平成21年11月20日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<中小企業活性化推進条例について>

松崎       ● 中小企業活性化推進条例について、簡潔に伺っていきます。先ほど、横山委員の方から、この条例の進行管理について質疑が行われたわけですが、申すまでも無く進行管理に大事なことは、数値管理よりも成果の検証だと思います。言わば、生きた条例とするために魂を入れよういうことなんだと思います。

 魂とはなんぞやと、哲学的な議論をするつもりはありませんが、具体例を一つ申しますと、横浜市で中小企業支援を行っています。神奈川県も中小企業支援を行っています。横浜市の場合は、基礎自治体ですから、当然、それぞれの企業と直接接する機会も多いだろうと思うのですが、また、別の機会に企業の経営者の皆さんと懇談をさせていただいたときに、横浜市はかつて、中小企業診断士、あるいは、社会保険労務士、さらには、弁護士など、専門知識、資格を有する方々を大勢抱えて、経営相談、経営全般については随時、そして無料、しかも現場にスタッフが、なかば常駐するような形で、現場にいって、気軽に声をかけ、経営の方針決めに至るまで、相談に乗ってくれた。

 ところが、昨今、そういうことよりも、全く無くなったということではないですけれども、傾向としては、「相談があれば聞きますよ。」というような形の体制に変わってしまって、親密さというか、親身になって相談してくれるなという感じ、受け止めというものが、薄まってきているとの指摘を受けたことがあります。

 そのことで、はたと考えたことは、横浜市と神奈川県の中小企業支援の役割分担はどうなっているのかということが一つ。

 それから、現場にいる、現場感覚で中小企業支援を行う、ワンストップサービスの究極というのでしょうか、現場にスタッフが行って、専門知識、資格を持った人がいるから、中小企業支援は生きたものになるというものを強く感じたわけで、県と市の役割分担についてはお聞きしたいということが一つと、それからもう一つは、現場主導、現場が中心という形で、今、県の中小企業支援は行われているのかどうか、この 2点をお聞きしたいと思います。

産業活性課長       ○ 県と横浜の役割分担ですが、一つは広域性だと思っています。

横浜市も、県とほぼ同様の機能を持っておりますけれども、やはり横浜市域を対象に支援事業を展開しています。

県の場合には県下全域ということになりますから、例えば取引斡旋などの事業を行う場合、企業は、行政区域を越えた活動を多々しておりますので、広域で展開しております県の方がより取組みやすい部分もございます。

また、横浜市の場合には専門家も数そろえて専門性もありますが、他の市町村の場合ですとなかなかそこまでの体制を作れないということが多々ございまして 県の場合、産業振興センターを中核支援機関として、センターの職員の他に専門の中小企業診断士、税理士、弁護士等々の専門家が相談にのっています。こういった専門性が高いということが一つございます。

もう一点は、県には県立の産業技術センターがございまして、技術と経営の一体的相談サービスを提供できるのが大きな特色の一つであると思います。

また、産業振興センターと産業技術センターは、お互いの職員を交換して常駐させておりますので、その場で、経営の相談をしてみたら実は技術的な部分が絡むですとか、技術的な相談をしてみたら経営の問題が相当絡むケースも多々ございますので、そういったケースにも一緒に対応できるということでございます。

それから二点目の現場での相談ということでございますが、産業振興センター内の拠点で相談をお受けするのが基本になりますが、現場出前相談も実施しております。来ていただく相談に関しましては、ワンストップで無料、何回来ていただいても無料ですが、現場へ専門家と一緒に出かけていく相談は一回だけ無料、ということにさせていただいており、その後は、有料の現場での相談事業というのもございまして、現場を見ながらの相談といったニーズにも応えております。

工業振興課長       ● 松崎委員から、現場密着型の中小企業支援が大変重要だというお話がございまして、今、産業活性課長から、ご答弁申し上げましたが、補足させていただきますと、今、答弁にでました経営と技術の一体的支援でございますが、拠点として相談を受け付けているとの答弁に加えまして、やはり出前型の相談と申しまして、経営と技術が一体的に中小企業支援することが重要であろうと、それぞれ、個別で対応するよりも、一体的に経営と技術が一緒にするということで、現在まで、今年度、出前相談という形で、190を超える企業に訪問させていただきまして、現場密着のご支援をしている状況もございます。

松崎       ● よくわかりました。

今日、ご報告いただいた「中小企業活性化推進モニター」の調査結果では、一番最後のページに「県の中小企業振興施策について」何点か回答が公開されている。

そのなかで、「産業振興センターが実施する施策する施策を利用した経験がありますか」という問いに対しては、「ほぼ利用していない」「利用していない」が87%に上っている。  

また、「ほぼ利用していない」または「利用していない」と回答した理由が、「内容を知らない」が63%、「内容がわかりにくい」が16%、「利用する時間がない」方が13%に止まっており、内容を知らないという方が圧倒的に多い。

最後の問いに対しては、「助成金」や「融資」や「税制の優遇」を期待するけれども、その他、「販路開拓支援」であるとか、多種多様な要望・ニーズがある。

この結果は、非常に重要だと思う。今質問させていただいている現場ということに関して、非常に関係が深いと思うが、「内容を知らない」というのは広報が不足しているからだというふうに考えているのか。

190企業を訪問しています、という貴重なお答えがあったが、そういう、いわば現場密着型で、現場で知られる、仕事ぶりを分かってもらえる、という取組み方の基本的な、あるいは条例に魂入れるという魂の部分かもしれない。そこのところをもっと強化すれば、ただ「知られる」だけではなくて、同時に神奈川県というものが、企業とあるいは働いている仲間と同じ目線に立って同じふうに進んで行こうとしているんだ、ということも分かってもらえる。また、個別の困っていることも解決する。そういったふうに思うが、産業活性課長はどのようにお考えか。

産業活性課長       ○ このアンケート結果につきましては、大変深刻な結果だと受け止めています。

数が148と限られておりますので、これが県全体かどうかという点は、精査する必要があるのかなと思っておりますが、いずれにしてもあまりにも少ないなというふうには感じておりまして、これにはいろいろな要素があろうと思います。

なぜ知らないのか、というところまでは聞いておりませんので、想像の世界になりますが、一つは、PRが効果的に行われていなかったのかな、ということがございます。  

もう一つは、知られていくということには口コミの要素が結構あるのではないか、と思っておりまして、産業振興センターに相談したら非常に良い結果が得られた、といったことが地域に知られていけば、また、そこから広がっていくという要素もあるのではないかと思います。

そういうことですから、PRを効果的にやっていかなかくてはいけない、ということを最近意識しておりまして、いろいろな事業を産業振興センターだけでやるのではなくて、いろいろな地域へ出向いて、いろいろなイベントをやる。その際には、必ず産業振興センターはこういうところにあって、こういういろいろな支援メニューを用意して取り組んでいますよ、と宣伝することを意識してやっています。

ですから、徐々に広がっていくとは思いますけれども、一つはPR。もう一つは具体的に支援した実際の成功事例と言いますか、そういった取組を、地域、地域で広げていく努力が必要であろうと思います。

工業振興課長       ● 産業技術センターの利用者の状況を見てみますと、リピーターの方が大変多く、一度、産業技術センターをご活用いただきますと、2度、3度と利用したいということで、産業技術センター自体のサービスは、非常にレベルとしては高いと思っておりますが、加えて、やはり新しい利用者を開拓していかなくてはならないと思っておりまして、産業技術センターといたしましても、きめ細かくPRすることに努めて、新たな利用者を開拓していくことを心がけていきたいと考えております。

松崎       ● 「中小企業活性化推進モニター」の数が少ないと課長はおっしゃったが、抱えている課題は極めて深刻だ。資料の4頁の一番上の問題点について、「売上停滞・減少」が81%、利幅も減少している。重点事項としては、「営業力強化」が42%。「資金調達」もあるが、「販路拡大」が差し迫った課題であると回答している。

また、2頁の一番下のところに戻ると、「今後の人員についてどのように対応する計画ですか」という問いに対して、「正社員増員」が17%、「派遣社員増員」が0%、「派遣社員削減」と答えているところも0%、「現状維持」と答えているところが圧倒的に多い。

ここだけでも浮き彫りになるのは、身を固くして、とにかく今の状況を歯を食いしばって乗り切って行こうとしている。しかし、必要なアイデアや知恵に関して、神奈川県でどのようなメニュー・体制を用意しているのか、また、190以上の企業を訪問している、という事実についても、おそらく知っている企業は非常に少ないという状況がある。

こういった全体状況を踏まえると、本条例を推進していくにあたっての課題というものも、そうした企業群、しかも、もともと潜在力があり成長する余力もたくさんあるという企業に対して、どういうふうにアプローチをしていくのかが、ある程度見えてくるのではないか。

推進計画には、まさにいろいろな計画がある。しかし、それをこういった企業群に対して具体的にこうするんだ、というところまで落とし込んで推進する計画、あるいは条例であって欲しいと思う。

最後に、この条例の推進にあたって、どのようにお考えなのか、部長からご答弁いただきたい。

商工労働部長       ○ 中小企業が元気になっていくというかたちで県としてもさまざまな産業支援を行っております。

ただ正直なところ、これらを全部知っていただいているかと、なかなか末端までは知れ渡っていないのは事実であると思います。

あらゆる機会をつくって、県のそうした施策を知っていただいて、理解して、最後は活用していただくことが必要です。

施策の周知については、本課でもやっておりますし、産業振興センター、産業技術センターでもやっています。 

さらに、外郭団体、商工会議所、商工会、市町村などとともに、施策について、まず知っていただいて、使っていただけるようなかたちができるよう、職員一同で取組んでいきます。

条例は、まだスタートしたばかりで、これからしっかりと固めて行かなくてはならないと思います。

モニターは、当初300社・組合くらいというかたちで設定致しましたけれども、なかなか数に達しませんで、200社・組合を切る数ですが、貴重なデータと考えておりますので、そこから汲み取って、今後の県の産業振興政策の中に一つ一つ生かして、また条例の趣旨が浸透するようなものにしていきたいと思います。

松崎       ● (要望)是非とも、現場からの、そして現場で神奈川県が見えることを基本として取り組んでいただきたい。