厚生常任委員会県外調査報告書 調査日 平成18年9月4日(月)~6日(水)
長崎県立こども医療福祉センター
1 目的
当センターは、肢体不自由児施設であるとともに、小児医療のための病院でもある。また入所児童が隣接する養護学校に通うことのもでき、福祉、医療、教育機能を持った施設である。そして、長崎県が福祉施設等の民間委譲などの行政改革を進める中で生じた財源により、当センターの機能充実が図られ、平成17年8月にリニューアルされた。
そこで、当センターの運営状況等を調査することにより、本県における児童及び障害者の福祉対策についての検討に資する。
2 センター概要
当センターは、長崎県立児童福祉施設条例に基づく肢体不自由児施設であるとともに、医療法による病院である。したがって、児童福祉法による入所の措置は原則として肢体不自由児であるが、それ以外の障害児にはついては、健康保険による入院あるいは外来による治療・訓練も実施している。
これまで整形外科を中心としてきたが、平成13年度から小児科各科の増設により小児医療の充実を図り、すべての障害児を対象とした県下の拠点的な施設としての役割を担っている。
また地域療育部門を新設し、関係の機関とも協力しながら知育療育活動の支援を行っている。そのほか早期治療のひとつとして、1週間、2週間そして1ヶ月コースの母子入所、そして就学前の幼児(母子)を対象とした集団母子入所(プレスクーリング)による訓練と、障害のある子供をもつ母親に対する子育て支援などの療育支援活動を行っている。
児童には隣接する長崎県立諫早東養護学校で、義務教育が実施されている。
・概要と沿革
所在地 長崎県諌早市永昌東町24-3
診療科目 <常設診療科>整形外科、小児科(小児発達科、小児神経科、小児心療科)、精神科、リハビリテーション科
<非常設診療科>歯科、泌尿器科、耳鼻咽喉科
病床数 60床(一般50床、母子棟10床)
職員数 97名(医師8名、理学療法士6名、作業療法士6名、言語聴覚士4名、看護師・准看護師34名、その他33名)(平成18年5月1日現在)
業務内容 診察、治療、手術、看護、理学療法、作業療法、言語聴覚療法、日常生活指導、学習指導、措置事務、非難訓練、家庭との連絡、保育、評価、検査、制度説明、プレイセラピー、カウンセリング(保護者)など
入所者数 実人数304名、延べ人数13,918(17年度実績)
沿 革
昭和29年12月 県立整肢療育園開設(50床)
昭和34年5月 増床(100床)
昭和37年4月 増床(160床、母子棟10床含む)
昭和48年3月 本館、第一、第二病棟改築完了
昭和59年11月 病床を110床に変更
平成13年4月 「県立こども医療福祉センター」に名称変更、病床を60床に変更
平成17年7月 新センター 建物完成
3 質疑応答
質疑 ● 発達障害の子供たちが増えている中で、国の事業に沿って発達障害者支援センターを設置したとのことであるが、具体的に支援していくには、しっかりとした仕組みをつくることと、専門的な人材の育成が必要であり、養護学校をどのように位置付けていくかが神奈川でも課題である。そこで、学校との連携をどのようにしているのか。
回答
○ 発達支援センターは相談だけでなく、地域の人材育成という意味からも研修会や公開講座を実施している。学校との連携は、教育センターで特殊教育を担当していた教師が1名配属されており、対応しているが、到底1名では対応できない。
質疑 ● 資料によると入院患者が一貫して減っており、外来患者が増えているということは、施設から地域へという政策をとっているのか
回答 ○ 以前160床あったものを60床まで減らし、平均在院日数が、3年6箇月から50日まで減少させている。障害があっても、在宅で家族や兄弟と一緒に過ごし、地域の子供たちと交わりながら、必要な養育はセンターで行うという方向で考えている。また、外来についても従来はリハビリが週1日であったが、今では毎日行っている。
質疑 ● 最近の子供たちの変化についてその傾向があれば感じているところを伺いたい。また、それに向き合う医師について、医師不足の問題などがあるが、所長さんから見た最近の医師の気になるところがあれば伺いたい。
回答 ○ 子供たちに変化はあるが、最近親の育児に対する姿勢の問題がある。例えば、切れやすい子供という話があるが、親御さんの方が切れやすい状況があり、離婚も多いことから親への指導・支援が必要かと思う。いくらここで子供の支援をしても家に帰れば、ネグレクトも含めた虐待がある。
また、昔は早産低体重の子が脳性マヒになるケースが多く、特に足の不自由が生じる場合があったが、今では早期低体重だけではそうならなくなってきている。生まれた後の呼吸障害があったり、低血糖症など合併症により治療を受けた場合に脳性マヒが残る場合がある。そして、脳性マヒまでいかないが、少し緊張感が低い子がいて、その子たちが4,5歳になり、少し注意力が散漫でになるという子が、2,30年前から現れていたが、現在は、それが問題となっているADHDになっている。これらについては、早期発見に努めている。アメリカで開発されたM-chatを活用して、検診時にチェックしている。
医師の確保については、一時期小児科医の確保に苦労をしていたが、今は医師の方からここで働きたいとの申し出が増えている。ただし、小児科全体として、小児救急が問題となる地域がある。
4 調査結果
県立こども医療福祉センターにおいて、肢体不自由児施設からこども医療福祉へ、施設から家庭・地域へとセンターの役割の変化させてきている。その取組及び新たに建設された建物の調査を行い、本県における児童及び障害者の福祉対策についての検討に資することができた。