2010年7月定例会 防災警察常任委員会の質疑のまとめ

犯罪被害者等の支援について

山口委員:           かながわ犯罪被害者サポートステーションが昨年6月に開設されて1年が経過いたしました。その1周年の記念イベントに、私も参加させていただきましたが、この開設による今までの成果と今後の課題についてお伺いしたいと思っております。

まず、サポートステーションを開設した大きな理由、目的、それをお伺いしたいと思います。

犯罪被害者支援担当課長:               犯罪被害に遭われた方、その多くの方は犯罪による直接の被害に加えまして、その後の周囲の無理解や心ない対応による精神的な被害、あるいは仕事ができないということによる収入の途絶、医療の負担などの経済的な困窮、その他場合によっては、住む家を変えなければいけないとか、仕事を変えなければいけないという、様々な問題に苦しめられております。

そういう状況に置かれた被害者の方々からは、これまでアンケート調査等の中の意見といたしまして、相談内容ごとに、自ら様々な機関に出向いて、同じ話を何度もするのではなく、総合的に相談支援を行うワンストップの窓口を設けてほしい、そのような意見が多数ございました。

このようなことから、サポートステーションは、犯罪被害者の方々が、自ら色々な機関に足を運んだり、辛い体験を何度も説明したりすることがなく、事件後の初期の段階から中長期に及ぶ支援を一つの窓口で一元的に行うワンストップの支援体制といたしまして、昨年の6月、神奈川県犯罪被害者等支援条例に基づき、設置をいたしたものでございます。

山口委員:           ワンストップの支援の体制、これが大きな目的だと私は認識しておりますが、1年が経ちました。このような、今まで1年の支援体制で、課題とか色々なことが出てきたのか、また、他県にも今似たようなものがございますが、形をシフトしていこうと考えられていらっしゃるのか。その辺を少しお伺いしたいのですが。

犯罪被害者支援担当課長:               これまで、昨年の6月開設以来、1年が経過したわけでございますが、おかげさまでといいますか、支援の件数、受ける相談の件数は、その前の年に比べまして、大幅に増加しております。また、全国の行政の職員、あるいは警察の職員、大学の教授等の視察も、この1年間で、累計で140人以上の方が視察に訪れるなど全国的に注目をされています。このようなことから、ある程度の成果は、これまでのところ上がっているのかなというふうに考えております。

また、並行して、これまで様々な支援を行っている中で、課題もまた見えてまいりました。

3点ほど申し上げますと、実際の支援を行ったケースで、昨年、交通事故でいっぺんに3人の方がお亡くなりになったという事故がございました。その3人の中で、お二人は県内に住んでいらっしゃる県民の方だったのですが、お一人は東京に住んでいらっしゃる方ということで、神奈川県の犯罪被害者等支援条例の対象としている方は、県内に住所を有する方ということで、当初、条例の対象にしてない方が、神奈川県内で被害を受けたと、そういう条例の対象にしてない方への支援を、これからどうしていくかということです。今、申し上げた事例で申しますと、東京において神奈川と同じようなレベルの支援を、その方、ご家族へ支援を行うということが理想ですので、そういう方向に向けた取組を行うというのが1点目の課題でございます。

2点目は、大幅に件数が増えております。特に、一緒に支援を行っているNPO法人が、ボランティアの方に行っていただいている支援、被害者の方が裁判、傍聴に行く際の付添支援というものがございます。この付添支援の件数が増えていまして、そうしますと、今現在、NPOのボランティアの方が40名ほどいらっしゃいますが、皆さん、お仕事を持っていらっしゃる方ですので、将来的に件数が増えますと、そういうボランティアの方の調整が難航することが想定されるということで、なるべく多くの方にボランティアになっていただき、ボランティアの数を増やしていきたい。これが2点目の課題でございます。

最後、3点目でございますが、2点目と同じような課題でございますが、NPO法人が今、支援に取り組んでおりますが、これまでボランティアの取組、ボランティアはもちろん無償ですが、交通費等は支給してございます。その他、カウンセリングにつきましては、神奈川県の臨床心理士会所属のカウンセラーさんに謝金をお支払いしているということで、その支援にかかる経費の負担、これはNPO法人の自主財源が、ここ数年伸び悩んでおりますので、将来を見据えるとなかなか厳しい状況ということで、そのNPO法人の財政面をいかに安定したものにしていくかといった課題を、現在把握してございます。以上でございます。

山口委員:           すぐ取り組める課題と、色々調査しなくてはならない課題があろうかと思いますが、この1年の中で、その課題は課題として、これから見直していかなければならないと思いますが、具体的にサポートステーションの仕事がありますよね。法律相談とかカウンセリングとか、裁判所に付添等とありますが、具体的に件数として、どのくらい件数があったのか、また、生活資金の貸付などもやっておりますよね。そうした件数も、具体的に数を教えていただきたいのですが。

犯罪被害者支援担当課長:               昨年の6月から本年5月末までの1年間、まず、相談の受理件数を申し上げますと、1,147件、これを月平均にすると約96件になります。次に、実際の支援の件数ですが、全体で1,082件の支援を行っております。月平均で約90件になります。

内訳でございますが、まずカウンセリングの支援ですが、715件行っております。次に、付添などの支援、直接支援と呼んでおりますが、304件支援を行っております。その他、弁護士による法律相談の支援を58件行っております。生活資金の貸付の支援ですが、3件行いました。最後に、緊急避難場所としてのホテルの提供、これはご自宅で被害に遭われた方、住む家が場所がないということで、緊急避難的にホテルの宿泊料を県が負担する事業ですが、このホテルの提供を2件行っております。以上でございます。

山口委員:           ありがとうございます。この件数は、別に他県と比較することはないのですが、神奈川県としては想定していた件数なのですか。それとも、カウンセリングが多いのは想定できるのですが、何か想定外のことがございましたか。

犯罪被害者支援担当課長:               私どもは、どれくらい件数があるだろうという予測はしてございません。この件数は、前年との比較で申し上げますと、支援の件数で1,082件、全体で行ったわけですが、その前の年、20年度に比べまして、約1.5倍という伸び率でございます。以上でございます。

山口委員:           1.5倍というと、かなり三者の方々がフルで活動なさったのだと思うのですが、何が聞きたいかと言いますと、例えば、カウンセリングとか、法律相談というのは、お金がかかるではないですか。もっとカウンセリングをしてもらいたいと思っていても、やはりそこに費用が発生することで、件数が抑えられているのか、その辺の把握をどういうふうに捉えられているのか、お伺いしたいですが。

犯罪被害者支援担当課長:               カウンセリング、法律相談等は、県の予算を措置させていただいております。今申し上げた数字は、先ほどは申し上げなかったのですが、カウンセリング715件の中には、県が予算措置をしてNPO法人に委託しているものと、警察の職員、臨床心理士の資格をもった職員が直接行っているものの2種類あり、その合算の数字でございます。その数字のうち、警察が直接行っているものにつきましては、職員の人件費のみで、それ以外はないのですが、県が予算措置をして、NPO法人に委託をしているものにつきましては、お認めいただいた21年度の予算の委託料の予算の範囲内で済んでおります。

その21年度の実績を踏まえまして、今年度、22年度の予算は、ある程度余裕を持たせていただきまして予算措置をしてございます。以上でございます。

山口委員:           それを聞いて安心しました。ここの目的は、やはり、ここに行って同じことを言って、また、ここに同じことを言ってというのではなく、ワンストップの支援体制とともに、やはり心の支えだと私は思っております。その中で、将来サポートステーションが目指す方向性というのがどこにあるのか、理想としている姿はどのようなものなのか、最後にお伺いしたいのですが。

犯罪被害者支援担当課長:               神奈川の取組での犯罪被害者サポートステーションは、全国で唯一、三者連携の仕組みでスタートさせていただいたわけでございますが、お尋ねの将来的な目指す姿、理想像ということですが、ご参考までに申し上げますと、アメリカやヨーロッパの諸国は、いわゆる犯罪被害者支援の先進国でございます。そうした国々では、全国的な規模のボランティア団体が、犯罪が起きますと、迅速に被害者のもとへ駆けつけて、様々な支援を行っており、また、そのボランティア団体の財政面の支援を国や自治体が行うという枠組みで、現在取り組んでおります。

そうした先進国の例を参考にいたしますと、犯罪被害者支援は、全国的な仕組みとして実施しなければいけないというふうに考えております。この神奈川を含めました日本で、将来的には地域の身近な場所に、民間団体などの相談窓口があり支援を実際に行うボランティアさんがいらっしゃって、警察から被害情報などが入れば、すぐに様々な支援に取りかかる。そうした方々や民間団体の活動の資金を、国や県も含めた自治体、あるいは民間から広く薄く寄付を集めて活動資金にするといった構図、それが将来の姿ではないかなと、そのように考えてございます。

松崎委員:           今、山口委員から犯罪被害者支援について、サポートステーションを中心に質問・質疑を行っているわけですが、これを立ち上げるべきであるというところから、私たちの神奈川県議会においては随分といろんな議論がありました。それも、我が会派を含めまして、こちらには今日、交渉会派の皆さんもいらっしゃいます、先輩方も大勢いらっしゃいますが、歴年ずっと議論があったところなのです。その議論を踏まえて、県当局におかれては、このサポートステーション、警察本部における取組を引き継ぐ部分もありながら、新たに展開されているということと承知しています。

そこでちょっとお聞きしたいのですが、今の質疑ではもっぱら、どちらかというとサービスを展開する側の体制の問題ですとか、あるいはどういう受け止め方をしていくのかというようなお話を、縷々伺ってきたわけです。そのことと並んで、やはり私は、今までの県議会における議論を踏まえると、被害者の方々、あるいはご家族の心の痛みですとか、様々な物質的な困窮ですとか、あるいは事業や職場で働き続けることが難しくなってくる状況とか、そういうどちらかというと、ご家族ですとか、被害者の方ですとか、その周辺の支援者とかの方々の置かれている状況は、今どうなのかというところも、非常に関心の深いところなので、関連ですが、2,3お聞きしたいと思います。

1点は、サポートステーションにおられるスタッフの皆さまや働いておられる方々が、今、受け止めておられる目を通してなのですが、どういった姿、どういったご相談にみえる方々の状況があるのか。特に最近の変化、経済情勢が厳しいですよね。生活の厳しい中で犯罪に遭われるという、ある意味、非常な厳しさの上に、さらに厳しさが乗っかる状況があると思うのですが、そういった面がどういうふうに、相談を受ける側には映っているのでしょう。なるべく、相談にみえる方々、利用者の方の姿というものをお聞かせいただきたいのですが。

犯罪被害者支援担当課長:               実際に、相談を受けた事例を申し上げますと、犯罪被害、傷害事件の被害者の方で、被害を受けて、怪我をされて、入院を長期にしなければいけないので、その治療費が困る、また仕事ができないので収入がない。なんとかならないかというご相談がありました。同じようなお金に困るというご相談も、ご指摘のとおり、いくつかこれまでございました。先ほど、生活資金の貸付は3件実績がございましたが、その内の1件が今触れた事例の方で、もともとお金に苦しい中で被害に遭われて、仕事ができないで収入が途絶えたということで、貸付のご希望があったので、ご支援をさせていただいたというケースがございますし、その他にも、お金に困っている中で、傷害事件等の被害を受けて仕事を探せないという方、そういったケースの方もいらっしゃいました。別な方につきましては、調べた結果、生活保護の受給ができる資格がある方でしたので、地元の市の生活保護の担当窓口の方にご連絡を差し上げて、橋渡しをしたと、そういうケースがございます。

私ども、これまで1年以上支援を行っている中で、ご指摘のとおり、精神的な部分というのも多いのですが、経済的に困ってしまう、苦しんでいるのでなんとかならないかというようなご相談を多く受けていると、そういう印象がございます。

松崎委員:           もう1点、お伺いしたいのは、これも県議会の中で、超党派で議論した中で出てきた課題なのですが、サポートステーションを、持続可能なものにしていくためには、自治体としての県や、あるいは警察本部、人やお金の面での様々な支援の部分もあるのですが、先ほどもお話のあったとおり、ボランティアですとか、あるいはNPOとしての存立という部分からすると、やはり地域に根ざしたとか、あるいは、様々な連携ということがあるかと思うのです。そういった意味では、課題をたくさん抱えながら、現実には1,000件以上の支援を行われているわけですね。お聞きたしたいことは2点あります。

一つは、ボランティアの数を増やしたいと、さっきおっしゃったが、では、具体的にどうやってボランティアの方の数を増やしていこうと考えておられるのか。

それから、もう一つは、NPOとして存立していかなくてはいけないという部分、あるいは、関わるNPOもおそらく県内にたくさん出てくるということを、ある程度期待しておられると思うのです。サポートステーションは横浜に一つありますが、鎌倉には鎌倉、それから小田原には小田原、色々な方々がおられるとすると、そういった、より身近な地域で、様々なNPOを含む活動が盛んになっていただいた方が、おそらくはサポートステーションとしてもきめ細かく、かつ基礎自治体との連携が即とれる、というふうな意味合いで、非常に好ましいと思うのですが。

ボランティアという個人の方々をどのように増やしていくのかということが一つと、それから、各地域の基礎自治体に一番身近なところで、どういうかたちで様々な非営利団体、NPOなどの活動を増やしていくのかという、その2点をお聞かせいただけないでしょうか。

犯罪被害者支援担当課長:               1点目のボランティアをどのように増やしていくかという点でございますが、昨年10月に、新たにボランティア登録制度というものを県としてスタートいたしました。どういう制度かと申しますと、ボランティアをご希望される方に、県に登録していただきますと、その方にボランティア情報をメール等で配信させていただき、また、その方の活動にかかるボランティア活動中の事故が起きた場合の保険を、県が団体で加入させていただく、そういう仕組みのものでございます。その仕組みで、初心者であっても、まずはイベントのお手伝いから入ってくださいということで、PRも、具体的には学生さんをまずターゲットにということで、神奈川県内のいくつかの大学に私もまいりまして、大学にボランティアセンターというところがございますので、そちらにPRをさせていただいたり、あるいは、実際に一般公開講座を行ったりした例がございます。一般公開講座では、被害者の方の講演の後に、県ではこういうことをやっていますということで、ボランティアの募集をさせていただきました。今後も引き続き、そのような形で、まずは若い方にPRを行うということと、それ以外には即戦力としまして、社会福祉士や看護師の資格を持った方、これはボランティアの即戦力の方ですので、そういう資格団体の事務局にPRをいたしまして、会員である資格を持った方へPRをということでお願いをしていこうと、そのように考えております。

2つ目のNPOを身近な地域でということについては、私どもは、サポートステーションで神奈川被害者支援センターというNPO法人と一緒に支援を行っております。現在、神奈川県内の民間の支援団体は、今申し上げたNPOだけでございます。

委員のお話のとおり、各地域に正式なNPO法人でなくてもよろしいかと思いますが、ボランティアの方々が集まった団体が各地にあって、被害者の方がどこに住んでいらっしゃっても、身近なボランティア団体のボランティアさんに、日常生活の色々な支援にすぐにとりかかっていただく。そういうことを、将来的には、先ほど将来像ということでお話させていただいたとおりでございますが、目指す姿として考えてございます、以上でございます。

松崎委員:           この辺で、最後に一つだけお聞きしますが、今、2つの重要な答えがあったのかなと思います。特にボランティアの方々を増やしていくという点では、一つは学生さん方へのPR、もう一つは有資格者としての社会福祉士や看護師さんの方々の団体へのPR、それぞれに対する働きかけの感触や手ごたえなど、もしありましたらお聞かせください。

犯罪被害者支援担当課長:               これまで73名の方が、新たに県に、先ほどの登録制度で登録をしていただいております。今申し上げた、そのうち学生ですが、まだ2人という状況でございます。学生については、最初の、私どもが伺ってお願いした時の感触はよろしいのですが、実際にボランティアとして登録してうんぬんというところにいきますと、まだ二の足を踏むというか、そういう状況なのかなというのが、私の印象でございます。

もう一つの有資格者ですが、実際に社会福祉士の団体の事務局に伺いまして、社会福祉士に会報を送る封筒の中に、一緒に私どものボランティア募集のチラシも同封させていただくという取組を行いました。この結果、社会福祉士の方は、これまでに実際に新たにボランティアとして登録していただいた方が4名います。社会福祉士は神奈川県内に何千人といらっしゃるようですので、それに比べると、まだまだかなというのが、今、率直な印象でございます。以上でございます。

松崎委員:           取組みはぜひ強化していただくことをご要望申し上げて、委員の方へ質問を戻します。

山口委員:         最後に要望をお話ししたいと思います。

課題は課題として、きちんと捉えていただいて対応していただき、条例の目的である被害者の日常生活の早期回復や、被害者を温かく支える地域社会づくりに向けて、一層、施策や事業の充実を図っていただきたいと思います。以上で私の質問は終わりです。