平成22年3月3日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

中小企業対策:<ものづくり高度化の支援策について>

松崎       ● ものづくり高度化への支援策について、何点か伺いたい。

 中小企業活性化推進計画の事業展開という報告があったが、神奈川県産業の将来ということを展望、指摘してみると、やはり神奈川の産業を支える中小企業の経営力の強化、活力、それからもう一つは、魅力のある企業を創出、創り出していくということが二つ目に必要かと思う。

 そこで、まず、本県の産業の特徴と課題について聞きたいと思う。

 工業製品の品目別の出荷額を調べてみると、神奈川は電機関係のものとか、自動車とかが当然トップだろうと思ったところ、ナンバーワンは、ダントツでガソリンであった。 

電機関係の製品出荷額というものは、ワンツースリーの中からは、はるか前に姿を消してしまっているという現状があって、あとは輸送機械とか、トラックとか自動車というものが続いていると聞くが間違いないか。

産業活性課長       ○ 手元に細かいデータはございませんが、順位としては間違いございません。

松崎       ● そこも含め、神奈川の今の産業のポイント、特徴、課題について伺いたい。

産業活性課長       ○ 本県産業の特徴について、産業構造の面から捉えていきますと、経済のサービス化が進んできているということが特徴として言えるかと思います。

 本県の経済を牽引してきた製造業でございますが、昭和55年度、1980年度当時は、県内総生産の約42%、金額で言いますと、6兆1,800億円程を占めておりました。その後、シェアが徐々に下がりまして、平成19年度、2007年度には、約21%、金額ですと6兆6,400億円程度ということになっております。

 その一方で、卸・小売業を除いた第3次産業は、昭和55年度当時は約38%、5兆6,600億円程度でしたが、平成19年度には、約62%、19兆7,000億円と急激に増加しまして、サービス業のウエイトが非常に高まってきており、生産額が製造業を上回るという状況になってきた、こういったことが一つの姿として言えると思います。

 シェアの低下した製造業でございますけれども、その部分について見てみますと、ウエイトが高い方から輸送用の機械、これが製造業の中で16.5%、それから電気機械が16%、一般機械が14.7%となっておりまして、いわゆる輸出型の産業のウエイトが高いという傾向がございます。

 そういった意味で、海外の景気の影響を受けやすい構造、ということが言えるのではないかと思います。

 このような特徴から考えまして、ものづくり面から見た産業の課題ということで申し上げれば、やはり優れた技術力ですとか革新的な事業の仕組みをもつ競争力の高い企業、高付加価値型の中小企業を多く育成するということが、本県の産業の競争力を高めていくうえで必要ではないかと考えております。

松崎       ● 今、競争力の高い魅力ある企業を育てていく、ものづくり産業分野を育てていく、創り出していく必要があるというふうにお答えいただいた。

 では、創業の促進、それから、今ある県内中小企業が経営革新をやるというのが、よっぽどの意気込みと、種になる新しい画期的技術と、それから人が3点そろっていないと、また、もちろん立地が安定している、業績が安定している、ということがないと踏み出せない。

 企業にとっては、大きくジャンプするという決断をするという話になるわけだが、そこに至るまでの、その決断に至るまでの間を含め、神奈川県はもっともっと果たす余地、役割というものがあろうかと思うが、どうか。

産業活性課長       ○ 創業を促進するということ、それから経営革新をもっと進めやすいようにという観点でのご質問かと思います。

県としましては、創業を志す方が、どうやったらうまくいくのか、そうしたことについて、相談できる体制というものがまず大事だろうと、ここを整えていくことが一つの役割としてあるだろうと思います。

 具体的には、財団法人神奈川産業振興センターを中心に、ワンストップサービスにより総合的な相談に応じていく、ということを行っております。これが一つの役割でございます。

 それから、同じく創業ということに関わりますが、新しい革新的な技術・アイデアをもったベンチャー企業が沢山生まれてくることが必要ですので、そうしたベンチャー企業が生まれ、育って、そして集積する、という環境をつくっていこうということで、その一つではございますけれども、大学発のベンチャーなどの事業化を支援していくという取組を行っております。

それから、経営革新でございますが、企業の経営革新の取組を支援、促進するために、地域に、経営と技術の両方の立場の人間が一緒に出向き、厳しい経営環境の下で新たな取組をしようという意欲のある企業を発掘しまして、技術の面、資金の面、また人材の面から、さまざまな支援を行っていく、といったことが、県の役割ではないかと考えております。

松崎       ● 平成22年度の施策の中柱に「ものづくり高度化への支援」が掲げられているが、具体的にはどのような支援方策を考えているのか。

工業技術担当課長               ○ ものづくり高度化への支援でございますが、産業技術センターが実施する技術相談、依頼試験、受託研究などの技術支援により、県内中小企業のものづくり高度化、新技術・新商品の開発を支援してまいります。

中小企業が最も求めております、製品化・商品化への支援につきましては、例えば、高効率な熱交換器の開発ですとか、摩擦を減らしてエネルギー効率を上げるダイヤモンドライクカーボンコーティングによる表面改質などを支援しておりまして、50件を超える支援事例を、県産業技術センターが発行する「技術支援成果事例集」として取りまとめ、県内中小企業が技術支援を受ける場合の参考として、ご活用いただいております。また、産業技術センターといたしましても製品化・商品化件数を取組の目標値に設定することで、PDCAを回しながら技術支援の強化・効率化に取り組み、平成22年度は65件を目指します。

 さらに、世界に発信する神奈川の先端技術としてふさわしい優れた事業計画を「かながわスタンダード」に認定し、産業技術センターの依頼試験等の減額や、制度融資の利用など、経営と技術の両面から様々な支援を行います。

 この認定事業には、例えば「電気自動車用急速充電器」や、ベアリング材料として注目されている軽くて強い「超微粉末シリコン合金」など、環境にも貢献する神奈川発の新技術がございますが、県産技センターによる年間200件を超える現地での技術調査や、300件程度の出前相談を行う中で、次なる「かながわスタンダード」認定企業を発掘してまいります。

松崎       ● 新製品の開発は容易でなく、相当な時間と労力をかけなくてはならない。開発は試行錯誤でバックヤードに多くの資金、ヒトが必要である。新技術、新商品への開発支援は、今後、県としてどのような支援をしていこうとしているのか。

工業技術担当課長               ○ 新製品・新技術の開発にはヒト、モノ、金が必要であります。産業技術センターでは先ほど、ご紹介いたしました「かながわスタンダード」の27社や、神奈川が誇る先進技術のブランドとしての「神奈川工業技術開発大賞」の延べ157社を始めとして、技術力がある中小企業が集積しておりますが、景気低迷の中で、このような中小企業でも売り上げが急激に落ちております。

 こうした中、今後、成長が期待される、電気自動車やスマートグリッド等のキーテクノロジーであるリチウムイオン電池は、電極や電解液の素材、部材の製造装置、検査・評価システムなど、関連産業のすそ野が広いことから、県内中小企業から新規参入の機会が期待されています。

 そこで、平成22年度は新規事業として、「電気自動車用リチウムイオン電池関連産業参入促進事業」に取り組み、産業技術センターがコーディネーターとなって、精度の高いマッチングを支援してまいります。

 今後も、産業技術センターを中心に、中小企業が取り組む、技術開発から商品化までを総合的に支援し、中小企業の技術力、競争力の強化を図ってまいります。

松崎       ● 金融面で、今色々と質疑応答しているのを聞いていただいているわけですが、金融面でどういう風に支援していくのか。

金融課長               ○ 今、委員お話しのものづくりの高度化に対する金融面の支援でございますが、制度融資のメニューで申し上げますと、「スタートアップ融資」、これが該当のメニューでございます。この「スタートアップ融資」は、創造性、独創性のある技術をもつ中小企業を支援する、育成することを目的として、創業期の信用力・担保力の弱い小規模事業者を対象として、一定の期間、支援する、そういうメニューでございます。融資対象者は大きく4つに分けられております。

 最初は「新企業支援」として、1年以上5年未満の小規模事業者を支援するものです。資金創設時から取り組んでいるものでございます。これは特許法、実用新案法、意匠法、それに基づく技術を持つ、それを生かして事業を行っている、また独自の技術、商品・サービスを生かして事業を行っている、こういう企業を対象としております。それから、これは平成15年にメニューとしております「成長促進支援」といたしまして、神奈川産業振興センターが実施する「ビジネス可能性評価事業」、「ビジネスオーディション」、それから「インキュベータ入居企業支援事業」、これらを評価をしておりますので、一定以上の評価を受けられた方を支援するというものです。それから平成17年度に「かながわスタンダード」、これの認定企業を支援しようというもの。技術と経営の両面から評価したこの「かながわスタンダード」企業に、金融支援をすることによって、技術力による融資の道を開いたものでございます。それから直近では、「創造活動支援」ということで、「創造的新技術研究開発計画」の認定を受けたものに対してもこの融資の対象としております。

 このように順次ものづくり高度化に対して支援をしてまいりまして、来年度予算の中では、最初に申し上げました「新企業支援」で、対象とする業種が従前、通信・情報関連産業、加工組立型関連産業など限定してございました。この産業分野の限定を撤廃しまして、すべての産業分野ということで、迅速な産業構造の変化にいち早く対応する企業を取り込んでいこうということで、22年度から実施いたします。そういう意味で、今後も新技術、新産業を支援できる融資として改善等進めていきたいと思います。

 それからもう一つ、22年度にスタートします新インベスト、セカンドステップの「産業集積支援融資」、これにつきましても、先ほどお話しましたように、基幹産業分野ですとか、新規成長分野など、高度先端産業に該当するものを重点的に支援してまいりますので、その辺も一つのものづくり高度化の支援と考えております。

松崎       ● (要望)非常に考えに考えられたのだと思います。今のお話を伺いますと。私の方は、やはり現場、企業や働く人たちと接している中から色々とお聞きしているわけで、経営が厳しいということをこの委員会で何度言葉として申し上げたか分かりません。厳しい中でなお既に創業している企業が新しく分野を切り開いていこうとする場合や、まったく新しく業そのものを起こしていこうとする場合があって、ものづくりの高度化は達成されていくのであろう、とするならば、この一番厳しいところの手を伸ばし足をかけて歩いていく、その部分を金融面でどう支援するかが課題ですよね。ですから政策を組み立てて実行する場合には、金融の場合には融資という形で、返済というのが必ず返ってくるわけですから、そこのところを見込みつつ、なお最も大変なジャンプアップしたり、スタートするときの融資、後押しをどうするのかということだと思います。決して上から目線でああすべきだと言うつもりはないのですよ。ですから実際に行われる場面に即して、融資を含む支援体制をどういう風に組み立てていけばいいのかということの議論の、議論の深まりを感じるのですが、更に深める余地があると感じますので、制度の中での工夫ということになると思いますが、更に格段の御配慮並びに取組を要望させていただきたいと思います。

●既存の県内の中小企業に対するものづくり高度化への支援ということも、もちろんあるが、先ほどの金融課長のお話、また、インベストのセカンドステージ、もう一つは新たな企業の誘致ということで、国内に限らず海外の企業の誘致をするということがベースにある。

 思うに、高度化を含めて、インベストの観点もあるが、IT・エレクトロクスであるとか、バイオであるとか、それから、加工組立て等の、本県のものづくりを構築する主要部分が、いい形で組み合わされば、1+1が10にもなり100にもなるという部分がまさにここだと思っている。

 また、国内に立地していないところが新たに立地することを考えるに、アジアとの関係が深まることを考えると、国の名前は中国や韓国などというが、他にも沢山ある。インド、マレーシアやシンガポール等様々な企業がある。

アジアの新興国、東アジア諸国のものづくりとの連携をするという観点を新たに取り入れていくと、より付加価値が高まるのではないか、という期待を持っているが、その点についてはどう考えているのか。

産業活性課長       ○ 現在、中国やインドをはじめ、アジアの新興国は、大変、技術力が向上してきており、一昔前と状況が変わってきていると思います。

そして、本県、日本経済は低迷していますが、技術力はやはり非常に高いものがあるということで、海外の企業からも注目される存在であり続けていることもまた事実です。

そうした中で、中国などは、最近の新聞報道にもございましたが、中国企業による日本企業のM&Aですとか、対日投資が急増しているという報道もなされております。 

 そういった状況を踏まえまして、県としましては、今後、東アジア・中国あるいはアジア新興国との連携、経済交流を一層進めていく必要があると考えています。

 ただ、技術だけが持っていかれてしまうといったことになりますと、県内企業の利益に反することになりますので、基本的には、技術なり、製品の販売先と申しますか、マーケットを拡大していきたいという県内企業のニーズ・利益にかなうような形で、積極的に県内中小企業の支援をしていきたいと思います。

 その一つとして、アジア企業、あるいはアジア企業に限りませんが、企業の集積を図って経済活動、交流を広げていくという意味で、海外企業の県内誘致を引き続き進めて行きたいと思います。

 それから、国に様々な経済交流に関する補助メニューがありますので、今後はそういったものも活用しながら、高い技術、国際競争力をもった県内企業の販路拡大といった形の海外展開事業も積極的に実施していきたいと考えております。

 まだ正式に採択されておりませんので、結果としてどうなるかということは申し上げられませんが、現時点で、国のいろいろな補助金を使って、ベトナムへの販路拡大・ミッションの派遣、同じくインドへの販路拡大、更には、アジアではございませんが、ドイツ、ヨーロッパへの販路拡大・ミッション派遣といったことについて、既に申請をしております。

 さらに、今後、北米へのミッションも申請する準備を進めており、これらが採択されますと、かなり様々な地域との経済交流促進のきっかけになると考えております。

松崎       ● (要望)ものづくり高度化への支援ということで、様々な角度から質疑を行ったが、支援そのものをより高度化していただきたく、強く要望し、次の質疑に入る。