神奈川県議会 平成19年9月定例会本会議での一般質問と答弁
2 保健医療問題について
● (1) 乳がん検診の充実・強化について
ア 現行の乳がん検診の受診率を見ると、17年度の本県の受診率は12.3%と低く、全国でワースト6位という状況である。
また、働いている女性については、職場でがん検診を受診しているが、労働安全衛生法の義務づけがないため、その受診率などが把握されていないという大きな問題がある。
一方で、最新の調査結果によれば、若い世代ではマンモグラフィ検診を受診しても乳がんを見落とされる可能性があり、超音波による新しい検診手法がより効果的であると言われており、機器整備や検診技術の普及促進が望まれる。
そこで、本県では、「がんへの挑戦・10か年戦略」で乳がん死亡を全国ワースト2位からベスト10位以内へと記載しているが、乳がん検診について、受診率の向上を図るために、どのように取り組んでいくのか、特に、受診率の向上には、職場における乳がん検診を向上させることが有効な手段であり、そのためには、事業主などに対する働きかけや法的な義務付けなどが必要であると考えるが、職域への対策について県としてどのように取り組んでいくのか、伺いたい。
併せて、新たな超音波による乳がん検診について、県としてどう受けとめていくのか、伺いたい。
○
知事答弁
次に乳がん検診について、お尋ねをいただきました。
最初に、受診率向上に向けた県の取組みについてでございます。乳がん検診の受診率向上については、検診体制の整備と受診促進の普及啓発の取組みが必要であると認識しています。
乳がん検診の機器であるマンモグラフィの整備については、検診機関に対して助成し、現在、市町村の検診対象者の約50パーセントが受診可能となりました。また、質の高い検診を実施するため、これを担う医師や診療放射線技師の育成に努めてまいりました。
こうした取組みにより、乳がん検診を受診しやすい体制が整備されたところであります。
今後は、乳がん検診の受診率向上に向け、リーフレットや県のたよりなどによるこれまでの普及啓発に加えて、さらに、乳がんの検診学会のシンポジウムや、民間団体のキャンペーンなどを通じて、一歩踏み込んだ乳がん検診の受診促進を進めてまいります。
また、職域への対応についてですが、国では、職業性の疾病を予防する観点から、労働安全衛生法に基づき、事業者に対して、常用労働者について年1回の定期健康診断等を実施するよう義務づけております。
しかしながら、乳がん検診については、労働者が従事する業務との直接の因果関係が認められないとの理由で、義務づけられておりません。
一方で、福利厚生の一環として、乳がん検診を独自に実施している事業所もございます。そこで、県といたしましても、神奈川がん克服県民会議や企業の労務担当の会議などを活用して、その取組みがさらに進むよう、働きかけるとともに、乳がん検診の重要性について、企業など職域に対しても普及啓発に努めてまいります。
次に、超音波による乳がん検診については、X線を使うマンモグラフィに併せて実施することが、若い世代の乳がんの発見に有効であると期待されており、国では、今年度から、住民検診としての有効性を検証する研究を始めたと伺っております。
県といたしましては、より有効ながん検診の導入に向けた研究が厚生労働省において進められていることは、重要であると受け止めており、超音波による乳がん検診の有効性の評価について、その研究の動向を注視してまいりたいと思います。
● イ 乳がん検診の課題として、医師の診断技術が考えられる。マンモグラフィで撮像した画像を読影する医師の診断技術が向上しなければ早期発見にはつながらない。
都道府県がん診療連携拠点病院は、がん医療の均てん化に向けて、その機能として地域がん診療連携拠点病院の専門的がん医療スタッフへの研修の実施や症例相談、診療支援を行うことなどが求められている。
そこで、県立がんセンターは、本県の都道府県がん診療連携拠点病院として、乳がん検診に携わる地域の医師の技術向上に向けて、どのように関わっていくのか、伺いたい。
○
知事答弁
病院事業庁関係についてお答えいたします。
乳がん検診の技術向上に向けた県立がんセンターの関わり方についてお尋ねがございました。
県立がんセンターは、都道府県がん診療連携拠点病院として、高度で専門的ながん医療を提供することに加え、県内の医療機関の医師や看護師等の研修を行うこと、さらに、がん医療情報の提供、症例相談、診療支援を行うことが求められております。
これまでも、県立がんセンターでは医師や看護師が、県内外の医療従事者を対象として毎年50を超える各種がんの研究会に講師として参加するほか、地域の医師会等が行う画像診断の読影会で講師を務めるなど、がん医療の向上に取り組んできたところであります。
平成19年度からは、地域がん診療連携拠点病院の医療従事者を対象として、毎週、県立がんセンターにおいて、がん臨床講座を開催し、県内のがん医療の均てん化に努めているところでございます。
議員お話しの乳がんにつきましても、他のがんと同様、研究会や研修会の講師として参加し、乳がんの診断・治療の向上に取り組んできております。
乳がんにつきましては、早期発見によって治癒の可能性が高まることから、乳がん検診がきわめて重要であると考えておりますが、一方、マンモグラフィ検診
で撮影されました画像を読影する医師の技術の向上が課題となっております。
平成19年度は、県立がんセンターの医師が、財団法人神奈川県予防医学協会のマンモグラフィ検診における判定委員会の委員として、毎月、検診で読影された画像の再判定を行うとともに、検診実施機関の指導を行うなどマンモグラフィ検診に係わる医師の読影技術の向上に取り組んでいるところです。
今後とも県立がんセンターでは、都道府県がん診療連携拠点病院として、医療従事者向けの研修会や画像診断の読影会等を通じまして、乳がん検診の診断技術の向上を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
● (2) 神奈川県国民健康保険団体連合会の平成17年度の決算状況を見ると、収入済額から支出済額を差し引いた差引残高は19億 8,800万円であり翌年度への繰越金となっている。毎年の差引残高が十数億円という状況が続いており、年度を跨いで繰り越されている。
神奈川県国民健康保険団体連合会の決算については、市町村等の保険者の承
認を得ているというが、剰余金が長年にわたり繰り越されていることについて、
神奈川県国民健康保険団体連合会の設立を認可している県の助言指導も適切ではなかったのではないかと思っている。
そこで、以上のことについて、私は、昨年度の厚生常任委員会において指摘し、剰余金の縮減及びその活用に向けての県の神奈川県国民健康保険団体連合
会に対するさらなる助言指導についてお願いしてきたところであるが、改めて、
県として今後どのように対応していくのか、伺いたい。
○ 知事答弁
○ 次に、神奈川県国民健康保険団体連合会の剰余金についてのお尋ねをいただきました。
○ 神奈川県国民健康保険団体連合会、いわゆる国保連は、その設立目的を達成するために保険者との契約等に基づき事業を行っていることから、事業内容、事業方針、財政運営等については、当事者である保険者と国保連で決定されるものでございます。
○ 県としては、議員からお話のありました剰余金についても、保険者である市町村等と国保連で構成する総会等において十分な協議を行っていただくことが適切であると考えております。
○ これまでも、県では、国保連に対して、
・ 剰余金の扱いについて、様々な機会を捉えて保険者と率直な意見交換を行い、的確な意向把握に努めること
・ 剰余金の具体的な縮減や活用については、運営協議会、理事会、総会の場で十分な協議を行い、保険者との合意形成を図ること
等を強く助言指導してきたところでございます。
○ こうしたことから、現在、国保連では、後期高齢者医療の審査支払事務の受託決定や特定健診等の実施に伴うシステム構築の見込み等を踏まえ、剰余金を含めた今後の財政計画についての協議を重ねており、保険者の全員が出席する来年2月の総会に諮り、承認を得ていく予定であると伺っております。
○ したがいまして、県としては、引き続き、この剰余金について保険者の合意が得られる形で対応がなされるよう注視し、国保連に対して必要な助言指導を行ってまいります。
● (再質問) 国保連の会計は、1兆 3,000億円と巨額であるのに透明性が担保されていないという問題がある。毎年の剰余金については、昨年度の厚生常任委員会で要求した決算資料においても記載されていない。毎年繰り返されてきたこうした事実、あるいは金額に至っては県民から見れば全く不明である。また、剰余金や繰越金の使途についても疑問なしとしません。
私が調べでみますと、剰余金や繰越金はレセプトの磁気化ということに投入されています。システムの開発からスタートしており、よく調べてみますと、レセプト審査の迅速化、高度化ということは、他都道府県共通の課題でありまして、聞くところによりますと、東京は東京でシステム開発から始め、埼玉は埼玉でシステム開発から始めているということであります。
しかし、審査の対象は診療報酬の支払請求という原点は同じでありますから、各都県共通で開発できるものもあるはずです。しかし、1回で済むものを各都県でやるのはいかにも無駄であると思う。
そして、さらには、説明責任を果たさなくても是正改善を命ずることすらできないという問題であります。
県内で国民健康保険に加入している方は、 324万人であります。また、国保連では、介護保険や支援費についても会費を預かっています。そういう人たちの支払った保険料が毎年剰余金となっても、それは余りっぱなしになっていて、また、事実を公表しなくても、あるいは無駄に無駄を重ねるように使われても、誰も「おかしい」とか「きちんとしてください」と言うことが、果たして、言えないのでしょうか。
実は、国民健康保険法第 108条で、県は国保連に是正改善命令が出せるんです。それで、昨年度の委員会質疑でも、県は厚生労働省に問い合わせており、同法では剰余金の多額について規制する規定はないから是正命令は出せないという見解を、わざわざ厚生労働省からいただいているということです。結果として、1兆 3,000億という巨額なお金を預かっている国保連の説明責任というのは、今もってうやむやのままであると言わざるを得ません。
そうすると、果たしてまじめに保険料を払っている方々、あるいはこれから負担増、これまでも負担増を求められてきた県民に納得してもらえるかどうかという点なんです。
これに対して、言うべきことは言うというスタンスでこられた松沢知事ですから、この点について直ちにこのことを次々と問題点として出してもらいたいというよりも、きっちりと受けとめてどのようにしたらよりよい形で県民に見える形にできるかということをご検討いただけないものか、伺いたい。
○
知事答弁
○ 剰余金の使途に関して様々な問題があるということは、松崎議員ご指摘のとおりであると思います。
○ 国民健康保険制度は、給付と負担の公平を図り、安定的で持続可能な制度とすることが不可欠でありますから、これは全国レベルの課題として取り組んでいく必要があると考えております。
○ 私どもとしても、この改善の指導を適宜行っているわけでありますが、ただ、この法的な担保の中で、それを是正命令とか勧告というところまでは、私たちは越権行為だという判断を持っております。
○ そこでですね、今、全国知事会の方で、これは市町村ではなく国を保険者とする国民健康保険制度の一元化を図っていく、それでないとずーっとこうした問題がついてまわりますから、それを全国知事会として要望しておりまして、県としても、その方向で改善を求めてまいりたいと考えております。