平成18年9月県議会定例会・厚生常任委員会質疑のまとめ
<障害者自立支援法と地域作業所について>
松崎 ● 障害程度区分の認定の作業について県内の状況は。
県側 ○ 障害程度区分の認定作業は市町村で行っている。8月末までに1万2,599件、全体の62%の障害程度区分の判定が二次判定まで終えた。9月末までには、現在、居宅系のサービスを利用されている方、約1万8,000人の判定はほぼ終える。割合としては87%となる。
入所や通所の施設サービスに関しては、施設が10月以降すぐに新体系に移行しないので、居宅系のサービス利用者から行い、概ね終えている
松崎 ● 全体の87%の認定を終えたということは、10月までには、全部は終わらないのか。
県側 ○ 居宅系のサービス利用者について進めている。全部が終わらないということについては、そのとおりである。
松崎 ● 終わらない分については見なしで対応するのか
県側 ○ 暫定支給決定で対応することとし、その旨市町村に伝えている。
松崎 ● 遅れが出ている原因は何か。
県側 ○ 二次判定には医師の意見書が必要となるが、その意見書をなかなか受け取れないということがある。
松崎 ● 厚生労働省では、10月の本格施行に間に合うように準備をしてきたとのコメントを出したようだが、どのように思うか。
県側 ○ 医師の意見書の件に関しては、精神科診療所協会等へ協力をお願いしている。全体の87%というとほぼ居宅系の100%に当たるが、とにかく、ご迷惑がかからないように進めて参りたい。
松崎 ● 間に合わない分は見なしで対応するとのことだが、いつまでに全部を終わらせるつもりか。
県側 ○ 施設に関しては今年度中に移行するものではなく、年度内には終了させたい。
松崎 ● 障害者自立支援法は10月施行なので、一人ひとりを大切にするのであれば、10月までには終わらせるべきと思うがどうか。
県側 ○ 本来はそのとおりであるが、知的、精神については、医師の意見書も勘案して行う二次判定が重要であるので、医師の意見書なしで進めるのではなく、それを待って行いたい。いずれにしろ、サービスに不具合がないようにして参りたい。
松崎 ● 次に、長崎新聞によると、長崎県では、障害者自立支援法の施行を受けて、負担増を理由に退所又は通所を止めた利用者が55人いるとのこと。通所の場合、工賃を上回る負担になり、働く意欲を失ったとの利用者のコメントも紹介されている。また、沖縄県では、県の調査によると、負担増で35人が退所等をしたとのこと。また、熊本県では、6,899人の障害者を対象に県が調査を実施し、214人が退所等をしたとのことだ。
6月定例会で、私がこの件で質問したが、その後、本県についてはどのようになっているか。調査しているか
県側 ○ 6月定例会の常任委員会での質問については、支払システムでは支給実績に大きな変化は見られない旨答弁した。
今回、県域の143の施設について電話での聞き取りを行い、5,884人の定員について調べたところ、4月に法が施行された後、入所者で121人が退所し、通所で66人の方が通所を止めており、合計で187人となるが、このうち、定率負担による負担増を理由に挙げたのは、入所で4、通所で2となっている。いずれも知的の施設で、授産や職業訓練を行っているところである。軽度の方であり、他の選択肢を選ばれたものと思われる。
松崎 ● 退所や通所を止めた後、どこへ行ったのか。
県側 ○ 就労や作業所のようだ。
松崎 ● 県障害者地域作業所連絡協議会がアンケートで調べた8月3日時点のデータによると、負担増で施設から退所した人が11人、退所を考えている人が35人ということだ。県で調べたものとデータに違いがあるが、どうか。
県側 ○ 退所等の理由に関しては、要素がいくつか複相しており、いくつかの理由が重なっているものと思われる。
松崎 ● そうすると、県の調査では負担増でやめたのは6人ということだが、4月以降やめた187人のうちにも、いくつかの理由の一つとしては負担増を理由にした人がいるかもしれないというか。
県側 ○ 6人の方も主な理由としてあげられている方で、他の理由があるかもしれないが、主な理由としては6人以外にはいない。
松崎 ● 次に、障害者自立支援法により大都市特例が廃止される。
作業所が地域活動支援センターに移行し、機能強化事業を行う場合、機能強化事業について県は1/4を負担することになり、県の関わりも強まるのではないか。そこで、伺いたいが、地域作業所の施設や職員の位置づけはどのようになっているか。
県側 ○ 地域作業所は、柔軟性、即応性に特色があるが、法外の施設の位置づけだ。県は補助要綱を定め、市町村を通じて補助している。職員に関しては、地域作業所を事業所として、そこに雇用されている。
松崎 ● 職員は一定のルールで働いているが、就業規則を見てみると、横須賀の例だと特別休暇として、例えば、産休については産前6週間、産後8週間となっている。また、横浜の例でも産休は有給とされている。しかし、実際どうかは疑問が多い。
ある地域作業所で働く人から伺うと、1月に出産を控えているが、やはり辞めようかと所長に相談しているとのことだ。
実は、就業規則では有給とされているが、実際は無給とのことで、もとより、代替職員を手当てしようにも、その規定もないし、お金も措置されていない。産前産後で14週間となれば約100日であり、職員2人で回している作業所について、年間の1/3を、2人のところ1人で回すのは片肺というか、回らないだろう。だから、自分が辞めるしか選択肢がないということだ。
また、横浜の場合、精神障害者の作業所について、産休中の賃金は有給とされているが、無給とする取り決めを作業所と職員とで検討してとマニュアルに書いてある。無給としつつ、健康保険から手当をもらうように取り決めるようにとしている。産休中は、代替職員をアルバイト雇用をしないといけないが、アルバイトも雇用し、産休中の手当も払うとなると財政上の負担になるということだ。職員は、産休中の手当であれば100%であるが、これに換えて60%の支給となる保険からの手当をもらってということだ。
これは横浜の例だが、有給と規定しながら、一方で現実には無給でと、マニュアルに書いてある。3年位前に出したものであり、また、予算監査や実地監査を通じて従わせることもできるのだろう。
一方、県域のマニュアルはどうか。身体や知的の作業所に関しては、障害者作業所連絡協議会が配布している手引きに就業規則のひな形が載っているが、産休代替の規定はない。また、精神に関してはマニュアル自体がない。
県では、地域作業所の就業規則の状況を把握しているのか。
県側 ○ 市町村事業であり、県として把握はしていない。
松崎 ● 職員の年齢構成は把握しているか。
県側 ○ 県として把握はしていない。
松崎 ● 現状を把握してはどうか。
県側 ○ 作業所は、職員が少ない中で地域に近いところで活動している特性があり、就業規則などのことは、それとウラハラであると考える。今後は、法定内移行が課題でもあるので、計画策定していく中で、作業所のことを一番よく知っている市町村に聞き取りしていきたい。
松崎
● 市町村に聞き取りしていくと。
● 産休についての助成を検討する中で、「産休等代替職員制度補助」がある。これは、補助対象を限定列挙しているとのことだが、地域作業所は対象となっているのか。
県側 ○ 対象とはなっていない。
松崎 ● 日額の補助単価はいくらか。
県側 ○ 日額5,770円となっている。
松崎 ● 地域作業所が、この産休等代替職員制度補助の対象となっていないということも事実として受け止めなければならないと考える。
いろいろと伺ったが、1月に出産を控えた作業所職員への解決策がここでは出せないようだ。ところで、産休中の方の代替職員に関して、県の考え方を調べていくと、「子育てを支え合う職員行動計画」という県の資料がある。これは公表されているもので、県の各任命権者が連名で載っており、平成22年までを計画期間として取り組むものとされているので、現在稼働中の考え方と思う。
この中で、管理者は、産休に入る職員が心おきなく休めるよう、代替職員を手当てするように、専門職であっても臨時的任用職員制度等を活用して対応するように、としている。この考え方は大変に大事だ。
出産される方が心を残すことがないよう、職場でも体制をしっかりとするということが大事と思うが、どうか。
県側 ○ 心おきなく出産できるよう、職場でも支援するよう県としても取り組むという主旨だ。
松崎 ● この精神は、県庁はもとより、スタンダードな考え方だ。地域作業所の職員にも生かすべきと思うがどうか。
県側 ○ 作業所の職員については厳しい中で仕事をしており、職員の処遇は、ひいては、利用者の処遇につながる。そうした意味で重要な課題と認識している。
松崎 ● 課題と認識しているとの発言があった。問題は作業所の持続可能性に関わる。産休代替の件について、「ひとりひとりを大切にする」という、ともしび運動の精神からも、課題解決の必要があるのではないか。法内施設へ移行するしないに関係なく、課題であると思うがどうか。
県側 ○ 地域作業所の特性は、柔軟性、即応性という神奈川らしさにあり、そうした機能、役割は大切である。新しい制度になっても果たしてもらいたい。
自立支援法が施行され、制度の変革期であるが、新しい法律の精神の下でも、地域作業所がこれまで果たしてきた役割、機能を維持していく必要がある。そうした取組みを進めていきたい。
松崎 ● 産休の課題についてどうするのか。
県側 ○ お話の課題も検討していきたい。
松崎 ● 課題解決に取り組むということか。
県側 ○ 作業所全体の課題のひとつとして検討したい。
松崎 ● 検討の意味はどういうことか。単に検討してみるのか。それとも解決に向けて検討するのか。
県側 ○ 障害福祉計画策定等にあたり、市町村とのヒアリングの場もあるので、その中で、精査してまいりたい。
松崎 ● 課題解決に向けて取り組むと理解し、取組みに期待している。
次に、知事の発言であるが、地域作業所については、しっかりと維持発展していく、発展充実させていくと答えていた。同感である。
県内の市町村からも、保健福祉部長あて要望が出されている。いずれも、運営費補助の継続等を求めるものだが、県としてはどのように応えていくのか。
県側 ○ いただいた要望については、機能が十分に確保されること、一人ひとりを大切にすることともあり、そこがポイントと理解している。地域作業所は地域福祉の基盤であり、その機能を生かしながら時代の動きに合うようにしてまいりたい。
松崎 ● 移行アンケートでは、5割程度が移行希望であるとの答弁が6月定例会の際にあった。その資料をいただいたが、逆に移行予定なしが41%あるということだ。こういうデータから見ても、移行を希望する52%については、移行する際の激変を緩和する必要があるから、それをちゃんとやらないといけない。
それでは、希望しない作業所について、どう考えているのかが見えない。
県側 ○ 5割というのは、この調査の時点での数値である。その際には、移行について、どのようなお手伝いができるか、まだ、今でも不十分であるが、十分にお示しできていなかった。
お話のように、移行しろと言っても移行しきれない、小規模のところなどがある。それには、時間をかけて考えていただきたい。
松崎 ● 時間をかけて、とのお話があった。
自立支援法については、国も見直しを織り込んでいると思うが、その際には、国も、有識者とか、先進的な自治体とかに、意見を聞くだろうし、本県なども聞かれるのではないか。
作業所の41%が、なぜ移行を明確にしないのか、それを汲んでいく姿勢や、いままでと引き続き同じ事業を継続してもらうことが必要ではないか。
県側 ○ 作業所の皆さんとも話をさせていただいている。作業所については、県で始めた制度でもあり、また、主体的、先駆的に行ってきた関係者の方の自負や心意気もあると十分承知しているので、これを尊重しながら検討を進めて参りたい。
松崎 ● 県の姿勢は「移行ありき」ではないか。
県側 ○ 国の動きも見ていくが、制度の変革期であるので、制度の整合性はとっていかないといけない。
松崎 ● 移行を希望するところは先発隊で行ってもらうとして、そうでないところに、やれいけ、それいけというのではなく、話し合いをしていくという整理か。
県側 ○ 作業所の30年の経過は尊重したい。その上で、新しい時代なので、機能を生かせるよう、時代にふさわしいものとしていきたい。
松崎 ● 意向を尊重するということか。
県側 ○ そういうことである。話し合いをしていきたい。
松崎 ● (要望)
このテーマで最後だが、グランドデザインを読んだが、基本的視点として一人ひとりを大切にする、とある。同感である。地域作業所の理事として思うのは、利用者一人ひとりが大切であるのと同じく、職員やボランティアも大切な一人ひとりだ。この原点を、同じように貫いていく必要があると思う。法定内事業に移行しても、しなくても、柔軟性、即応性が特色であり、大事にしないといけない。産休代替などの課題についても、取り組んでほしい。
これからの障害者福祉について県が定めたグランドデザインでは、宣言1で、「主体性の尊重」をあげているが、主体性の中身が問われている。制度が変わったからと言って、やれいけ、それいけ、というふうにしてはいけないと思う。また、宣言6で「ささえあい」とある。例えば精神の作業所もそうだが、何の役割を果たすのか、メニューかというのをつきつめていくと、居場所という機能がなくなってしまうのではないか、という危惧もある。これまでの作業所の機能や役割が十分に果たせる方向を含めて、検討していただけるものと理解し、取組みを進めてほしいと強く要望する。