平成24年第1回定例会予算委員会総括質疑(3月9日)

【財政問題について】

松崎        続きまして、財政問題について伺います。今定例会におきまして、「中期財政見通し」が示され、そして、本来であれば、見通しの中で明らかとなった財源不足についての対策も併せて明示されるべきでありますが、ただ、残念なことに、今後の緊急財政対策本部における検討などを踏まえて、改めて「財政健全化方策」をとりまとめていくこととされました。

   私としては、総合計画が示されたこの時期に、計画事業を円滑に実施するための財源が示されるべきと考えております。

   今後とりまとめられる「財政健全化方策」を考える上で、整理すべき点を何点か伺います。

   まず、平成24年度予算におけるプライマリーバランスについて伺います。中期財政見通しの中で財政対策の基本方向に目指すべき財政の姿があり、現役世代が将来世代に残さない基準でありますプライマリーバランスの黒字化があります。

   そこで伺いますが、黒字化を目指す意義をどのように考えているのかお聞きします。

資金調査課長        財政が健全に運営されているかどうか、まずは、収支均衡した予算となっているか、また、決算収支が黒字であるかという視点とともに、将来を見通すこと、つまり、将来世代に過大な負担をかけない財政運営を行うというのも一つの視点として必要でございます。こうした観点から、プライマリーバランスを1つの指標としていく必要性があると考えているところでございます。

本県の財政状況は、予算の収支均衡が保たれており、また、決算収支が複数年にわたり黒字ではございますが、一方で、プライマリーバランスは赤字の状態が続いています。

したがいまして、このような予算・決算は、将来世代に、負担を先送りしている状況と考えることができます。

そうしたことから、引き続き、収支均衡した予算、決算収支の黒字を継続できるよう、施策事業の見直しなどに取り組んでいくことはもとより、将来世代に過大な負担をさせないよう、そのプライマリーバランスの「黒字化」を目指していくことは、重要なことと考えているところでございます。

松崎        プライマリーバランスの黒字化の時期のそれでは時期について伺います。県債全体の現在高が今や3兆5千億を超えている神奈川県でございます。私ども民主党・かながわクラブ県議団といたしましては、これを何とかしなければならないと考えているところです。

知事はプライマリーバランスの黒字化を目指すという目標をその達成の時期を明確に示すべきだと強く感じているところです。

あともう少しでプライマリーバランスの黒字化が達成できようとしていた平成19年11月13日決算特別委員会が開かれ、そして、当時の平成22年度に黒字化を目指すとしていた目標に対し、1年前倒しにするくらいの強い決意をもって、取組みを進めると当局は言われ、私も是非実現していただきたいとエールを送ったことがございます。

その後、リーマンショックがあり、景気が後退しまして、プライマリーバランスの黒字化を達成することはできませんでした。非常に残念なことでございます。

今回示された、中期見通しにおきましては、プライマリーバランスの黒字化に関する具体的な目標年次が示されておりませんが、改めて、現段階での見通しとプライマリーバランスの黒字化に向けた決意を伺います。

財政部長長            現在、本県のプライマリーバランスが赤字の状態が続いている最大の要因は、臨時財政対策債を大量に発行せざるを得ない状態が続いているためであります。

この臨時財政対策債が、本来の地方交付税に復元されますれば、プライマリーバランスの黒字化につながってまいる訳でございますが、国がこの制度を平成25年度まで延長するということを既に決めておりまして、さらに26年以降につきましても、国の現在の厳しい財政状況等を踏まえますと、臨時財政対策債制度が確実に終了するものとを見込めませんものですから、今回の中期財政見通しの中では、止むを得ず、26年度もこの臨時財政対策債の制度が残るものとして、推計させていただきました。

このように、当面、臨時財政対策債の発行を見込まざるを得ない状況の中で、現時点におきまして、プライマリーバランスの「黒字化」ということの目標年次を申し上げることは困難でございますが、今後ともこの臨時財政対策債の交付税の復元を国に求めていきますとともに、施策・事業の徹底的な見直し、あるいは、自立財源の確保、さらには、緊急財政対策本部による抜本的な見直し、そして、通常の県債の新規発行額の抑制、こうしたことを通じまして、プライマリーバランスの「黒字化」ということをしっかり目指して取り組んでまいりたいと考えております。

松崎        引き続き、臨時財政対策債について伺います。今プライマリーバランスの決意を伺いましたが、目標年次を示すことは困難、そして、やはり臨時財政対策債が大きな影響を及ぼしているとのことでございます。しかも、これは臨時と言いまして、平成13年度から始まって、既に4回も延長されていて、実はこの借金がないとやっていけないんじゃないかと、つまり、常態化していることが問題であると感じているところです。

   財政当局は、毎度、臨時財政対策債の元利償還金は基準財政需要額に算入されていて、交付税措置がなされていると言われますが、私はこれまで発行してきた臨時財政対策債が元利償還金を臨時財政対策債で賄うという状況に陥っていると考えています。

   これは、いわゆる「自転車操業」の状態でございます。財政破綻の道筋もここから見えてきているように思えてなりません。そのことについて、財政当局はどのように考えているのか伺います。

資金調査課長        国の地方財政計画では、地方自治体が、既に発行済の臨時財政対策債の元利償還分のために、臨時財政対策債を発行するということにしておりまして、こうしたスキームを見る限り、国においては「臨時財政対策債の元利償還金を臨時財政対策債で賄う状況」でございます。

このような国の対応によりまして、本県においても臨時財政対策債の大量発行を余儀なくされているところでございます。その結果、公債費と県債の現在高だが、年々増大しておりまして、本県の財政の硬直化の大きな要因となっており、大変憂慮しているところでございます。

このようなことから、本県ではこれまでも国に対して、臨時財政対策債を廃止して、地方交付税に復元すべきと、強く要望を行っているところでございます。

 今後、緊急財政対策本部の調査会からも意見をいただきながら、本県独自の取組みはもとより、関東地方知事会、9都県市首脳会議などを通じまして、粘り強く国に対して地方の実情を訴えてまいります。

松崎        我々も本県のこのような状況をきちんと国に説明、また、要望していかなければならない立場であると認識しております。

   また、そのためには神奈川県が本当に大変な状況であるということを客観的に示していかなければならないとも考えているところでございます。

そこで次に伺いますのは、「健全化判断比率」についてでございます。この健全化比率の中に「実質公債費比率」がございます。この数値は小さいほど財政的に健全であるとされており、本県は、「9.9%」で、全国で2番目に低い数値、すなわち「全国で2番目に財政状況が良い県」となっております。これは本県の県債を購入していただく投資家向けの資料、いわゆるIR資料をこちらにお持ちしましたけれども、IR資料、こちらにも堂々と記載しておりまして、県債は人気を博しているとなっております。

  しかし、公債費は実際は増え続けておりまして、県財政を圧迫している訳でございます。決して全国第2位の健全性など、これは実態を反映していないと思う訳でございます。当局はどのような認識をしておられるでしょうか。

資金調査課長        平成22年度決算に基づきました本県の実質公債費比率は、早期健全化基準を下回っており、また、全国平均も下回っているという状況でございます。実質公債費比率は、元利償還金の多い少ないが、比率の算定に大きく影響するものでございますけれども、本県では、他県に先んじまして、平成9年度から「県債の新規発行抑制」など行政システム改革に取り組んできており、こうした結果が、比率に表れているものと考えております。

 また、実質公債費比率の算定におきましては、臨時財政対策債の元利償還金など、地方交付税で措置される金額を除いて算定する仕組みになっていることも、良好な比率になっている一因であるというふうに思っております。しかしながら、地方交付税で措置されるとはいえ、いわゆる現金が必ずしも入ってくるものではなく、一方では、臨時財政対策債を含む多くの県債を返していかなければならない状況にありますので、今後、その公債費が確実に増加してくることから、本県財政は、実質公債費比率でみる以上に大変厳しい状況にあるという認識でございます。

松崎        ここでも数字のマジックといいますか、あるいは、基準の曖昧さと言いますか。かねてから我が会派が、申し上げてきた基準の是正がなされておりません。

数字のマジックという話でいいますと、今回示された「中期財政見通し」、こちら拝見してますと、介護・措置・医療関係費が、平成17年度からの7年間で、約2倍になっていると強調されております。しかしこれ、「三位一体改革」とか、あるいは「社会保障制度改革」によって、本県負担が増大したことによるものでございまして、平成18年度以降、この改革によって税源が移譲され、税収規模も拡大しているということをセットで議論すべきであるにもかかわらず、負担だけを強調しているように思えるわけでございます。

 話を戻します。臨時財政対策債は、交付税措置されるものだから除きますという基準では、実態に反すると思います。平成22年度の2,795億円をはじめ、ここ数年は、毎年、2千億円を超える規模で、臨時財政対策債を発行してきております。今後の推計でも、やはり2千億円台が想定されているところでございます。実態を表せない指標は、改善すべきであります。わかりやすく県民の皆様に「神奈川県の財政が大変厳しい状況にあるという実態」。これを示すことが、なにより重要と思いますが、どのような取組みを行っているのか伺います。

資金調査課長        本県では、本県の財政状況を県民の皆様に分かりやすくお伝えするために、「県のたより」やテレビ、ラジオ番組などによりまして、予算・決算の概況をお知らせしてございます。ホームページにおいても、県税収入や義務的経費の推移など、本県の財政状況の実態について、グラフを中心とした「神奈川県の財政状況」を作成して、公表しているところでございます。また、他の都道府県との比較という観点からは、本県と類似都道府県の財政指標をグラフによって比較分析いたします「財政比較分析表」などをホームページに掲載するなど、県民の皆様に分かりやすく財政状況をご理解いただけるよう、取り組んでございます。

 さらに、当初予算の記者発表におきましては、今回初めて知事からフリップを使用していただきまして、分かりやすく本県の財政状況の説明を行ったところでもございます。その模様はホームページの動画でも見られるようになっているところでございます。

 今後も、県民の皆様に本県の財政状況を理解していただくため、わかりやすい広報に努めてまいります。

松崎      

 大変厳しい状況にあるということを、県民の皆様にご理解をいただいて、そのために何をすべきかを、時間・期限を区切ってしっかりと、進んでいこうという点では、知事も表明されている「緊急財政対策本部」が肝ということでございますが、そこに至った経緯をしっかり踏まえた上で、進まなければゴールも見えてこないと、私は思うわけでございます。

 これまで、財政健全化の指標の問題、プライマリーバランスの黒字化の課題について伺ってまいりましたが、臨時財政対策債が大きな鍵であるということは、明らかだと思います。

 ここで、県債残高について、取り上げたいと思います。

 臨時財政対策債を除いた県債残高は、確かに減少しておりますが、「果たしてそれでいいのか?」と言う問題でございます。

 根本は、「県債全体の残高の減少を目指さなければならない。」と言うことでございます。つまり、臨時財政対策債の発行も、そして、通常の県債の発行も、ともに抑制することを決断すべき時期にあると思います。

 そこで、今こそが、県債全体の発行抑制を英断するべき時期ではないか、政策局長に伺います。

政策局長                委員の話のとおり、財政の健全化を目指す上では、臨時財政対策債もいわゆる通常の県債も同じ借金であるということについては変わりございません。

そういった意味では、臨時財政対策債も含めて、県債全体を抑制することは、最も重要なポイントだと考えております。

 ただ、臨時財政対策債は、現行の地方財政法上の扱いとすれば、地方交付税の代替措置ということで、我々通常「一般財源」といっておりますが、いわゆる地方の財源不足の穴埋めといった形で機能しております。

 仮に、臨時財政対策債を発行しないとすれば、当然のことながら、その分の新たな財源を確保しなければいけない。あるいは確保できないとすれば、医療や福祉、あるいは安全・安心など、真に県民生活そのものに直結するような話になってくる。これも大きな課題だろうと思っております。

 県としては、県民の生活を守っていく。県民の福祉の向上を図るということが、

我々の責務でございますし、喫緊の課題にも対応することが我々の責任だと考えてございます。

 こうしたことを考えていきますと、ご案内のとおり、現在「社会保障と税一体改革」の中で、地方消費税これが取り上げられております。こうしたこともしっかりと見極めなければいけない。

 それから、「中期財政見通し」の中でも、「財政健全化方策」を今後つくっていくことを位置付けております。そうした中で、今のご指摘の県債全体の抑制のあり方について、検討していきたいと考えております。

松崎        今後の財政運営を考えましたときに、明確なゴール、明確な目標の設定は、 不可欠であると考えます。目標があるからこそ、みんなが一丸となって目標に突き進むことができるわけであります。本日の議論では、残念なことではありますが、そうした目標を明確に見いだすことは、少しできなかったかなと思います。ちなみに、大阪府におきましては、基本理念として、将来の世代に負担を先送りをしない。そして、現役世代と将来世代の負担の公平を図るといった観点から、収入の範囲内で支出を行うといった規律確保を規定しました「大阪府財政運営基本条例」が、この2月10日に施行されております。今申し上げたいくつかの大阪府が取り入れている点は、本県においても通じることではないかと思うわけです。

 私といたしましては、是非とも「財政健全化条例」をつくるべきなのではないかということも申し添えさせていただきます。いずれにしましても、財政運営の明確な目標をきちんと示すべきだということを、あらためて申し上げさせていただきたいと思います。