神奈川県議会平成19年3月定例会

3月6日(火)予算委員会での総括質疑のまとめ

2 障害者雇用について

松崎       障害のある方の自立と社会参加について支援してきており、このような立場から平成18年2月予算委員会、また平成18年12月定例議会の代表質問では、障害者雇用について取り上げ質問した。知的障害養護学校の生徒の就職率の見込みが25%を上回るとの回答を得たが、卒業時期が迫ってきた現在、どのような状況になっているか、今後の取組も含めて伺いたい。

まず、この時点で就職率をどれくらい見込んでいるのか。

子ども教育支援課長           平成18年度の卒業予定者について、平成19年2月1日現在の就職見込みを調査しましたところ、知的障害養護学校では、卒業予定者698名中、就職予定者204名、就職率にいたしますと29.2%という結果が得られており、ここ10年間を見ましても、最高の就職率でございます。全国との比較でございますけれども、平成16年度が一番最新のものでございますが、就職率では23.2%ということでございますので、全国的に見ても、29.2%という結果については、評価できる就職率であるというふうに受け止めております。

松崎       就職を希望する生徒が増えていることはわかったが、こうした生徒についは、安定して働き続けることが重要であり、それに対して何か取組を始めているのか。

子ども教育支援課長           今、議員ご指摘のように、やはり安定した就労体制というのは非常に大事なことだというふうに受け止めております。平成18年度の就職予定者は、前年度と比較すると、71名実数で増加しております。このように、養護学校卒業生から多くの就職者が生まれていることは、まず大変喜ばしいことでございまして、今後も、就労を継続させるための支援というのが、これまで以上に必要なってくるというふうに考えております。そこで、就職した生徒も、雇用した企業側も、安心して仕事が継続できるように、平成18年度から、特例子会社、就労援助センター、NPO法人、そして養護学校を構成メンバーといたしました、「企業就労アフターフォロー研究委員会」というものを立ち上げまして、就職した養護学校卒業生に対する継続的な支援に向けて、現在、取り組んでいるところでございます。

松崎       また、こうした生徒が就職にチャレンジしていくためには、職業教育の充実が不可欠であるが、それに対してどのような取組を行おうとしているのか。

子ども教育支援課長           これからの職業教育ということでございますが、これまで以上に企業あるいは社会のニーズをよく理解した内容に改善してゆく必要があるというふうに考えております。そこで、これまで行っております企業での実習に加えまして、学校で行う作業学習に逆に企業の方々に来ていただき、直接、指導や助言を受けながら、働くことの喜びやあるいは意義を実感できるような内容に改善してまいりたいというふうに考えております。具体的には、卒業生が就職した企業を中心に、その社員とその卒業生自身に学校にきていただいて、それぞれによる作業内容等についてのいわゆるデモンストレーションをしていただきながら、生徒や教員がそれを見るという機会を設けていきたいというふうに考えております。こうした取り組みを通じまして、仕事に取り組む企業の姿勢、あるいは成長した先輩の姿に接して、仕事への憧れ、あるいは意欲というものを高め、自ら就職に向けてチャレンジしようとする生徒が増えていくのではないかというふうにも期待しております。

このように、企業と学校のより一層の緊密な連携によりまして、養護学校における職業教育のあり方について見直し、働くことに前向きに取り組む生徒を育ててまいりたいというふうに思っております 。

松崎        平成18年2月の予算委員会において、本県の障害者雇用の取組みを抜本的に強化していく必要があることを主張し、当時の商工労働部長(現在の総務部長)から、県内の労働団体、使用者団体、行政のトップで構成する「神奈川県障害者雇用推進連絡会」を立ち上げるという答弁をいただいている。そこで、障害者雇用に関わるところの展望や、「神奈川県障害者雇用推進連絡会」の活動等について伺いたい。

まず、県内の民間企業における最新の障害者雇用率等を伺いたい 。

雇用産業人材課長               平成18年の県内民間企業の障害者雇用率は1.41パーセントで、前年と比較いたしまして0.04ポイント上昇しております。特徴の第一といたしましては、前年の全国最下位を脱し、順位をひとつ上げて下から2番目という状況でございます。なお、この1.41パーセントは、企業の主たる事業所の所在地、いわゆる本社所在地で集計したものですが、特徴の第二として、今回初めて公表された事業所所在地別の雇用率では、本県は1.60パーセントで、全国平均の1.52パーセントを上回る状況になっております。また、特徴の第三として、この雇用率は、企業の従業員数の規模による5つの区分でも公表されておりまして、そのうち雇用率が最も高いのは、一番規模の大きい1,000人以上規模(大企業)の1.61パーセント、最も低いのは、二番目に規模が小さい100~299人規模(中小企業)の1.13パーセントとなっております。区分の中では中小企業の雇用率が低いものとなっています 。

松崎        中小企業の状況が厳しいということだが、そのことは新聞等のメディアでも指摘されている。それでは、立ち上げると昨年答弁をいただいている「神奈川県障害者雇用推進連絡会」は、これまでどのような取組をしてきたのか。

雇用産業人材課長               委員お話のとおり「神奈川県障害者雇用推進連絡会」は、県の呼びかけに応じて、昨年の3月24日に、県内の労働団体、使用者団体及び国、県により発足いたしました。

これまでの主な取組としては、障害者雇用に関する普及啓発の活動として、

・6月に、障害者雇用に取り組む姿勢と決意を表明する宣言「神奈川県の障害者雇用を進めるために」を発表し、

・9月に、企業や団体の参加をいただき、「精神障害者雇用促進シンポジウム」を開催し、

・10月には、構成団体が18年度中に実施する「重点的取組」を取りまとめて発表しました。

それ以降、各構成団体がそれぞれの取組を進めており、特徴的なものとしては、

・県では、企業トップへの働きかけや、企業を対象とした特例子会社の優良事例の発表会の開催

・使用者団体では、労働団体と連携した特例子会社見学会の開催

・労働団体では、養護学校との勉強会の開催

などがございます 。

松崎        伺ったところさまざまに取組がなされていると思うが、本社所在地別(集計)という問題はあるにせよ、神奈川県における障害者雇用には、まだこれからたくさん力を入れていかなければいけないと今つくづく感じる。そこで19年度、取組を強化していくと思われるが、障害者雇用の促進に向けて、具体的にどのように取組を強化していくお考えなのか伺いたい。

雇用産業人材課長               19年度は障害者雇用率の低迷している中小企業への支援を強化したいと考えておりまして、新規事業として「中小企業等障害者雇用促進事業」に取り組むことを予定しております。

その内容は、

・一つには、「神奈川県障害者雇用推進連絡会」と連携して、使用者団体の会員企業である中小企業等を対象に、障害者雇用をテーマとしたセミナーや見学会などの開催

・二つ目として、企業等からの要請に応じて、障害者雇用に関する相談に応じるアドバイザーの派遣でございます。

また、充実・強化を図る事業といたしましては、17年度から実施してきている「障害者しごとサポート事業」でございます。これは障害者に身近な地域において、障害者や企業からの就業や雇用の継続などの相談に応じる事業でございますが、従来の西湘地域及び県北地域での実施に加えて、19年度は湘南地域にも拡大し、障害者雇用の働きかけを強めてまいります。

松崎        教育委員会と商工労働部にいろいろ質問をしたが、両者の連携を深めて障害者雇用促進にあたられることを要望して、障害者雇用についてもうひとつ質問をしたい。やはり昨年の予算委員会の中で、まず隗より始めよということでは必ずしもないが、同じ働く場所としての県庁ということを考えたときに、知的障害のある方々の雇用に関して、県庁自らの取組をしていただきたいというふうに求めたところである。来年度予算には、知的障害のある方々の文書集配事業を新たに県庁で行う予算が盛り込まれているところなので、まず、端的にお答えを願いたいのだが、この事業の趣旨、概要、事業の実施時期を答えてもらいたい。

法務文書課長       お答えいたします。

知事部局におきましては、障害者の法定雇用率は達成してございますけれども、知的障害者の方の雇用については、必ずしも十分とはいえない面もございました。そうした中で、委員からのお話もいただきまして、全庁での検討が行われたところでございます。その中で、当課としても適当な事業が無いか検討いたしました。その結果、教育委員会での事例も踏まえまして、県庁内の文書集配業務と印刷業務の一部を知的障害者の方にお願いいたしまして、あわせて、企業就労に向け現場実習の必要な知的障害者の方を実習生として受け入れる事業を、団体に委託して実施することとしたものでございます。

事業の具体的な中身でございますが、この建物でございます本庁舎内の各課に対する文書集配業務、県庁内の各課が当課の大型複写機を使用して行っております大量印刷、それから各課の依頼を受けまして当課が外注いたします外注印刷、これらのうちの一部の印刷業務を行っていただき、そして、企業就労に向けて、これらの業務を実習するための実習生の受け入れ業務を行っていただきます。実施時期としましては、本年4月からの実施を予定しております 。

松崎        4月から早速取り組むということだ。私も期待を大きく寄せているところだが、少し聞きたい。どういう団体に委託するのか。それから、また、このような事業について他の県でも取り組んでいる例はあるのか。

法務文書課長       お答えいたします。

委託に出します団体ですが、知的障害者の方の雇用や就労支援に関しまして十分なノウハウやネットワークを持っていただいて、業務履行が確実なNPO法人を予定してございます。また、他県の状況でございますが、全ての都道府県の状況を把握しているわけではございませんけれど、主な都道府県につきまして問い合わせました結果では、私どものところでやります文書集配のように一定のまとまった業務を知的障害者の方にお願いして行っているという都道府県はございませんでした。

松崎       これも確認だけれども、この事業は単年度で終わるのか。それとも今後も継続していく考えがあるのか。どちらか。

法務文書課長       この4月から始まりますので、まずは、円滑な実施に努めたいと考えてございます。その中で、今後、何か課題はあるか、改善点は無いか、こういったことを検証していきながら、その中で事業継続についても検討していきたいと考えております。

松崎       検証しつつということだから、検証し、そしてよくないところは直す、いいところは伸ばすということだと思う。ぜひとも、継続のお願いをしたいというふうに思う。

今、いろいろな部局から御答弁を頂いたが、やはり最後はいろいろな職場における障害者雇用をこれまで以上に推進していかなければならないと改めて感じている。そこで、県として、今後の障害者雇用について、どのような考えで取り組んでいくつもりなのか、知事の決意を伺いたい。

知事       本県の民間企業における障害者雇用の現状につきましては、先ほど担当の課長からも答弁がありましたが、本社所在地の雇用率では、1.41パーセントと全国で下から2番目で、前年の最下位からの脱出は果たしましたが、大変に厳しい状況にあります。今後の障害者雇用推進の考え方ですが、「神奈川県障害者雇用推進連絡会」におきましては、県の取組はもちろん、労使・行政が一体となって、大きな運動として進めていくことが重要であると考えております。そのためには、この連絡会の構成団体がまず共通の目標をもって、取り組んでいくことが肝要と考えておりますので、法定雇用率1.8パーセントの達成に向けて、当面の目標や、それを実現するための道筋について、早急に定めて、取り組んでまいりたいと考えております。そして障害者の雇用環境を一歩一歩着実に改善しながら、障害のある人もない人も、同じ社会の一員として共に暮らしていく、そうした心豊かな地域社会を築いてまいりたいと、そういう覚悟でございます。

松崎       是非ともよろしくお願いしたい。