2007年10月 文教常任委員会質問要旨
「武家の古都・鎌倉」の世界遺産登録について
松崎: 教育委員会としては、本県における広い意味での教育行政を進めていくうえで、世界遺産登録をどう位置づけているのか。
文化財担当課長: 文化財の保存と活用は教育委員会の所管であるので、貴重な文化財を世界遺産に登録し将来に残していく、という考えで取り組んでいる。
松崎: 私の実家は奈良で、実家の裏庭を土日になると観光客の方が通る、という環境で育ったが、世界遺産になってそういった方々が増えた。
そこで、伺いたいが、中世の貴重な建物、仏像はもちろんだが、世界遺産登録に向けた方向性としては、鎌倉や金沢文庫のたたずまい、暮らしなど、現実に今そこにある人々の息づかいなども含めたかたちでの、ある種の「まち」としてのものだと考えているが、それでよろしいのか。
文化財担当課長: 登録候補として24の史跡を選んでおり、その中に称名寺や切り通しなどが含まれている。保存と活用という観点から、今後24の史跡それぞれについて保存管理計画を作っていく。当然史跡を単体で守るわけではなく、周辺のバッファーゾーンを含め、古都法、緑地法などを踏まえゾーニングする。所有者、地元自治会などの地域の方、地元の行政と県教育委員会で保存管理計画を作っていく。
松崎: 称名寺界隈や鎌倉市では、ここは一方通行なのではないか、と思われるような道路が対面通行になっているという実態がある。観光客の皆さんとも、お互い様の部分で譲り合い、観光と日々の暮らしが調和をもって成り立っているが、世界遺産登録がなされることにより、観光の部分がだんだん強まっていく。観光客の方が増えて、ゴミの問題がもっと深刻になってきたり、車の流入量も増えてくる。パークアンドライドは八幡宮近辺では成り立つ気配があるがそれ以外では難しい。そういった問題が一気に深刻になりはしないか、という心配を持っている。
この部分は県土整備部の関係かもしれないが、教育委員会の範疇で答えてもらえればよい。こういった点にどういうふうに取り組んでいくのか。
文化財担当課長: 新聞等にもでた石見銀山の経過など、世界遺産の登録は年々厳しくなっている。そういう面で、7月に4県市の推進会議を設置し、その中に関係部局長の推進委員会を設けた。その推進委員会の中に、学識者で構成する推薦書原案作成委員会を9月に立ち上げた。世界遺産登録にあたっては、「顕著な普遍的価値」を推薦書のなかで証明していかなければならないが、来年7月頃までに文化庁にその原案を提出することになっている。当面、4県市としては、まずその作業に集中させていただきたいと思っている。その形が見えてきた段階で、委員お話しの諸課題についても、地元市とも十分調整し、所管部局と協議・調整を図っていきたい。
松崎: 鎌倉市長から直接お話しをうかがう機会があったが、その際、私が申し上げたことと同様のことを心配されていた。
世界遺産登録を目指すことはもちろん大切であるが、知名度も高い鎌倉に、世界遺産という看板が新たに一枚加わるということではない。アジアに来て、世界遺産はどこにあるのか、と言ったときに、アンコールワットがあり、知床があり、という、そういったクラスの中での鎌倉である。アジアを回ったときには鎌倉に出かけましょう、ということが今までより強くなるし、国内的にも、世界遺産になった鎌倉をもう一度見直そう、という気運もあるだろう。ましてや、エコツーリズムなども考えなければならない。
そういった点を総合すると、「まち」そのものを世界遺産ですよ、ということ、より一層調和というものをどう図っていくか、ということが重くなると思うが、先ほどの答弁だと、これから協議するところ、ということだが、何か考えはあるか。
文化財担当課長: 当面、どちらかと言うと登録に向けた取り組みに重点がかかるが、委員お話しの課題についても、まず4県市の委員会の中でいろいろご意見をうかがって、どういった取り組みが必要なのか、よく検討していきたい。
松崎(要望): 今後の検討にあたっては、実情を踏まえてよく考えていいただきたい。