2009年2月定例会での本会議代表質問
<質疑と答弁のまとめ>
成年後見制度について
●松崎
(3)次に、成年後見制度について伺います。
介護保険制度が導入された平成12年4月から、それまでの禁治産、準禁治産制度に代えて成年後見制度が設けられ、その活用により本人の意思を尊重しながら多様なニーズに対応することが期待されています。
成年後見制度を利用するためには家庭裁判所への申し立てが必要ですが、ご本人や配偶者などが申し立てできない場合には、市町村長が審判等の申し立てを行うことができ、認知症の高齢者や知的障害者など、判断が困難な方への一定の配慮も行われています。
しかし、申立の際には、多ければ10万円を超す費用が必要であるほか、成年後見が実施されれば、継続的に毎月2~3万円程度、後見人に対して家庭裁判所が認めた報酬が必要であり、費用面での課題があることも事実です。
国では、こうした費用の面から成年後見制度が利用されないことを防ぐために、高齢者については、市町村に対する地域支援事業交付金の対象のひとつとして成年後見制度利用支援事業を設け、申立経費や後見人等の報酬の助成等を行うこととしています。
また、障害者についても、国は市町村に対し、障害者自立支援法に基づく地域生活支援事業の相談支援のひとつとして同様の措置を行っているところですが、平成20年3月まで、支援の対象が限定されていたことにより利用が進んでいない実態があったことから、国が条件を緩和し、平成20年度から対象者が拡大されたところです。
しかし、ある研修会の会場で福祉関係者から、「障害者の国の緩和策について、市町村では理解されておらず制度の活用が進んでいない。県から市町村に支援事業に取り組むよう働きかけてもらいたい。」との要請を受けたことがあります。
現場の課題は、まさに切実です。
確かに、市町村における成年後見制度の支援事業は、市町村の負担もあり、ほかの様々な事業とセットになっているメニュー事業であることから、市町村ごとに優先順位に違いが出てくること、さらには、一度支援を開始すると継続的に実施しなければならないことから、財政が悪化している市町村が取り組むには、課題があるのが実態です。
●そこで、知事に伺います。
成年後見制度の実施は、家庭裁判所と市町村が主な役割を担っていて、県は普及啓発を行っていることは承知していますが、制度を必要とする方が、費用の心配をせずに利用することができるように、県としてもしっかりとした対策を講ずるべきであると考えますが、知事のご所見をお伺いします。
○答弁
○ 次に、成年後見制度の普及に当たって、県として何らかの対策を講ずるべきとのお尋ねをいただきました。
○ 成年後見制度は、認知症高齢者や障害者の権利を守り、生活を支援するために大変重要な役割を果たしているしくみと認識しており、家庭裁判所や弁護士会等の関係機関と連携して、市町村担当者研修や県民向け相談会を開催するなど、県としても普及・促進に向けて積極的に取り組んでまいりました。
○ しかし、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申立てやそれに伴う精神鑑定のための費用とともに、継続的な費用として後見人に対する報酬が必要であり、この費用負担が成年後見制度の普及にとって大きな課題であると受け止めております。
○ 一方、これらの費用を賄えない方々のために、高齢分野、障害分野ともに、市町村を実施主体とし、国・県が一定割合を負担する利用支援事業が設けられておりますが、市町村においては、運用面や財政面の課題が多く、十分な対応がなされていない状況にあるものと承知しています。
○ 県といたしましては、必要な方に適切に支援を実施するよう、担当者会議などの機会を捉えて市町村に働きかけてまいりますが、あわせてこうした状況を踏まえて、国に対しても支援に係る税財政措置の充実を要望してきたところであり、今後とも引き続き改善に向けた取組みを進めてまいります。
○ 他方で、在宅重度障害者等手当の見直しに当たり、障害者の地域生活を支えるための新たな施策の構築に向け、4月に検討組織を設けることとしておりますので、利用しやすい成年後見のしくみづくりなどについても検討を行い、制度の定着・促進に向けて、県としての役割を積極的に果たしてまいります。
●松崎 (要望)成年後見についてでありますが、19年度の実績をみますと、横浜市が13件、川崎市が21件、小田原市が1件ということであります。それから、地域支援事業交付金の具体的な活用の実績をみますと、逗子市は1件、三浦市も1件、大和市は5件、藤沢市は1件という具合に非常に低い、ほとんど利用されていないと言ってもいいくらいの状況にございます。何もここでやり玉にあげて、こけおろしたりするつもりはありません。ただ具体的に困っている人は、誰が考えても、こうした件数よりもはるかに大勢いらっしゃるのに、その困っているという声すら挙げることができないという現実があるのではないかと思いから、質問をさせていただきました。
在宅重度障害者手当の削減のことと関連してお答えもありましたが、私は、成年後見という制度は前からあったわけでありまして、在宅重度の方々の痛みという部分をどのように考えていくのか、とらえていくのかということと、それから成年後見という、地域で暮らすことの安心という部分は、本来政策としてきちんと両立するか、あるいは別個に考えることができるものであります。成年後見という部分について、きちんとお考えをいただけると思っていますけれども、是非ともここの取り組みは、きちっとやっていただきたいと思うわけであります。