平成21年9月30日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<ワークライフバランスについて>

菅原委員               ● 私も、この委員会は2回目になり、当然のように使っているが、ワーク・ライフ・バランスという言葉は、一般的に浸透しているのか。

雇用労政課長       ○ ワーク・ライフ・バランスについては、現在、3カ年で八都県市の取組としてやらせていただいています。ただ、正直に言ってまだまだという部分があります。

特に、誤解を持たれている方は、女性の就労だけを指すものとか、家事・育児と労働のバランスという狭い意味だけで捉えられていることです。家事・育児だけではない趣味も含めた、仕事と生活の調和でありこと、あるいは、女性だけではない男性も含めたものであること等、用語の中身まで含めるとまだまだ十分にご理解いただけていないのではないかと思っております。

菅原委員               ● ワーク・ライフ・バランスという言葉自体に馴染みがない方もいる。また、中身まで含めるとかなり狭い意味で1項目くらいの意味でしか理解されている方も多いのではないかと感じている。

そういった中で、ワーク・ライフ・バランス憲章を読んでみると、地方公共団体の役割も定められており、自ら創意工夫のもとに地域の実情に応じた連携を図る、といったことが書かれている。先ほどの八都県市の広域的な取組を行っている他には何をやっているのか。

雇用労政課長       ○ 大きな取組として八都県市の取組がありますが、加えて、県内で、横浜市、川崎市、相模原市と連携して、シンポジウムを開催するなど、県としても、県内の自治体と連携しながら取組を行っております。

菅原委員               ● こういった現状を見ると、中身の達成以前の問題として、その中身をどう伝えていくのかというところで、かなり苦労されているようだ。ただ、憲章を読んで見ると、用語が出てくる前から、当たり前に議論されていたことも書かれている報告資料を読むと、八都県市で取組をやっており、賛同した企業にシールを配る等をしている。

一方、国の事業でも似た事業として、「カエルジャパンキャンペーン」というものをやっているが、両方を比較すると、かぶっていると思う。かぶっているのであれば、発信媒体が2つに分散している分、周知も回りくどくなるのではないか。

雇用労政課長       ○ カエルジャパンというのは、内閣府の取組で全国展開しております。その中でキーワード、キャッチフレーズを決めて、普及・啓発を図っており、八都県市と同種の部分もございます。

八都県市は、平成19年から3カ年の時限でやっており、22年度以降の展開については国の事業との関係を意識しながらやってまいります。

菅原委員               ● ということは、国の事業と重なる部分は、なんらかの形で整理していくということでよいか。

雇用労政課長       ○ 現在、ワークライフ、バランスは、用語の浸透の問題もあり、緊急雇用の基金事業を活用し調査などをこれから予定しております。八都県市の中での周知度との関係を意識しながら、さらに進めていくこともあるかと思いますが、もし、内容的に重複しているものがあれば、積極的に考えてまいります。

菅原委員               ● 本県としては、カエルジャパンキャンペーンについては何も関わっていないのか。

雇用労政課長       ○ カエルジャパンキャンペーンは、平成19年12月にワーク・ライフ・バランス憲章、仕事と生活の調和推進のための行動指針が策定され、それを受けて内閣府で仕事と生活の調和推進室が設置され、同室の事業として国民運動的な意味合いでポータルサイトの開設やシンポジウムの開催などのキャンペーンをやっているものでございます。

これについては、国のホームページ等で各団体がそれぞれ参画し、電子で申請して、いろいろなロゴを使っています。

神奈川県としても、賛同という意味合いで参加させていただいていて、県内市町村の中もいくつかの市が同じような形でキャンペーンに賛同する形で、カエルキャンペーンのロゴなどを使用させていただいております。

菅原委員               ● 趣旨を理解して賛同していると思うが、市町村のすべてのところが賛同しているわけではない。では、県内の民間企業で、賛同している企業数を教えていただきたい。

雇用労政課長       ○ 事業を実施している内閣府の発表によりますと、県内9つの団体で、内訳は6つの自治体、3つの企業と承知しております。

菅原委員               ● あまり多いという印象を受けないが、ワーク・ライフ・バランス憲章の中には3つの姿がある。

1つめは、就労による経済的に自立可能な社会。これは、一番根本的な部分である。

2つめは、健康で豊かな生活のために時間が確保できる社会。中でも、女性が妊娠・出産等で辞めて仕事に戻りづらくない環境について、現在、本県の企業において、女性が一度出産等でやめた後に企業に戻りやすい体制にあるのか。なかなかない、という声を頂くが、どうか。

雇用労政課長       ○ 少し、質問とずれてしまうかと思いますが、例えば、中小企業白書などでは、従業員が育児休業制度等を取りづらい雰囲気がある、利用を躊躇してしまう雰囲気があるという回答が、従業員では6割近く、企業自身も4割程度の回答になっております。

復職のご質問ですが、子どもを育てていれば、当然、子どもの看護休暇、育児休業を取りながら働く必要がありますが、周囲も含めて、取りやすい雰囲気がまだまだ醸成されていない、と思っております。

菅原委員               ● 雰囲気が醸成されていない現状のであれば、必ずそれを改善しろという議論になるが、県として企業に対し何かできることはあるのか。

雇用労政課長       ○ さまざまなワーク・ライフ・バランスの取組をやらせていただいておりますが、今回、新規の21年度事業としては、企業にはそれぞれ個別の事情がありますので、個別に企業に派遣し専門家にいろいろなアドバイスをしていただくアドバイザー事業を開始いたしまして、いわゆる一般的な普及に加えて、個別のアピールというのも、やらせていただいているところです。

菅原委員               ● 改善の効果は?

雇用労政課長       ○ 新年度の事業であり、今、既に、いくつかの企業でやっておりますが、1年経ったところで、事業総括をさせていただきます。

菅原委員               ● たとえば、インベスト神奈川の助成企業は、県の税金が入っており、ワーク・ライフ・バランスを求める度合いが他の企業よりも高くて然るべきと思うが、その点はどうか。

企業誘致室長       ○ 障害者雇用、子ども・子育て支援、環境の3つをCSRとしてインベスト企業には求めておりますが、それ以外は現段階では求めておらず、把握してございません。

菅原委員               ● 県庁はこれ(ワークライフバランス)に賛同されているわけですよね。あまり聞いてはいけないのかもしれないが、県の中での復職のしやすさなど、模範的になっているのか。

商工労働総務課長               ○ 私共の取組みとしても、家庭と仕事の両立を目指すことについては、ここ最近の取組みの中でも力を入れているところであり、具体的には、例えば残業をなくすこともあるし、また、家庭のお子さん方に私共の職場を知っていただく、その中で家庭と仕事の両立など、家庭も含めて考えていく場を設けるなど、積極的に取り組んでいるところでです。

松崎       ● 報告資料の「各自治体では、率先実行として8月と11月に定時退庁を率先実施した」の記載に関連し、定時退庁、本県ではノー残業デーだが、商工労働部でも実行しているのか。

商工労働総務課長               ○ お尋ねのとおり、毎週水曜日と給料日、概ね16日は、ノー残業デーとして全庁を挙げて取り組んでいるので、商工労働部も同様に取り組んでいる。

 ただ、状況によっては、相手方に答えなければいけないことなどもあるので、そういう場合には、あらかじめ届出をし、必要最小限の人員で取り組むようにしている。

松崎       ● 残業禁止令なのか。

商工労働総務課長               ○ 残業については、そもそも職務命令で行っているので、上司が職務命令を発していなければならず、基本的に任意残業はないし、職場においてはそのように指導している。

 したがって、届出のない残業があれば、巡回をし、事情を聞き、追加の届けを出してもらう場合もあるが、基本的には帰ってもらうよう指導している。

松崎       ● 県庁における取組みで他にあるか。

クリーン・デスク運動というものがあるようだが、それはどのようなものか。

 机の上のものを横に置いているだけのような・・・。

商工労働総務課長               ○ クリーン・デスク運動については、以前はベスト・オフィス運動と言っていたが、執務室の環境整備の一環で、机の整理あるいは書類の整理整頓を通して、基本的に残業をなくす、仕事の時間をそれだけ短縮する効果が出てくると同時に、非常にリフレッシュした形で執務環境が整ってくるので、結果的には仕事の意欲、効率にも効果が出てくるという取組みである。

松崎       ● 深刻な課題が背景にあって、ワーク・ライフ・バランスは、政労使の合意であり、神奈川でいえば、経営協会、労働団体、県、神奈川労働局が入って取り組んでいる。その意味では、固い取組と思うが、その背景には、人の命の問題があると思う。

ワーク・ライフ・バランスの目的とする一つは、働き方の問題。その延長に命の問題があって、精神疾患を含むメンタルな課題や、自殺される被雇用者の方々の問題があり根深いと思う。そのような課題に対して、今、ワーク・ライフ・バランスの県の取組がどこまで有効に働いているのか、あるいは強化しなければいけない部分があれば、どいうった点を強化するのか。

雇用労政課長       ○ 現在、ワーク・ライフ・バランスという形で取り組んでいまして、そこに今こういった景気の状況により、ワーク・ライフ・バランスの手前の段階で苦しまれている方もいる状態です。しかしながらワーク・ライフ・バランスは、企業の生産性向上であるとか、働いている方のそれぞれの生きがいであるとか、これは景気の良し悪しとは問題とは別の次元で継続して取り組まなければならないと考えております。

その中で、今、普及啓発という形が中心ですが、まだまだ言葉の意味が十分理解されていない段階にあります。それが一定程度浸透した先には、国民運動と言うと大げさかもしれませんが、国・県を上げて取り組む課題・意識という共通認識が図られた上で、その次には運動論的に広げていく必要があると思っております。

松崎       ● 今、運動論的に広げていくとおっしゃったが、きわめて重要だと思う。

 人の命に対してどれだけ真剣になれるか。これは県庁も除外するべきではない。メンタルな人、課題のある人、自殺される方、公民問わずどの職場にもいらっしゃるはずである。企業の業績が悪い、あるいは倒産危機に瀕している、県庁でも財政危機であると。市町村でも厳しいところがたくさんある。そうした中で、どうやって心の平安を確保しながら働いていくか。

ここは、優先順位を高く置いてもらって、格段の取組を進めていただかないといけない。私たち会派としても、歴年、強く求めたところである。どのように取り組むのか、覚悟・決意を聞かせて欲しい。

商工労働部副部長               ○ おっしゃるとおり、これからの雇用は大変厳しく、労働相談を見ましても、平成19年度までは10,809件だったものが、20年度に入ると、12,955件になり、大変お困りの様子が見えています。

 しかし、そういった中でも雇用対策を中心にしっかりと見て行く。また、仕事だけが人の生きがいではなく、そういった点も重視しながら、ワーク・ライフ・バランスについてもしっかりと取り組んでいきたいと思います 。

松崎       ● 今の答弁は、ある限りの予算・人員で取り組んでいく覚悟と解釈してよいか。

商工労働部副部長               ○ できる限りの体制をもって取り組んでいくということでございます。