平成25年12月11日 いじめ防止対策推進法について

松崎:    今回報告があった中で、「神奈川県いじめ防止基本方針(仮称)素案」について何点か伺いたい。この法律については、大津のいじめの対応を受け、知事が再調査できるというしくみができたとのことだが、今回詳しい素案が示されているので、これを検討させていただいた上、いじめがあったという場合に、公立学校に対しては、学校緊急支援チームを派遣する、これは従前からの対応かと思うが、公立学校では、学校緊急支援チーム自体が再調査を行うのではなく、別のチームが再調査を行うことになっている。この別なチームとはどんなものを考えているのか、ここには弁護士など5名程度ということしかないので、わかれば教えてほしい。

私学振興課長:    学校緊急支援チームは、今現在、公立学校教育委員会にあり、そうした事案があったときに、もっぱら保護者や生徒の「心のケア」や、家庭に対する支援を行うもので、10年以上前から設置され、県では現実の活動として既に存在している。今回の再調査の機関は新たに法律が制定され、その中附属機関として再調査を行うということで、今回、新たなしくみとして設けられた。こちらは再調査が目的であり、成り立ち、目的が異なり、再調査については今回の新しい枠組みの附属機関で行うと認識している。

松崎:    実際に重大事態が起こった場合、公立学校の場合、緊急支援チームを派遣する、また、再調査のための別なチームを派遣する。緊急支援チームは教育庁の所管であって、もうひとつは知事の所管。この二つのチームは学校の中で、校長を呼んで話を聞いてみたり、保護者、当事者からも聞いてみたり、二つのチームがそれぞれ別な観点から様々な活動を行うと、かなり錯綜した事態が起きるのではないか。

次世代育成部長:              

 学校緊急支援チームは、まさに初期対応、事案が起こったときに保護者や生徒をケアするもの。今お話があった新しい制度の再調査は、教育委員会の中での調査を受け、調査の内容が不十分だと判断したときに、はじめて知事が知事のほうで設置したチームが動き出すということで、役割が自ずと違ってくる。

松崎:    時間軸が違うとのことだが、学校現場では様々な活動がクロスして行われる懸念についてはどうするのか。

次世代育成部長:                 資料素案の17ページをご覧いただきたい。ここにイメージ図があるが、教育委員会の真中辺りに、神奈川県いじめ防止対策調査会がある。こちらでまずは調査を実施する。教育委員会の中で設置したものが調査を実施する。その調査報告を知事に上げる、その調査内容が不十分であると判断された場合、知事の調査組織が再調査を行う。

  最終的に教育委員会の調査が足りないということになれば、改めて調査等が実施されることになるが、錯綜して調査が行われるということはない。

県民局副局長:     今の答弁に補足するが、初めに調査が必要な事態が起こった場合、第一義的には学校が組織を設けて調査を行う。そういう対応が難しい場合、今部長の答弁にあった教育委員会独自の調査会が調査を行うことになる。そのいずれかの調査結果が知事に報告された場合に、知事が再調査するかどうか判断し、再調査を必要なときに実施するという構造になっている。

松崎:     この制度が待ち望まれて制度化された経緯を考えると、あまり間があいても制度の趣旨が貫徹しない。はっきり言うと、当事者が直接かかわっている部分で事実が出てこない、また、隠蔽だと批判されるようなこともあった、こうしたことが教育不振につながったため、制度化したので、機敏に対応するために教育長ではなく知事に置いた。必ずしもチームが完全に他のチームとかぶることはないと言い切るほうがおかしいのではないか。

県民局副局長:    あくまでもいじめ防止対策推進法の枠組みの中で、知事が再調査を行うのは、学校又は教育委員会からの調査結果を見て必要と判断した場合に行うことになっている。

松崎:    これ以上話しても平行線のようであるが、学校現場に混乱はありえないと言い切ってしまうのは、私は事態に対する物の見方が冷静ではないのではないかと感じる。現場に即した想定をしっかり立てて制度化を進めていただきたい。

 次に、この法律では、私学に対しても再調査ができることになっているが、私学に対する再調査のための附属機関を設置するとしているが、私学はそれぞれの独自性の中で運営されている中で、再調査のためといきなり公権力が入ってくるのか、私学ではいじめ対策はしっかりできないということを予定したような制度であるが、その辺はどうか。

私学振興課長:    法の枠組み、再調査の機関の対象は、公立と私立の両方を対象としている。私学は私立学校法があり、建学の精神、自主性を尊重する法律となっており、学校教育法の設置者の命令権限は私学法ではその規定を除外するということが大きな特徴となっている。つまり、(県に)命令権限はない。その中で、再調査の機関がどのように入るかということについて、重大事態があった場合に報告を求め、必要があれば私学のほうに更に詳細な報告を求めることになっており、例えば直接聴取する権限や強制的な権限を与えたものではない。従って、私学法との関係で言えば、私学法を踏みこえてこの法律ができているわけではない。

松崎:    今の説明では、いじめ防止対策の基本方針を定め、知事の再調査を書き込むとはいえ、いわば実効性のない竹光の刀を持っているようなものではないか。

私学振興課長:    法律の権限で言えば、先ほどお答えしたとおり。ただ、今回このいじめ防止対策推進法の大きな趣旨というのは、公立であれ私立であれ、学校でいじめが起きてはいけない、未然防止をしなければいけないということなので、再調査を行うことができるということは大変大きな変化であるので、普段からそうした事態が発生しないよう連携を密にしていくということと、もしそうした事態が発生した場合には、その枠組みの中で改めてきちんと処理していく、法律の枠の中で対応していく。

松崎:    今は枠組みはないが、今後新たに枠組みを作るということなのか、今ある枠組みの中でしっかりやるということだが、知事の再調査を敢えて私学にも及ぼすかのように運用していくのか。

私学振興課長:    附属機関による再調査はもちろんこの法律の中で新しくできた。それと、私立学校に対する入り方、権限については、私立学校法に基づいて対処する、機関が調査結果を受けてその先の私学の対処の結果については私立学校法に基づいて対処するという条文になっており、その意味で、二つの法律は連携が取れている。

松崎:    法律の解釈は大切だが、今聞いているのは、県として私学にどのように対処していくのか。

私学振興課長:    いじめを未然に防止することが一番大切であり、そのためには日ごろから学校と連携を密にしておくことが重要。今後、もしそういう事態が起こってしまったら、先ほどの枠組みで活動することになるが、学校と連携しつつ、再発防止に努めていくことが大切であると考えている。

松崎:    その前に、事実関係の解明と、何があったのかという整理をするということでよいか。

私学振興課長:    そのとおり。

松崎:    私学法の範疇でといいながら再調査も準備するということで、はっきりいってわかりにくい。私学の再調査、再び起きないように私学自体が取り組んでいる中で、再調査を行っていくことについて、しっかり答えていただけないか。

次世代育成部長:                まずは私立学校でいじめが起きないよう未然防止、それから起きたときには早期発見早期対応が大切なので、それに私立学校と連携して取り組んでいくことはこれまでと変わらない。不幸にして重大事案が起こった場合、再調査が制度として担保されることで、ある意味「けん制的役割」を果たすと考える。ここで最も重要なことは、学校が早期に適切な対応をとることなので、再調査ができた枠組みの中で学校側によりしっかりとした調査をとっていただくよう、自主的な取り組みを促してまいりたいというのが県の考えである。

松崎:    言葉のやり取りだけでは、現実に即した対応については、経験値を積めばうまくいくということではない。どれだけきちんとした対応ができるかというリアルな運用を想定した中で、よりよい適切な運用がされるようお願いし、今後も検証させていただきたい。