平成21年11月20日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<経済・雇用対策の充実と強化について>

松崎       ● 私の方からは、経済雇用対策、本庁機関の再編、中小企業活性化推進条例の3点について伺いたい。

まず1点目、経済雇用対策についてですが、前回の常任委員会で本県の貧困率について調査し、取りまとめているのか伺ったところ、残念ながら取りまとめていないということでしたが、その後どうですか。

商工労働総務課長               ○ いわゆる貧困率の定義は色々ありますが、年収200万円以下、あるいは先月20日に厚生労働省からわが国の貧困の割合を示す数値として、相対的貧困率が政府として始めて公表されたので、こちらについて少し触れさせていただきます。

あまり聞き慣れない言葉ですが、この相対的貧困率というのは、全国民の中で生活に苦しむ人がどれだけいるかを示す指標で、国民一人ひとりの所得を順番に並べて、ちょうど中間の額を定め、さらにその額の半分に満たない人が、全体でどれくらいいるかを示したものであります。似たような指標として絶対的貧困率がありますが、これはおよそ一日1ドル以下の生活をしている方を指すもので、相対的貧困率はこれとは異なります。

具体的な数値でありますが、平成19年の所得ベースでは、国民の年間所得の中央値は228万円であり、相対的貧困率の対象となるのは、所得が114万円未満の人となりますが、今回の結果では、この比率が15.7%を占めているということでありました。つまり、国民の7人に1人が貧困状態ということであります。これは、算出を行った平成10年以降、最悪の値であり、また、経済協力開発機構、OECDが昨年公表した、加盟30か国の比較では、わが国は、4番目に悪い数値でありました。また、この他、10月20日の公表に追加して、11月13日に公表された、いわゆる母子家庭などの1人親世帯の相対的貧困率は、54.3%であり、これは、OECD加盟30か国中で最も高い値であるとの結果が示されたところであります。

松崎       ● 神奈川県についてはどうですか。

商工労働総務課長               ○ 本県の貧困について、特段の調査はしておりません。

松崎       ● 調べるつもりはありますか。

商工労働総務課長               ○ 貧困率の調査となると、人口動態、所得の換算等について、市町村や国との調整など、それぞれの行政分掌の中で把握するとなると、様々な関係の調整が必要となるため、慎重に検討させていただきたい。

松崎       ● 厚生労働省が調査をしてデータを発表しているということは、国の施策の中で必要であるから、国民の現状を正しく把握したいから、という大きく二つの理由があるということを厚生労働省もはっきり言っています。神奈川県においても施策を打つにあたって県民の現状を把握する上では必要なデータではないのですか。

商工労働総務課長               ○ 県民の経済状況を示す指標としては、県民所得などの指標がございますが、保健福祉部などでは母子家庭の占める割合等を承知しておりますので、そうした数値も活用しながら、経済雇用対策に取り組んでいきたいと考えております。

松崎       ● 必要なデータであるが、数値をはじき出すのに非常に大変であるから、それに近いあるいは類似する他の指標を使い、実質的には貧困率同様の推定というものを弾き出していこうということですか。

商工労働総務課長               ○ 国の方でも調査にかなりの投資と期間をかけて結果を出しておりますが、私どもに今求められている、県民の方がどれだけお困りになっているかという指標については、各部局が持ち合わせているデータ等を駆使して、それらを最大限活用し実態を把握していくことが大事であり、それぞれの所管が持っている資源を活用していくことが、使命であると考えております。

松崎       ● 要望しておきますけど、貧困率というのは、単に一過性の時代のキーワードであったということではなくて、それが指し示している、国民、県民の生活の状況を政治、行政が正しく受け止めたい、受け止めなければならないということが大変大きな社会性を持って、問題、課題として認識されたから、貧困率というのが、ここまで大きなテーマになっていると思う。だから受け止める視点において今の答弁を聞くと差がないと思いますから、もし厚生労働省で国全体の相対的貧困率ということを明示しているわけで、特に母子家庭、ひとり人親家庭の問題点といっているわけですから、そこのところから本県がどんな状況にあるのかを推し測る努力は払っていただくよう、お願いします。

 それと、答弁にありましたけれども、OECD加盟30か国中悪い方から4番目、またひとり親世帯の方は深刻な状況にあるということですが、これは本県においても一人親世帯、母子家庭を中心にということでしたが、一人親世帯と同様の状況にあるのか、つまり言いたいことは、こういった議論が県政の進展に必要だと思う。ところが本県は分かりませんでは、一人親世帯に光を当てることが、ありや、なしやの議論に結びつかない。そこで施策を打てるタイミングで打てるのが、打てなくなる。予算を組めたのに、目、節では流用ができるから、年度の途中でもできたのにということが、後から悔やまれる事態になってはいけないので、申し上げている。だからそこの大変厳しい状況に置かれている世帯、あるいは個人の方への支援をどういうふうに取り組んでいくと考えているのか、そして、今申し上げた課題認識をもっているのか、お聞かせ願いたい。

商工労働総務課長               ○ ただいまのお尋ねの趣旨を私どもの受け止め方としましては、所得の格差が招く様々な弊害がございます。例えば急激な企業倒産、あるいはリストラによりまして、高校生が途中退学をを余儀なくされる、あるいは就職を控えた新卒者の就職事情、第2次氷河期ということで、若い方でも、きちっとした地域の職に、希望する職につけないという、そういうことが将来の日本の公共力なり経済の基盤を損なう恐れがある、特に県内の場合は製造業を中心として、景気の波で非常に大きく変動してまいりましたので、そうした所得の格差が生む連鎖を断ち切る、そういったところは、庁内に会議を設けまして、 

意見交換を行い、それぞれの課題別に受け止めて、ぞれぞれの部局によって所得の格差を、連鎖をどうやって断ち切るか、施策を協議し意見交換し、また施策に向けて検討するという状況です。

松崎       ● 具体的に伺うが、母子家庭のお母さんへの就労支援はどのように強化しているか。

産業人材課長       ○ 職業訓練の面からあげますと、民間への委託訓練の中で、母子家庭で20歳未満のお子さんをお持ちのお母さん、および生活保護受給者を対象とした訓練を年間2コース定員54人で実施しています。

このコースの特色は、母子家庭のお母さんは、仕事から離れて、ある程度時間が経っているということを想定し、本来の3ヶ月の訓練期間の前にビジネスマナー、仕事に対する心構えなどの講習を5日間行なってから、本格的な訓練に入るという形で実施しております。

介護のカウンセリングコースが定員30名に対して15名応募、ITビジネス基礎コースが定員24名に対して20名応募という実施状況です。

 このほか、県ということで申し上げますと、保健福祉部が自立支援教育訓練給付金事業、あるいは高等技能訓練促進費等事業を実施しています。

 これは訓練期間中14万円程度の生活費が支給されるもので福祉という視点で実施しております。

松崎       ● 就労支援を必要としている母子家庭のお母さんは、何人くらいいるのか。

産業人材課長       ○ 平成17年度の国政調査によりますと、母子家庭は42,711世帯、5年前の調査と比べて23%増加しています。

 ここから現在は50,000世帯位の母子家庭があるかと推測できます。

 また、平成18年度の全国母子世帯等調査では、15%の方が就業していないという数字がありますので、50,000世帯中15%、7,500名くらいの方が就業していると推測できます。

松崎       ● 働く意思、能力があるという限定をかけずとも、生活のために働く必要があり、県が展開をし、市町村あるいは民間団体と連携をしながら進めている就労支援の施策の対象にならず、光があたっていないのは何世帯くらいあるのか。

産業人材課長       ○ 推測できるような数字をもっておりません。

松崎       ● そこを調べたり、推計するというつもりはないのか。

産業人材課長       ○ 職業訓練は安定所の所長が受講指示、受講推薦を受けた方が応募をされています。

入校の応募倍率が技術校で2.8倍、委託訓が2.6倍、

 技術校で1,000人近くの方、委託訓練は年間1,500人くらいの方が受講されているので、訓練の立場からから推測すると4,000人くらいの方が、受講指示や受講推薦を受けながら訓練を受けられないということになるかと思います。

 ただ、その他にも、国のポリテクセンターなどの訓練もあります。

 詳しくは追いかけきれませんが、単純な推計では、そのくらいの方がいらっしゃるかと思われます。

松崎       ● (要望)申し上げたいことはふたつある。

 ひとつは介護とITという比較的就労のチャンスがありそうだと設けたコースで、応募が定員にみたない。また定員の状況も少ない。どのような職種が望ましいかということを幅広に検討してほしい。

  また、2コースに限定されてしまうと、ほかの仕事をしたいが希望を叶えるのが難しそうだと、決められたコースを受講している人も大勢いると思うので、コース設定を工夫していただきたい。

もうひとつは、人数の大体の想定をうかがったが、県の様々な施策の中での全体のニーズや希望の状況をしっかり把握していないように聞こえてしまう。

 実際困っている受け手、県民側の状況をもっとよく把握していただきたい。その状況に対してどのような手をうたなくてはいけないかということ、その組み立てを説明できるようお願いしたい。