(仮称)」を年内を目処に設置するとのことであるが、自殺にはさまざまな社会的要因があることを考えると、自殺防止には関係機関・団体の連携による多角的な取組みが必要であり、そのためには、まずは、自殺防止対策に関係する部局で構成する全庁的な組織を設置すべきではないかと考えるが、県の考えはどうか。

障害福祉課長       ○ 横須賀市においては、今年中の自殺対策連絡協議会の開催をめざし、準備を進めていると聞いている。まだ検討中のこともあるようだが、市としても全庁的に進めることが必要と考えているようである。

 委員のご指摘のとおり、自殺の問題は、様々な角度からの検証や実態に即した予防策等の取組みが必要なことから、県の一部局の課題ではなく、関連部局や当事者、それを支援する民間団体、医療機関等関連団体や市町村等多くの皆様と連携し、取り組んでいく必要があるものと考えている。

 そのためには、まずはじめに、県庁内部において、自殺に関する情報や認識の共有、自殺に関連する各種施策の把握、それに基づく調整、連携を行う必要があると考えるので、今後、病院事業庁をはじめ、関係部局と調整しつつ、庁内組織については、できるだけ早い時期に設置したいと考えている。

松崎       ● 庁内の組織を設置する方向ということでよいのか、保健福祉部としての決意のほどを確認したい。

保健福祉部長       ○ 本年6月に自殺対策基本法が成立し、国においても、自殺防止対策の推進が重要であると考えている。  

 そこで、自殺防止対策を検討し、施策を展開するための庁内組織の設置については、本年度内を目途に設置する方向で関係部局と調整を進めていく。

松崎       ● 県としても、「うつ病」対策をはじめ自殺防止対策を行ってきたことは、承知しているが、自殺は単なる個人的な問題ではなく、さまざまな社会的要因が複雑に関連していることから、自殺防止対策を推進するに当たっては、多角的な検討と総合的な施策が必要であると考える。

 そこで、全庁的に自殺対策を論議し、施策を展開するため、できるだけ早く全庁的な組織を設け、関係各部局が連携しつつ主体的に自殺防止対策に取り組むことを要望する。