2007年10月 文教委員会質問要旨

県立の図書館について

伊藤 久美子 委員(会派 民主党・かながわクラブ)の質問

伊藤委員:           まず、最初に県立の図書館について、お伺いしたい。さる8月9日、文教常任委員会の県外調査にて、千代田区立図書館に視察に行ってきた。千代田区立図書館は、あなたのセカンドオフィス、もう一つの書斎に、ということをキャッチフレーズとして、夜10時まで開館している。そして、ICタグによる本の管理、最新の辞書検索システム、行き届いた設備、学習に足を運びたくなるような図書館であった。この図書館に大変感銘を受け、このことから、本県の図書館も県民ニーズにあったものにしていかなければならないのではないかということを強く感じた。本県は図書館の数が少ない、充実していないという声をよく聞く。県立図書館を知るために、本県に2館ある県立図書館を視察してきた。県立の図書館について聞く前に、まず、神奈川県の図書館の数、公立図書館の設置状況、整備状況について聞かせて欲しい。

生涯学習文化財課長:       ただいまの県内の公立図書館の整備状況について、4月1日現在で、図書館法に基づく図書館が県内で合計77館、本館が64館、分館が11館、県立の図書館が2館、これらをあわせて合計77館、それから図書館法によらない事実上の図書施設、公民館図書館として知られているものが県内町村で8つある。したがって、合計85の図書館及び類似施設がある。

伊藤委員:           市町村立図書館の状況はわかった。市町村立図書館と県立図書館の役割は違うと思うので、県立の図書館の役割をどのようにとらえているのかということと、近年の図書館の利用状況について聞かせて欲しい。

生涯学習文化財課長:        市町村立図書館と県立図書館との違いだが、市町村立図書館というのは、基本的には、住民に身近なところできめ細やかなサービスをする存在。それに対し、県立の図書館というのは、そういった対人サービスもあるが、広域的な立場から、市町村立図書館を後方からサポートするような役割である。現在県域の図書館資料の相互貸借システムをやっているが、通称KLネットワークというが、そういった図書館同士の相互貸借の要として、県立の図書館は機能している。また、市町村図書館ではなかなか専門職としての司書のきちんとした採用が難しい、そういった場合に、県立の司書が市町村立図書館の司書の職員研修などを行っている。

 蔵書についても、市町村立は、例えば、小説、エッセイ、ハウツーものなど、比較的柔らかいものが多いが、県立は、これに対し、より専門的・学術的な図書に重点を置き、大学の教養課程レベルの本を中心に品揃えし、基礎的な辞書類、全集、専門学術雑誌など、こういったものが県立の収集の主なターゲットになる。

 県立図書館の利用状況は、紅葉ヶ丘にある県立図書館と川崎図書館をあわせて、18年度の合計の利用者数で約44万人、貸出冊数が両館あわせて年間10万冊。以上である。

伊藤委員:           県立の図書館の役割については理解できた。KL-NETワークについてもう少し教えて欲しい。その狙い、仕組み、どの範囲まで、例えば大学との連携などについては、どの分野まで考えているのか。

生涯学習文化財課長:        KL-NETワークについては、先ほども少し触れたように、県立の図書館が要となり、県内の市町村立の図書館、公民館の図書館とネットワークを組む、例えば、ある利用者が地元の市立の図書館に行き、こういう読みたい本がその図書館にない場合、KLに参加している他の図書館が所蔵しているか検索して、あるという場合には、それが分かったら、その図書館から別の図書館に本を転送して、利用者が貸し出し図書館から借りることができるという仕組みのもの。

  この原型は平成2年度に県立の2館の中で、図書検索が、従来の図書カードからコンピュータに変わった。その後、第2次は平成12年度から、2館の図書館の蔵書を民間も含め、一般の方でも24時間、県立の図書館にどういう本があるか検索ができる、こういうことになった。さらに形を整え、平成17年度から第3次、これは例えば利用者の方が自宅のパソコンや携帯電話などで、KL-NETに所属する県内の施設の図書館の蔵書が一括して検索できる、いわゆる横断検索が可能になり、ある本を探す時にその本を所蔵している図書館が非常に検索がしやすくなった。あわせて第3次からは、県立の図書館については、インターネット上での貸出予約ができるようになった。これを裏付ける物流として、県立図書館が要となり、搬送、仲介を行い、資料そのものが届けるべきところに届ける仕組みになっている。

伊藤委員:           KL-NETについては分かった。紅葉坂の図書館の利用者が年々減少しているようだが、原因をおしえて欲しい。

生涯学習文化財課長:        紅葉坂の県立図書館については、残念ながらここ数年、利用者が減ってきている。その原因となるのは、なかなか難しい訳だが、KL-NETにより、今言った図書の所蔵関係が簡単に分かるようになっている。例えば、図書館に来て検索して初めてあるかないかがわかるのではなく、自宅で図書館の所蔵状況が分かるので、あえて図書館に足を運ばなくても所蔵についてはだいたいわかる状況になっている。これが一つの減少してきている理由なのではないかと思う。

伊藤委員:           これからの図書館を充実させていくためには、利用者のニーズに応える様々なプログラムが必要でないかと考える。開館時間の延長や館内におけるイベント、館内にとどまらず、出前講座のような外にでる取組みもあるが、県立の図書館の取組みについて教えて欲しい。

生涯学習文化財課長:        図書館については、いかに本を貸すかだけでなく、様々な、生活に関わる講座を開催する、また図書館の資料をどうやって有効活用するかということでも講座を開いている。平成18年度実績で、年間56回ほどの様々な講座を開催し、少しでもあらたな利用者を増やす取組みをしている。また、館内のわずかなスペースではあるが、図書館の資料を展示することで、別の集客をねらったことも行っている。それから、あらたに、館の中に限らず、外にも出かけていって、来年度あたりから出前講座的なことも、市町村とやっていくことにしている。

 開館時間の延長だが、それは当然、予算のこともある。開館時間を延長すると光熱水費のコストもあるので、そういった場合の費用対効果をきちんと把握していく必要があると思う。こういったことを含めて、今後、検討していきたいと思う。

伊藤委員:           先日の視察を含めて、県立の図書館が努力しているということは理解している。けれど県民に対するPRが不足しているような気がする。その辺の対策について、教えて欲しい。

生涯学習文化財課長:        先ほどの図書館の様々な講座については、県としても、その都度、県の広報誌である県のたよりや地域ミニコミ誌にも掲載している。それから、テレビ神奈川の広報番組で広報している。もちろん、そういった広報だけでは足りないので、パブリシティ、記者発表を重視して、例えば18年度は、県立図書館で合計44回、川崎図書館は63回掲載され、様々な新しい媒体をPRに使うことにしている。

伊藤委員:           様々な講座の中には、子供向けのものもあると思うが、そのようなことについて、学校の方に周知しているPRのようなものがあれば、教えて欲しい。

生涯学習文化財課長:        川崎図書館では、子供向けの、簡単に科学の仕組みがわかるような取組みをしているが、直接学校そのものに対して広報しているかどうか、今手元に資料がないので、後ほど回答させていただく。

伊藤委員:           学校に対する取組みなど、もう少し県民へのPRについては、今後、考えてほしいと思う。さらに、今後、県民のニーズにあった図書館にするために必要な、ICタグ、自動書庫、新しい設備の導入についてはどのように考えているのか。

生涯学習文化財課長:        ただいま委員お話のICタグ、自動書庫は最近導入が増えており、導入された経緯はほとんど図書館の建替えだとか、改修とあわせて導入しているケースが多いようである。そういった意味で、県立の図書館の場合においても、こうした大規模な再編整備、改修の折に、導入を検討したいと考えている。ちなみにICタグであるが、元々、図書館の本の紛失対策で設けられているもので、県立の図書館の場合には、入り口で鞄をお預かりしているので紛失率は非常に低い。その意味では、ICタグ以前に、紛失対策としては対応していると考えている。

伊藤委員:           千代田区立図書館では、ICタグについては、資料管理にも使っているようだが、このようなことについてはどう考えているか。

生涯学習文化財課長:        現在の県立図書館の館内の資料管理については、バーコードで読む方式で処理していて、図書管理に関しては、現行のシステムで十分に機能している。

伊藤委員:           ICタグについてはこれからの検討課題だと思うが、現在の県立図書館2館においては、収蔵スペースが不足している、このような状況で、蔵書の収蔵ができていないことについてはどのように考えているか。

生涯学習文化財課長:        今、委員の御指摘のとおり、両館とも収蔵スペースの不足には、大変頭を悩ましている。できるだけ、現状の収蔵スペースを活用する一方、活用の頻度の低い資料については、廃校となった施設で、それらを収蔵して、必要があれば取り寄せる、といった対応をしている。

松崎:    県内調査でICタグを使った施設を見てきたが、答弁では盗難防止というのがでているが、もっと積極的に、利用者の利便性を向上させるという点で、画期的な活用であると現場に行った少なくとも委員の中ではそれなりの評価があったが、千代田図書館側も説明しているが、今の答弁ではマイナーな、ICタグでなくてもバーコード管理しているから支障がないとか、それでは利用者の利便の向上の取組みに、ICタグを取り入れてとかにつながっていかないのかなと思うが、それについてどうか。

生涯学習文化財課長:        先ほど御答弁した趣旨は、確かにICタグと蔵書管理が連動したシステムが開発されているので、将来大規模に館内整備を行った折には、こうした最新の図書館管理システムの導入を検討することになろうかと思う。当然、大規模なシステム更新の際には、ハードの面と方向性の協議が必要になるかと思う。その兼ね合いで、現状で部分的に導入ということについては、もう少し時間を見て行きたいと考えている。

松崎:    もう一つ、自動書庫について、莫大な投資をして新しいものに取り替えてくださいというのではなく、例えば、川口図書館の例では、導入により格段の時間短縮がされているということ、開館時間の話もあったが、検討されているということだが、午後8時に県立図書館がしまれば8時にそこに降り立つ人でなければ使えないが、東京で千代田が午後10時まで開いているとすれば図書館を利用する、そういう点で、どう考えたらよいのかという趣旨である。それについては様々な検討が必要であるとのお答えだが、確かに光熱水費はかかると思うが、それでは永遠に検討課題で、これをクリアして、一歩前に進めようとする積極性が感じられないが、開館時間について検討されているようなので、できれば検討の内容ぐらい教えていただけないか。

生涯学習文化財課長:        開館時間については、現在、県立図書館は午後7時まで開いている。延長については内部で検討しているところである。開館にもいろいろなやり方がある。例えば、すべての開館日を一律に、例えば8時まで伸ばす必要があるのかとか、それから、サービスを提供するスペースの問題もある。ある部分は人が多いけれども、ある部分は人があまりいないなどがあるので、一律にやるのがいいのか、人数の嵩に応じて開館時間きめ細かくするのがいいのか、その辺は十分に考えて行きたいと思う。光熱水費の問題は、費用対効果のことも合わせて考える必要があるという趣旨で申し上げた。もう少し検討の時間をいただきたい。

松崎:    当然ですね。費用対効果も考える、検討するのは大切だ。それは十分に承知している。どうぞよく検討していただきたいと願う。ただ、午後7時に閉じてしまう紅葉坂の図書館に、桜木町駅で下りて、実際に向かう、例えば、東京から帰ってくる、あるいは、県内でも小田原からやってくる。考えたら、では実際にどのような方が利用できるのか。特に、24時間どこかの時間で働くというように、働き方や家庭の中の状況が変わってきている。だから、県民の皆様のニーズを満たすには、県民生活の変化にも対応していかなくてはならないと思う。できること、できないことがあるのはおっしゃるとおりだと思う。しかし、少なくとも実情を踏まえて、利用者側サイドに立って見直しをかけていくことを是非ともお願いしたいと思う。

伊藤委員:            県立図書館について、神奈川県立図書館、川崎図書館ともに、建物が老朽化していることが問題であると感じた。神奈川県立図書館は、前川国男さんの建築物で、文化財的な価値がある。改修等で立派な建物に変えていくことも一つの方法であると思うが、耐震の問題が大変気になった。また、両図書館ともバリアフリーの問題がある。特に川崎図書館は階段が急な上、4階までのスペースがありながら、エレベーターはない。利用者は階段を利用するしかない。障害者の方は他人の手を借りなくてはならない。障害者の方の利用が減っているが、やはり、他人の手を煩わせてはいけないと思われる方がいらっしゃるのだと思う。バリアフリーはすぐには難しい問題だとは思うが、耐震問題とバリアフリーの問題をどのようにお考えか。

生涯学習文化財課長:        委員御指摘のように、2館ともに、50年、あるいは50年近くたっている古い建物である。したがってバリアフリー対策も決して十分になされていない。ゆくゆく、2館に関しては、ハードの部分を含め、見直しの準備を進めることにしている。耐震の問題については、横浜の紅葉坂の本館はまだ実施していない。今年度、6月の補正予算で耐震診断をお願いしており、今年度中に実施することにしている。耐震診断を踏まえて、今の建物が図書館として今後も使えるか、その辺を検証していきたいと思う。それから、川崎については平成16年度に耐震診断を実施しており、大規模補強を要するという結果がでている。そういうことで、これも踏まえて、県立図書館とセットで今後のあり方を含めて検討していきたいと考えている。

伊藤委員:            耐震の問題に関しては、現状は今お伺いしたとおりなので、対策を進めていただきたいと思う。 川崎図書館についてお伺いしたいが、川崎図書館は富士見公園に含まれていて、その一帯が再整備計画に含まれている。このタイミングに合わせて、川崎図書館の施設整備を行うという、そのようなことはどのように考えているのか。

生涯学習文化財課長:        川崎図書館が立地している富士見都市公園については、再整備が計画されている。市の考え方としては、富士見公園一帯を、スポーツ、文化、レクリエーションなどの活動の拠点としていくことで、様々な老朽化した施設を再配置する、それで全体を再開発するというものである。

 富士見周辺地区の再整備に関しては、相当以前から再整備の話があり、平成7年あたりにも、再整備の検討の検討を行っているようである。今回、公園区域の見直し、競輪場の見直しなどを示したが、ただし、川崎市が示した再編整備のプランは、案というよりも、その前段階の「基本的な考え方」で、これからこれを提示して、地元の皆様方の意見を聞きながら進めていくと聞いている。

  例えば、中学校のグランドの確保の問題とか、公園区域の見直しなどについて、これから関係機関と調整を進める事情もあり、全体の計画として固まったものではないと伺っている。

  また、川崎市としても、川崎図書館に対して具体的にこうしてもらいたいという市の考えはまだ示されていないので、その辺は再整備の経緯を見ながら、川崎市として協議した上で、図書館のあり方を考えたいと思う。

伊藤委員:            図書館は県民のすべてが利用する場であるので、バリアフリーなどを含めて、県民のニーズにあった図書館の運営の見直しをお願いしたいと思う。